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今週の妙手! ベスト3(2020年12月第1週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2020年11月第4週)

注意事項

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。また、プレイヤーの名称が長い場合は、適宜省略・変更させて頂きます。ご理解頂けると幸いです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

今週の妙手! ベスト3
(2020.11/29~12/5)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。相掛かりから先手が腰掛け銀に、後手が早繰り銀に構える将棋になり、このような局面を迎えました。(第1図)

 

コンピュータ将棋

2020.12.2 ▲ANESIS VS △Marulk戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)(棋譜はこちら

後手は自陣が安定していますが、4五の桂の存在は脅威ですね。これを取り除ければ形勢の好転が期待できます。

ただ、ここで△4四歩は▲3三歩や▲3四角があるので上手くいきません。そうなると4五の桂に働き掛ける手段が難しそうですが、本譜は的確な手順でそれの実現に成功したのです。

Marulkが指した手は、△7三銀です!

今週の妙手
銀を引いて、守備力を高めたのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

攻めの銀を引っ込めるのは気弱なようですが、これが賢明な一着でした。後手は飛車の横利きを通しておくことが大きな意味を持つのです。

なお、後手は△7五銀と前に出るほうが攻め味があるように見えますが、それには▲5五角が厄介な一打。△4四角と打てば両取りは受かりますが、▲同角△同歩▲7六歩のときに対応に困ります。(A図)

後手は銀を7五へ出ると、▲5五角の威力を高めてしまうので芳しくありません。

 

ゆえに、銀を引くのがクレバーな一手になるのです。

今週の妙手

さて、この銀引きは次に△2四飛とぶつける手が狙い筋の一つです。先手としては▲7七桂と活用したいところですが、現状ではどうも間に合いそうにありません。飛車交換を見せているので、△7三銀は軟弱な手ではないのですね。

 

今週の妙手

本譜は▲5五角と打って△4四歩を突かせようとしましたが、これには△3四飛が用意の一手。▲3八歩と受けるのはやむを得ないですが、それから△4四歩と突けば、後手はあの桂を捕獲することが出来ました。(第2図)

 

コンピュータ将棋

[△3四飛⇔▲3八歩]の利かしを入れることで、後手は▲3三歩の叩きを消しています。こうすることで、自陣を乱される心配がありません。

 

コンピュータ将棋

後手はすぐに桂を取れるわけではありませんが、「いつでも取れるようになった」という状況に持ち込んだことが大きいのです。こうなると先手は自分の主張だった4五の桂が機能していないので、本意とは言えない状況です。さっと銀を引いた後手の立ち回りが光っていますね。

 

今週の妙手

冒頭の局面では4五の桂が威張っていたので、これを何とかしたいところでした。しかし、単に△4四歩では上手くいかないのは先述の通りです。

安心して△4四歩を突くためには自陣の守備力を向上する必要があり、そのための△7三銀だったという訳なのですね。△7三銀は、駒の最適な配置を見極めた柔軟な妙手だったと思います。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。後手の角交換振り飛車に先手が矢倉に組んで対抗する将棋になり、以下の局面を迎えました。(第4図)

 

水匠

2020.12.3 ▲Suisho3test_TR3990X VS △Cendrillon戦から抜粋。(棋譜はこちら

見るからに居飛車が気持ちよく駒を捌いていますね。しかし、次に△5五歩や△3七角といった催促を見せられているので、見た目ほど簡単ではない局面です。

正確に攻めを続けないと切れ筋に追い込まれかねない場面でしたが、先手は見事な組み立てで後手の防衛ラインを突き破っていきました。

Suisho3test_TR3990Xが指した手は、▲8五角です!

今週の妙手

銀取りに角を打ち、受け方を打診したのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

こんなところに角を打って大丈夫なの? と感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。確かに単調な攻め方ですが、これが思いのほか受けにくい一着なのです。

 

今週の妙手

居飛車は5三に成桂が作れれば、一気に優勢になります。よって、銀を逃げる手は指せません。

また、△6二金には▲5二角成△同金▲5三銀と咬みつきます。これも成桂が出来るので十分でしょう。

 

今週の妙手

他には、「角には角で対抗」という格言に倣う△7四角も考えられます。けれども、これは▲同角△同歩▲3七角が絶好の自陣角になります。(第4図)

 

コンピューター将棋

6四の歩を狙いつつ、後手の楽しみだった△5五歩や△3七角を防いでいますね。攻防兼備の一着であり、保全性理論に則っていることが分かります。

 

コンピューター将棋

ここで△7三角には▲7五歩。△6三金には▲6五歩があります。また、△7三金には▲2六角がヒットしますね。(B図)

このように、後手は▲3七角を打たれると味の良い受けがありません。コビンが開くとこういった弊害が生じるのです。

 

今週の妙手

したがって、本譜は△4二金と受けました。これが最も自然な受け方ですが、そこで▲4三歩が手筋一閃。これで後手は痺れているのです。(途中図)

 

焦点の歩

△同飛と取ると、▲2四飛△2三歩▲3四飛が指せるようになります。横歩が取れれば▲4四歩と▲5二角成△同金▲3二飛成という狙いが残るので、先手の攻めは止まらないですね。

 

焦点の歩

また、△4一金には▲5三桂成が突き刺さります。

なので△同銀は致し方ないですが、4三の地点が塞がったことに着目して▲5三桂成が鋭敏。以下、△同金▲2四飛△2三歩▲4五歩で先手の攻めが決まりました。(第5図)

 

水匠

飛車交換になることは確実ですね。そうなると、玉の堅さで上回っている先手が良いことは火を見るよりも明らかでしょう。将来の▲5一飛がとても厳しいので、居飛車がはっきりと優位に立ちました。

 

今週の妙手

先手は8五に角を打つことで、敵陣に隙を作りだすことに成功したことが分かります。4四の飛が下に移動できない(横歩取りの筋が発生するから)ので、ここに角を打つ手が厳しいのですね。

加えて、水面下に潜む▲3七角の筋を利用したのも巧みなところです。▲8五角は、獲物を確実に仕留めるスナイパーを思わせる妙手でした。

 




第1位

 

最後に紹介するのは、こちらの将棋です。これは良い意味で人間らしくなく、将棋ソフトの面目躍如と言った妙手でした。(第6図)

 

コンピュータ将棋

2020.12.3 ▲ANESIS VS △Suisho3test_TR3990X戦から抜粋。(棋譜はこちら

これから本格的な終盤戦が始まろうかとしている場面ですが、先手陣は見るからに面妖な配置ですね。

玉型が不安定なので先手の非勢は否めないように見えます。ところが、次の一手を境に局面の状況はガラリと変わりました。

ANESISが指した手は、▲4五歩です!

今週の妙手

玉頭の歩を突き捨てたのが勇敢な妙手でした!


 

 

今週の妙手

よもや、自玉の上部を守る歩を捨てるとは想定外だったのではないでしょうか。この手の意味は追い追い明らかになるので、ひとまず本譜の進行をなぞりましょう。

 

今週の妙手

後手は7三の銀を攻めに使いたいので、△6四銀と出るのは自然ですね。対して、先手は▲6八飛△6五歩▲7四銀と応対します。

この応酬は、後手の銀が前進しているので先手は不満のようですが……。(第7図)

 

コンピュータ将棋

さて、後手はすぐには△5五銀とは指しにくいので、△4五歩で力を溜めるのが妥当です。

先手は受ける条件がどんどん悪くなっているようですが、▲3七玉が狙いの一手。これを指したかったので、▲4五歩と突き捨てたのですね。(途中図)

 

コンピュータ将棋

馬の利きを堰き止めたことで、2七の銀が宙ぶらりんになっています。大将が自ら敵兵を倒しにいくとは勇ましさを感じますね。

なお、▲4五歩のときに後手が単に△同歩でも、▲3七玉と寄る手が好手になります。

 

コンピュータ将棋

後手は銀を助けるなら△4六歩と突くことになりますが、▲4五歩で一時力に過ぎません。そこから△5五銀と暴れても、▲6五銀引が絶品です。(C図)

こうなると6八の飛が攻めに起動しますし、将来▲4四桂と打たれる攻めも痛烈なので、後手は選べない変化でしょう。

 

コンピュータ将棋

ゆえに本譜は△4四桂と打ったのですが、▲2七玉で銀がボロっと取れたのは大きな戦果ですね。後手は△5六桂▲同歩△4六歩と攻め続けますが、▲3八玉と引いた形が見た目以上に粘り強い配置でした。(第8図)

 

将棋ソフト 妙手

ここで△4七銀は、▲3九玉△3六銀成▲4八歩で大丈夫。後手は戦力が補充できないので、敵玉を捕まえる力が足りていません。

 

将棋ソフト 妙手

本譜は△2七銀▲4八玉△3六銀不成と迫ったのですが、▲3八銀で後続が無いですね。後手は△3四歩で紛れを求めますが、そこで▲4三歩が相手の動きを封じる絶妙の垂れ歩でした。(第9図)

 

垂れ歩 妙手

後手が直前に指した△3四歩は、△2二角→△6六角という活用を視野にいれた意図がありました。それを牽制したことが▲4三歩の意味なのです。

後手はこの歩を除去したいのですが、△同玉は▲4一飛、△同馬は▲8二飛が厳しいですね。どちらの駒で取っても隙が生じてしまうので、後手は身動きが取れなくなっているのです。

 

垂れ歩 妙手

相手の攻めが止まってしまえば、長期戦になることが予想されます。そうなると、駒得している先手の旗色が良くなりますね。事実、本局はここから右肩上がりに先手が優位を拡大していきました。

 

今週の妙手

こうして振り返ってみると、先手は5四の馬と2七の銀の連繋を断つことで、駒得を果たしつつ自玉の安全度を高めることに成功したことが分かります。指されてみればなるほどの一着ですが、「玉頭の歩を突き捨てる」「玉自らが攻め駒を責める」という指し口は、相当に発想が飛躍していますね。

 

垂れ歩 妙手

その上、この突き捨てが最終的には▲4三歩という軽妙手に繋がっており、この辺りの組み立ては、まさに計算され尽くされている感があります。▲4五歩は、相手の攻めを頓挫させる見事な受けの妙手でしたね。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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