第67回NHK杯1回戦解説記 青嶋未来五段VS八代弥六段 ~後編~

前回の続きです。

 

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第67回NHK杯1回戦第12局
2017年6月18日放映

 

先手 青嶋 未来 五段
後手 八代 弥  六段

 

先手が▲2三歩と打って飛車の成り込みを狙い、後手が△3一金と寄ってそれを防いだところです。

形勢が良い先手ですが、一つだけ懸案事項があり、それは角が働いていないことです。青嶋五段は▲9七角(青字は本譜の指し手)と上がり、角の効率を上昇させました。
遊び駒を活用する手はほぼ100%悪手にならないので、積極的に実践すると良いでしょう。(第8図)

NHK 8

▲9七角は後手の△3一金を狙っています。あの金を除去すれば先手は飛車が成ることができますね。

先手の角道を遮ることはできないので八代六段は△1九角成と開き直りましたが、▲5二歩成△同金▲3一角成△同飛▲2二歩成△6一飛▲1一とで先手は強引に2筋を突破し、飛車が確実になれる形を作ることができました。(第9図)

NHK 9

後手は▲2二飛成を受けるために△5五馬と引きたいのですが、単にそれを指すと▲5六香が厳しく、まだ馬は引けません。そこで八代六段は△5三香▲5六歩△5五歩と工夫します。5三に香を設置することで、▲5六香を緩和させたり▲5三歩の叩きを消していることが分かります。そして、△5五歩は馬を中央に引き付ける狙いですね。(第10図)

NHK 10

△5五歩に対してどのように対応するか悩ましいですが、ここは▲4八銀△5六歩▲5八歩が正着でした。相手に歩を易々と取り込まれて変調のようですが、この局面では5筋の歩を盤上に残させるのが急所です。後手は当初の狙い通り△5五馬と引きますが、▲2一飛成△同飛▲同とで先手良しです。(A図)

NHK A

A図では、次に▲3二飛が厳しい一手です。5筋に歩を残させた効果で、△5一歩と受けることができません。△5七歩成と成り捨てれば底歩は打てるようになりますが、▲同歩と取っておけば先手陣は非常に堅固になり、条件の良い形で終盤戦を戦うことができるでしょう。

つまり、△5六歩と取り込まれても、後手は底歩を打つために拠点を捨てなければいけないので、取り込まれても問題なかったのです。

本譜は▲5五同歩と歩を取りましたが、△同馬で後手は底歩が打てる状態で馬を引き付けることに成功しました。△5五同馬に▲5六歩と打つのは△1一馬で飛車が成り込めなくなってしまうので、青嶋五段は▲2一飛成と指しました。以下△同飛▲同とと進みます。(第11図)

NHK 11

今度は▲3二飛に△5一歩が打てるので、後手は攻めに転じることができます。第11図では△2八飛と打って△2九飛成や△2一飛成を狙えば激戦が続いていたでしょう。

しかし、八代六段は△5六歩と打ってしまいます。先述したように、後手は底歩を打てるようにしないといけないのでこの手は芳しくありませんでした。先手は当然、▲4八銀と引きます。

八代六段は△6四歩と突いて、6筋からの攻めを狙いますが、▲3二飛が急所の攻めで、再び先手がリードを奪いました。(第12図)

NHK 12

△5一金は▲6三金、△6三金には▲7五桂があるので後手は金を逃げることができません。

八代六段は適切な受けがないと判断して△6五歩と攻め合いに希望を託しましたが、この手が敗着になりました。代えて△7四角と辛抱すれば、先手も勝ちきるまでは一山も二山もあったでしょう。

ただ、△7四角は本当に打ちにくい一手です。なぜなら、意味としては金取りを受けただけで、それなら底歩で受けた方が遥かに勝るからです。歩で済むところに角を投資しているので、やはり抵抗があったのだろうと推測します。とはいえ、ここは辛抱が必要な局面でした。

△6五歩以下、▲5二飛成△6六歩▲7七金打△6七歩成▲同金直と進みました。(第13図)

NHK 13

途中、△6六歩と取り込んだ手は詰めろになっていました。しかし、▲7七金打がしっかりした受けで、先手玉は安定しています。第13図で後手は斜めに利く駒を渡すと▲7一角(銀)でトン死してしまうので、馬を切ったり△5七銀と打つような攻めはできません。

本譜は△5七歩成▲同銀△2八飛と攻めましたが、▲5八歩と受けて先手陣は安泰です。八代六段は△6一銀打と美濃囲いを再生して粘りを見せますが、▲5三竜△2九飛成▲3九香△4四角▲5五竜△同角▲6三歩と進んだ局面は先手勝勢です。(第14図)

NHK 14

△同銀と取るのは▲7五桂と打たれて、先手の攻めが加速します。先手には角金桂香と豊富な持ち駒があり、後手が攻めを切らすことは不可能です。従って、△6五桂と攻めの手を選びましたが、▲5三桂△7七桂成▲同桂△7一金▲6一桂成△同銀▲7五桂△7四歩▲6二銀△同銀▲同歩成△同金▲6三銀と着実に後手の守り駒を剝がしていきます。(第15図)

NHK 15

長手順、進めてしまい恐縮ですが、青嶋五段の指し手が全て俗手であることを確認して頂きたいです。
基本的に、敵玉を寄せる際には特別な理由でもない限り捨て駒は必要ありません。平凡な手の連続が最も確実な寄せになるのです。

第15図から八代六段は△6五桂と打ちました。その局面では▲7一角△同玉▲6二銀成△8二玉▲8三桂成△同玉▲8四金以下の詰みがありましたが、青嶋五段は▲6六香と打って自玉をゼットにしました。これも手堅い勝ち方ですね。以下、△7五歩▲6二銀成△7六歩▲同金△5七桂成▲7一角と進み、青嶋五段の勝ちが決まりました。(第16図)

NHK 16

第16図では△9二玉と逃げるくらいですが、▲8二金△同角▲同角成△同玉▲7一角△7三玉▲6三香成以下、詰みです。

本局は八代六段が序盤から積極的に動きましたが、青嶋五段が上手くそれに対応してリードを奪いました。第10図~第11図の辺りでは難解な形勢になりましたが、八代六段のミスに乗じて、再び形勢が良くなってからは一気に引き離した印象です。青嶋五段の正確な終盤力が光りましたね。

それでは、また。ご愛読ありがとうございました!

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