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今週の妙手! ベスト3(2020年5月第5週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2020年5月第4週)

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2020.5/24~5/30)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。後手の三間飛車に先手が持久戦で対抗する将棋になり、このような局面になりました。(第1図)

 

妙手 捨て駒
2020.5.29 第92期ヒューリック杯棋聖戦一次予選 ▲伊奈祐介七段VS△里見香奈女流四冠戦から抜粋。

後手は6一の金が当たりになっていますが、現状では一手の余裕があります。なので、先手玉に詰めろを掛けた訳ですね。

 

つまり、直線的な攻め合いでは後手に軍配が上がります。ゆえに、先手は何かしらの受けが必要なのですが、伊奈七段の受けは平凡なものではありませんでした。

伊奈七段が指した手は、▲5七銀です!

 

妙手 捨て駒

あえて相手の銀が利いている場所に銀を打ったのが妙手でした!


 

 

妙手 捨て駒

これが面白い受け方でした。7九の地点をケアしていないので危ういようですが、6六の飛に働きかけることで、後手の指し手に制約を与えている意味があります。

 

妙手 捨て駒

なお、この手に代えて▲7八金と受けるほうが自然ではありますが、それには△7九銀不成▲同金△6八銀と攻めてくるでしょう。先手は▲7八金打と受けるのが妥当ですが、△7九銀不成▲同金△5一金寄と応じられる手が面倒なのです。(第2図)

 

妙手 捨て駒

先手の持ち駒から金を全て使わせてから受けに回るのが巧みな粘りです。こうすれば、後手は自玉が一気に仕留められることはありません。これは先の長い戦いですね。

ところが、▲5七銀と打てば、先手はそういった煩わしさを振り切ることが出来るのです。

 

妙手 捨て駒

さて。後手は5七の銀を取ってしまうと詰めろが途絶えてしまうので、▲6一歩成で立場が逆転していまいます。

したがって、本譜は△7九銀不成▲同玉△6七飛成と攻めたのですが、▲6八金が頑丈な受けで、後手は飛車取りを解除させてもらえません。以下、△5一金寄は懸命の抵抗ですが、▲6三桂が胸のすく一打になりました。(第3図)

 

これは▲7一角からの詰めろになっているので、後手は竜を取る余裕がありません。しかし、(1)△同金には▲5一竜。(2)△同銀には▲6一歩成という攻めがあり、後手はどのように応じても被害を被ってしまいます。これは先手の技が綺麗に決まった格好ですね。

 

この手が成立した要因は、先手が持ち駒に金を残していたことに他なりません。ここまで進んでみると、第2図よりも明らかにこちらのほうが優っていることが分かります。

 

妙手 捨て駒

つまり、この▲5七銀は、後手の飛車を催促すると同時に、持ち駒の金をキープする役割も兼ねていたという訳なのですね。まさにプロの芸とも言える妙手でした。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。相掛かりから先手が右玉に構える作戦を採り、以下の局面を迎えました。(第4図)

 

妙手 増田康宏

2020.5.28 第92期ヒューリック杯棋聖戦一次予選 ▲増田康宏六段VS△遠山雄亮六段戦から抜粋。

後手が3一にいた角を、△5三角と動かしたところです。

先手はこれ以上、自陣を発展できないので、そろそろ仕掛けを考えたい局面です。ただ、その具体案がなかなか見えてこないですね。

 

しかしながら、増田六段は思わぬところから戦端を開き、優位を確固たるものにしたのです。

増田六段が指した手は、▲4五歩です!

 

妙手 増田康宏

強引に角道を通しに行ったのが妙手でした!


 

 

妙手 増田康宏

自分の玉頭の歩を捨てるので、かなり勇気のいる選択ですが、これが決断の良い仕掛けでした。

後手はもちろん、△同歩と応じますが、そこで▲2二歩と垂れ歩を放つのが期待の一着になります。(途中図)

 

妙手 増田康宏

これを△同金だと▲4五桂と跳ねる手が絶好ですね。

なので、後手がと金作りを防ぐなら△3一玉になるのですが、それには▲3三角成△同金▲4五桂という強襲があり、これも先手のパンチがヒットしているでしょう。(A図)

この変化は、[▲2二歩⇔△3一玉]というやり取りによって、後手の玉を危険地帯へと誘き寄せたことが大きいですね。

 

妙手 増田康宏

こういった背景があるので、後手は2二の歩を除去することが出来ません。

よって、本譜は△7五歩▲6七銀△4四銀と陣形を盛り上げたのですが、▲2一歩成で労せずと金の製造に成功したので、先手がはっきりと優位に立ちました。(第5図)

 

妙手 増田康宏

先手は4筋にキズを抱えたものの、それ以上に香得を確定させた利益のほうが大きいので、あまり気になりません。

そして先手は1一の香を取ると、▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲1四飛という手順で飛車を成り込む攻めが生じることも心強いですね。実戦も、その攻め筋を実現させた先手が快勝しました。

 

妙手 増田康宏

こうして振り返ってみると、先手の▲4五歩は、すこぶる機敏な攻めだったことが分かります。

自玉の近くで戦いを起こすのはセオリーに反しているところはありますが、この場合はそれ以上に6六の角の働きを高めることが急所だったという訳ですね。増田六段の正確な大局観が光った妙手でした。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。これは、先手の寄せが見事な将棋でした。(第6図)

 

妙手 村田

2020.5.29 第92期ヒューリック杯棋聖戦一次予選 ▲村田顕弘六段VS△増田裕司六段戦から抜粋。

後手が△6八馬で飛車を取ったところ。

先手の玉は独りぼっちですが、後手玉は矢倉の堅陣に収まっています。終盤戦において玉の堅さは重要な要素であり、この局面は先手非勢に見えるところかもしれません。

 

ところが、ここから先手は一気呵成の寄せを見せて、あっという間に後手を抜き去ってしまったのです。

村田六段が指した手は、▲4四馬です!

 

妙手 村田

豪快に馬を捨てて、攻めを加速したのが妙手でした!


 

 

妙手 村田

まさに鮮烈な一着ですね。この手薄な玉型でさらに角を渡すのは無謀なようですが、これが自玉の安全度を見切った踏み込みでした。

 

妙手 村田

後手としては、△4四同銀で良ければ話は早いところでしょう。しかし、▲3四桂△3三玉▲4五桂で桂を乱舞されると、後手玉はいきなり詰んでしまうのです。(第7図)

 

今週の妙手

(1)△3四玉は、▲3五銀△同銀▲同歩△同玉▲3六銀から物量にモノを言わせれば、後手玉は捕まります。

(2)△同銀には、▲4四銀△同玉▲3五銀△5三玉▲7三飛と追えば、長手数ながら詰んでいますね。(B図)

このように、後手は玉を3筋に逃がしても、4四の銀を動かされてしまうと仕留められてしまうのです。

 

妙手 村田

また、後手は△4四同銀▲3四桂のときに△3三玉ではなく、△1二玉と逃げる手もありますが、▲2二金と放り込まれたときに良い対応がありません。(第8図)

 

妙手 村田

△同金なら▲同桂成△同玉▲3四桂と進めます。これは上記の変化とほぼ同一なので、やはり後手玉は詰みですね。

第8図から△1三玉とかわせば詰みはありませんが、▲1一金で詰めろが続くので一手一手の寄りでしょう。現状、先手玉に詰みはないので、必ずしも即詰みに討ち取る必要はないのです。

 

改めて、本譜に戻ります。

妙手 村田

このように、後手は単純に馬を取るようでは勝てないことが分かりました。

そこで、実戦は△5八飛で王手を掛けました。これは合駒を使わせることで、先述の詰み筋を防ぐ狙いです。

しかし、先手もその狙いを看破して、▲2七玉とかわしました。これも強気な応手でしたね。(途中図)

 

妙手 村田

さて。実を言うと、後手玉はまだ詰めろではありません。なので、ここでは△5九馬と攻め合いを挑む手も考えられます。けれども、それには▲3四桂と跳ねる手が絶好の攻防手になるので、先手は競り勝つことができるのです。(C図)

先手はこのカウンターを見越しているからこそ、▲2七玉と上がる手が選べたのですね。

 

妙手 村田

どうも後手は、攻め合いでは勝機がありません。残された手段の中では、△4四銀▲3四桂△1三玉が最強の抵抗でしょう。しかし、先手には▲1五香という必殺技があるので、これも勝利を手繰り寄せることが出来るのです。(第9図)

 

妙手

後手は△4九角▲1七玉で1九の香を陰にしてから△1五歩と戻すくらいですが、▲2二銀△同金▲1四銀と畳み掛ければ、後手玉を即詰みに討ち取ることができます。(D図)

しかし、1五の香が取れないとなると、後手は受けが利かないですね。

 

妙手 村田話を整理すると、後手は▲2七玉と逃げられたこの局面で、手段に窮しているのです。

本譜は△3一玉と引きましたが、やはり▲3四桂が厳しいですね。この後は、程なく先手が押し切りました。

 

さて。これらの解説の中で、「▲3四桂」という符号が繰り返し出てきました。先手はこの手を実行できると、後手玉への寄せが見えてくると同時に、2六の地点に逃げ場が作れます。非常に価値の高い一手であることが読み取れるでしょう。

つまり、先手はこの「▲3四桂」を実現できれば莫大なリターンを得ることが出来るので、そのための犠牲を惜しんでいる場合ではないのです。ゆえに、▲4四馬という豪快な捨て駒が成立したという仕組みなのですね。

 

妙手 村田

それにしても、これだけ玉の堅さに差がある状態にも関わらず、馬引きの一発で安全度を引っくり返せるのは見ていて痛快ですね。こういった手を指して勝利を収めたいものです。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

 

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