最新戦法の事情【11月号・振り飛車編】を公開しました。詳細は、ここをタップ!

今週の妙手! ベスト3(2020年10月第2週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2020年10月第1週)

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。また、プレイヤーの名称が長い場合は、適宜省略・変更させて頂きます。ご理解頂けると幸いです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2020.10/4~10/10)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。先手の四間飛車に対して、後手が左美濃から穴熊に組み替えるという意欲的な作戦を採り、このような局面を迎えました。(第1図)

 

フラッドゲート

2020.10.4 ▲ECLIPSE_RyzenTR3990X VS △19W戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)(棋譜はこちら

中盤の難所といったところですね。

居飛車としては、相手の攻めが緩んだところなので、ここは指し手の自由度が高い局面です。こういったとき、どんな手を指すのかは棋風が出るものですが、本譜はとても冷静な手が選ばれました。

19Wが指した手は、△2四歩です!

今週の妙手
2筋の歩を突いて、自陣の憂いを消しておくのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

かなり地味な一手ですが、これが賢明な判断でした。こうすることで、後手は端の脅威を緩和することが出来るのです。

先手は▲5四歩と取り込みたいので、その準備のために▲3七歩と打ちますが、そこで△1六桂と王手を掛けるのが期待の一着ですね。(途中図)

 

フラッドゲート 妙手

▲2五桂と打たれる攻め筋をケアしたことで、居飛車は桂を渡しやすくなっています。これを指したかったので、予め△2四歩を突いておいたのですね。

先手は▲1六同香と取りたいのは山々ですが、香を渡してしまうと▲5四歩のときに△5五香という反撃を与えるので、自分の攻めが進まなくなってしまいます。

 

フラッドゲート 妙手

よって、▲3九玉は致し方ないですが、ここに楔を入れてから△8六角が良いタイミング。先手は▲8八飛△8五歩▲5八飛で8筋を重たくさせますが、△7七角成▲同桂△8六歩▲5四歩△8七歩成と進んだ局面は、居飛車がはっきりと良くなりました。(第2図)

 

将棋ソフト 妙手

ここで▲5三歩成と成り込まれても、△7七と▲5二と△6七とで一直線に攻め合えば問題ありません。居飛車は1六に桂を打てたことで、挟撃態勢に持ち込めていることが心強いですね。

しかし、ここで▲5三歩成が指せないようでは振り飛車の非勢は明らかでしょう。以降は、ここで得たリードを守り切った19Wが勝利を収めました。

 

フラッドゲート 妙手

こうしてみると、居飛車は△1六桂を設置できたことが、非常に大きかったことが分かります。また、19Wの指し手を振り返ってみると、

(1)桂を渡せる準備をする(△2四歩
(2)楔を放って敵玉に迫る(△1六桂
(3)挟み撃ちに持ち込む(△8七歩成

と流れるような工程になっており、スムーズに寄せの態勢を整えていることが分かりますね。的確に寄せのビジョンを描く構想力の高さが窺えた妙手でした。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。後手の雁木に先手が急戦調の作戦で対抗する将棋になり、以下の局面を迎えました。(第3図)

 

将棋ソフト 妙手

2020.10.9 ▲Black_Cat VS △Frozen戦から抜粋。(棋譜はこちら

後手が△7七銀と放り込んだところ。これは次に△9六香▲同金△9八歩▲同玉△6八竜という攻め筋が狙いであり、すこぶる迫力のある一着ですね。

何はともあれ、先手は受ける必要がありますが、ここでBlack_Catが指した受けは、なかなかトリッキーな着想でした。

Black_Catが指した手は、▲5九銀打です!

今週の妙手

意図的に自玉から離れた場所に銀を打ったのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

なぜ、わざわざ玉から離れた場所に銀を打つのでしょう? 守備駒を投資するのなら、▲7九銀打のほうが囲いを強化しているように見えるところですよね。

ただ、▲7九銀打という受け方を選ぶと、△9六香▲同金△6八銀不成という攻めを誘発します。(第4図)

 

将棋ソフト 妙手

▲同銀は△8七銀と打たれてしまいますね。その変化でも先手は凌ぎ切れるかもしれませんが、些か危うい端を渡っているようにも見受けられます。

このとき、銀を5九から打っておくと、先手は危ない橋を渡らずに勝ち切ることが出来るのです。なぜなら、△6八銀不成のときに▲5八香というクロスカウンターを放てるからです。(第5図)

 

将棋ソフト 妙手

これは△9八歩からの詰めろを解除しつつ、▲7三馬△6二歩▲5二香成△同玉▲6三銀△同歩▲5一金という手を見せた詰めろ逃れの詰めろになっています。こうなると彼我の体勢がひっくり返っているので、先手勝勢と言えるでしょう。

▲5九銀打には、こういった狙いが秘められているのです。

 

今週の妙手

仕方がないので、後手は一気の攻めを諦め、△8六銀成▲同馬△8四飛と受けに転じます。しかし、これには▲7五銀△5四飛▲5八歩が鉄壁のバリアー。ここでも5九に打った銀の存在が光ることとなりました。(第6図)

 

将棋ソフト 妙手

冒頭の局面と比較してみると、先手玉は見違えるように安全になりましたね。ここまで自玉が堅くなれば、もう怖いものはありません。このあとは、玉型の差にモノを言わせた先手が手厚く押し切りました。

 

今週の妙手

先手はいろいろな受け方がありましたが、5筋に防波堤を作って、2八の竜の力を削ぐことが急所でした。なので、▲5九銀打が適切な応手になるという理屈なのですね。自玉周辺ではなく、外堀を構築することで安全を確保するテクニカルな妙手だったと思います。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。これも目の付け所が違うなぁと感じさせられた一手でした。(第7図)

 

今週の妙手

2020.10.5 ▲Kamuy_vi05_1c VS △Suisho201003_TR3990X戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)(棋譜はこちら

後手は角銀交換の駒得ですが、2筋を突破されつつあるので、ぼやぼやしていると甚大な被害を招きかねません。

そうは言っても、相手の飛車を堰き止めるのは至難の業に思えます。ところが、ここから水匠は魔法のようにそれを実現してしまったのです。

水匠が指した手は、△1五角です!

今週の妙手

端に角を設置するのが、攻防に働く妙手でした!


 

 

今週の妙手

これが読みの入った一着でした。ちょっと思い浮かばない対応ですね。

なお、ここに角を打つのなら、△2七歩→△2六歩と連打してから打つ方が良いのでは? と疑問を抱いた方は鋭いです。けれども、後手はここで歩を消費してしまうと、ある不都合が生じるので単に△1五角が勝ります。理由は後述するので、ひとまず解説を進めましょう。

 

今週の妙手

先手は直線的に攻め合うなら、▲2三飛成になりますね。しかし、これには△8六歩▲同歩△3七角成と進めるのが巧妙な手順です。(第8図)

 

水匠 妙手

先手は手の流れからすると▲3三成銀としたいのですが、△8六角▲8七歩△7七桂と踏み込まれると攻め合い負け。この変化は、3七の馬が5筋方面を封鎖していることが大きく、後手は一手勝ちが望めます。

 

水匠 妙手

なので、先手は▲4六銀であの馬をどかす必要があるのですが、その瞬間に△2二歩と打つ手が卒のない受け。こうなると、先手の攻めは頓挫していますね。(A図

2筋を連打して歩を二枚消費してしまうと、この△2二歩を指すことが出来ません。これを用意するために、水匠は単に△1五角を打ったという訳なのです。

 

今週の妙手

とはいえ、単に△1五角では▲2六歩と受けられたときに角が狭いので、不安を覚えるところでもあります。しかし、これには△3五歩が小味な一手。▲同成銀だと脅威が緩和されるので、△7七歩成▲同桂△7六歩という攻めが間に合います。

 

水匠 妙手

また、△3五歩に▲1六歩と突けば角は取れますが、△3六歩▲1五歩△3七歩成と進んだ局面は後手優勢。桂を持つと△7七桂という打ち込みが速いので、これも後手は攻め合い勝ちが期待できるでしょう。(B図

 

改めて、△1五角の局面に戻ります。

今週の妙手

そういった事情があるので、本譜は▲2六銀と指したのですが、これには△2七歩▲同飛△3八銀▲2八飛△2七歩▲3八飛△2六角と進めれば、後手は角を生還することが出来ますね。(第9図)

 

水匠 妙手

こうなってみると後手は駒得をキープしていますし、懸案であった2筋の処置も上手くまとめることが出来ました。加えて、次に△4九銀と打つ手も厳しく、攻め筋にも困りません。後手が優位を広げたことは火を見るよりも明らかでしょう。

 

今週の妙手

改めて振り返ってみると、後手は△1五角を打つことにより、相手の攻めを大いに鈍化させることが出来ました。

△1五角は狭い場所に角を投資するので見えにくい一着ですし、打つとしても飛車先を連打したほうが確実に3七の桂が取れるため、かなり抵抗感があります。持ち歩を温存するために単に角を打つ方が勝り、かつその方が相手の攻めを牽制することになっているのは、驚きを禁じえません。まさに妙手たる一着という印象ですね。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA