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今週の妙手! ベスト3(2020年1月第2週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2020年1月第1週)

 

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2020.1/5~1/11)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。相矢倉の力戦型から先手が果敢に仕掛けて行き、このような局面になりました。(第1図)

 

妙手

2020.1.9 第5期叡王戦本戦 ▲渡辺明三冠VS△広瀬章人八段戦から抜粋。(棋譜はこちら)

3二の地点で駒交換が行われたところです。

先手は駒得の状態で攻勢に出ており、好調に事を進めている様子が窺えますね。とはいえ、持ち歩が枯渇していることや、端でぶつかっている歩が気になるところです。

 

つまり、優勢ではあるが、まだ煩わしい部分もあるという状況なのですが、次の一手により先手は勝利を大きく引き寄せることに成功しました。

渡辺三冠が指した手は、▲3三角です!

 

妙手

強引に角を放り込むのが妙手でした!

 


妙手

この手に代えて▲9五歩と受けに回る手も考えられましたが、それだと後手に反撃のターンを与えてしまいかねません。出来れば自玉を顧みずに攻め倒してしまうことが先手の理想であり、それを実現するための具体案が▲3三角になるのです。

 

 

これに対して、平凡な応手は△3三同桂ですが、▲同桂不成がトリッキーな攻め方ですね。これは先手の攻めが加速しています。(A図)

 

妙手

そういった事情があるので本譜は△2二銀と受けましたが、▲同角成△同金▲3三銀△3九飛▲2二銀不成△同飛▲3三金が最短の寄せで、先手の一手勝ちが明白となりました。(第2図)

 

妙手

3三の地点に連続して駒を打つのが的確な攻めになります。先手はA図の変化のように4筋の攻め駒を敵玉に近づけたいので、後手に△3三同Xと指させるような手を選んでおけば良いのです。

 

妙手

ここで後手は△9二飛と逃げる手が利けば良いのですが、それだと自玉がゼットではなくなるので、▲9五歩と手を戻されたときに寄せに専念することが出来ません。かと言って、飛車が逃げられないようでは一手一手の寄り筋です。以降は渡辺三冠が危なげなく勝ち切りました。

 

▲3三角を決行することで、先手は3三の地点に駒を打ち込み、4筋の攻め駒を前進させるという分かりやすい指針を手にすることが出来ました。その結果、一手勝ちを手中に収めることに成功しましたね。暗雲を切り裂く妙手だったと思います。

 


第2位

 

次にご覧いただきたいのは、こちらの将棋です。相掛かりから互いに中住まいを作る流行りの将棋になり、このような局面を迎えました。(第4図)

 

妙手

2020.1.10 第61期王位戦予選 ▲本田奎五段VS△宮田敦史七段戦から抜粋。

先手は一歩損していますが、相手の飛車を圧迫していることが主張です。ただ、悠長な真似をしていると後手に態勢を立て直されてしまうので、急がなければいけない局面でもあります。

 

そうなると、先手は5五の飛に狙いを定めることになりそうですが、本田五段は思わぬところに手を伸ばしました。これは目敏い一着でしたね。

本田五段が指した手は、▲8七角です!

 

妙手

自陣角を放って飛車にプレッシャーを掛けたのが妙手でした!

 


妙手

相居飛車でこの場所に角を打つのは、なかなかお目にかかれないですね。けれども、これが特殊な配置の性質を上手く利用した一着でした。

ご覧のように、この将棋は後手だけ端歩を一つずつ突いているという少し変わった状況にあります。それゆえ、後手は飛車の可動域が少なくなっているのですね。そういった背景があるので、▲8七角が効果的な一手になっています。

 

ちなみに、第3図から▲5六銀△5四飛▲6五銀△4四飛▲5五角という手順を踏めば後手の飛車は詰んでいますが、△3五歩という反撃を与えるので芳しくありません。4七の銀は攻めに使う駒ではないのです。(B図)

 

妙手

▲8七角という方法で後手の飛車を捕獲にし行けば、先手は銀を繰り出す必要がありません。それはすなわち、自陣が安定した状態で5五の飛を召し取れるということを意味します。この一手により、後手は困ってしまいました。

 

本譜は△5四角と打って先手の角を消しに行きましたが、構わず▲5六歩△8七角成▲5五歩が強気な応対で、先手の優位は確固たるものになりました。(第4図)

 

後手は△7六角と打って食い下がりますが、▲6八玉が冷静な応手で先手陣はびくともしません。以下、△7七馬▲同玉△7五歩▲7八銀と進んだ局面は、後手の攻めが切れていますね。(第5図)

 

先手は無条件で飛金交換の戦果を上げることに成功しました。▲4七銀型を維持しているメリットが遺憾なく発揮されていることが良く分かります。

先手はこのあと、▲8三角や▲3五歩、▲5九飛など攻める手段が豊富にあり、全く手に困らない状況です。以降はいくばくもなく本田五段が勝利を収めました。

 

狭い飛車を圧迫して優位を築く展開はままありますが、角を使ってそれを実現したのは珍しいパターンでしたね。本田五段の機敏な一面が垣間見えた妙手でした。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。これはキレのある一着でした。(第6図)

 

2020.1.7 第33期竜王戦1組ランキング戦 ▲屋敷伸之九段VS△久保利明九段戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)

後手は角銀交換の駒得ではありますが、飛車の働きには小さくない差が着いています。同時に、4五の桂が不安定な駒であることも心配ですね。

 

難しい情勢に立たされているように見えますが、捌きのアーティストは美しい旋律を奏でてこの局面を打破しました。

久保九段が指した手は、△1四角です!

 

端に角を打って、先手の竜を目標にしたのが妙手でした!

 


自ら狭い場所へ角を手放したようですが、これが大捌きの礎となる一着です。なお、3三の飛車取りを放置していますが、▲3三竜には△6六角の王手竜取りがあるのでタダ取りさせることはありません。

 

この△1四角は、放っておくと△2三飛とぶつける手を狙っています。すなわち、▲4五銀には△2三飛▲同竜△同角で後手の調子が良いですね。(C図)

つまり、後手は△1四角と打つことで、3三の飛の可動域を増やすことが出来ているのです。

 

先手は△2三飛を防ぐ必要があるので、本譜は▲2四歩と指しましたが、それを見て△3六歩と合わせたのが手順の妙でした。(第7図)

 

これを▲3六同歩だと、△同飛▲3七歩△2六飛という手順で後手は飛車が捌けますね。[△1四角⇔▲2四歩]という交換が入ったことにより、最終手の△2六飛が指せるようになっているのです。

とは言え、△3七歩成→△4七とは相当に速い攻めであり、先手はこれを無視することは出来ません。

 

本譜は仕方なく▲3三竜と指しましたが、△6六角で王手竜取りが実現しました。以下、▲7七桂△3三角▲4五銀△2八飛▲3一飛△2四角と進みましたが、こうなると後手は全ての駒が爽快に捌けた格好と言えます。(第8図)

 

妙手

第6図と比較してみると、後手は駒の働きが格段に良くなっていることが分かりますね。桂は失ってしまいましたが、駒損の回復は約束されていますし、4五の銀は働きが今一つなので案ずることはないでしょう。

 

振り返ってみると、後手は△1四角△3六歩のコンボにより、飛車の働きが抜群に向上しています。これらの手を指すことで、厄介な敵であったはずの竜をターゲットに変化させていることが自慢ですね。まさに捌きのアーティストの面目躍如といった手順でした。こういった指し回しが出来るようになりたいものですね。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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