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今週の妙手! ベスト3(2020年11月第2週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2020年11月第1週)

注意事項

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。また、プレイヤーの名称が長い場合は、適宜省略・変更させて頂きます。ご理解頂けると幸いです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

今週の妙手! ベスト3
(2020.11/8~11/14)

 

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。後手の角交換振り飛車に先手がバランス重視の布陣を作る作戦で対抗し、このような局面を迎えました。(第1図)

 

コンピュータ将棋

2020.11.13 ▲Mariel VS △flcl戦から抜粋。(棋譜はこちら

現状、先手は駒得ではありますが、局面が収まってしまうと6五の桂はいずれ歩で取られてしまうので、ゆっくりとした態度は取りにくい状況と言えます。

ゆえに、何かしら攻める手が必要ですね。Marielは思わぬところから戦端を開きました。

Marielが指した手は、▲9六歩です!

今週の妙手
9筋から歩を入手の図ったのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

見るからに強引な一手ですが、これが自陣の特性を活かした突っ掛けでした。なお、歩を入手するのなら▲5六歩も映りますが、端歩を突くほうが自陣が傷まないので、この方が勝ります。

 

今週の妙手

後手はもちろん△同歩と応じますが、これで先手は歩がいつでもゲットできるようになったので、▲3五歩と桂頭に手を着けます。(途中図)

 

将棋ソフト

さて、後手は無抵抗に▲3四歩を取り込ませる訳にはいきません。ただ、△2四飛には▲3四歩△同飛▲1六角で桂頭が守れないですね。

また、△2三銀と投資すれば桂は保全できますが、▲8六角で先手の攻めが続きます。(A図)

このように、3五の歩を取らない姿勢を選ぶと、後手はかえって受けが難しくなってしまいます。

 

将棋ソフト

という訳で、ここでは△3五同歩と応じるのが妥当ですが、こうなると先手は狙い通り▲9六香△同香▲3四歩を実行することが出来ました。△2五桂とかわされても、▲4五桂と跳ね違う手が気持ちの良い跳躍ですね。(第2図)

 

跳ね違いの桂

先手は▲3三歩成や▲5三桂右成といった攻め筋が作れたので、6五の桂が犬死する心配がなくなりました。後手は受け切りを狙うなら△4四銀になりますが、▲3三歩成△同銀▲同桂成△同金▲4二角という要領で攻めれば先手が良いでしょう。自玉が安定しているので、先手は攻撃に専念できることが心強いですね。

 

今週の妙手

歩を入手するだけなら▲5六歩でも事足りますが、それでは手番が取りにくいですし、コビンを開けることにもなるので玉型の弱体化が気になります。

先手は玉が6筋にいるので、9筋が戦場になっても構いません。9九の香は攻めに使う駒なのです。そうなると、▲9六歩から戦端を切るのは道理ということになるのですね。▲9六歩は、視野の広さが窺える目敏い妙手でした。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。相早繰り銀から、先手があえて後手の攻めを引っ張り込む展開になり、以下の局面を迎えました。(第3図)

 

将棋ソフト

2020.11.11 ▲CRAZY-DOCTOR VS △az_w2425_n_s10_DlM1戦から抜粋。(棋譜はこちら

後手玉は囲いが半壊していますが、6・7筋の中段にテリトリーを持っているので、明確な寄り筋があるようには見えないですね。

ところが、本局はここから7手で終局してしまうのです。これは快刀乱麻の寄せでしたね。

CRAZY-DOCTORが指した手は、▲6一銀です!

今週の妙手

いきなり銀を捨てて敵玉に迫ったのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

先述したように、後手玉は上部が手厚いので、いきなり王手を掛けるのは予想しにくかったのではないでしょうか。

なお、これを△同玉は▲4一角が詰めろ金取りです。そこから△4二金と寄っても、▲7一金△5一玉▲6三馬で必至が掛かりますね。これは簡単に先手が勝てます。

 

今週の妙手

問題は△5三玉と逃げられたときですが、そこで▲6五歩が柔らかい発想。ふわりと中段に歩を置いたのが急所を捉えた一着でした。(途中図)

 

焦点の歩

これは次に▲6三馬からの詰めろになっているので、後手は何らかの対処が必須です。

自玉の延命だけを考慮すれば△同金が最適ですが、こうすると飛車の利きが止まってしまいます。なので、先手は▲5八飛でと金が払うことが出来ますね。(B図)

この変化は、後手の飛車が全く攻めに使えないので、先手は小康を得ることが出来ています。長期戦になれば後手は大駒が攻めに使えないので、旗色が悪くなってしまうのです。

 

焦点の歩

そういった背景があるので本譜は△6五同飛と応じたのですが、先手はこの手を待っていました。▲4二角が必殺の寄せ。そう、後手玉は詰んでいるのです。(第5図)

 

妙手 焦点の捨て駒

△同玉は▲5二金ですし、△同金は▲5四金で詰みですね。馬の利きが通ったことで、こんな詰み筋が生じていたのです。可愛い顔した▲6五歩が、実は恐ろしい狙いを秘めた一着だったことが分かる進行ですね。

 

今週の妙手

この▲6一銀という手は、部分的に見ると敵玉を上に逃がしているので筋が悪い嫌いがあるのですが、この手の意図は次の▲6五歩を打つための布石だったのです。▲6五歩が指せたことで、先手は6三の飛を封じることができ、自玉の安全度を高めることに成功しました。

後手のトン死で終幕したとはいえ、ここはCRAZY-DOCTORの切れ味を称えるところでしょう。▲6一銀から▲6五歩は、巧みな寄せの組み立てでしたね。

 




第1位

 

最後に紹介するのは、こちらの将棋です。これは想像を超える方法で棋勢を好転させており、ただただ驚きました。全く思いつかなかったですね。(第6図)

 

将棋ソフト 妙手

2020.11.10 ▲QueenAI_test201010_i9-7920x_12c VS △Mariel戦から抜粋。(棋譜はこちら

先手が▲6四歩と打ち、後手が△9三飛とかわしたところです。

ご覧のように、飛車を僻地に追いやって気分良しと言ったところですが、先手は自玉が堅くはないので、油断はできない情勢ですね。

すぐに相手から厳しい攻めが来るわけではないので、指し手の自由度は高い局面です。こういった局面は個性が色濃く出るものですが、本譜の進行は度肝を抜かれました。

QueenAI_test201010_i9-7920x_12cが指した手は、▲7三歩です!

今週の妙手

焦点の歩を放って大駒の効率を低下させたのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

度肝を抜かれたと前振りしたにも関わらず、どう見ても地味すぎるだろ! と感じさせてしまったら謝ります。ただ、本当にご覧いただきたいのは、この先です。しばし、お付き合いくださいませ。

 

将棋ソフト 妙手

ところで、ここでは▲1四歩と端歩を取り込むほうが自然です。ただ、これには△4七歩という叩きが嫌らしい。

この歩を残すのは味が悪いですが、▲同玉は△6七銀が痛いですね。なので▲同金ということになりますが、△7五桂と置かれると、これが妙に面倒なのです。(第7図)

 

将棋ソフト 妙手

ここに桂を設置されると、先手は△6七銀という攻めが残る上に、▲8六角や▲8九飛と大駒を活用する手を牽制されてしまっています。つまり、この桂打ちは攻防に利いているので、見た目以上に価値が高いのですね。先手としては、手番を取られながらこの桂を打たれたくはないのです。

 

そこで▲7三歩と打つ手が問題を解決する一手になります。

今週の妙手

これに対して△4七歩と叩くと、今度は▲同玉と取ることが可能です。△6七銀には▲6三歩成△6八銀成▲5三桂成と斬り合えば、先手の一手勝ちですね。(C図)

この変化から読み取れるように、後手は5三に桂を成られてしまうと、自玉がかなり危うくなってしまうのです。

 

今週の妙手

したがって、これを△同飛と取るのは致し方ないのですが、そこで▲8四金△7一飛▲6三歩成と進めたのが驚愕の手順でした。(第8図)

 

将棋ソフト

と金を作るためとはいえ、8四に金を手放してしまっても良いものなのでしょうか。加えて、現局面ではその金が5一の角に取られてしまいます。何だか、敵に塩を送りまくっているようにしか見えません。

 

将棋ソフト

後手が△8四角と金を取るのは当然ですが、先手は▲5三桂成△4二歩▲1四歩で相手の本丸に向かっていきます。

ちなみに、途中の△4二歩は、▲4三成桂△同金▲2三飛成という攻め筋を防がなければいけないので、必要な手入れだと言えます。(第9図)

 

将棋ソフト

さて、後手は手番が回ってきたので、ここは反撃に転じたいところですね。しかし、結論から述べると、この局面では有効な攻めが見当たりません。

第7図と比較すると、後手の持ち駒には金が増えていますし、5一の角も8四に出せています。にも関わらず、どうして有効な攻めが繰り出せないのでしょう?

 

将棋ソフト

ここまでの手順で先手が何をしていたのかと言うと、まず△4二歩を打たせたということが挙げられます。それはすなわち、△4七歩の叩きを消したことを意味します。これにより、先手陣は形が乱されなくなったので、安定感が増しているのです。

 

将棋ソフト

そして、もう一つ注目して頂きたいのは、6筋に歩が使えるようになったことです。

先述したように、後手は△7五桂と打つ手が期待の攻め筋なのですが、現局面では▲6七歩と打てるので、そこまで威力の高い攻めではありません。▲6三歩成は攻めだけでなく、自陣の耐久力を高める意味もあったのです。

 

将棋ソフト

また、ここで△1二歩と辛抱されたときにどう攻めるのかという話はあるのですが、▲4三成桂△同歩▲2四歩△同歩▲2三歩△同金▲8六角と畳み掛ければ、先手の攻めが切れることはありません。(第10図)

 

将棋ソフト

ここで△2二玉には、▲4五歩△3三銀▲5三角成で良いですし、△7五桂には▲同金△同歩▲1五桂が厳しいですね。

他には△7五歩もありますが、これには▲7二銀と飛車を責める手が賢明です。基本的に、先手は「相手の大駒を取りに行く保険」があるので、攻め駒が不足する心配は皆無なのです。

 

将棋ソフト

こうして振り返ってみると、先手は6三にと金を作ったことで、

・▲5三桂成の実現
・△4七歩の防止
・△7五桂の緩和
・7一の飛を圧迫

といった恩恵を得ていることが分かります。これらのリターンがあるので、8四に金を打ち、それをタダで取らせるという常識外の手が成立しているのですね。

 

今週の妙手

そして、▲6三歩成を実現するには9三の飛を追い払うことになります。ただ、5一の角が利いているので、すぐには▲8四金が打てません。なので、先手は▲7三歩で焦点の歩を放ったというロジックなのです。

 

それにしても、虎の子の戦力に見えた持ち駒の金をあっさりと投げ捨てる発想には驚愕です。これを指せる人間は果たしているのでしょうか。まさに大胆不敵であり、人間離れしたソフトらしい妙手順だったと思います。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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