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今週の妙手! ベスト3(2020年5月第4週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2020年5月第3週)

 

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2020.5/17~5/23)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。後手の一手損角換わりに先手が棒銀で対抗する将棋になり、このような局面になりました。(第1図)

 

妙手 石井

2020.5.21 第46期棋王戦予選 ▲石井健太郎五段VS△渡辺大夢五段戦から抜粋。

後手が△5七飛成で金を取ったところ。

この局面は、後手玉に必至が掛かっています。なので、勝負の行方は先手玉が詰むか否か、その一点に掛かっていますね。

 

先手玉は広いので余裕がありそうですが、実を言うと詰みを逃れる応手は一つしかありません。石井五段は、その一筋の光をしっかり掴み取りました。

石井五段が指した手は、▲7七金です!

 

妙手 石井

竜を取らずに金を合駒したのが妙手でした!


 

 

妙手 石井

これが詰みを免れる応手でした。竜を盤上に残すので危険なようですが、この場合は4九の馬を封じることが最優先事項なのです。

つまり、代えて▲5七同歩と応じると、△8六歩と叩かれて先手玉は捕まってしまいます。(A図)

この変化は4九の馬が8五まで通ってしまうので、先手玉は逆に狭くなってしまうのですね。その展開を避けるために、▲7七金で竜を取らない姿勢を取るのが良いのです。

 

妙手 石井

なお、同じようでも▲7七銀と打つのは、△8六歩▲同玉△8四香▲8五歩△7六金という必殺技があり、先手はトン死することになります。(第2図)

 

腹金

(1)▲同銀は、△5九馬。
(2)▲同玉は、△5八馬▲8七玉△8六香▲9八玉△7六馬▲同銀△6八竜。

いずれも、4九の馬が起動することになり、先手玉は即詰みに討ち取られていますね。やはり、先手はあの馬を働かせてはいけないのです。

 

妙手 石井

そういった諸事情があることから、金合いが最強の受けになります。こうしておけば、△8六歩▲同玉△8一香と迫られても▲8五歩で問題ありません。(第3図)

 

妙手 石井

今度は7七の駒が金なので、△7六金には▲同金で無効です。

本譜は△9五金▲8七玉△8五香と追いすがりましたが、▲9八玉で先手は逃げ切りに成功しました。後手はどこまでいっても5八の歩が邪魔をしていて、馬を使うことが出来ません。

 

妙手 石井

話を整理すると、先手は

・5八の歩を動かさない。
・△5九馬と寄る手を警戒する。

という二つのポイントを押さえることで、詰みを回避することが出来ました。受けの強さに定評のある石井五段の長所が光った妙手でしたね。

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。横歩取りから後手が先攻する構図になり、以下の局面を迎えました。(第4図)

 

飯島 妙手

2020.5.21 第68期王座戦挑戦者決定トーナメント ▲羽生善治九段VS△飯島栄治七段戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)

△7五との王手に、先手が▲5四玉と逃げたところです。

ここで後手は△8五とで馬を取ることが出来ますが、それには▲7二銀成△同玉▲6二飛で自玉が詰んでしまいます。よって、あの馬を取ることが出来ません。(B図)

 

そうなると打つ手が無いようですが、ここで後手は見事な切り返しを用意していました。

飯島七段が指した手は、△6二桂です!

 

妙手 飯島栄治

王手を掛けることで、盤上に味方の駒を増やしたのが妙手でした!


 

 

妙手 飯島栄治

これがピンチを切り抜ける一着でした。6二の地点に駒を置くことで、B図の▲6二飛を封じることが、この手の狙いになります。

さて。先手はこれに対して▲同銀成△同金と進めれば手番は取れますが、その局面は詰めろ馬取りが残ってしまうので先手は勝てないでしょう。

 

妙手 飯島栄治

という訳で▲5三玉と逃げるのは致し方ありませんが、△5二歩▲同玉△5一歩で、さらに王手を続けて先手玉を追い払ったのがクレバーな手順でした。(途中図)

 

妙手 飯島

▲同玉は△2四角成という活用が絶好。これは働きの悪い角を無条件で戦線に復帰させるので、先手は選べません。

よって▲4一玉と逃げるのは妥当ですが、こうなると後手は△8五とで馬を取ることが出来るようになっています。(第5図)

 

妙手 飯島

後手は△6二桂と△5一歩という二つの利かしを入れることで、自玉の脅威を和らげることに成功したことが分かります。首尾よく馬を召し取ったことで、第5図は彼我の戦力の差が甚だしいですね。以降は、飯島七段が危なげなく押し切りました。

 

「王手は追う手」という格言が訓えるように、寄せを目指すときは不用意な王手は禁物です。しかし、自玉を安全にするという目的があるときは、王手は非常に有効な手段になり得ます。なぜなら、王手を掛け続けている間は、連鎖的に盤上へ味方の駒を増やすことが出来るからです。

 

妙手 飯島栄治

この△6二桂も、その法則に則った一着であることが分かります。このテクニックはとても応用力が高いので、ぜひ身に着けて頂きたい技法の一つですね。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。これも勝ち方のお手本と言える妙手でした。(第6図)

 

妙手 鈴木大介

2020.5.18 第70期王将戦一次予選 ▲松尾歩八段VS△鈴木大介九戦から抜粋。
(便宜上先後逆で表示)

先手が▲3三馬と引いたところです。

後手は桂得していますが3四の銀が負担ですし、相手の銀冠も堅いので、まだまだ大変に見えるところではないでしょうか。

 

ところが、後手が次の一手を指すと盤面の景色は大きく変わりました。これは見れば見るほど味の良い一着でしたね。

鈴木九段が指した手は、△8三香です!

 

今週の妙手

8筋に香を設置して、銀冠をロックオンしたのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

これが8三のスペースを利用した妙手でした。この手を指すことで、後手は囲いの性能の差を逆転することが出来ているのです。

 

今週の妙手

先手は馬を引いた以上、▲3四馬△同馬▲同竜と進めるのが自然ですね。駒損を回復できるので嬉しい進行に見えますが、実際はそうではありません。なぜなら、△8五歩▲同歩△8六歩で玉頭にアタックされてしまうからです。(第7図)

 

今週の妙手

先手はこんなド急所に拠点を残す訳にはいかないので、▲8六同銀と取れないと話になりません。けれども、△7四桂▲7五銀△8七歩という要領で攻め立てられると、一手一手の寄り筋ですね。8三の香と1九の竜の連繋が素晴らしく、後手の攻めが凄まじい威力になっていることが分かります。

 

今週の妙手

このように、先手は△8五歩が直撃すると、銀冠が一瞬にして崩壊してしまいます。

なので、粘るとすれば▲7七桂になるのですが、これには△6二金寄で力をためておきましょう。▲3四馬△同馬▲同竜には、やはり△8五歩が厳しい一撃になります。(第8図)

 

妙手 鈴木大介

▲同歩には△8六歩▲同銀△8七歩が痛烈ですし、▲同桂なら△8四歩で良いでしょう。後手は前もって金を寄っておいたので、▲7三桂成とダイブされても囲いが傷みません。これも攻めが止まらないので後手優勢ですね。

 

今週の妙手

このように、後手は△8三香を指すことで、8筋の制空権を掌握することが出来ています。松尾八段は打つ手なしと見て、ここで潔く駒を投じました。まさに、先手玉の死命を刺す槍でしたね。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

 

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