最新戦法の事情【11月・振り飛車編】を公開しました。詳細は、ここをタップ!

第67回NHK杯1回戦解説記 谷川浩司九段VS阿部健治郎七段 ~前編~

今週は谷川浩司九段と阿部健治郎七段の対戦でした。

先手番の谷川九段はいまさら説明するまでもない、偉大な実績を残された大棋士ですね。そして、「光速の寄せ」という二つ名はあまりにも有名です。誰しも一度は谷川九段の華麗な寄せに魅了されたことがあるのではないでしょうか。

後手番の阿部七段は研究家の棋士で、幅広い戦型で数々の新手を発掘しています。毎回、よくある定跡型の局面から、ささやかな工夫を施すイメージがあります。どちらかと言えば、玄人好みの将棋でしょうか。

本局も普通の定跡型ではない、ちょっと変わった将棋になりました。

 

本局の棋譜は、こちらのサイトからご覧いただけます。
参考 本局の棋譜NHK杯将棋トーナメント

第67回NHK杯1回戦第11局
2017年6月11日放映

 

先手 谷川 浩司  九段
後手 阿部 健治郎 七段

 

初手から▲7六歩△8四歩▲2六歩△3二金と進み、第1図のように進みました。(青字は本譜の指し手)
NHK 1

角換わり・・・かと思いきや、ここから△6二銀▲2五歩△7四歩▲2四歩△同歩▲同飛△7三銀と進み、早くも定跡を離れた力戦型の将棋になりました。(第2図)
NHK 2

一昔前までは、飛車先の歩交換を許してはいけないという考え方が主流だったのですが、最近はそうでもなくなってきました。そういった思考の変化の背景には、将棋ソフトの存在が大きく影響しています。ソフトは飛車先の歩交換を許すことにあまり抵抗が無く、それが作戦負けの原因にはならないと考えているようです。

今の時代、ソフトの大局観や作戦を人間が真似をするのは当たり前になりつつあり、本局の阿部七段の駒組みもその一環と言えると思います。

第2図から▲4八銀△6四銀▲2五飛と進みました。(第3図)
NHK 3

阿部七段は早繰り銀に構え、後手番ながら先攻する形を作ります。谷川九段は▲2五飛と引いて、△7五歩を牽制します。代えて▲3八金と上がり、▲3四飛を狙う指し方も有力だったと思います。

後手は5段目に飛車を居座られてしまうと、早繰り銀が機能せず不満です。よって、この飛車を狙って阿部七段はどんどん動いていきます。第3図から△7七角成▲同銀△2二銀▲3六歩△7五歩▲同歩△3三桂▲2七飛△4四角と進みました。(第4図)
NHK 4

飛車を動かすには△3三桂が一番、手っ取り早いですが、すぐにそれを指すと角が使えなくなってしまいます。従って、角を交換してから△3三桂を跳ねて、6四の銀を前線へ繰り出せるようにしました。

そして、第4図の△4四角が味の良い一手です。△2六歩や△7六歩を狙いつつ、▲3五歩の桂頭攻めを受ける攻防兼備の角打ちです。この手を誘発したので、谷川九段は飛車を2八に引く方が良かったでしょう。

第4図から谷川九段は▲3七角と打ちましたが、後手の角と比較するとこの角は働きが悪く、これでは作戦失敗気味です。以下△4一玉▲4六歩△8六歩▲同歩△7六歩▲6六銀△8六飛▲8七歩△8五飛と進みます。(第5図)
NHK 5

後手が調子良く指しているようですが、△8五飛では△8四飛の方が勝りました。次に△8八歩▲同金△6五銀が狙いで、この攻め筋が受けにくく先手は困っているように思います。

本譜は飛車を中途半端な場所に引いたので、▲2六角が厄介な反撃になりました。(第6図)
NHK 6

もし、先ほど△8四飛と引いておけば、▲2六角には△同角▲同飛に△4四角と打ち直し、やはり△8八歩~△6五銀の筋を狙えば問題なかったのですが、第6図では▲7四角と打たれる傷が残っているので、それを実行することができません。阿部七段は△6六角▲同歩△2五歩▲3七角△7五飛と先手の角を捌かせないように対応しましたが、角を切らされる羽目になり、やや不満の進行になってしまいました。

とはいえ、先手は二枚の大駒の働きが悪く、形勢はバランスが取れていると思います。

△7五飛に対して、谷川九段は▲3五歩と桂頭を攻めました。(第7図)
NHK 7

基本的に相手の桂頭、角頭、玉頭はどんなときでも弱点です。みなさんも対局中にどこを攻めたら良いんだろう…と迷ったら、そこに着手すると良いでしょう。

後手は7筋を狙っているので、△3五同飛とは応じにくいです。また、△2三銀は▲2四歩があるので受けになっていません。あまり良い受け方が無いので、阿部七段は攻め合いに活路を求めます。第7図から△7七銀▲7九金△8八歩と強引に突破を目指します。以下▲7七桂△同歩成▲3四歩△6七桂▲5八玉△7九桂成▲4七玉と進みました。(第8図)

NHK 8

第8図の局面の形勢判断を行って、前編を終わりにしたいと思います。

まず玉型ですが、これは後手の方が安定している印象ですね。

駒の損得は、先手が3三の桂を取れば角金交換の駒得なので、先手に分があります。

駒の効率が難しいところですね…。先手は盤上の飛と角の働きがあまり良くありません。しかし、後手も△6四銀、△7九成桂、△8一桂の三枚の攻め駒があまり働いていません。要するに、どちらも駒の配置がダサいのです。

△6四銀が働きの悪い駒と分類するのは賛否両論かとは思うのですが、私にはこの銀が攻めにも受けにも働いていない印象を受けるので、そのような評価を致しました。

総合的に判断すると、第8図の局面は意外といい勝負なのかな、という気がします。

ではでは、続きは後編で。ご愛読ありがとうございました!

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