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今週の妙手! ベスト3(2020年9月第2週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2020年9月第1週)

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2020.9/6~9/12)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。角換わり腰掛け銀の最新型から後手が先攻する展開になり、このような局面を迎えました。(第1図)

 

妙手 藤井聡太

2020.9.12 第79期順位戦B級2組4回戦 ▲谷川浩司九段VS△藤井聡太二冠戦から抜粋。(棋譜はこちら)(便宜上先後逆で表示)

この局面は後手が桂得であり、玉の安全度や駒の効率でも旗色が良いので、優位を築くことに成功しています。

そういった状況なので、後手は一息ついても悪くはないのですが、藤井二冠は最短の勝ちを目指しました。

藤井二冠が指した手は、△3九銀です!

今週の妙手

銀取りに怯まず、果敢に攻め掛かったのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

これが先手に決定的なダメージを与える一撃でした。攻めるとすれば△7六桂も目に付くところですが、それよりも飛車を狙うほうが本筋なのです。

なお、後手は△5四銀と大人しく引いて、▲3四歩△4三銀打と受けに回っても優位は維持しています。(A図)

しかしながら、この指し方は4五にいた銀を下げ、かつ持ち駒も使っているので攻撃力は著しく下がります。なので、勝つまではかなりの時間が掛かってしまいますね。

 

そういった問題を解決するのが、この△3九銀なのです。

今週の妙手

先手は飛車を逃げなければいけませんが、

▲3八飛は、△2九角。
▲4九飛は、△3八角。
▲5八飛は、△3六銀▲同金△4七角。

といった要領で攻め立てられてしまいます。どの変化も飛と金をセットで狙われてしまうので、先手は4五の銀を取る余裕が回って来ません。

 

今週の妙手

したがって、本譜は▲1八飛とかわしましたが、△2九角の追撃が痛烈。これも飛と金の両方を狙う展開になっていますね。(第2図)

 

妙手 藤井聡太

ここで▲1七飛と浮いても△2八銀不成▲2七飛△3八角成と攻められるので、一時凌ぎに過ぎません。かと言って、▲4五歩△4七角成と進めるのも、先手にとっては辛い選択ですね。あの金を取らせると先手玉は途端に危うくなってしまうので、この金銀交換は明らかに後手のほうが得だからです。

 

妙手 藤井聡太

第2図は後手の攻めが見事にヒットしており、先手は粘る手段が見当たりません。以降は、ほどなく藤井二冠が勝利を収めました。

 

今週の妙手

一連の指し手を振り返ってみると、後手は△3九銀と打つことによって、4五の銀を引く必要がなくなったことが分かります。それはつまり、先手が直前に指した▲4六歩を無効化したことを意味していますね。

後手はスピード感溢れる攻めで、瞬く間に先手を置き去りにしてしまいました。△3九銀は、藤井二冠らしいシャープな一着だったと思います。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。後手の三間飛車に先手が穴熊で対抗する将棋になり、以下の局面を迎えました。(第3図)

 

妙手 振り飛車

2020.9.10 第79期順位戦C級2組4回戦 ▲長沼洋八段VS△黒田尭之四戦から抜粋。(棋譜はこちら)(便宜上先後逆で表示)

一見、彼我の玉型には大差が着いているようですが、後手玉は▲8三角成から強襲される筋を見せられているので、見た目よりも危険な格好です。

後手としては、自玉の安全度を高めつつ、敵玉への寄せを進めたいところですね。そんな虫の良い手があるのかと思いますが、黒田四段は見事な一手を用意していました。

黒田四段が指した手は、△6四歩です!

今週の妙手

堂々と歩を突いて、先手を催促したのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

自ら▲8三角成の筋を招き入れるような手なので、非常に豪胆な一着ですね。一歩、間違えると利敵行為になりかねない行為ですが、これが勝利を引き寄せる唯一無二の一着なのです。

 

妙手 振り飛車

ところで、この▲6五角は詰めろではありません。となると△6九角で後手の一手勝ちに見えますが、▲7九香が頑強な受けになり、後手の攻めは届かないのです。

また、先述したように、後手は▲8三角成△同玉▲8六香というトン死筋を見せられています。それを緩和するために△6二金左と上がる手も考えられますが、それには▲6一飛成△同金▲8三角成△同玉▲8六香という襲撃があり、仕留められてしまうのです。(第4図)

 

妙手 振り飛車

後手はどこに玉を逃げても、腹金を打たれてアウトですね。これは先手の勝ちです。

 

妙手 振り飛車

つまり、この局面の後手は、直線的に攻めるのはダメで、単純な受けも利かないという状況なのです。そうなると八方塞がりのようですが、△6四歩が九死に一生を得る突き出しになります。

 

今週の妙手

さて。ここで先程と同じように、▲8三角成△同玉▲5一飛成△同金▲8六香と攻めて来るのはどうでしょうか。やはり、後手玉は詰んでいるようですが、実はそうではありません。なぜなら、△8四歩という捨て合いが発動できるからです。(第5図)

 

妙手 捨て合い

(1)▲同香は、△9四玉。
(2)▲同銀は、△7四玉。

いずれも、後手玉は逃れています。後手は△6四歩と突くことで、6三の地点にポケットを作っていたのですね。

 

改めて、△6四歩の局面に戻ります。

今週の妙手

さあ。こうなると先手は困りました。▲8三角成が決行できないとなると、角取りを対処せざるを得ません。しかし、(1)▲6四同銀は△6六角が詰めろ金取りですし、(2)▲4三角成では後手玉がゼットになるので、△7九角と噛み付かれて敗勢です。

 

今週の妙手

本譜は▲6八歩△同銀不成▲5六角という粘りを捻り出しましたが、△8八金▲同玉△7九角が的確な攻めで、大勢が決しました。(第6図)

 

妙手 振り飛車

▲7八玉と逃げる一手ですが、△6九銀打▲6七玉△5七桂成と迫れば、5六の角が抜けますね。あの角を奪い取ってしまえば、後手玉は安泰なので不敗の態勢でしょう。

 

今週の妙手

始めの局面では、後手にとって6五の角が最も脅威となる駒なので、それにアタックすることが急所だったという訳なのですね。△6四歩と突くことで、その駒を責めつつ、自玉の逃げ道を確保するとは何とも旨い手があったものです。まさに一石二鳥の一着であり、黒田四段の見切りの良さが垣間見えた一着でした。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。これは受けの妙技といったところで、職人芸を感じさせられました。(第7図)

 

受ける青春

2020.9.9 第79期順位戦B級2組4回戦 ▲中村修九段VS△大石直嗣七段戦から抜粋。(棋譜はこちら)

先手は大きく駒得していますが、玉型が不安定なので、相手に食い付かれてしまうとゲームオーバーです。そういった設定なので、慎重な対応が求められますね。

ところが、中村九段はここから非常に大胆な手順で後手の攻めに対処します。この一連の指し回しは、かなり意表を突かれました。

中村九段が指した手は、▲8九飛です!

今週の妙手

飛車を投資して、4九の金に働きかけたのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

わざわざ飛車を使わなくても良さそうな場面ですが、これが自玉の安全を確保する強靭な受けでした。

なお、この手に代えて▲5九銀と受けるほうが自然に見えますが、それには△6六歩と取り込まれたときが面倒なのです。(第8図)

 

今週の妙手

後手は次に△4八金▲同銀△6七飛という攻めを見据えています。その筋を受けるだけなら▲6八歩で事足りますが、△4八角成▲同銀△8七飛と迫られると、合駒が打てないので先手は痺れていますね。(B図)

この変化から読み取れるように、先手は手番を握れない軟弱な受けでは、相手の攻めを振りほどけません。なので、中村九段は▲8九飛という受け方を選んだのです。

 

今週の妙手

さて。これは4九の金取りなので、△4八金で飛車を取るのは当然ですね。対して、先手は▲3九飛△同金▲5五歩と進めます。これが狙いの着想でした。(第9図)

 

受ける青春

[▲8九飛△4八金▲3九飛△同金]という応酬は、先手が飛車損になっているので普通はありえない選択です。けれども、この手順を踏むことにより、先手は貴重な手番を得ることに成功しました。その結果、▲5五歩と突いて金を詰ますことが出来たのです。

 

受ける青春

また、この手は金を詰ましていることもさることながら、上部へ逃げ出す含みを作っていることが最大のセールスポイントです。つまり、ここで△8七飛には▲5六玉と逃げれば問題ありません。

玉が下段へ移動する展開を避けることで、3九の金を攻めに機能させないことが先手の思惑の一つでもありますね。

 

受ける青春

後手としては、どの道、5四の金が助かりません。本譜は△5三金と引いてと金との交換を迫りましたが、▲同と△同銀▲2四歩で寄せに向かいます。△6九飛が詰めろで入りますが、堂々と▲6五歩と応じれば先手玉は倒れません。(第10図)

 

受ける青春

見た目は危なそうですが、なかなかどうして、これが耐久力のある格好なのです。

ここで△8七飛と打っても▲6七桂で後続がないですし、△6六歩も▲6八桂で遮断してしまえば先手玉は寄らないでしょう。繰り返しになりますが、先手玉は5六へ逃げる空間を確保したことが大きく、かなりの耐久力を保持しています。

 

受ける青春

対する後手玉は、次に▲2三歩成△同金▲4一角という筋が厳しいですね。また、ここで△2四歩は▲2三歩、△2四銀には▲2六桂と攻められるので、延命は望めない形です。先手には潤沢な持ち駒があるので、これはどう頑張っても凌げません。

そういった理由により、第10図は先手の勝ち筋に入っている局面と言えます。実戦も中村九段がリードを守り切り、制勝しました。飛車を犠牲にして▲5五歩と突いた着想が光りましたね。

 

今週の妙手

飛車を二枚渡しても、5六のスペースを確保すれば自玉の安全を保つことが出来るという判断は、まさに卓越した大局観です。▲8九飛から▲5五歩という凌ぎは、「受ける青春」と謳われた中村九段の長所が存分に発揮された手順でしたね。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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