どうも、あらきっぺです。
いつも通り、NHK杯の解説を行いますが、今まで三部制だったのを今回から二部制にします。
理由としては、
①一記事を仕上げるのに予想以上に時間が必要だったから。
②それに伴い、ほかの書きたい記事が書けないから。
です。まあ要するに、ちょっと三部制はしんどかったんです(><;)
冒頭から冴えない話で恐縮です。ではさっそく解説に移ります!
本局の棋譜は、こちらのサイトからご覧いただけます。
参考
本局の棋譜NHK杯将棋トーナメント
最近は、矢倉が減って角換わりが多いですね。その背景にはコンピューター将棋が影響していると思われます。
実は角換わりって矢倉や相掛かりに比べて、先手に良い評価値が出やすい戦型なんですよね。もちろん検討する局面にもよりますが、大体100~150くらい良い評価値が出ます。
当然ながら、そんな細かいところで勝敗が決するほど将棋は簡単ではないのですが、やっぱりそういった事実があると、使う人は多くなりますよね。
ちなみに、本局の解説者は佐藤紳哉七段。加藤女王の兄弟子です。妹弟子を心配する解説が微笑ましかったです。
第1図から互いに駒組みを進め、第2図の局面になりました。
先手陣の▲4八金・▲2九飛型が大流行している形です。この陣形の主な長所は、
(1)玉が右辺にも左辺にも移動できる。
(2)▲4五桂と跳ねた後に相手から角を打ちこまれる隙がない。
以上の要素が挙げられます。
懸念材料としては、金が玉から離れるので堅い囲いにならないことですが、▲2九飛が受けに働くのでその点はリカバリーできている印象です。
第2図から加藤女王は▲4五桂と仕掛けました。直前に△4二金右で守りを固めたところなので少しやりにくい印象でしたが、▲5一角と打ちこむ傷があるのでチャンスと見たのでしょうね。
以下、△2二銀▲7五歩△同歩▲2四歩△同歩▲同飛と進みます。なお、▲2四歩では▲6六銀も有力でした。(第3図)
桂頭を狙う7筋の突き捨ては、角換わりでは頻出します。囲いの歩を捨てるので自陣も傷みますが、▲6八玉型は右辺に逃げやすいのでダメージは少ないですね。
さて、第3図では後手には二つ懸念材料があり、一つは桂頭のキズ。もう一つは壁銀です。両方を同時に解決することはできないので、どちらをケアするか、という選択を迫られています。
壁銀を解消しながら銀冠を作る△2三銀は非常に魅力的ですが、▲2九飛△2四歩▲6六銀のときに後手の指す手が難しい。(A図)
この▲6六銀が急所の一着です。囲いの銀を攻めに使いやすいのも▲6八玉型の利点ですね。(元々、堅くないので、これ以上薄くなっても影響が少ない。)
A図から▲7四歩を受けるために△6三銀と引いても、▲7五銀△7四歩▲5一角から攻めが続きます。よって先手良し。
どうも壁銀の解消を優先すると、後手は桂頭が守り切れなくなってしまうようです。という訳で近藤五段は第3図から△6五桂と桂を捌きました。以下、▲6六銀△8六歩▲同歩△8八歩と進みます。(第4図)
後手がなかなか△2三歩や△2三銀などで飛車を追わないのは、▲2九飛と引かれると先手陣の守備力が上がってしまうからです。
第4図の△8八歩は、△7六桂のキズがあるので取ることはできません。しかし桂を逃げるのも、と金を作られてしまいます。飛車を引かせなかった効果がテキメンですね。
受けてもあまり状況が改善されないので、加藤女王は▲7三角から攻め合いを選びます。以下、△8六飛▲6四角成△4五銀▲同歩△8九歩成と進みました。(第5図)
手順中、後手が自分から△4五銀と銀桂交換を甘受したのは、▲5三桂成を防ぐためです。
ここで加藤女王は▲8七歩と打ちましたが、代えて解説の佐藤紳哉七段が示した▲6五銀右の方が勝ったかもしれません。なぜなら、▲8七歩は「大駒は近づけて受けよ」という格言に相反しているからです。歩を打たないと8筋が素通しなので判断が難しいところですが…。
▲8七歩以下、△8一飛▲6五銀右と進んだ局面が第6図です。
キャプションにも記したとおり、後手はこの局面がチャンスです。攻めがつながる展開になれば、金銀3枚の堅陣が生きてきます。逆に長引く展開になれば、馬の手厚さと銀桂交換で駒得している先手に分のある将棋になります。まさに勝負どころですね。
ではでは、今回はこのへんで。
後編に続きます。ご愛読ありがとうございました!