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「現代振り飛車の絶望、そして希望」って何を語っている本なの?

現代振り飛車の絶望、そして希望

どうも、あらきっぺです。

以前に X(旧Twitter) にて告知いたしましたが、この度、新たに本を出版させて頂く運びとなりました。 「現代振り飛車の絶望、そして希望」という書名になります!

なお、発売予定日は 2023/12/22(金)になります。

将棋書籍らしからぬタイトルや装丁ということもあってか、発売前の時点でも多数の反響をいただいております。著者として、嬉しい限りですね。

さて、今回の本は、もちろん振り飛車を題材にしています。ただ、一口に振り飛車といっても色々な種類がありますし、このタイトルでは何をテーマにしているのかも分かりにくいところはありますね。なので、この記事ではそういった部分をご説明していきたいと思います。

強い振り飛車党の棋士ですら…..

本書の説明に入る前に、一つ大事なことを述べておきましょう。

将棋の戦法は、大きく分けると二つに区分できますね。皆さんもご存じの通り、居飛車と振り飛車です。

ただ、プロ棋界においては、特に上位層のプレイヤーは殆どが居飛車党です。今期、順位戦でB級1組以上に在籍されている棋士を列挙してみましょう。(肩書は、2023年12月19日時点のもの)

・藤井聡太竜王・名人
・渡辺明九段
・広瀬章人九段
・豊島将之九段
・永瀬拓矢九段
・斎藤慎太郎八段
★菅井竜也八段
・稲葉陽八段
・佐藤天彦九段
・佐々木勇気八段
・中村太地八段
・糸谷哲郎八段
・佐藤康光八段
・近藤誠也七段
・澤田真吾七段
・三浦弘行九段
・羽生善治九段
・山崎隆之八段
・千田翔太七段
・横山泰明七段
・屋敷伸之九段
・大橋貴洸七段
・木村一基九段
・増田康宏七段

24名の棋士を挙げさせて頂きました。そして、この中で純粋振り飛車党の棋士は、★印を付けた菅井竜也八段のみ。振り飛車党の棋士は、圧倒的に少ないことがよく分かります。

また、その菅井八段も、相手が純粋振り飛車党の棋士と対戦した際には、自身が居飛車を採用する傾向にあります。今年度で言えば、森本才跳四段戦(2023.8.24 第65期王位戦予選)や宮本広志五段戦(2023.11.30 第65期王位戦予選)がそれに当たりますね。

ちなみに、菅井八段は相振り飛車が指せない訳ではありません。むしろ、菅井八段の相振り飛車は棋界でも一級品だと思いますし、優秀な作戦を披露されることも多々あります。菅井流と呼ばれるこの仕掛けは、とても有名ですよね。

純粋振り飛車党で、しかも相振り飛車も十分に指しこなせるにも関わらず、相手が振り飛車党であれば、普段は指さない居飛車をあえて選ぶ。なお、これは振り飛車党の大家である久保利明九段も同じ傾向が見られますし、故大山康晴十五世名人も同様です。もちろん、上記に列挙した居飛車党のプレイヤーがそうであることは言うまでもありません。

上位層にいる棋士は皆、それぞれ少しずつ棋風は違いますし、戦型選択も三者三様です。しかし、相手が飛車を振ってきた場合、自身は居飛車で戦いたいという見解は全員一致しています。それはつまり……そういうことなんですよ。そもそも、振り飛車が真に有利を取れる戦法であるならば、もっと相振り飛車が増えるはずですから。

要するに、対抗型の将棋において、振り飛車は苦しいのです。

本書のテーマ

振り飛車は苦しい。それは確かな事実だと言わざるを得ません。昨今においては AI が評価値を示すことで、それが明確に可視化されることにもなりました。

ただ、振り飛車が苦しいというのは何となく分かっていても、それを具体的に、そしてロジカルに説明した書籍は、これまで見られなかったのではないでしょうか? その試みを行うべく、本書では振り飛車が抱える欠陥や弱点を様々なアプローチから記しております。

同時に、そういった部分を深掘りすることで、どうすれば不利な部分が出にくくなるのか、どうすれば不利な要素をプラスに作用させることが出来るのか、ということもふんだんに記載いたしました。

なので、本書のテーマとしては、

①振り飛車の構造的な問題点の説明
②その問題をいかにして克服するか

この二点になります。

これらがメインテーマなので、本書は居飛車党・振り飛車党、どちらの方にとっても楽しんで頂ける内容になっているかと存じます。

また、本書では筆者の主張に信憑性を持たせるため、棋神アナリティクスの解析結果を記載した部分が多数あります。これにより、振り飛車が苦しい理由、及び振り飛車が理想とする展開を、より分かりやすくお伝えすることが出来たのではないかと考えています。棋神アナリティクスの解析情報の掲載を許可して頂いた HEROZ 株式会社様には、改めてお礼申し上げます。

では、なぜ振り飛車は指され続ける?

さて、ここまで再三にわたって、振り飛車は苦しいと記してきました。ただ、そうなると複数の疑問が浮かび上がってきます。

まず、振り飛車が苦しいのであれば、なぜ振り飛車を指すプロ棋士が多数、存在するのか? ということです。

プロ棋界は、当然ながら非常に勝負にシビアですし、研究も日進月歩です。ゆえに、ダメな作戦、ダメな戦型はどんどん淘汰されていきます。例えば、横歩取り☖8五飛戦法や飯島流引き角戦法は、それの典型と言えますね。

これらは、共に升田幸三賞を受賞した画期的な戦法ではありましたが、今では対策が確立してしまったので、完全に姿を消しています。そうした運命を辿った戦法は、他にもまだまだあるでしょう。

ところが、振り飛車は明らかに苦しいということが周知の事実であるにも関わらず、今でも多くの棋士が採用されています。これは、一体、どういうことなのでしょう?

また、ここ最近では先述したトップ層にいる居飛車党の棋士が、振り飛車を採用されるケースもちょくちょく見かけます。中でも、佐藤天彦九段は先手中飛車や四間飛車を積極的に採用されていますね。

他には、豊島将之九段や千田翔太七段といった、 AI 研究に造詣の深い棋士も振り飛車を指されています。AI が不利と示す戦法を、研究に AI を使いまくっている居飛車党の棋士が採用する。これも非常に興味深い出来事でしょう。

そして、本書では、こうした「不利なはずの振り飛車が指され続けている謎」についても言及しています。こうした背景を知ると、プロの将棋を観戦する楽しみが今まで以上に面白くなるかもしれません。読者の知見を少しでも広げることが出来れば、何よりです。

冒頭にも述べましたが、「現代振り飛車の絶望、そして希望」は、12/22(金)が発売予定日です。ご購入につきましては、下記リンクから可能です。

【将棋情報局】
https://book.mynavi.jp/shogi/products/detail/id=141582

【Amazon】
https://amzn.to/40FQHta

【楽天】
https://books.rakuten.co.jp/rb/17701668/?l-id=search-c-item-img-01

本書を一読されることで振り飛車の可能性を感じたり、棋力向上のお役に立てれば、著者としてこの上ない喜びです。末永く読まれ続ける本になって欲しいものですね。

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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