最新戦法の事情【10月号・振り飛車編】を公開しました。詳細は、ここをタップ!

最新戦法の事情 振り飛車編(2021年10月号)

振り飛車 あらきっぺ

どうも、あらきっぺです。このところ寒くなったので、我が家ではこたつが出動することになりました。こたつ最高ですね。こたつはリリンの生み出した文化の極みだよ。

 

タイトルに記載されている通り、振り飛車の将棋を見ていきましょう。なお、前回の内容はこちらからどうぞ。振り飛車 2021年9月最新戦法の事情 振り飛車編(2021年9月号)

 

注意事項

 

・調査対象の将棋は、先月のプロの公式戦から(男性棋戦のみ)。
棋譜はネット上や棋譜中継アプリにて公開されているものから収集。
全ての公式戦の棋譜を見ているわけではありません。ご了承ください。

 

・記事の内容は、プロの公式戦の棋譜を参考にしておりますが、それを元にして筆者独自の研究内容も含まれております。記事内容の全てが棋譜の引用という訳ではありません。

 

・記事中に記載している出現率は、小数点第二位を四捨五入した数字になります。

 

・戦法や局面に対する評価や判断は、筆者の独断と偏見が多分に混じっております。当記事の内容を参考にして頂けるのは執筆者としては光栄ですが、妄信し過ぎないことを推奨致します。

 

最新戦法の事情 振り飛車編
(2021.9/1~9/30)

 

調査対象局は74局。それでは、戦型ごとに解説していきましょう。

 

先手中飛車

一直線穴熊にどう立ち向かうか


12局出現。この内、9局が初手に▲5六歩を指しています。これは相振り飛車を恐れていないこと及び、積極的に先手中飛車を採用したいという意思を感じますね。

先手中飛車に対して、居飛車の対策は長らく後手超速オンリーと言える状況でした。しかし、現環境では振り飛車側の対策が整いつつあり、居飛車はそう簡単にはリードを奪えなくなってきています。具体的には、以下の記事がご参考になれば幸いです。

【後手超速の対処法】
2021年2・3月合併号 豪華版

 

そこで、現環境では持久戦を選ぶ将棋がぽつぽつ増えつつあります。具体的には一直線穴熊は有力策の一つですね。特に、△4一金型を維持する指し方が面白い手法です。(参考図)

一直線穴熊 定跡

この指し方を選ぶと、居飛車は従来よりも得した状態で駒組みを進めることが出来ます。振り飛車にとって、なかなか油断ならない相手と言えるでしょう。

なお、△4一金型の利点については、以下の記事をご参照くださいませ。

振り飛車 あらきっぺ最新戦法の事情 振り飛車編(2021年8月号)

 

そこで振り飛車もこれに対抗するべく、違う駒組みを模索しています。今回は、それを解説しましょう。(第1図)

一直線穴熊 定跡

一直線穴熊は、早めに△3三角や△4四歩を指します。もちろん、ここから左美濃に組んでくる可能性もゼロではないですが、この組み方ならほぼ100%穴熊でしょう。

なので、振り飛車は▲1六歩で様子を尋ねているのです。「穴熊にするつもりなら、端歩は受けにくいでしょう?」と問いかけている訳ですね。

一直線穴熊 定跡

これに対して、居飛車はシンプルに△1二香から穴熊を目指すのが普通です。もちろん先手は▲1五歩と位を取りますね。そこからの指し方はいろいろありますが、振り飛車は相穴熊の将棋にするのが最も有力です。(第2図)

一直線穴熊 定跡

さて、ここから振り飛車は左金を囲いにくっつけたいのですが、金が合体する前に△2四角や△7三桂→△6五桂のような仕掛けで動かれると芳しくありません。

端歩に手数を費やしているので、早い戦いになると駒組みの遅れが目立ってしまいます。ゆえに、戦いが起こらないよう、慎重に駒組みを進める必要があります。

一直線穴熊 定跡

具体的には、▲4七銀と引くのが良いですね。銀を引くのは消極的に見えますが、これが賢い構想です。居飛車は△2四角▲5六飛△7三桂で攻めの形を整えるのが自然ですが、そこで▲3六銀が急所の一着になります。(第3図)

なお、この駒組みの実例としては、第80期順位戦C級2組4回戦 ▲杉本和陽五段VS△藤森哲也五段戦。(2020.9.24)が挙げられます。(棋譜はこちら

一直線穴熊 定跡

図の青枠で示したように、振り飛車は[▲5六飛・▲3六銀型]を作るのがポイント。この構えに組んでおけば、居飛車の仕掛けを封じることが出来るのです。

一直線穴熊 定跡

居飛車は△4五歩▲同歩△6五桂という要領で動くのが狙いでした。けれども、現局面で△4五歩と突いても今度は▲同銀と取られて無効です。2四の角の利きが通らないと、居飛車は攻めがヒットしないのですね。よって、ここから居飛車がスムーズに仕掛けることは難しいと言えます。

一直線穴熊 定跡

仕掛けが無いのであれば、振り飛車は安心して左金をくっつけることが出来ます。ガッチリとした組み合いになれば、端の位を取っている振り飛車が旗色の良い序盤になるでしょう。したがって、第3図は振り飛車の作戦勝ちが見込める局面ですね。

 

やはり同じ囲いに組んでいる以上、「端の位」というアドバンテージが取れば、それがそのまま優劣の差に結び付きやすいことが分かります。

一直線穴熊 定跡

では、これで振り飛車の対策が完備された……と判定を下すのは尚早です。実を言うと居飛車はこの局面に至る前に問題があり、そこで工夫を講じれば互角以上に戦うことが出来るのです。

そのアイデアにつきましては、豪華版に記載しておりますので、ご興味のある方はご覧くださいませ。

最新戦法の事情【振り飛車編】(2021年10月号 豪華版)

 

四間飛車

左美濃で袖飛車だ!


15局出現。出現率は前月から5%ほど下がりましたが、安定して指されている戦型ではありますね。

現環境の四間飛車は、端的に言ってしまえば穴熊との戦いです。ゆえに、居飛車は穴熊を志向する作戦が主流ですね。けれども、今回の期間では左美濃で斬新な作戦を披露した将棋が現れました。それをテーマに解説を進めます。(第4図)

四間飛車 対策 左美濃

対四間飛車で居飛車が左美濃を選ぶと、このような局面は頻出するでしょう。

ここから居飛車は銀冠穴熊に組むことが理想の一つ。ただ、振り飛車に▲7八銀型を維持されていると、どこかで▲6五歩と突かれる手が気掛かりです。銀冠穴熊に組み替えている途中に▲6五歩から動かれると、居飛車は堅陣に組めなくなってしまう恐れがあります。

四間飛車 対策 左美濃

こういった背景があるので、居飛車は愚直に銀冠穴熊を目指すのは得策ではありません。なので、違うプランを選ぶ必要があります。

具体的には、△7二飛が面白い一手。これが今までに見られなかった作戦ですね。(第5図)

◆なお、この作戦の実例としては、第80期順位戦C級1組4回戦 ▲宮本広志五段VS△黒田尭之五段戦。(2020.9.21)が挙げられます。(棋譜はこちら

四間飛車 対策 左美濃

居飛車は角を目標にしているので、▲6七銀で角頭をガードする手が考えられます。ただ、それには△7五歩▲同歩△6四銀が心配。銀を上がると▲6五歩が実行しにくくなるので、振り飛車は角が捌きにくいことがネックです。

四間飛車 対策 左美濃

したがって振り飛車は、△7五歩を突かせて対応するプランを選ぶことになります。そうなると、▲5六歩が候補の一つ。以下、△7五歩▲同歩△同飛▲6七銀までは一本道でしょう。

振り飛車 定跡

これで何事も起こらなければ振り飛車不満なしですが、そうは問屋が卸しません。△7六歩▲8八角△8六歩▲同歩△1五歩が鋭敏な攻め。これが居飛車の狙っていた仕掛けです。(第6図)

四間飛車 定跡

素直な対応は▲1五同歩ですが、△同香▲同香△同飛と進められたときが嫌らしいですね。振り飛車は端と角頭にキズを抱えているので、陣形をまとめるのに苦労することでしょう。

振り飛車 定跡

かと言って、この端歩を取り込ませるのも振り飛車は辛い選択です。この局面は居飛車の仕掛けが成功していると考えられるでしょう。振り飛車が▲7八銀型を維持していたことを上手く逆手に取った変化ですね。

 

振り飛車 定跡

既存の感覚では、左美濃に組む場合は持久戦志向なので、このように早い段階で動いてくる指し方は見られませんでした。しかし、昨今の対抗形では、「急戦と持久戦の両天秤」がキーワードの一つ。それを鑑みると、この指し方は極めて現代的な指し方であることが分かります。

四間飛車 対策 左美濃

居飛車は銀冠穴熊を含みに見せることで、袖飛車に対して相性の悪い形に誘導することが出来ています。元々、銀冠穴熊を目指す指し方は持久戦一辺倒でしたが、袖飛車と掛け合わせることで柔軟に急戦策へシフトできるようになりました。これは大きな発見と言えるでしょう。

この作戦は先手番でも応用できそうなので、居飛車は作戦の幅が広がりました。四間飛車は新たな強敵が出現し、苦労している印象ですね。

 



三間飛車

石田流、復活か?


25局出現。他の戦型と比較すると、対局数の数は頭一つ飛び出ています。相変わらず盛んに指されていますね。

また、今回の期間では石田流に組み替える作戦が11局も指されていることが目を引きます。石田流の組み替えは参考図の作戦が強敵なので、鳴りを潜めていたところがありました。けれども、振り飛車側も工夫を打ち出しているのです。(参考図)

三間飛車 定跡

まずは、△3五歩▲6七金△5一角で石田流へ組む準備を進めます。居飛車は早い戦いに備えるべく▲7八金と囲いますが、そこで△5四銀と上がるのが用意の一着ですね。(第7図)

なお、この局面の類例としては、第80期順位戦C級2組4回戦 ▲長谷部浩平四段VS△山本博志四段戦。(2021.9.16)が挙げられます。(棋譜はこちら

三間飛車 石田流 組み換え

ちなみに、従来の振り飛車は早めに3筋の歩を交換したり、[△4二角・△5四歩型]に組むような指し方が多かったのですが、それではなかなか上手く行かないところがありました。その理由につきましては、以下の記事をご覧くださいますと幸いです。

あらきっぺ 振り飛車最新戦法の事情 振り飛車編(2020年10月号) あらきっぺ 振り飛車最新戦法の事情 振り飛車編(2021年2・3月合併号)

 

三間飛車 石田流 組み換え

さて、この銀上がりの意味ですが、これは「射手の構え」を作らせない狙いがあります。そうすることで、安心して石田流に組み替えられるようにすることが目的ですね。

三間飛車 石田流 組み換え

例えば、ここで▲6八角と引くと△4五歩と突きます。こうすれば居飛車は4六に銀がでれないので、石田流の組み替えを阻止することが出来ません。

ゆえに、居飛車は△4五歩に対しては▲6五歩から左辺を盛り上がるプランに切り替えるのが一案です。以下、△3六歩▲同歩△同飛▲3七歩△3四飛▲6六銀△3三角が予想される進行の一つですね。この局面をどう見るか。(第8図)

振り飛車 定跡

居飛車は6筋の位が取れたことで、非常に手厚い陣形を作ることが出来ました。ここでは▲7七桂と跳ねて、あの位をさらに強化するのが有力でしょう。囲いの性能という点では、居飛車の方に軍配が上がります。

振り飛車 定跡

ただ、振り飛車も歩を手持ちにしながら石田流に組み替えることが出来ているので、自分の理想を実現しています。また、先程▲7七桂と跳ねる手が有力とは述べましたが、この手を指させれば穴熊を阻止できたと受け取れることは確か。ゆえに、振り飛車も悪いことばかりではありません。

振り飛車 定跡

第8図はお互いに好形を作っているのでいい勝負ですが、やはり石田流に組めたことは大きな魅力を感じます。よって、この局面も振り飛車に不満は無いと考えられるでしょう。

 

三間飛車 定跡

それでは、まとめに入ります。この戦型で振り飛車が石田流を目指すのなら、△3五歩→△5一角と指した後に△5四銀と上がるのが急所です。

これで△4五歩を突きやすい状態にしておけば、「射手の構え」を封じられるので石田流へ組み替えることが出来ます。攻めるための銀上がりではなく、飛車を3四に安定させるための銀上がりなのですね。

三間飛車 石田流 組み換え

石田流への組み替えが実現できるのであれば、振り飛車は存分に戦えます。後手三間の石田組み替え作戦は、まだまだ可能性があると言えるでしょう。

 

角交換振り飛車

自力で阪田流を発動


10局出現。角道を止める振り飛車の人気に押されていますが、ちょこちょこと指されてはいます。駒組みの自由度が高いので、力戦派のプレイヤーが好んでいる傾向がありますね。

今回は、珍しい作戦を披露した将棋があったので、それを紹介しましょう。(第9図)

サイキック角

ご覧のように、先手は非常に早い段階で角を6六に上がっていますね。一体、どのような意図があるのが不可解ですが、ここから数手ほど進むと正体が明らかになります。

サイキック角

後手は△7二銀が無難ですが、先手は7七金と上がります。以下、△6四歩▲7五歩△1四歩▲8八飛で向飛車に構えるのが先手の描いていた構想でした。(第10図)

なお、この作戦の実例としては、第15回朝日杯将棋オープン戦一次予選 ▲黒田尭之五段VS△千葉幸生七段戦(2021.9.28)が挙げられます。

振り飛車 定跡

ここまで来ると、先手は阪田流向飛車のような指し方になっていますね。

阪田流向飛車は手損することなく向飛車に組むことが出来るので、飛車先を素早く逆襲できることが最大のメリット。ただ、阪田流は相手が角交換をしてくれないと組めない制約があるので、自力では発動できません。

振り飛車 定跡

しかし、この指し方なら角交換の有無に関係なく[▲7七金・▲8八飛型]に組むことが出来るので、そういった心配は無いですね。自力で阪田流向飛車を発動できるところがこの作戦の趣旨なのです。

振り飛車 定跡

ここからは玉を囲い、機を見て▲8六歩から8筋の逆襲を目指すことになります。▲7七銀型に組む角交換振り飛車と比較すると、全く手損することなく▲8六歩から動けることが振り飛車の自慢ですね。

見た目は奇異ですが、これは一理ある指し方のように感じます。今後が楽しみな戦型が、また一つ増えましたね。

 

その他・相振り飛車

居飛車党が参戦しつつある


12局出現。なお、相振り飛車は2局でした。

対抗形になった将棋の中では、雁木との併用を見せる将棋が3局指されていました。ここ最近、ちょくちょく見かける指し方ですね。(第11図)

雁木と振り飛車の併用

このように、振り飛車と雁木の両方の可能性を残しながら駒組みを進める手法がトレンドの一つです。▲7八銀なら穴熊が消えるので飛車が振りやすくなりますし、▲4六歩や▲3六歩にも振り飛車が選びやすい印象です。本来、対振り飛車にはこれらの筋の歩は後回しにするのが自然ですから。

雁木と振り飛車の併用

また、▲7八玉や▲5六歩なら雁木の強敵である[左美濃+腰掛け銀]の急戦策が消えるので、後手は雁木に組みやすくなります。最も手広いのは▲2五歩ですが、後手は△5四歩や△3二金でまだ態度を保留できるので、様子を見ることが出来ますね。

雁木と振り飛車の併用

なお、この作戦は雁木が指せることが前提ではあるので、純粋振り飛車党ではなく、居飛車党が採用するケースが目立ちますね。実例としては、第93期ヒューリック杯棋聖戦二次予選 ▲近藤誠也七段VS△松尾歩八段戦(2021.9.22)が挙げられます。

 

現環境の相居飛車は後手雁木の株が上昇傾向にあるので、こういった動きが活発になりつつあります。雁木が指せるプレイヤーは、この作戦にチャレンジしてみるのも面白いでしょう。

 


お知らせ

序盤の知識をもっと高めたい! 常に作戦勝ちの状態で戦いたい! という方は、こちらをご覧ください。

参考 最新戦法の事情【振り飛車編】(2021年10月号 豪華版)

 

最新の戦術には興味があるけど、どう指して良いのか分からない。どうしてプロがこういった指し方をするのかを知りたい。そういったお気持ちがある方には、うってつけのコンテンツとなっております。

 

有料(300円)ではありますが、その分、内容は深堀しております。よろしければご覧ください!

 

今回のまとめと展望

 

【現環境の特徴は?】

現環境の対抗形は[先手中飛車・四間飛車・三間飛車]の三つが主戦場ですが、全ての戦型において、居飛車は穴熊に組む指し方が人気を集めています。まさに持久戦全盛と言えるでしょう。

四間飛車 対策 左美濃

また、四間飛車の項目で述べたように、ただ堅陣を作りに行くのではなく、急戦の含みをチラつかせながら駒組みを進めていることも特徴の一つです。

現環境の対抗形は序盤の駆け引きが増え、考える要素が増えていることも昔とは異なるところだと言えるでしょう。

 

【じっくり待つ作戦は苦労している】

本来、振り飛車は「じっくり駒組みを進めて良い形を作り、相手の出方を待つ」という指し方が主流でした。けれども、現環境ではそういった姿勢で序盤を戦うと、思わしくない情勢になりやすい印象を持っています。

先述したように、現環境において四間飛車は苦労している傾向があります。これは四間飛車という戦法の本質が「相手の攻めを待つ」という受け身の戦法であることが原因ではないかと考えています。

 

振り飛車 あらきっぺ

逆に、自分から積極的に動いて行く三間飛車や角交換振り飛車は、満足に戦えている印象を受けます。こうして素早く動く姿勢を見せれば、居飛車も一番の理想である端歩突き穴熊に組む余裕はありません。「即効性理論」を意識することが、現環境では最も大事なことなのかもしれませんね。

 

それでは、また。ご愛読くださり、ありがとうございました!

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