どうも、あらきっぺです。
以前にTwitterにて告知いたしましたが、この度、新たに本を出版させて頂く運びとなりました! 「終盤戦のストラテジー」という書名になります。
【近刊】あらきっぺさんの2冊目が出ます!
「終盤戦のストラテジー」10月刊です。
「現代将棋を読み解く7つの理論」でも発揮された、本質を見抜く目と明快な解説で終盤戦の核心をスマートに分析。将棋の勝ち方をすっきり理解できる、大人向け終盤入門です。https://t.co/KJwRr69z3q pic.twitter.com/hqjmd6hljD— 将棋情報局編集部 (@mynavi_shogi) September 15, 2021
なお、発売予定日は2021/10/18(月)になります。
まだ予約段階ではありますが、嬉しいことに多数の反響をいただいております。ありがたい限りですね。
これは予約しなければ。 https://t.co/NgOWaLNYXK
— mtmt (@mtmtlife) September 15, 2021
言語化された文章を読むと今まで感覚で指してた部分が自信をもって指せるようになったり読めなかったことが読めるようになったりするかもだから早く読みたい✨
今日発売で!笑 https://t.co/I4EJuxXxGL— 一手損メロンパン (@sode_migigyoku) September 15, 2021
これは楽しみ https://t.co/BNloFyHQLW
— Daisuke Katagami (@shogidaichan) October 5, 2021
ただ、このニュースをご覧になったとき、こういったお気持ちを抱いた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
終盤の本? もうすでに、世の中にはたくさんあるんだけど?
そう、終盤戦をテーマにした本は、たくさんありますよね。有名どころで言えば、谷川先生の「光速の寄せ」シリーズであったり、羽生先生の終盤術の本が挙げられます。他には、金子タカシ氏の「寄せの手筋200」も名著として名高いでしょう。
そうした数々の名著があるなかで、なぜ筆者が終盤を題材にした本を執筆したのか。もちろんそれには確固たる理由があります。この記事では、「終盤戦のストラテジー」は何を伝えたい本なのか、そして従来の本と何が差別化されているのか、ということを綴っていきたいと思います。
目次
この本の狙いは?
まず、この本がどういったコンセプトに基づく本なのか。また、これを読むことで読者にどんなベネフィットがあるのかを説明したいと思います。
単刀直入に述べると、「終盤戦のストラテジー」は、「応用力の高い考え方を身に着けるための本」になります。
そして、応用力の高い考え方を身に着けることで、
未知の局面でも正しい方針を
打ち立てられるようにする
このレベルにまで引き上げることが、本書の真の狙いになります。
しかし、これはずいぶんと虫が良すぎると言いますか、本当にそんなことできるの? と思われたかもしれません。そう思った方こそ、この続きを読んでいただきたいです。
なぜ、終盤は難しいのか?
ところで、将棋を指したり観たりするとき、やはり多くの方は「終盤って難しいなぁ」と感じられるのではないでしょうか。どう考えても、序盤の駒組みよりも遥かに難しいですよね。「玉を詰ます」という明確な目標があるはずなのに。
終盤戦の難易度が高い理由は幾つかあると存じますが、筆者は次に述べる理由が最たるものだと考えています。それは、「再現性が乏しい」ということ。やはり、見たことがない局面で正解を導き出すのは簡単なことではありません。
再現性が乏しい。それはつまり、暗記が出来ないことを意味します。暗記が出来ないということは、知識を詰め込む勉強法だけでは上手く行かない、ということを示唆していると言えるでしょう。
ただ、こう書くと反論が来るかもしれません。「いやいや、美濃囲いを崩す手筋とか覚えておくと、めっちゃ便利だぞ」
確かに、それは仰る通りです。▲6二銀と捨てる手筋とか、超有名で超便利ですよね。筆者も数えきれないくらい打った銀打ちです。
ただ、ここで一つの問題が浮上します。それは、いざ実戦の場において、毎度毎度、これと全く同じ状況になるのか? ということです。
例えば、相手が金を持っていたら△7一金打で意外と大変ですね。
また、7筋の歩が突いてあったりすると、△同金で無効です。
他には、△2三角で王手竜取りが飛んでくるかもしれません。
そもそも、部分的には美濃を崩せても、銀を渡すと自玉に必至が掛かることだってあるでしょう。
つまり何を主張したいのかと言うと、将棋の終盤戦は
・ほんの少し配置が違うだけで結論が変わる
・部分ではなく全体を見て判断する必要がある
こういった要素があるので、部分的な、限定的な手筋や攻略法を覚えても、応用力の高い学習法とは言えない! ということなのです。
多くの人は、序盤の定跡を一生懸命、覚えます。それは、とにかく再現性が高いから。そして、見慣れた配置、見慣れた将棋に相まみえるから。ゆえに、定跡を覚えるという「暗記法」が有効な勉強法になるのです。
しかし、終盤は先述したように、「再現性があまりにも乏しい」領域です。常に未知の局面になるので、言ってしまえば一期一会でしょう。
だからこそ、真に終盤力をつけるためには、「初見の局面を迎えても、正しい方針を打ち立てられる力」を身に着けることが、本当に必要なことになるのです。
もちろん、知識を詰め込むことも必要。けれども、それ以上に大事なことがあるのです。その大事なことこそ、「終盤戦のストラテジー」で伝えたいことですね。
大事なことは「考え方」
高い終盤力を身に着けるには、どうすれば良いのか? それは、「終盤特有の考え方を知る」ということ。つまり思考法ですね。筆者は、これが最も重要だと考えます。
考え方を示すものとして、格言が挙げられるでしょう。「終盤は駒の損得より速度」とか、「玉は下段に落とせ」「玉は包むように寄せよ」といったものがそうですね。これらは今さら説明するまでもない、将棋の金言です。
ただ、将棋の終盤戦には、これら以外にもまだまだたくさんの知るべき「考え方」があるのです。そして、そういった本当に大事な「考え方」が、現存する書籍では、まだまだ言語化が足りていないのではないか? と筆者は強く感じています。
なので、「終盤戦のストラテジー」では、終盤において有効になる様々な「考え方」を言語化することに重きを置いて執筆いたしました。
攻めるとき、受けるとき、攻防の兼ね合い、速度計算etc……終盤に遭遇するであろう様々な状況を解説しているので、汎用性の高い「考え方」が身につくのではないでしょうか。一冊の本の中で、これだけ多様な思考法を解説した本は、今までにも類を見ないのでは? と思います。
正しい「考え方」を知れば、ゴチャゴチャした局面を前にしても、乗り切れることが期待できるでしょう。
例えば、初段くらいの棋力で、矢倉囲いを崩すテクニックはバッチリ! という方がいたとします。すると、こういった局面から敵玉を寄せるのは、そう難しいことではないと想像します。
これは▲2四桂が痛烈な一撃ですね。ここに桂を打つ攻め筋を知っていれば、勝ち切れる将棋でしょう。
けれども、次の図のような混沌とした状況になると、何を目標に指せば良いのか分からなくなってしまうのではないでしょうか。
しかし、これがもし適切な「思考法」を身に着けているプレイヤーであれば、こんな複雑怪奇な状況でも、正しい手を導き出すことが出来ます。
また、もし矢倉の崩す手筋を知らなくても、「囲いを崩すときはどうすれば良いのか?」という考え方を知っていれば、自ずと急所に指が向かうことでしょう。
これらの理由から、筆者は「適切な考え方」に特化した内容の本を執筆することにチャレンジしてみました。それが「終盤戦のストラテジー」なのです。
「読みが全て」という固定観念を変えたかった
もう一つ、「考え方」にフォーカスした内容にした理由として、「終盤は読みが全て」という固定観念をぶち壊したかったという思いもあります。
ちなみに、なぜ終盤は読みが全てなのかというと、これは「暗記が上手く行かない」という理由と同じです。すなわち、
教科書通りの状況が実戦で現れるとは限りません。だから、その都度、読まないといけないよ。終盤は感覚ではなく読みが全てだから、丹念に読むことを放棄してはいけないよ。
ということなのです。
こういった内容は、多くの書籍で述べられていることであり、実際、筆者もそうだとは思います。
でも、これって、ただ正論を述べているだけで解決策は提示していないんですよね。そもそも強いから読めるのであって、棋力の乏しい人は、「読む」という作業が難しい。
この理屈を言い換えると、「重い荷物を運ぶには、どうすれば良いですか?」という問いかけに対し、
「腕力です。腕力を使って運びましょう。腕力が足りない人は鍛えましょう」
とお答えしているようなものだと思います。それが出来れば苦労はしねぇ! 出来ないから困ってんだよ! って話なわけでして。
なので、筆者としては、「読み」以外のアプローチで終盤力を培う可能性を見出したかった、読み以外の正論を提示してみたかった、という思いがありました。それが、冒頭に述べた「応用力の高い考え方を身に着ける」という方法です。
「終盤戦のストラテジー」がその一助になれば、とても幸いです。
冒頭にも述べましたが、「終盤戦のストラテジー」は、10/18(月)が発売予定日です。Amazonや楽天から予約することが可能です。
また、マイナビの将棋情報局から予約すると、棋譜データもセットで付いてきます。こちらの方がお得かも知れませんね!
本書を一読されることで、終盤戦の魅力を感じたり、棋力向上のお役に立てれば、著者としてこの上ない喜びです。立ち読みでも構いませんので、お目通しくださると何よりです。
それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!
あらきっぺ様
はじめましてyanchi76と申します。
本日10月15日、大阪市のMARUZEN & ジュンク堂書店 梅田店に表紙が見える状態で5冊ほど並んでいるのを発見したので少し読ませていただきました。前作は正直難しすぎて理解困難だったのですが、今回は切り口も興味深く拝見させていただきました。
(別の本を探す目的で来ていたのでまた時間があるとき読んで購入するかどうか決めようと思います。すみません。。。)
2点教えていただければ幸いです。
1.自分は藤井ブームで将棋に興味を持った中年で、やっと3手詰ハンドブックが終わり、最近「寄せの手筋200」を読み始めたレベルですが、この本はどの位の棋力を対象にされているのでしょうか
2.表紙が印象的だったのですが、カンデンスキーとかモンドリアンの抽象画からインスパイアされたものなのでしょうか?
yanchi76様、はじめまして。あらきっぺこと、荒木隆と申します。
大阪ではすでに販売されているのですね! 情報ありがとうございます。なにせ、私は滋賀の田舎に住んでいるものでして…。
さて、ご質問についてですが、解答は以下の通りになります。
1>具体的な対象棋力はありません。というのも、これは本書の内容が普遍的かつ抽象的なことを解説する内容になっているので、情報の受け手によって感じ方がそれぞれ変わるからです。
例えば、「リンゴ」という単語はそれこそ老若男女問わず認識できる単語かと存じますが、この単語を見たときに想起されるイメージは、人それぞれ異なるかと存じます。それと似たような理屈ですね。
ただし、第3章の内容に関しては、級位者の方は些か荷が重いかもしれません。とはいえ、第1章・第2章の内容をしっかり読み込んでいれば、理解不能になることは無いと考えております。
2>本の装丁に関しましては、実は私はノータッチです。担当編集の方とデザイナーさんが進めてくださいました。
ちなみに、貴殿が仰るように、私もモンドリアンの抽象画みたいだなと感じましたね。
また、蛇足ではありますが、誤字につきましてはお気になされないでください。勝手ながら、こちらで修正させていただきました。
お気に召されましたら、ブログや本をご覧頂けると幸いです。
あらきっぺ様
誤字をチェックせずお送りしてしまい大変申し訳ありませんでした・・・。
あらきっペ様
はじめまして、ぴよと申します。
終盤戦のストラテジーは今まで読んだ終盤の本の中で一番参考になりました。
形勢判断法では谷川先生の駒に点数をつけて考える方法が有名ですが、バランス型の現代将棋において藤井聡太先生が未知の局面でも正確に指し続けられる理由に興味があります。
藤井聡太先生の形勢判断法は従来の方法と比べてどのような点が違うのでしょうか。また、将棋ソフトの評価値の点数の理由を自分なりに解釈して言語化するためにはどのようなプロセスを辿れば実現できるのでしょうか。
はじめまして。
拙著をご賛辞くださり、とても嬉しいです。感謝申し上げます。
ご質問についてですが、藤井聡太先生に関する内容は、コメントを差し控えて頂きます。
これは、ご本人にしか答えようがない内容だと考えるからです。
ただ、棋譜や感想戦のコメントを拝見する限り、他の棋士の方々とは見えている世界が違うのかな、という印象は受けます。
また、言語化についてですが、私の場合、評価値よりも読み筋を重点的に見て、そこから言語化に結び付けることが多いです。
「棋は対話なり」という言葉があるように、棋譜を見れば、何を主張しているのかは概ね読み取れます。
例えば、攻めの手を連続的に選んでいるのならば、自陣は安全と判断していることが推察できますよね。
評価値だけ見ていると、局面の優劣以外の情報を得ることが難しいように感じます。
少しでも参考になれば幸いです。
あらきっペ様
返信ありがとうございました。
私の不勉強でした。質問が回答しにくいものになってしまい、大変申し訳ございませんでした。
現代将棋を読み解く7つの理論を購入して勉強し直します。
いえいえ。とんでもございません。今後もブログや拙著をお楽しみ頂けますと幸いです。
あらきっぺ様はじめまして。こちらのブログは以前から拝見させていただいてましたが、初めて投稿させていただきます。
私は、「終盤戦のストラテジー」が発売された直後くらいに、ネットレビューなどでの評判がとてつもなく良かったため、購入させていただきました。その内容は素晴らしく、何度も読み返したのち、週一で目を閉じて本書の内容の重要点を記憶想起して自身の大局観に定着するように努めています。
つまりは今の私が指す将棋の土台にさせていただいた棋書でありますと同時に、こちらの本で将棋の「棋理」を理解し始めたことにより、将棋が一段と楽しく面白くなりました。これにはただただ感謝の言葉しかありません。そういった心境ですので「強くなりたい」という友人二人にこの本をプレゼントしたり、ヤフー知恵袋で「強くなりたい」旨の書き込みをされた質問者様に推薦させていただいたりしております。(唯一気になるのは、内容が級位者低段者向けなのに比べて、キャプション手順に高段者向けの個所などがあって、初心者の方にお勧めしづらい所です。ここがもう少し短手順なら初心者に近い方にも「将棋の面白さを知るためにもまず読んでおくべき本」とお勧めできるのに、ともどかしく感じたこともあります)
とはいえ、私が過去100冊以上読んだ棋書の中で、棋力向上の面でも将棋を面白くさせてくれるという部分でも素晴らしかったため、ナンバー1のものだと思います。あらきっぺさんの棋書や思考方法などを知り得たことに、改めて厚くお礼申し上げます。
また今は「盤上のシナリオ」を拝読しながら、こちらの思考経路を実戦で活用できるよう試行錯誤しておりますが、やっぱり将棋って難しいですね。底なし沼にも思えます。
朝比奈太郎様
はじめまして。コメントをお送りくださり、ありがとうございます。
また、拙著をご賛辞くださり、とても喜ばしく存じます。並びに、それを通して将棋の魅力や面白さをお伝えすることができたのは、著者冥利に尽きますね。
なお、キャプションに記載した手順が高度になってしまったことは、誠に恐縮です。ただ、これはある程度、棋力が高い人にとっては本文の内容だけでは物足りない可能性もあると考え、そうした形を取った背景はあります。どの棋力層に合わせて文章を紡ぐのか、というのは今後の課題ですね。
将棋は棋力に関わらず、一生の趣味できるものだと考えております。(例えば、格闘技のような体を激しく動かす趣味だと、年老いた際に満足にプレイできなくなる懸念がありますが、将棋においてはそうした心配は相当にないと言えます)ゆえに「底なし沼」でもありますが「青天井」でもありますね。マイペースに楽しんでいきましょう。