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今週の妙手! ベスト3(2021年1月第2週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、前回の内容は、以下の記事をどうぞ。ちなみに1月第1週は、三が日だったためお休みいたしました。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2020年12月第4週)

注意事項

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。また、プレイヤーの名称が長い場合は、適宜省略・変更させて頂きます。ご理解頂けると幸いです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

今週の妙手! ベスト3
(2021.1/3~1/9)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。相掛かりから先手が早繰り銀、後手が腰掛け銀を選ぶ将棋になり、このような局面を迎えました。(第1図)

妙手 将棋ソフト

2021.1.6 ▲NEEDLED-24.7 VS △AobaZero_w3028_n_t4戦から抜粋。(棋譜はこちら

先手は自玉がゼットに等しい状態なので、敵玉への寄せに専念することが出来ます。ただ、相手に手番を渡してしまうと△6五桂が強烈なので、詰めろの連続で迫ることが勝利への絶対条件ですね。

本譜は、見事な手順でそれを実現しました。

NEEDLED-24.7が指した手は、▲7一銀です!

今週の妙手
金を狙いつつ、左辺に包囲網を敷いたのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

こういった場面では、思わず▲3二飛や▲3一飛のような手を指してしまうものではないでしょうか。けれども、この段階で飛車を手放すのはまだ早く、急所を外しています。まずは金に狙いを定めつつ、左辺に寄せの種駒を作っておくのがスマートな寄せ方なのです。

今週の妙手

これは金取りではありますが、同時に▲3二飛からの詰めろになっており、こちらが真の狙いです。後手は△6一金と引いてそれを防ぎますが、そこでじっと▲2三角成が冷静な一着でした。(途中図)

玉は包むように寄せよ

ふわっとした攻め方ですが、これで後手玉は網の中に入っています。△7一金と銀を取っても▲4一飛△5二玉▲7一飛成で金を取れば必至ですね。後手は▲6二金と▲4一馬のコンボを同時に防ぐことが出来ません。

玉は包むように寄せよ

ゆえに本譜は△5二玉と早逃げしたのですが、▲4一馬がトドメの一撃。6三への逃走を許さないことが大事なところですね。(第2図)

玉は下段に落とせ

後手は△同玉と応じるしかないですが、▲3一飛△5二玉▲6一飛成で即詰みです。先手はゼットを活かして一気にゴールまで走り抜けました。こうして見ると、▲7一銀と打ったことで後手玉が一気に狭くなったことが分かりますね。

 

今週の妙手

寄せの基本は「金を狙うこと」であり、これは極めて汎用性の高いセオリーの一つです。

今週の妙手

この▲7一銀は、ちょっと敵玉から離れた場所に銀を使うので抵抗感がありますが、そのセオリーに則った一着なので的確に急所を突いているのです。

また、その後の▲2三角成▲4一馬も、「王手は追う手」「玉は包むように寄せよ」「玉は下段に落とせ」という格言に沿っており、まさに寄せのお手本とも言える妙手順でした。これは華麗に着地を決めましたね。

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。相矢倉から脇システムのような将棋になり、以下の局面を迎えました。(第3図)

妙手 将棋ソフト

2021.1.4 ▲suikyuwomen VS △Lladro戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)(棋譜はこちら

後手の矢倉は原型がすっかり吹き飛んでいますが、先手の囲いは未だ健在です。こちらが攻めまくっていたことが窺える局面ですね。

ただ、先手は3五の銀が今にも取られそうであり、切れ筋とは隣り合わせです。逼迫した状況ですが、本譜は思わぬところに手を伸ばし、難局を切り開いていったのでした。

suikyuwomenが指した手は、▲7四銀です!

今週の妙手

7筋に銀を使い、飛車の活用を視野に入れたのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

こんなところに銀を投資して大丈夫なの? と感じられた方もいらっしゃったかと思います。ところが、これが攻めを繋げる唯一無二の妙着でした。

 

妙手 将棋ソフト

なお、先手は3五の銀を助けるのなら、▲2三歩成△同玉▲2四銀打という手順が挙げられます。しかし、△3二玉▲3四銀△4二玉でスタコラサッサと早逃げされると、後手玉はあまりにも広いですね。(A図)

 A図の進行だと、先手は戦力不足に喘ぐことになるので、後手玉を捕まえることが叶いません。その課題をクリアするために、先手は▲7四銀と打ったのです。

今週の妙手

後手としては、△7二角と逃げて何事も起こらなければ、話は簡単です。一見、先手の攻めは空振りのようですが、▲7三桂成で強行突破するのが狙いの後続手。以下、△同桂▲同銀成△同銀▲7四歩までは必然ですが、こうなると後手は支えきれません。(第4図)

妙手 将棋ソフト

先手は▲7三歩成が実現すると、大駒を入手できるので攻めが一気に手厚くなります。

また、△7四同銀▲同飛も眠っていた飛車が世に出るので、これも切れ筋になることはないでしょう。攻めが切れなければ、先手の堅陣が光りますね。

▲7四銀はゴツい手ではありますが、ブルドーザーのように障害物を一掃する力があるのです。

 

今週の妙手

こういった事情があるので、本譜は△7四同角▲同歩△3五歩という対応を選びます。けれども、▲7三歩成△9二飛▲3五金と進めておけば、先手の優位は揺るがないですね。(第5図)

妙手 ブログ

次に先手は、▲3四歩や▲5一角が楽しみです。また、▲8三とから攻め駒を補充できるようになったことも心強いですね。

この局面は、先手の攻めがぐっと手厚くなっているので、第3図よりも状況が好転しています。ここまで進んでみると、▲7四銀の破壊力がお分かり頂けたのではないでしょうか。

 

妙手 将棋ソフト

冒頭の局面で後手玉に脅威を与えている駒は、[3五の銀・持ち駒の銀]の二枚だけでした。これでは敵玉を仕留めようとしても、まるで戦力が足りません。これはA図の変化にも同じことが言えます。

 

今週の妙手

確かに▲7四銀は筋が良いとは言えませんが、この手を指すことで、枠で囲った攻め駒に活を入れる効果があることが何よりの自慢です。戦力が補給できれば、安心して寄せに向かうことが出来ますね。つまり、この▲7四銀は寄せに行く条件を整える下準備のような意味があったのです。

 

こういった視野の広さは、将棋ソフトの強さの一端がよく出ている部分だと思います。攻めるときはついつい敵玉周辺に目を向けてしまうものですが、見習いたいものですね。

 




第1位

 

最後に紹介するのは、こちらの将棋です。これはイレギュラーな手が成立している稀有なパターンであり、なかなか指せない一着だったように感じました。(第6図)

妙手 ブログ

2021.1.7 ▲Takeshi_RyzenTR-3990X_64c VS △YO6-S3-i5-6300U戦から抜粋。(棋譜はこちら

後手玉をあと一歩というところまで追い詰めていますが、先手は持ち駒が歩だけなので、手駒を蓄える必要があります。

そうなると次の一手は当然あの手……かと思われましたが、そんな手はわざわざ取り上げたりしないですね。これは読みの入った妙手でした。

Takeshi_RyzenTR-3990X_64cが指した手は、▲3二金です!

今週の妙手

金ではなく、角を取って寄せに向かったのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

これは部分的には、とんでもない一手です。というのも、タダで取れる金を見過ごしていますし、△3二同金と取られた形は守備駒の金が近づくので、後手玉を安全にしている意味もあるからです。[▲3二金△同金]という応酬だけ見ると、先手にとって全く得が無く、悪手の見本と言えるでしょう。

 

妙手 ブログ

ここは常識的には▲4一金と指すはずなのです。先述した「金を狙う」というセオリーにも則っていますね。ところが、△6七歩成で攻め合いを挑まれたときに先手は困ってしまうのです。(第7図)

妙手 将棋

これは△4九銀▲同玉△5八歩成からの詰めろですね。先手は▲5二竜と引けば「詰めろ逃れの詰めろ」を発動出来ますが、後手は構わず△4九銀▲同玉△5八歩成と肉薄してきます。以下、▲同金△同竜▲同竜△同と▲同玉△7八飛と攻め立てられると、どうも先手は勝てません。(B図)

先手はどのように応対しても、自玉が詰むか後手玉への詰めろを解除することになってしまうので、この変化では勝機が無いのです。

 

そういった背景があるので、本譜は▲3二金を選んだのですね。

今週の妙手

さて、後手はもちろん△3二同金と応じます。敵玉への寄せが遠のいたようですが、▲5二竜が期待の一手。簡単に受かりそうな竜引きですが、先手はこの手で寄せが炸裂することを正確に見切っていました。(途中図)

妙手 将棋

ここで自然な受けは△2二金打ですね。ただ、▲同銀成のときに△同玉と取ると、▲4二金とくっつかれていきなり受け無しに追い込まれます。(C図)

後手は2四の桂が上部脱出を妨げる駒になっているので、見た目以上に息苦しい格好なのですね。

 

妙手 将棋

よって、後手は△2二金打▲同銀成△同金と受ける方が抵抗力があるのですが、これにも▲3二金と張り付きます。以下、△同金▲同竜△2二金は必然ですが、そこで▲1三金が鮮烈な妙手。何とこれで寄せが決まっているのです。(第8図)

妙手 将棋

△同桂は▲2一角でアウト。なので△同玉は絶対ですが、▲3一角△1二金打▲1五歩と畳み掛けましょう。

先手は[▲3一角⇔△1二金打]という利かしを入れることで、手番を握り続けることが出来ていますね。この恩恵を得るために、▲1三金と放り込んだのです。(第9図)

端玉には端歩

これを△同歩と取ると、▲2二角成△同金▲1四歩で即詰みに討ち取ることが出来ます。(D図)

つまり、後手はこの端歩を取れないということですね。

妙手 将棋

他には△3六桂左で通気口を開けるのも映りますが、▲2二角成△同金▲1四歩△2四玉▲1五金△3五玉▲4六銀で詰みですね。そう、この局面で後手玉には必至が掛かっているのです! ▲5二竜は、こんな恐ろしい狙いを秘めていたのですね。

 

妙手 ブログ

種明かしをすると、この局面は▲4一金よりも△6七歩成の方が威力が高いのです。先手は6七の銀が命綱であり、これが生きている間にケリを着ける必要があったのですね。ゆえに、▲3二金→▲5二竜で、金を犠牲にスピードアップするプランを選んだのです。

妙手 将棋

この攻め方は駒の数が減るので、寄せが頓挫するリスクはありました。けれども、盤面の右上だけで戦うことで、先手はそれを克服することに成功しています。局地性理論が使える条件が整っていたので、▲3二金→▲5二竜という駒の損得を無視した攻めが成り立っているという訳なのですね。

妙手 ブログ

……と、指されてみれば理屈は読み解けるのですが、この局面で▲3二金と角を取る手で勝てるとは、なかなか思えません。特に、第7図では▲5二竜が「詰めろの逃れの詰めろ」になるので、そちらの変化にすがってしまいそうな場面でもあります。

妙手 将棋

その変化がダメということを見切った上で▲3二金→▲5二竜を選ぶ精度の高さは、凄まじいですね。改めて、将棋ソフトの終盤力をまざまざと感じさせられました。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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