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第67回NHK杯 1回戦第5局 解説記 ~序盤編~

今週は、宮本広志五段と藤井猛九段の対戦でした。

私は宮本五段とは三段リーグで同じ期間に在籍していたということもあり、よく練習将棋を指したり、ご飯をご馳走になったりなどなど、お世話になった先輩の一人でした。とても話が面白く、みんなから好かれる方という印象です。

藤井九段はいろいろな戦型で斬新なアイディアを生み出す、将棋界きっての革命家です。藤井九段の将棋を見ていると、「人真似はしない」という信念を感じますね。
あと、僕はこの人のぼそぼそと話す解説が結構好きです笑

本局の棋譜は、こちらのサイトからご覧いただけます。
参考 本局の棋譜NHK杯将棋トーナメント

第67回NHK杯1回戦第5局
2017年4月30日放映

 

先手 宮本 広志 五段
後手 藤井 猛  九段

 

お互いに角道を止めないタイプの三間飛車です。

一昔前だと振り飛車は「角道を止める」のが常識だったのですが、ゴキゲン中飛車や角交換振り飛車の出現により、そういった概念がぶっ壊されてしまいました。それに伴い、このようなお互いに角道を止めない相振り飛車も増加しているように思います。

相三間での駒組みですが、基本的には以下のように分類されます。

囲い→美濃。または金無双。
角道→止める。または止めない。

ざっくりと言えばこの4種類です。本譜は、お互いに金無双の骨格を作りました。(第2図)

 

第2図から後手が穏やかに指すなら、△3四飛が考えられます。以下、▲3八玉△7二玉▲8六歩△2四歩▲8五歩△2五歩…と先後同型の形を維持します。すると、仮想図のような局面になることが予想されます。

 


ここまで進んでしまうと先手から打開するのは簡単ではないので、後手もまずまずかなという印象ですが、ただ待っているだけなのでちょっとネガティブではあるんですよね。藤井九段は自分から積極的に動いていく棋風なので、このような将棋は好みではないのかもしれません。

第2図から藤井九段は△8八角成▲同銀△3六歩(青字は本譜の指し手)と早くも動きました。

これは仮想図のような待機策ではなく、攻めを重視した作戦です。以下、▲3八金△3七歩成▲同銀と進みました。(第3図)


後手の理想としては、攻めの銀桂を繰り出し、3筋へ集中砲火を浴びせることです。仮想図のような将棋と比べると、何だか3筋を攻めやすそうな雰囲気ですよね。

しかし良いことばかりではありません。なんとこの局面で後手は5手損しています。(角交換で1手、3筋の歩で4手)
個人的には序盤早々、こんなに手損してもいいのだろうか…と不安になるのですが、このくらい発想が飛躍していないと新たな戦法は生み出せないのでしょうね。

第3図から△4二銀▲8六歩△4四歩▲8五歩と進みました。(第4図)

 


先手は3筋を飛車に睨まれているのは気がかりですが、▲2六飛という反撃の筋を残すために宮本五段は▲3六歩を打たずに駒組みを進めます。

藤井九段はそれを咎めるべく、△3六歩と打ちました。ただ、感想戦でも仰っていたように、この手が作戦負けの原因になってしまいました。理由は後述します。

実戦は△3六歩以下、▲2八銀△4三銀▲8六飛△7二玉▲7七銀△5四歩▲9六歩と進みました。ここまで来ると△3六歩と打った手のデメリットが顕在化しています。(第5図)

 

後手は3筋を攻めたいので△3四銀や△3三桂で攻め駒を繰り出したいのですが、▲3六飛と歩を払われてしまいます。つまり、増援を送ることができないのです。
攻めることができなければ、この拠点は価値がありません。後手は3筋をガンガン攻めることが目的だったのですが、△3六歩を打ってしまったがゆえに、それの実現が難しくなってしまったのです。

という訳で、第5図は後手にとってやや不満といった局面です。とはいえ、駒損などの明確な損をしているわけではないので、まだまだこれからの将棋です。

では続きは中盤編で。ご愛読ありがとうございました!

2 COMMENTS

H

いつも楽しく読ませていただいております。
本記事を含むいくつかの記事で局面画像が飛んでしまっているようです。
とても綺麗に作られていて、もったいなく思い、コメントさせていたきました。
おてすきの時に、ご確認いただければ幸いです。
(もしも私の環境のせいでしたら申し訳ありません・・・。)

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あらきっぺ

はじめまして。いつもご覧いただき、ありがとうございます。
複数の記事で局面画像が表示されていないのは認識しており、全てこちら側の問題です。ご迷惑をお掛けして、誠に申し訳ございません。
順次、修正するつもりなので、今しばらくお待ちください。
あたたかいご指摘、ありがとうございました。

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