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今週の妙手! ベスト3(2020年2月第5週)

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2020年2月第4週)

 

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2020.2/23~2/29)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。角換わり腰掛け銀から先手が上手くカウンターを決めて、このような局面になりました。(第1図)

 

妙手 今週

2020.2.25 第33期竜王戦1組出場者決定戦 ▲斎藤慎太郎八段VS△屋敷伸之九段戦から抜粋。

後手が△2八銀不成で飛車を取ったところです。

この局面は先手が桂損ですが、2八の銀の働きが悪いことや、玉の堅さに差があるので先手が優位に立っています。とはいえ、角が当たりになっているので忙しい場面でもありますね。

 

先手はひとまず角を切りそうなものですが、斎藤八段はもっと良い手順を編み出しました。

斎藤八段が指した手は、▲2四歩です!

 

妙手 今週

歩を叩いて拠点を作りにいったのが妙手でした!


 

 

妙手 今週

この手に代えて▲3四角△同金▲4三銀と食い付く手も有力でしたが、こちらのほうがさらに良さを求めており、卒のない手順と言えます。

これに対して△4五銀と角を取ると、▲2三歩成△同玉▲2五飛が王手銀取りなので、後手は痺れてしまいます。4五の銀が取られるようでは、もう粘れないですね。(A図)

したがって、▲2四歩を無視することは不可能です。

 

妙手 今週

そうなると後手は△2四同金と応じることになりますが、▲2五歩ともう一度、金頭に歩を叩きます。△同銀では角取りが解除されるので△3五金は妥当ですが、それから▲3四角△同金▲4三銀と進めるのが先手の描いていたビジョンでした。(第2図)

 

妙手 今週

角を切る前に2筋でひと手間加えたことで、先手は2五の地点に拠点が作れていることが分かります。第1図から単に▲3四角△同金▲4三銀と進めるよりも、はっきり得をしていますね。

 

先手としては、将来の△2九飛が攻防手になってしまう展開が最悪なのですが、この手順を踏むことにより、そのリスクをケアできたことが大きいですね。第2図は攻めに専念できる格好なので、寄せが分かりやすくなりました。以降は、斎藤八段が危なげなく勝ち切っています。

 

▲2四歩から▲2五歩という手順は地味ではありますが、そういった細かい得を積み重ねてリードを広げるのは、プロの技を感じさせますね。丁寧な棋風が持ち味である斎藤八段らしい寄せでした。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、こちらの将棋です。後手の四間飛車に居飛車が端歩突き穴熊で対抗し、以下の局面を迎えました。(第3図)

 

妙手 今週

2020.2.27 第78期順位戦A級9回戦 ▲糸谷哲郎八段VS△久保利明九段戦から抜粋。

後手玉は包囲されていますが、先手は持ち駒が歩しかないので簡単ではない局面です。また、自玉がそこまで安全ではない点も懸念材料と言えます。

 

混沌とした局面ですが、糸谷八段は威風堂々とした一着を放ち、勝利を確固たるものにするのです。

糸谷八段が指した手は、▲6二歩です!

 

妙手 今週

金取りに歩を打ち、やって来いと突きつけたのが妙手でした!


 

 

妙手 今週

これが全てを読み切った一手でした。敵玉の後ろ側に歩を打つので異筋ではあるのですが、最善の攻めなのです。

ちなみに、第3図では▲6五歩で玉頭に着手するほうが本筋であり、これが常識的な攻めではあります。しかしながら、△7四銀▲6四銀成△6二玉が厄介な粘りなので、先手は勝ちきれないのです。(第4図)

 

妙手 今週

▲7四成銀で銀は拾えますが、△7一玉と早逃げされると有効な攻めがありません。「玉は下段に落とせ」という格言がありますが、この場合は美濃囲いが控えているので、下段は安全地帯と言えます。

ゆえに、▲6二歩とあえて裏側から攻める手が正解になるのです。

 

妙手 今週

これに対して△7一金と逃げるのは、▲4八馬△同と▲5二銀不成△同玉▲5三飛△4一玉▲5五飛で先手勝ち。これは金銀のいない方向に玉を落とせるので、寄せが決まっています。(B図)

 

したがって、▲6二歩には△5一金とかわすことになりますが、▲5二歩でさらに追い撃ちを掛けるのがトドメになりました。(第5図)

 

妙手

△4一金は、▲6一歩成△同銀▲8三飛成があります。

また、△7四銀には▲6四銀成△6二玉▲7四成銀で一手一手ですね。今度は美濃の骨格を破壊しているので、下段が安全地帯ではなくなっていることが先手の自慢です。

 

受けが利かないときは攻め合いに転じることが将棋の鉄則ですが、先手は7五の馬が良い働きをしており、一手の余裕がある格好です。本譜は△5七とと迫りましたが、これは詰めろではないので▲5一歩成で糸谷八段の勝ちが決まりました。

 

改めて、▲6二歩と打った局面に戻ります。

種明かしをすると、先手玉には詰めろが掛からない状況だったので、2手スキで迫れば一手勝ちが望めるという局面でした。なので、▲6二歩が間に合うという仕組みなのですね。

 

とはいえ、▲6五歩と打てば手っ取り早く敵玉に詰めろを掛けることが出来ますし、この最終盤で相手に手を渡すのは実戦心理として怖いところです。そういった恐怖や誘惑を振り切って▲6二歩を指せるプレイヤーは、果たしてどれほどいるのでしょうか。これは肝の据わった妙手でしたね。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。これもなかなかに指せない一着でしたね。(第6図)

 

妙手

2020.2.23 第33期竜王戦1組ランキング戦 ▲佐藤天彦九段VS△稲葉陽八段戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)

後手は角銀交換の駒損ですが、8六の角はすぐに取れる格好なので、実質的には駒得している状況と言えます。

 

さて。後手は銀を持っているので、次の一手は当然それだと思われました。しかし、稲葉八段は全く違う場所に手を伸ばしたのです。

稲葉八段が指した手は、△5五歩です!

 

妙手

歩を突き捨てて、自玉の保全を図ったのが妙手でした!


 

 

妙手

じっと5筋の歩を突いたのが、先々を見据えた妙手でした。

なお、普通の発想は△9五銀と打つ手でしょう。何しろ、角がタダで取れるのですから。しかし、▲7八玉△8六銀▲8八歩と辛抱されたときに、どうすれば良いでしょうか。(第7図)

 

妙手

これで後手が悪いという訳ではありませんが、次に▲9一竜と潜られる手が嫌らしいですね。安易に銀を手放してしまうと、防御力が低下してしまうことが気懸かりなのです。

そういった問題点をクリアするのが、この△5五歩になります。

 

妙手

5筋の歩が盤上から消えれば、△5一歩で底歩を打つことが出来ますね。よって、先手はこれを取るという選択肢はあり得ません。

ゆえに、本譜は▲9一竜と指しましたが、後手は△8二銀と叱りつけて自玉の安全を重視します。(途中図)

 

妙手

▲9二竜は、△9七歩成→△9一歩で竜が生け捕られてしまいます。なので、▲1一竜は致し方ないところですが、後手は△5六歩と取り込みます。

次の△5七歩成は許せないので▲5六同金もしょうがない応対ですが、これで後手は5筋の歩を消去することに成功しました。なので、待望の△5一歩が打てるようになっています。(第8図)

 

妙手

「△8二銀」と「△5一歩」という二手が入ったことで、後手玉は見違えるほど頑丈になりました。もはや寄りつく形が全く想像できないですね。特に、5筋にバリケードを築いたことで、先手の竜を無力化させたことが大きいのです。

 

妙手

次は△8六飛▲同玉△6七角が厳しい狙いです。先手は▲4六金と指して両取りの筋を未然に防ぎましたが、△4五桂が豪快な一手で後手の攻めは止まらなくなりました。(第9図)

 

妙手

数が足りていない場所に駒を進めているので暴論のような手ですが、後手玉は無敵状態なので、常識が通用しません。ここで駒を入手すれば△9五銀や△9四桂が痛烈なので、一時的な駒損など物の数ではないのです。この後は、玉の堅さを存分に活かした後手が勝利をもぎ取りました。

 

こうして振り返ってみると、△5五歩と突き捨ててからは、後手が一気に勝ちやすい状況になったことが分かります。

 

妙手

確かに、△9五銀を打てば駒得にはなります。けれども、あの角は働きの悪い駒なので、それを取ったところでリターンは大きくないのです。それよりも、先手の攻めの主軸である2一の竜を封殺するほうが価値が高いと言えるでしょう。

つまり、目先の駒得ではなく、自陣を要塞にするためにあえて△9五銀を打たなかったというロジックなのです。

 

妙手

こういった手を見ると、やはり将棋の終盤は、駒の損得よりもスピードや玉の安全度に重きを置くべきであることを思い知らされますね。理屈では分かっているのですが、実践するのは難しいものです。△5五歩は、終盤戦の性質を的確に見抜いた妙手でした。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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