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今週の妙手! ベスト3(2021年3月第1週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、前回の内容は、以下の記事をどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2021年2月第4週)

注意事項

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。また、プレイヤーの名称が長い場合は、適宜省略・変更させて頂きます。ご理解頂けると幸いです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

今週の妙手! ベスト3
(2021.2/28~3/6)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。後手の四間飛車に先手が居飛車穴熊で対抗する構図になり、このような局面を迎えました。(第1図)

振り飛車 妙手

2021.3.2 ▲fist VS △Takeshi2_Ryzen7-4800H(便宜上先後逆で表示)(棋譜はこちら

穏やかな局面ではありますが、現状、振り飛車は歩損していますし、次に▲3七桂→▲4五桂という活用も見せられています。つまり、ここでしっかり踏み止まらないと、相手にどんどんポイントを稼がれてしまう局面なのです。

忙しい場面ではありますが、本譜は巧みな手順でこの難局をクリアしました。

Takeshi2_Ryzen7-4800Hが指した手は、△4五歩です!

今週の妙手

4筋に歩を合わせたのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

これが難局を切り拓く第一歩となる一着です。なお、この手は4筋から攻めるという意味ではありません。

というのも、▲4五同歩に△同銀だと、▲4八飛と回られたときに攻め駒が渋滞するので芳しくないからです。(A図)

また、△同飛も▲4八飛で困りますね。△8一玉型では飛車交換の条件が悪く、戦い切れません。

今週の妙手

そうなると、一体何のために△4五歩を打ったんですか? という感が漂いますが、▲4五同歩には△2四歩が後続手。そう、△4五歩の狙いは角を働かせることにあるのです。(途中図)

振り飛車 妙手

▲同歩△同角は銀取りになるので、都合が良いですね。後手は3三の角が移動すれば△3三桂→△4五桂という活用が見込めるので、2四に角を配置する価値が高いのです。

振り飛車 妙手
ゆえに先手は2筋を無視して▲4四角と出ました。これは[△4五歩▲同歩]のやり取りを逆手に取ろうという意図ですが、△8六歩▲同歩△2五歩が冷静。後手は2一の桂を使いたいので、4四の角は放置で構いません。

先手は▲4八飛で増援を送りましたが、△2四角▲6八銀△3三桂でやはり振り飛車は理想が実現し、満足のいく形を作ることが出来ました。(第2図)

振り飛車 妙手

次は△4六歩と打って、△4五銀や△4五桂を狙うのが楽しみですね。居飛車は4六に歩を設置されると、4筋の制空権を握られてしまうので旗色が悪くなります。

振り飛車 妙手

△4六歩を防ぐだけなら、▲3五歩で角道を遮断すれば事足ります。しかし、それは△4三歩と打たれると、自分の角が息を引き取ってしまいますね。

居飛車は[▲4五歩・▲4四角]という配置が重たく、攻め駒を運用する方法が難しいことが歯がゆいのです。

振り飛車 妙手
また、この局面は先手の歩を4五に進ませたことで、彼我の桂の働きに差が生まれやすくなっていることにも注目してほしい部分です。

すなわち、▲4五歩型になったことで先手は▲3七桂→▲4五桂が消えており、逆に後手は△3三桂→△4五桂という活用が図れるようになっているという訳ですね。

 

今週の妙手

話をまとめると、この△4五歩には、

・角を使いやすくする
・桂の働きに差を着ける

という二つの狙いがあったのです。

今週の妙手

飛や銀を攻めに使うのではなく、角や桂を攻めに使うために4筋に着手するのは思いつかないですね。地味ながら、読みの入った味わい深い妙手だったと思います。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。後手の雁木に先手が棒銀で攻め掛かる展開になり、こういった局面になりました。(第3図)

妙手 ブログ

2021.3.3 ▲QueenAI_210222_i9-7920x VS △40-05-70(棋譜はこちら

お互いの攻め駒が敵玉に迫っており、白熱の終盤戦と言ったところです。

先手はどのように寄せの網を絞るかですが、本譜は思わぬ駒を動かしました。

QueenAI_210222_i9-7920xが指した手は、▲5七銀です!

今週の妙手

銀を上がって自玉の上に屋根を作ったのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

後手玉は今にも寄りそうなのに、一転して自陣に手を戻すとは意表を突かれますね。しかも、この受け方では安定しているようにも見えません。どうして先手はこんな手を選んだでしょうか?

妙手 ブログ

ちなみに、冒頭の局面で最も厳しい攻め筋は▲2二飛です。こうすれば、部分的には受けが利きません。

しかし、これには△5二飛という必殺技があり、先手は泣きを見ることになります。(第4図)

妙手 受け

王手を受けるしかありませんが、それから△3三金でと金を払えば、後手玉は安泰です。これは無条件でと金を失うので、先手は攻めが頓挫していますね。

もう、お分かりでしょう。先手はこれをケアするために、▲5七銀を指したという訳なのです。

今週の妙手
さて。後手は自玉を固めるなら△6四馬ですが、大人しく馬を引いてくれれば、先手は安心して▲2二飛が打てます。(B図)

この飛車打ちは相当に厳しく、馬の守備力などものともしません。これは先手の言い分が通っていますね。

 

今週の妙手
そういった背景があるので、本譜は△5七同馬▲同玉△3三金と応じました。これは▲2二飛だけは打たせないという意味です。しかし、▲3一飛△4二玉▲4一金△5三玉▲3三飛成で金が取れるので、やはり先手の攻めは止まりません。(第5図)

妙手 寄せ

ここで△2八飛と打たれても詰めろにならないので、▲5五金や▲4二金と迫れば競り勝てます。

他には△5六歩と叩かれる手も気になりますが、▲6八玉と引けば大丈夫ですね。先手陣は7九の地点が防空壕のような形になっており、王手されてもここに逃げ込めば安全と言えます。

妙手 寄せ
この局面は、玉の安全度や駒の損得に差があるので、先手が優勢です。後手は最強の戦力であった4六の馬が無くなったことが痛いので、挽回が難しいですね。

 

妙手 ブログ

冒頭の局面で先手は、とにかく▲2二飛が指したい一手でした。これを実現することが、この局面のテーマなのです。

ただ、先述したように、△5二飛のカウンターがある状況下では▲2二飛が打てません。しかし、ここで手番を取れないと、3三のと金を取られてしまいます。また、▲2二飛の威力を落とさないためにも、持ち駒の金は手放したくありません。

今週の妙手

そうなると、導き出される答えは「▲5七銀」ということになるのです。局面の状況を一つひとつ紐解いていくと、理路整然とした選択であることが分かりますね。

とはいえ、囲いの駒は自分から動かさないことがセオリーでなので、これが最適解だとは驚かされます。▲5七銀は臨機応変な受けの妙手でした。

 




第1位

 

最後に紹介するのは、この将棋です。これは寄せの組み立てがとても巧妙であり、終盤力の高さが垣間見える妙手順でした。(第6図)

妙手 将棋

2021.3.2 ▲10be_n005_1080Ti VS △fist(便宜上先後逆で表示)(棋譜はこちら

後手は飛と銀が両取りになっていますし、7六の桂も取られてしまいそうな格好です。軟弱な手を指すと駒損が嵩んで行くので、何らかのアクションを起こさなければいけない場面ですね。

という訳で、ここは飛車を逃げている場合ではありません。本譜は見事な踏み込みを見せました。

fistが指した手は、△7五銀です!

今週の妙手

銀を打って、7六の桂をしっかりと支えたのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

これが敵玉に対して最も厳しく迫る一手です。何も当たりになっていない手ではありますが、ここに銀を設置することで、寄せの土台を整えることが出来るのです。

先手は当然▲8二金で飛車を取りますが、そこで△4五銀が期待の一手。ここからの流麗な寄せが、本局の見所です。(第7図)

妙手 寄せ

これは△8五桂の詰めろなので、先手は4五の銀を相手にできないですね。

よって、本譜は▲7二飛△6二角で後手の戦力を落としてから▲3二飛成△同玉▲8五金と受けました。先手としては、7五の銀を除去するのが急務です。(途中図)

後手は相変わらず切羽詰まった状況が続いているので、さらにアクセルを踏みます。具体的には、△5六銀▲7五金△6七銀成とタックルしたのが勇猛果敢な攻めでした。(第8図)

今週の妙手

ずいぶんと過激なようですが、▲7四歩→▲7三歩成が来るまでは、後手玉は比較的余裕があります。ゆえに、この瞬間はアタックチャンスと言える状況なのですね。

今週の妙手

▲同玉は△6九飛が痛烈です。したがって▲同金は妥当ですが、△7九飛▲7八歩に△8九飛成が素晴らしい判断。金を取らない理由は、後ほど明らかになります。(第9図)

今週の妙手

さあ。ここは相手の攻めが一段落したので、先手は▲7四銀で防波堤を壊しに行きます。これは待望の反撃ですが、△6一角がそれを凌駕する強防でした。(途中図)

妙手 AI

力づくではありますが、確かにこれを指せば飛車が詰んでいます。

先手は▲7三銀不成△7二角▲同金と進めるくらいですが、そこで△7九飛が痛打。この手が先手玉の急所を貫きました。(第10図)

鬼より怖い二枚飛車

先手は▲6二銀成で角を取ると、△7八竜▲6六玉△6八桂成で寄せられてしまいます。上部が広いようでも、7五の金が二枚飛車の射程に入っているので先手は逃げ切れません。(C図)

この△7九飛を見据えていたので、後手は金を取らかったのですね。

鬼より怖い二枚飛車

第10図は、△7八竜よりも速い攻めが見当たらないので、後手が頭一つ抜け出した情勢と言えます。後手は三枚の銀(7五の銀・4四の銀・7三の銀)を犠牲にすることで、先手玉を寄り形へと持ち込んでしまいました。とんでもない力業でしたね。

 

今週の妙手

始めの局面で後手は逼迫した状況でしたが、△7五銀と打ってからは流麗に攻めが続いていることが分かります。

特に、4四の銀をドリブルさせて敵陣に斬りかかっていた手順は、目を見張るものがありますね。

妙手 将棋

そして、その後の△8九飛成も何気ないようで凄みがあります。△6一角から飛車を奪って二枚飛車の形に持ち込めば一手勝ちが望めるので、ここで緩んでも大丈夫だと見切っていたのですね。

妙手 AI

解説が長くなり恐縮ですが、△7五銀にしろ△6一角にしろ、相手の攻め駒を自分の寄せを進めるために利用しているところが、本当に巧みだと感じます。

敵の攻め駒は脅威となる存在ですが、状況によってはそれを逆手に取ることも出来るという訳ですね。なかなか真似できないプレイングですが、こういった指し回しが出来るようになりたいものです。

 

それでは、また。ご愛読いただき、ありがとうございました!

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