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今週の妙手! ベスト3(2020年8月第1週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2020年7月第4週)

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2020.7/26~8/1)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。相掛かりから、先手が後手の攻めを引っ張り込む展開になり、このような局面を迎えました。(第1図)

 

今週の妙手

2020.7.30 第79期順位戦B級1組3回戦 ▲山崎隆之八段VS△阿久津主税八段戦から抜粋。(棋譜はこちら)

現局面の優劣を端的に述べると、先手が優勢です。理由としては、駒得が大きいことや、玉が右辺へ逃げていったときの耐久力がすこぶる高いことが挙げられますね。

 

ただ、現状は7六の角が捕まっていますし、敵陣をどう攻めるのかという課題もあります。ところが、山崎八段はそういった不安をあっと言う間に払拭してしまいました。

山崎八段が指した手は、▲9四角です!

 

今週の妙手

端に角を躍り出たのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

これがトリッキーな一着でした。わざわざ香の利きに移動するので、なかなか気付かない一手です。

これを△同香と取ると、▲9二飛と打つことが出来ます。こうなると先手は寄せの構図が分かりやすくなりますね。(A図)

このように、後手は9二の地点に飛車を打たれると、粘りが利かなくなってしまうのです。

 

今週の妙手

そういった事情があるので、本譜は△7六歩と突きました。これは7筋の歩を捨てることで底歩を打つ含みを用意した意味ですが、構わず▲9一とが好判断。以下、△7七歩成▲5九玉△9五馬▲8三角成と進んだ局面は、先手の角が暴れ回っていますね。(第2図)

 

妙手 山崎

これは△同金と応じるよりないですが、▲9二飛と打てば王手馬取りです。取られるはずの角が相手の馬と交換になったので、先手にとっては万々歳の進行と言えるでしょう。以降は、山崎八段が危なげなく押し切りました。

 

今週の妙手

こうして振り返ってみると、先手は▲9四角と出た手によって、

(1)7六の角の処遇を、どうするのか?
(2)敵陣をどのようにして攻めるのか?

という二つの問題をクリアしていることが分かります。香の利きに角を逃がす手はなかなかお目にかかれないですが、先手は9二の地点に飛車を打つ手の期待値が高いので、十分に成立するというロジックなのですね。これは、見事な角捌きでした。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。後手の四間飛車に先手が端歩突き穴熊で対抗する形になり、以下の局面を迎えました。(第3図)

 

藤井棋聖

2020.7.29 第79期順位戦B級2組3回戦 ▲藤井聡太棋聖VS△鈴木大介九段戦から抜粋。(棋譜はこちら)

先手が▲7五歩と打ち、後手が△8三銀と引いたところです。

先手は飛車を成り込んでいるので、そろそろ後手玉への寄せを考えたい局面です。どこから攻めの糸口を見出すのか悩ましいところですが、藤井棋聖は思わぬところに香を使いました。

藤井棋聖が指した手は、▲7四香です!

 

今週の妙手

7三の地点にアタックしたのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

どうしても香を持っていると、もっと高い駒をぶっ刺したくなるものです。なので、この場所に香を使うのは意表を突かれますが、これが後手玉に大ダメージを与える一撃でした。

 

今週の妙手

この手は次に▲7三香成△同金▲7四桂という攻めを狙っています。▲7三香成という手が銀冠の形を乱しつつ、将来の▲7四桂を見せているので非常に威力の高い攻めになっているのですね。

 

今週の妙手

さて。後手は7三の地点を強化するなら△6三金左ですが、それには▲5一角が厳しく、どうも支えきれません。(B図)

ゆえに本譜は、△7八歩▲8九金を利かして△8五角成と馬を引き付けましたが、▲8六金で増援を送るのが味の良い一着。先手はこの手を指したかったので、△7八歩に▲同金引と取らなかったことが読み取れますね。(途中図)

 

藤井棋聖

後手は「馬を引いて粘る」という方針を貫くべく、△7四銀▲同歩△同馬と徹底防戦します。けれども、▲7五銀と押さえつける手が堅実で、先手は不敗の態勢を手にすることが出来ました。(第4図)

 

藤井棋聖

どこに馬を逃げても、▲7四歩と打つ手が厳しいですね。こうなると先手は攻め筋が分かりやすいですし、7・8筋の制空権も掌握したので自玉が安全になったことも大きいです。この後は、藤井棋聖の冷静な寄せを見るばかりでした。

 

今週の妙手

▲7四香という攻め方は、ぱっと見は駒得になる攻め方ではないので、不思議な印象を受けるかもしれません。

しかしながら、こういった「片銀冠」と呼ばれる金銀二枚の銀冠は、7三の地点が弱点の一つです。それを踏まえると、その場所をガツンと攻める▲7四香は急所を捉えていることが分かりますね。スピーディーな寄せに定評のある藤井棋聖らしい妙手でした。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。この手のインパクトは、間違いなく今週一番と言えるものではないでしょうか。(第5図)

 

今週の妙手

2020.7.27 第68期王座戦挑戦者決定トーナメント ▲久保利明九段VS△大橋貴洸六段戦から抜粋。

先手は玉の安全度では勝っていますが、持ち駒に金気がありませんし、4七の飛も活用しにくい格好です。▲4五飛と走っても△4四歩で、あまり効果はありません。

 

そうなると攻める手段に困ったようですが、ここで久保九段は渾身の一手を放ち、優位を引き寄せることに成功したのです。

久保九段が指した手は、▲4六香です!

 

今週の妙手

歩頭に香を打ちつけたのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

よもや、この場所に香を打つとは全く予想できないですね。見るからに尋常ではないですが、これが攻めを繋ぐ妙手でした。

これを△同歩だと▲同飛が詰めろ馬取りになります。これは先手の理想とも言える進行ですね。(C図)

 

という訳で、後手はこの香を取らない対応が求められています。

今週の妙手

後手は4五の地点では足し算勝負で勝ち目が無いので、△5四馬▲4五香△4四歩と応じました。確かに、争点を4四にずらせば利きの数は勝っています。

ただ、構わず▲4四同香と突進されると、事は簡単ではないのです。(第6図)

 

妙手 久保

話の筋書きとしては、ここで△4四同馬と取れないと辻褄が合いません。しかし、それには▲4六香が痛打なので、後手は倒れていますね。4七の飛が直射していると、槍を投擲されたときに凌ぎ切れないのです。

 

妙手 久保

したがって、本譜は△4五歩と壁を作りましたが、▲4二香成△同金▲3七桂が厳しい追撃。とにかく、先手は4七の飛を起動させることが最優先事項ですね。(第7図)

 

妙手 久保

後手は4五に利きを増やすなら△4四金が一案ですが、▲6六桂で馬を目標にされると、どうも受けが利きません。(D図)

そこで本譜は、△2五桂という非常手段に訴えました。これは▲同桂△4四玉と進めることで4五の歩を守る意味ですが、やはり▲6六桂で馬を攻める手が急所ですね。ひいては、それが4五のブロックを突破することに繋がるのです。(第8図)

 

妙手 久保

例えば、ここで△6五馬には▲4五飛という強襲があります。4五の地点が薄くなると、こういった大技が繰り出せるのですね。(E図)

しかし、△6三馬と逃げても▲7五桂で馬を追えば良いので、後手は受け切りが困難です。第8図は先手の寄せが決まりつつあるので、勝負の帰趨は見えているでしょう。

 

今週の妙手

馬という駒は敵に回すと厄介な守備駒ですが、それを逆手に取ることで寄せを進める着想には唸らせれました。それにしても、▲4六香という手は常人には浮かばないですね。常識に囚われない柔軟な妙手だったと思います。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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