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今週の妙手! ベスト3(2020年1月第1週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。ただ、今回の期間は年末年始ということもあり、プロの対局は殆ど行われませんでした。

 

そこで、今回は趣向を変えて、将棋倶楽部24に常駐している将棋ソフトーー「Hefeweizen」の対局から妙手を取り上げさせて頂きました。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
妙手今週の妙手! ベスト3(2019年12月第4週)

 

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2019.12/29~2020.1/4)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。序盤から大駒を交換し合う手将棋になり、このような局面になりました。(第1図)

 

2020.1.2 ▲HefeweizenVS△M氏戦から抜粋。(棋譜はこちら)

後手が持ち駒の飛を8六に打ったところです。

この手は次に△8四飛や△8七歩といった狙いがあり、先手はそれらを実現されてしまうと、形勢を損ねてしまいます。とはいえ、それを直接的に防ぐ手段も難しいですね。

 

そうなると先手は困っているようですが、Hefeweizenは見事な答えを用意していました。

Hefeweizenが指した手は、▲2三角成です!

 

いきなり角を突っ込んだのが妙手でした!

 


とんでもない暴走に見えますが、これが鋭敏な一着でした。

後手が直前に指した△8六飛は、次に△8四飛を指すことで初めて価値が生まれる手です。相手が二手一組の初手を指した瞬間にアクションを起こすのは将棋のセオリーであり、この手が成立するのはそういった前提に基づいています。

 

△同金と応じるのは当然ですが、▲3一飛で飛車を敵陣に打ち込めました。後手は△4一角▲2一飛成△2二銀で竜を捕獲しようと努力しますが、▲2四桂が包囲網から脱出する桂打ちになります。(第2図)

 

ここに桂を打っておけば、△1二角や△3二角打を阻止できますね。△8四飛を指される前に行動を起こしたメリットが、如実に表れていることが分かります。

後手は▲3二桂成を喫するとゲームオーバーなので△4二玉と受けましたが、それでも▲3二桂成が好手です。以下、△同角▲8一竜△7一金▲9一竜と進み、先手は切れ筋の懸念をクリアすることが出来ました。(第3図)

 

次は▲8三桂△7二金▲6一竜という着実な攻めがあります。△8一歩で底歩を打たれても▲8八香が痛打ですね。後手は適切な受けが見当たらず、収拾がつきません。以降は先手が危なげなく勝ち切っています。

 

第1図の局面は先手が忙しそうに見えましたが、▲2三角成を決行することで、問題を解決することが出来ました。局面の状況をドラスティックに変えた妙手でしたね。

 


第2位

 

次にご覧いただきたいのは、こちらの将棋です。[先手中飛車VS後手超速]という流行りの将棋になり、このような局面を迎えました。(第4図)

 


2019.12.30 ▲HefeweizenVS△K氏戦から抜粋。(棋譜はこちら)

まだまだ駒組みの途中であり、お互いにここからの構想が大事な局面です。

さて。先手は3八に金を上がっていることが目を引きます。これは木村美濃を作ることを想定したものだとばかり思っていましたが、こういった手法も視野に入れていたのですね。全く思いつきませんでした。

Hefeweizenが指した手は、▲4七金です!

 

力強く金を上がったのが妙案でした!

 


振り飛車で右側の金をこの場所に配置するのは、なかなかお目に掛かれませんね。見た目は奇天烈ですが、これが柔らかい着想なのです。

この手の意図は、△7三桂に対して▲5六金と上がり、後手の動きを封じてしまうことにあります。(第5図)

 

先手の陣形は異形ですが、△6五桂さえ阻止してしまえば仕掛けられる心配はありません。

ちなみに、こちらの記事では5六に銀を繰り出す作戦を解説しています。根幹となる考え方は、この将棋と同一ですね。

参考 最新戦法の事情【豪華版】(2019年9月~10月 振り飛車編)

 

ただ、本局の場合は自陣に銀を残しているので、美濃囲いを作る余地を残していることが自慢です。実際、Hefeweizenは数手後にそれを完成させました。

 

Hefeweizen

こうなると、先手は金を前線に出した弱点を上手くリカバリーした格好と言えます。さらに銀冠への発展も望めそうですね。第6図は、囲いの進展性に差があるので、振り飛車上々の組み上がりと言えるでしょう。

 

人間はどうしても囲いの金を定位置に置く習性を持っているので、こういった構想は浮かびにくいものです。固定観念に囚われない、将棋ソフトらしい妙手でした。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。これは本当に綺麗な攻め方でした。(第7図)

 

Hefeweizen

2019.12.29 ▲HefeweizenVS△S氏戦から抜粋。(棋譜はこちら)

6四の地点で角交換が行われたところです

互いに大駒を持っているので、それを敵陣に打ち込み手駒を蓄えるフェーズに入りつつあります。しかし、後手陣は低い構えで隙が少なく、有効な打ち場所は見当たりません。

 

そうなると先手は▲8三歩成と指すくらいに見えますが、Hefeweizenの発想はそうではありませんでした。

Hefeweizenが指した手は、▲7三歩です!

 

Hefeweizen

タダの場所にふわっと歩を設置したのが妙手でした!

 


Hefeweizen

7二には相手の駒が利いているので、何だか手緩いように感じるかもしれません。けれども、これが後々のことまで見通した攻め方なのです。

ちなみに、この手に代えて▲8三歩成とした場合は、△8七飛と打たれたときが面倒です。(A図)

 

Hefeweizen

と金を失う訳にはいきませんが、▲8二飛は△7一金で利敵行為ですね。

先手はどこにもと金が移動できないので、▲8三歩成を優先的に指しても上手くいかないのです。

 

それを踏まえると、先手は▲8三歩成を保留しながら敵陣を攻める手段を見出す必要があり、その最良の手段が▲7三歩になるのです。

 

Hefeweizen

今度は△8七飛と打たれても、▲8三角△5二金▲7二歩成という要領でスムーズに攻めを続けることが可能です。これは8三にスペースを作っておいた工夫が活きていますね。

 

本譜は△7六歩▲同銀△7九飛で攻め合いを挑みましたが、▲8三歩成△5三銀▲7二歩成△5二金▲8二飛でと金を量産しつつ、敵玉へ寄せる準備を進めます。(第8図)

 

Hefeweizen

以下、△7七飛成▲7三と引△4二金右▲6三と△4四銀▲5二と△同金▲同飛成△7六竜と進みます。先手は金を剥せましたが、その間に銀桂を回収されています。つまり、このままでは満足の行く結果ではありませんね。(途中図)

 

Hefeweizen

とはいえ、後手の銀冠はまだ頑丈なので、決定的なダメージを与えられるような段階ではないように見えます。しかし、▲4一金が素朴な金打ち。この手を見据えていたからこそ、Hefeweizenは直線的な斬り合いに乗っていたのです。(第8図)

 

Hefeweizen

なお、同じようでも▲4二金では△3三銀と引かれて粘りを許します。3一の地点をターゲットにするのが、この局面での急所なのです。

次の狙いは、もちろん▲3一角ですね。「敵の打ちたいところへ打て」という格言はありますが、

(1)△3一桂は、▲4二角。
(2)△3一銀は、▲同金△同玉▲4一銀。(B図)

いずれも寄り筋です。

Hefeweizen

本譜は△3三銀で玉を固めましたが、▲3一角△1二玉▲1五歩「端玉には端歩」という格言に倣った突き出しで、攻めが筋に入りました。以降も先手は強気に畳み掛けて制勝しています。

 

第7図の局面は、どこから攻めの糸口を掴むのか難しそうな場面でしたね。しかしながら▲7三歩と打つことにより、先手は流麗にと金を活用できる下地が出来ました。その結果、▲4一金という決め手に結び付いたのです。一つの妙手がどんどん波及して、大きな戦果を生むという典型的なケースでした。まさに優美な手順でしたね。かくありたいものです。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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