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第67回NHK杯1回戦解説記 谷川浩司九段VS阿部健治郎七段 ~後編~

前回の続きです。

 

本局の棋譜は、こちらのサイトからご覧いただけます。
参考 本局の棋譜NHK杯将棋トーナメント

第67回NHK杯1回戦第11局
2017年6月11日放映

 

先手 谷川 浩司  九段
後手 阿部 健治郎 七段

 

何が急所なのか、すぐには見抜きにくい局面ですね。

ソフトなら何を指すのかなと疑問に思い、試しにこの局面でelmoに約30分ほど考えさせてみました。すると示した手は………….△2四金!

NHK A

…….はあ…….なるほど…。そこに……。

この手の意味をざっくり説明すると、2四に金を打つことで、先手の飛車を捌かせないようにしています。ここにバリケードを作っておけば後手玉は安泰になるので、将来の△8九歩成~△9九と~△2六香が間に合うでしょうと主張しているわけです。

しかしながら、虎の子の金を手放すのは抵抗がありますし、人間は持ち駒を高く評価する傾向が強いので、このような手を指すのは勇気がいりますね。本譜は△8九歩成と香を取りに行きました。将来の△2六香に期待した一手です。(青字は本譜の指し手)

以下▲3三歩成△同銀▲6五歩進みました。(第9図)

NHK 9

▲6五歩を△同飛と取ると▲8三角が厳しく、△同銀は▲8六銀~▲2五飛で十字飛車の筋があります。△7三銀と引くようでは明らかな利かされですね。仕方がないので、阿部七段は△9九とで香を補充します。

その局面は、次に△2六香が残っているものの、先手は銀を取る権利と手番を得ています。谷川九段はそれを活かして一気に畳みかけます。まずは▲3四歩と叩きました。△同銀は▲3三歩△同金▲1五角の筋があるので△4四銀と逃げましたが、▲2四桂と打って追撃の手を緩めません。以下△2三金▲3二角△5二玉▲2三角成と進みました。(第10図)

NHK 10

△2三金は敢えて王手金取りを掛けさせることで玉を5筋方面へ逃げ出す意図ですが、金を取られる損失は大きく、後手にとっては苦肉の策だったといえるでしょう。第9図と第10図を比較してみると、先手がかなりの戦果を挙げていることが分かります。

第10図から阿部七段は△2六香と打ちました。待望の一手ですが、谷川九段も負けじと▲6六金と打ち、相手の飛車を責めます。後手は▲2二飛を打たれてしまうとひとたまりも無いので△9五飛と逃げますが、ここに金を設置したことで後手玉への寄せの足掛かりができました。以下▲2六飛△同歩▲6四歩△3六歩と進みました。(第11図)

NHK 11

この局面で、もう一度形勢判断をしてみましょう。

玉型は、先手玉は詰めろでは無いのに対し、後手玉には詰めろが掛かるので、先手に分がありそうです。

駒の損得は、先手が銀得しています。

駒の効率は、互いに遊んでいる駒があまりないのでほぼ互角でしょうか。

総合的に判断すると、先手に悪い要点が見当たらないので先手に勝ちがあると考えるのが自然です。

第11図では、先手に駒得という主張があるので、それを維持するために▲2六角と平凡に逃げておく手は有力でした。△2七飛が怖い手ですが、▲3六玉△2九飛成▲7五香と対応して先手勝ち筋です。(B図)

NHK B

最終手の▲7五香が後手玉に詰めろを掛けつつ、飛車の横利きを遮る一石二鳥の一手です。ここに香を打たれると後手は飛車が働かなくなり、飛車落ちに等しい状態になってしまうのが痛いのです。

B図は▲6三歩成△同玉▲4一馬以下の詰めろを受けなければいけないので△6四歩と手を戻すくらいですが、▲4四角で銀を取ることができます。△同歩は▲4三銀以下詰みですね。

本譜は▲7四銀と打って詰めろを掛けました。これも魅力的な一手で、先手玉は詰めろではないのだから、先に相手に詰めろを掛ければ一手勝ちだろうという意図です。ただ、△3七歩成▲同銀△7二金打と粘られたときに、見た目以上に後手玉を寄せにくかったことが、谷川九段にとって誤算だったのではないでしょうか。(第12図)

NHK 12

ここで谷川九段は最後の考慮時間を使います。▲6三歩成△同金▲同銀成△同玉▲6四歩……と王手はたくさん続きますが、後手玉を広い場所へ逃がしている感もあるので、はっきり寄せを読み切らないとこの順は指せません。

▲6三歩成の筋では明快ではないと判断し、本譜は▲7三歩と打ちました。これは△同桂なら▲7五香が詰めろ桂取りになり、そうなれば先手が勝ちそうです。しかし、この▲7三歩自体は詰めろではありません。阿部七段は一瞬の間隙をついて、△6九飛と攻めに転じました。これは詰めろ金取りです。(第13図)

NHK 13

谷川九段は▲5八銀と先手を取って受けましたが、この手が敗着になりました。代えて、▲4八金と上がり、持ち駒の銀を温存しなければいけませんでした。

後手はどの道、△6六飛成と金を回収するので、ここで先手を取る必要性は乏しかったのです。

▲5八銀に△6六飛成▲7二歩成△同金と進みましたが、後手は竜が攻防に光る手厚い駒になり、阿部七段は虎口を脱しました。(第14図)

NHK 14

もし、先ほど▲4八金と上がり、銀を温存しておけばここで▲6三歩成△同金▲6五香から後手玉を寄せ切る力が残っていたのですが、第14図でそれを実行すると△2五角の合駒請求があり、先手が勝つのは難しいようです。(C図)

NHK C

本譜は第14図から▲6五金と打ち、寄せの足場を作りに行きましたが、△6五同飛と切ったのが的確な判断で、▲同銀△2七歩成と進んだ第15図の局面は、後手が勝勢になりました。

NHK 15

谷川九段は▲2二飛△6一玉▲7四銀と後手玉に迫りますが、これは形作りです。阿部七段は読み切っていたようで、△3七と▲同桂△3六銀▲同玉△2六金で即詰みに討ち取りました。(第16図)

NHK 16

第16図から▲同玉は△4六竜以下詰み。▲4七玉にも△4六竜▲同玉△5五角以下詰みです。

本局は阿部七段が工夫の駒組みから主導権を握りましたが、谷川九段も上手くこらえて、終盤では先手にチャンスが多い将棋でした。谷川九段としては、第11図での逸機が大きかったでしょうか。
△6六飛成で金を外してからは、阿部七段の勝ち筋に入っているようですね。

それでは、また。ご愛読ありがとうございました!

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