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第67回NHK杯1回戦解説記 中村太地六段VS山崎隆之八段 ~後編~

前回の続きです。

 

本局の棋譜は、こちらのサイトからご覧いただけます。
参考 本局の棋譜NHK杯将棋トーナメント

第67回NHK杯1回戦第16局
2017年7月16日放映

 

先手 中村 太地 王座
後手 山崎 隆之 八段
果敢に先攻した山崎八段ですが、第8図の局面は歩切れが痛く攻めが息切れしつつあります。次に▲5八玉と上がられてしまうと先手陣は隙の無い形になるので、その前に手を作らなければいけません。

山崎八段は△8八銀(青字は本譜の指し手)と打ちました。筋が良い手ではありませんが、攻めを続けるにはこの一手です。

先手は金か香のどちらを取らせるかという選択を迫られています。中村六段は▲8七金と香を取らせましたが、この手は悪手でした。代えて▲5八玉と上がり、△7七銀成▲同金と応じれば先手は優位を維持していました。(A図)

NHK A

守備の要である金を取られて不満なようですが、それ以上に▲5八玉と上がって戦場になっている7~9筋から遠ざかることが重要なのです。相変わらず後手は歩切れなので攻めを続けることが難しいですね。強引に攻めるなら△8五歩▲同歩△9五香▲同香△9七角成という手段はありますが、香を渡すと▲2六香が厳しいので自滅になってしまいそうです。

A図から後手が攻めてこなければ、▲9四歩~▲9三歩成と端歩を伸ばすのが正しい方針です。
相手が攻める手段に困っている場合は、囲いに向かって攻めるよりも攻撃陣を責めて催促する方が良いことが多いです。また、催促する際には極力、歩を渡さないようにしましょう。なぜなら、「開戦は歩の突き捨てから」という格言が訓える通り、攻めを繋げるには歩を使うことが必須だからです。

本譜の▲8七金は銀を僻地に追いやる意図ですが、△9九銀成と香を取り、後手は曲がりなりにも駒得という主張を得ました。また、香を取ったことで▲9四歩~▲9三歩成と攻めを催促される手段を消したことも地味に大きいですね。

△9九銀成に中村六段は▲2四歩△同歩▲2五歩△同歩▲3五歩と反撃に転じます。しかし、△7五歩が急所の一撃でした。この辺りで山崎八段のペースになったのかなと思います。(第9図)

NHK 9

後手は△7五桂を打つのが最速の攻めで、第9図の△7五歩はそれの実現を目指しています。▲同歩には△8三桂が後続手です。▲7七金左と早逃げをしても、△7五桂▲7六金右△6七香があり、先手は駒損を免れません。

的確な受けは難しいと見て、中村六段は▲3四歩△7六歩▲3三桂と攻め合いを選びます。ここで受けに回ってしまうと、直前に指した▲2四歩~▲3五歩の手順と意味が噛み合わないので、攻めるしかないという背景もありました。

▲3三桂以下、△同桂▲同歩成△同金▲2五桂△3四金▲3三桂成△同金▲2一飛成と進みました。(第10図)

NHK 10

敵玉の近くに竜を作った先手が良さそうに見えますが、後手は第10図に至る手順の中で、着々と先手玉を仕留める準備をしていました。それは、①△7五桂の両取りを作ること。②敢えて自陣を攻めさせて、持ち駒を蓄えること。この二点です。

手番を得た山崎八段は、いよいよ寄せに向かいます。まずは△3二銀▲1一竜も交換を入れて、いつでも底歩を打てるようにしました。自玉の安全を確保してから、待望の△7五桂を放ちます。(第11図)
NHK 11

△7五桂に対して▲7八銀のような受けでは△6七桂成▲同銀△7五桂とまた両取りを食らってしまいます。中村六段は▲7二歩と叩いて紛れを求めました。これは△同飛なら▲7三歩△同飛▲5四香という攻め筋を狙っています。しかし、飛車を見捨てて△6七桂成▲7一歩成△5六桂が鋭い決め手でした。(第12図)

NHK 12

▲同銀は△5八金以下先手玉は詰んでしまいます。したがって、▲同歩は止むを得ないですが、△5七桂▲同角△同成桂と進み、先手玉は寄り形になりました。

後手玉は王手は続くものの、上部が広いので即詰みはありません。中村六段は▲6一飛△5一香と合駒を使わせてから▲6八香と粘りましたが、△4七成桂▲5八銀△3六角で遂に受けが無くなりました。(第13図)

NHK 13

先手は桂しか持っていないので攻防共に見込みがありません。中村六段は▲5三桂△4二玉▲3四歩と首を差し出しました。以下、△5八成桂▲7九玉△6八成桂▲同玉△7七銀▲5七玉△6八銀打▲6七玉△7八銀不成と山崎八段は先手玉を即詰みに討ち取りました。(第14図)

NHK 14

第14図から銀を取れば頭金で詰みですし、▲7六玉も△7四香▲7五歩△5八角成以下の詰みです。

本局は山崎八段の仕掛けがやや無理筋で中村六段が優位を築きましたが、第8図からの方針を誤ったことが結果的には非常に大きかったようです。また、竜を作らせても寄せ合いで勝機ありと判断した山崎八段の見切りが印象的でした。

それでは、また。ご愛読ありがとうございました!

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