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第67回NHK杯1回戦解説記 松尾歩八段VS斎藤慎太郎七段 ~前編~

今週は松尾歩八段と斎藤慎太郎七段の対戦でした。

松尾八段は居飛車党で、攻守のバランスが良い正統派の将棋という印象です。
形に明るく外連味の無い棋風ですので、居飛車党の方はお手本にするには打って付けではないかと思います。

斎藤七段も居飛車党です。攻め将棋だとは思うのですが、それとは裏腹に我慢・辛抱する手を苦にしないタイプの棋士です。
今期、初めてタイトル戦に登場し、現在羽生棋聖に挑戦中です。連敗スタートでしたが、第3局では鮮やかな寄せを決めて1勝を返しました。流れを変えるきっかけになるか、注目しています。

 

本局の棋譜は、こちらのサイトからご覧いただけます。
参考 本局の棋譜NHK杯将棋トーナメント

第67回NHK杯1回戦第15局
2017年7月9日放映

 

先手 松尾  歩  八段
後手 斎藤 慎太郎 七段

 

初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7六歩(青字は本譜の指し手)と進み、横歩取りへ進みました。(第1図)

NHK 1

△3三角戦法に対し、松尾八段は青野流を選択しました。通常、横歩取りの先手番は歩得を主張にして受けに回ることが多いのですが、青野流は自分から先攻を狙う積極的な作戦です。後手は対応を誤ると一気に潰されてしまう変化もあり、序盤から慎重な指し手が求められます。

青野流に対しては様々な対抗策がありますが、斎藤七段は△4二玉▲3七桂△6二銀としっかり玉を固める駒組みを選びます。△4二玉型が奇異に映りますが、ここに玉を上がることで3三と5三の地点を強化している意味があり、青野流に対する有力な駒組みの一つです。

以下、数手進んだ局面が第2図です。

NHK 2

お互いに陣形が整ってきました。後手は次に△7三桂が指せれば駒組みが完成し、最善型になります。先手としては、それを簡単に許したくない印象です。

松尾八段は▲8七歩と打ちました。△7六飛と横歩を取ると▲3三角成~▲8五飛で困ってしまうので△8四飛と引きますが、▲3三角成△同桂▲6六角と追及の手を緩めません。このように、相手が完全体になる前に動いてしまうのは有効な戦術です。(第3図)
(余談ですが「完全体」で画像検索するとセルばっかり出てくるんですね笑)

NHK 3

△7五歩の突き捨ては▲同飛で逆効果なので△8二飛と引くくらいですが、▲2五桂が後続手です。△同桂▲同飛と進むと▲2二角成と▲3四桂を同時に受ける手が難しく、これは先手優勢です。

斎藤七段は△3四歩と指しました。これを▲同飛と取るのは、△2五桂▲2二角成△同金▲3一銀△5二玉▲2二銀成△5五角でいい勝負です。(A図)

NHK A

一見、飛車が成れる先手が優勢のように見えますが、先手は攻め駒が少なく、と金も作れないので(▲2四歩では流石に遅い)後手玉を寄せるのは簡単ではありません。後手は駒得が確定しているので、長引くほど有利になる可能性が高くなります。
個人的にA図の変化は、先手の攻めが切れてしまう不安が大きいのであまり指す気がしない変化です。

△3四歩に対して、松尾八段は▲3三桂成△同銀▲2五飛△2四歩▲2九飛と穏やかな順を選びました。(第4図)

NHK 4

A図とは対極の展開ですね。攻めが止まってしまい面白くないようですが、先手には、①歩得。
②相手を歩切れにさせた。③攻めの桂を捌いた。という3つの主張があります。

対する後手の主張は自分だけ角を持ち駒にしている点です。後手はこの後、陣形を盛り上げて、先手の角を圧迫する展開に持ち込めれば理想的です。

第4図から△4四歩▲4八金△5四歩▲6八銀△5三銀▲7七桂と互いに陣形を整備し、来るべき戦いに備えます。(第5図)

NHK 5

第5図では将来の▲6五桂を防ぐために、△6四歩と突く手が一番やってみたい手です。恐らく斎藤七段もそう指したかったと思うのですが、▲2五歩が厄介な仕掛けです。△同歩▲同飛△2四歩には▲8五飛とぶつける手が狙いです。飛車交換になると、次に▲8二飛が厳しいので先手が優勢です。(B図)

NHK B

本譜は△3一玉と引きました。これは、飛車交換になった後の▲8二飛から遠ざかる意図です。しかし、▲3五歩が急所の突き捨てでした。△同歩には▲6五桂△6四銀▲3四歩△同銀▲4四角で後手陣は収拾困難です。斎藤七段は△6四歩と突いて▲6五桂を防ぎましたが、どうも受けが後手後手になっている印象です。

第5図では△5二金と上がる手が有力でした。飛車交換になった後の▲8二飛を緩和していますし、▲3五歩には△4三金右で対応することができます。

△6四歩に対して松尾八段は▲3四歩△同銀▲2四飛と後手の歩を削って着実にポイントを稼いでいきます。以下△3五銀▲3四飛と飛車を引かずに攻めを続けます。(第6図)

NHK 6

飛車が狭い場所に移動するので不安を感じますが、この手は次
に▲3五飛や▲4三桂、▲3三歩といった複数の狙いを秘めています。後手は全ての攻め筋を同時に受けることはできません。

斎藤七段はこのピンチを凌ぐことができるのでしょうか?

では続きは後編で。ご愛読ありがとうございました!

 

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