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今週の妙手! ベスト3(2019年12月第1週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

 

皆様も常日頃から感じていることかとは存じますが、今日は極めて高度な情報化社会です。そして、将棋界もその影響を多分に受け、大きく環境が変わりました。

一つ例を挙げると、私が幼いころはプロ棋士の対局を定期的に見るとすれば、NHK杯くらいでした。しかし、現在では様々な媒体から対局の模様を観戦できるようになり、とても充実した環境になったと言えるでしょう。その結果、「観る将」というワードも生まれましたね。

 

ただ、浴びるように新しい対局を見れるようになったことで、過去の将棋を振り返る機会が減ったような印象を受けるのは私だけでしょうか。完美・絶賛・驚嘆・感動。観る者にそういった情念を与えるような手が、数多の情報の中に埋もれてしまっていくのは、非常にもったいないことだと感じずにはいられません。

 

そこで、筆者の独断と偏見ではありますが、直近一週間の間に指された将棋の中から「これは凄い!」と唸らされた一手を三つピックアップして、それを解説していこうかと思います。少し前置きが長くなりましたが、お付き合いしてくださると嬉しいです。それでは、さっそく見ていきましょう!

 

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2019.12/1~12/7)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。相掛かりの力戦形から[後手の攻めVS先手の受け]という構図になり、このような局面を迎えました。(第1図)

 

妙手

2019.12.5 第79期順位戦B級1組9回戦 ▲山崎隆之八段VS△千田翔太七段戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)

巧みに攻めを繋げた後手が優位を掴んでいますが、ここで緩んだ手を指すと▲7四歩や▲2三歩といった反撃を許してしまいます。

 

とりあえず、持ち駒の飛車をどこかに打ってみたくはありますが、千田七段はよりスマートな手を用意していました。

千田七段が指した手は、△4五桂です!

 

妙手

軽やかに桂を跳躍したのが妙手でした!

 


妙手

飛車を設置する前に、桂を跳ねたのがキレのある攻めでした。これを指すことにより、2二の角と7三の桂が攻めに参加する態勢になったことが後手の自慢です。

先手は▲4五同歩と取りたいのは山々ですが、△6五桂▲同歩△7七角成▲同玉△7九飛という猛攻を浴びてしまい、KOされてしまいます。(A図)

 

妙手

そういった事情があるので、本譜は▲8二飛△4一玉▲5六銀と応対しましたが、△2八飛▲5八金にやはり△6五桂と飛び跳ねる手が痛烈な一撃になりました。(第2図)

 

千田七段の妙手

▲同歩は△7七角成で崩壊してしまいます。

本譜は▲同銀でしたが、△4七銀で金を攻める手が厳しいですね。以下、▲5九銀△5八銀不成▲同銀△7八金と進み、終局となりました。

 

△4五桂と跳ねることで、後手は全ての攻め駒が起動していることが分かります。その結果、破壊力満点の寄せを展開することが出来ました。相手の歩頭にピョンピョンと桂を捨てていくのはとても爽快で、胸のすく手順でしたね。

 


第2位

 

次にご覧いただきたいのは、こちらの将棋です。相矢倉から脇システムに組み合う形になり、このような局面を迎えました。(第3図)

 

今週の妙手
2019.12.1 第5期叡王戦本戦 ▲豊島将之名人VS△千田翔太七段戦から抜粋。(棋譜はこちら)

ご覧の通り、先手玉には危険が迫っていますね。そして、相手は攻め駒を四枚以上、保有しているので、受け切りは望めそうにないところです。

 

そうなると先手はピンチのようですが、次の一手により盤面の景色が一変に変わりました。

豊島名人が指した手は、▲6八角です!

 

豊島名人の妙手

自陣角を放ったのが妙手でした!

 


豊島名人の妙手

6八の地点に角を設置するのが賢明な大局観に基づく一着でした。先手はこれを指すことにより、

・竜の利きを遮断する
・8六の地点を強化する
・後手玉に詰めろを掛ける

といった恩恵を得ることが出来ます。一石三鳥の角打ちで、後手はこれを超える手が見当たりません。

 

豊島名人の妙手

▲6八角は▲1三角成からの詰めろになっているので、後手はまずそれを対処する必要があります。

本譜は△8七香成▲同玉で敵玉を露出させてから△3二銀で受けに回りましたが、そこで▲8三歩が厳しく、先手の勝ち筋に入りました。(第4図)

 

相居飛車の勝ちパターン

△同飛と取ると、▲1三角成から後手玉は詰んでしまいます。(B図)

かと言って、これが取れないようでは先手玉への脅威が和らぐので、寄せが遠のいてしまいます。つまり、後手は良い対応がありません。

 

▲6八角を打ってからは彼我の玉型に著しい差が生まれ、先手は局面の状況を分かりやすくすることが出来ました。明快な勝ちを呼び込む巧みな攻防手でしたね。

 




第1位

 

最後に紹介するのは、こちらの将棋です。この手を見たときは、思わず感嘆の声が出てしまいました。(第5図)

 

本田四段の妙手

2019.12.2 第45期棋王戦挑戦者決定トーナメント ▲本田奎四段VS△広瀬章人竜王戦から抜粋。

後手が△4四香と打ったところ。ここで受けに回るな▲5六馬ですが、△4七香成▲同馬△3八銀で絡みつかれるので嫌らしいですね。

 

本田四段は、そういった凡庸な手は選びませんでした。次の一手で、本局はケリが着きます。

本田四段が指した手は、▲6三馬です!

 

ゼットを活かした妙手

豪快に馬を突貫したのが妙手でした!

 


妙手

先手にとって4五の馬は最強の戦力なので、本来は大切に扱うべき駒のはずです。それを投げ捨てているので非常識な一着なのですが、これが粘りを与えない最短の勝ち方でした。先手玉が瞬間的にゼットに近いので、例外的に成立しているのです。

ここで後手が直線的に攻め合うなら△4七香不成ですが、それには▲8一馬で飛車を取れば問題ありません。先手玉はだだっ広い格好なので、不詰めです。(C図)

 

今週の妙手

なので、△6三同金と応じるのは致し方ありませんが、▲5二角△7二玉▲6三角成△同玉▲7五桂△5四玉▲6五銀△4五玉▲4六桂と進み、後手玉には必死が掛かりました。(第6図)

 

今週の妙手

ご覧の通り、後手玉はがんじがらめで脱出する術がありません。分かっていても▲5六金などの詰めろが防げないですね。もちろん、先手玉は不詰みです。実戦は、ここで終局となりました。

 

▲6三馬とアクセルを踏むことで、先手は大きく勝利を引き寄せることに成功しました。何と言っても、△4四香という手に空を切らせたことが大きかったですね。まさに、終盤は駒の損得より速度といったところです。

 

 

こうして振り返ってみると、一手で複数の意味を兼ねている手や、相手が直前に指した手を無効化するような手は価値が高いことが分かりますね。そういった手を探すことが、妙手の発見につながるのかもしれません。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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