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今週の妙手! ベスト3(2020年1月第3週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2020年1月第2週)

 

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2020.1/12~1/18)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。[矢倉VS△7三銀急戦]という戦型から後手が攻勢に出て、このような局面になりました。(第1図)

 

今週の妙手

2020.1.18 第13回朝日杯将棋オープン戦本戦 ▲屋敷伸之九段VS△千田翔太七段戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)

7七の地点で角交換が行われたところです。

この局面は先手陣の配置が悪く、後手は相手の立ち遅れを上手く咎めることが出来ています。しかし、7五の銀が当たりになっていることや、▲8三角から馬を引きつけられる手が残っているので、まだ簡単ではありません。

 

そういった煩わしさを、千田七段は意図もたやすく解決してしまいました。

千田七段が指した手は、△6六銀打です!

 

今週の妙手

銀を重ねて打つのが妙手でした!

 


今週の妙手

6六には銀が進める場所なので、そこに持ち駒の銀を投資するのは効率が悪く見えるかもしれません。しかし、これが先手の粘りを許さない最適な攻め方なのです。

ちなみに、第1図から△6六銀と出ると、▲6七歩△7七銀成▲同金…という進行が予想されます。これも後手が攻め込めているので悪くはありませんが、6七の地点に歩を置かれることで、先手陣の安定感が増してしまうことが気に食わないですね。

 

ところが、銀を被せて迫ると、後手はもっと良い条件で攻めることが出来るのです。

今週の妙手

先手は次に△7六歩を打たれると崩壊します。また、▲7六歩も△同銀と取られて相手の駒を呼び込むだけ。

そうなると▲6七歩と打つのは必然ですが、構わず△7六歩と踏み込むのが巧みな攻めですね。(途中図)

 

今週の妙手

これは▲6六歩と銀を取るしかありませんが、じっと△同銀と取り、圧力を加えていきます。これで後手は7七の地点から集中砲火を浴びせる算段がつきました。(第2図)

 

後手は瞬間的に銀損していますが、駒損を回復できることは約束されているので問題ありません。

先手は▲6八銀と受けても、△7七歩成▲同銀△同銀成▲同金△7六歩と殺到されて支えきれないでしょう。今度は6七に歩が設置できていないので、守備力が著しく落ちているのです。

 

後手は△6六銀打を指すことにより、7五の銀取りを回避しながら、敵陣の修繕を阻止するという何とも味の良い状況を作ることに成功しました。持ち駒の銀を犠牲にして盤上の銀を進軍させたのはテクニカルで、気づきにくい妙手順だったと思います。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、こちらの将棋です。一手損角換わりから互いに早繰り銀に組む将棋になり、以下の局面を迎えました。(第3図)

 

今週の妙手

2020.1.16 第78期順位戦C級1組8回戦 ▲藤井聡太七段VS△小林裕士七段戦から抜粋。

ここで▲4五歩と指せば先手は銀得になりますが、それには△4六香や△3七桂で金を攻められてしまう手があるので、指しにくいところです。加えて、先手は1一の馬の働きが弱いこともネックですね。

 

複数の不安要素がある場面ですが、藤井七段はそれらをかき消す一着を用意していました。

藤井七段が指した手は、▲5七角です!

 

今週の妙手

5七に角を設置したのが妙手でした!

 


今週の妙手

角という駒は、どうしても広い場所や敵陣に打ってみたくなるものなので、▲5七角は浮かびにくい一手です。ところが、これが攻防に働く名角でした。

ここに角を打てば次こそ▲4五歩が指しやすくなりますし、△3七桂と打たれても▲3九金でノーダメージですね。(A図)

つまり、後手は▲5七角を打たれたことで、攻めが繰り出せなくなっているのです。

 

今週の妙手

仕方がないので本譜は△4六香と指して歩切れを解消しましたが、▲5四桂が痛快な跳躍。6六の桂を捨てることで、先手の角はさらに輝きを放ちました。(途中図)

 

今週の妙手

△5四同歩は▲8四角が飛車を取りながらの王手なので、後手は△4九香成を指す余裕がありません。

本譜は△7一玉と逃げましたが、▲4六角△1八竜▲6六馬が絶好の活用で、先手は盤石の態勢を築き上げました。(第4図)

 

妙手

馬を引き付けたことで、先手は全ての問題点を解決できています。後手は主張がなく、非勢は明らかですね。

本譜は△7五歩で飛車取りを受けましたが、▲6四角△同歩▲7五馬で先手の攻めは止まりません。その局面で、終局となりました。

 

▲5七角を境にして、後手は攻め足が止まり、反対に先手は雪崩のごとく後手玉へアタックすることが出来ています。攻防手を放つことで局面の流れを変えるのはよくあるケースですが、この場合は敵陣方面への利きが見えにくいので、虚を突かれますね。▲5七角は、静かなる妙手でした。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。さすがに、この大激闘を取り上げない訳にはいきませんね。(第5図)

 

妙手

2020.1.18 第13回朝日杯将棋オープン戦本戦 ▲深浦康市九段VS△豊島将之竜王・名人戦から抜粋。

後手が入玉していることや、駒が入り組んだ配置になっていることから激戦の様相が見て取れますね。

第5図の状況を簡単に整理すると、

先手玉→詰めろが掛かっている。
後手玉→現状は、まだ詰まない。

となります。

 

妙手

つまり、先手は単純な寄せ合いでは一手負けになので、不利な状況をひっくり返す技が必要な場面なのです。

秒読みの中でこういった手を指せるのは、ただただ感嘆しますね。これは魅せる一手でした。

深浦九段が指した手は、▲3七竜です!

 

妙手

竜を捨てて2二の角の利きを通したのが妙手でした!

 


妙手

突然、竜を捨てたのは意表を突かれますが、これが起死回生の一撃でした。他にも有力そうな手が見えるところだけに、この手のインパクトはかなりのものがありますね。

 

これは△同桂成と取る一手ですが、そこで▲5六金とさらに金も捨ててしまうのが後続手になります。(途中図)

 

妙手

(1)△6八玉は、▲5八飛。
(2)△6七玉は、▲6六角成△7八玉▲7六飛。(B図)

いずれも後手玉は即詰みです。

よって、後手は△5六同玉と応じるよりないですが、▲6六飛△4五玉▲4六銀△5四玉▲5五角成△5三玉▲6四馬△5四玉▲3七銀で、先手は見事なまでに体勢を入れ替えることに成功しました。(第6図)

 

妙手

途中の▲4六銀と打った手により、王手成桂取りを掛けたことが先手の自慢ですね。そして、成桂を払う前に▲5五角成→▲6四馬を利かしたことも、当然ながら抜け目の無いところです。

第6図の局面は、堅牢に守られた先手玉に対し、後手玉は独りぼっちなので大勢が決しています。後手は攻防手を繰り出そうにも、手掛かりが無く、マジックを起こす種がありません。

 

本局は、ここに至るまでにも数々の秘術が繰り出されており、これぞプロの将棋と感じさせられました。そして、▲3七竜という妙手で締めくくったのは、素晴らしいフィナーレでしたね。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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