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今週の妙手! ベスト3(2020年12月第3週)

妙手 ブログ

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2020年12月第2週)

注意事項

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。また、プレイヤーの名称が長い場合は、適宜省略・変更させて頂きます。ご理解頂けると幸いです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

今週の妙手! ベスト3
(2020.12/13~12/19)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。後手の四間飛車に先手が急戦調の作戦で対抗する構図になり、このような局面を迎えました。(第1図)

 

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2020.12.15 ▲BURNING_BRIDGES VS △Cendrillon戦から抜粋。(棋譜はこちら

現状、先手玉はそこまで危険な状態ではありませんが、やはり7七の成桂は不気味な存在です。この駒の脅威を和らげることが出来れば、憂いが消えるので言うことが無いですね。BURNING_BRIDGESは、とても都合の良い方法でそれを実現しました。

BURNING_BRIDGESが指した手は、▲8八銀です!

今週の妙手
銀を8八に打ち、飛車の活用を狙ったのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

これで後手の成桂にアタックするのがクレバーな受け方でした。

後手は△同成桂▲同飛と進めてしまうと、▲8三香成からの詰めろが掛かってしまいます。これは先手が描く最も理想な進行ですね。よって、この銀は取れません。

 

今週の妙手

そうなると、△8六銀と繋ぐ手が考えられます。寄せの種駒を消さないという意味では自然な一着でしょう。しかし、その局面で先手は、▲7一銀△同玉▲8三香成という攻めが実行できるようになっているのです。(第2図)

 

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先手は[▲8八銀⇔△8六銀]の交換を入れずにこの手順を指すことも出来ました。けれども、その場合は△6八銀▲同飛△同成桂▲同玉△8八飛というカウンターがあるので、上手くいきません。(A図)

ところが、第2図のように[▲8八銀⇔△8六銀]の交換が入ってれば王手成香取りの筋が無いので、先手は安心して踏み込めるという仕組みなのですね。

 

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さて、後手は黙っていると▲5三馬△同馬▲7二金の筋で詰まされてしまいます。しかし、△7二金と受けても▲5三馬△同馬▲8四桂で一手一手なので、もはや受けが利きません。

 

今週の妙手

つまり、この局面で後手は8八の銀を取ることも、寄せの足掛かりとなる駒を残すことも出来なくなっているのです。そうなると、先手玉に迫る術が無いので逆転の綾がありませんね。以降は、先手の危なげない収束を見るばかりでした。

 

今週の妙手

こうして振り返ってみると、この▲8八銀は攻め駒の排除を行いつつ、間接的に8三の地点を攻撃していることが分かります。相手を催促しながら水面下に潜む攻防手を封じているところが巧みですね。なかなか面白い意味付けの受け方だったと思います。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。後手の横歩取りに先手が青野流で迎え撃つ将棋になり、以下の局面を迎えました。(第3図)

 

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2020.12.15 ▲Krist_483_473stb_16t_100m VS △CRAZY-DOCTOR戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)(棋譜はこちら

後手は手番を握っているものの、自玉はそこまで堅くはないですし、駒割りも角と香を損しているので苦境に陥っているように見えるところです。

ところが、ここからCRAZY-DOCTORは勝負手を連発して、見事に難局を乗り切ったのでした。これは迫力ある踏み込みでしたね。

CRAZY-DOCTORが指した手は、△4六銀です!

今週の妙手

いきなり銀を捨てて、敵玉を引っ張り出したのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

何の前触れもなく銀をタダ捨てしているので、思わず声を上げてしまいそうな一手ですね。暴発のようですが、これが棋勢を引き寄せる妙着でした。

 

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ところで、冒頭の局面では△3五歩のほうが明らかに自然です。駒得しながら玉頭にアタックするので、至って普通の攻め方でしょう。

しかしながら、結論から述べるとこの手では勝てません。具体的には、▲7五角△3六歩▲同玉と進めれたときに困るのです。(第4図)

 

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先手玉は真っ裸ですが、ここで△3八飛と打っても▲3七金△3五銀▲4七玉で凌がれています。大駒の利きが強いので、先手玉は意外に安定しているのですね。

 

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後手は受けに転じるなら△6四桂が一案ですが、▲7一角△6二銀打▲5四歩でどんどん嵩にかかって攻められるので、これはキリがないですね。(B図)

このように、先手は8六の角が7五へ出れると攻防の主力として光り輝くので、大きく勝利に近づくのです。

 

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つまり、始めの局面で後手は△3五歩よりもスピードのある攻めを行う必要があり、それが△4六銀なのです。

 

今週の妙手

これは▲同玉の一手ですが、△4八飛▲4七銀△3五桂と肉薄します。この△3五桂が後手の期待していた一撃ですね。(途中図)

 

ここで▲3八銀打は、△4七桂成→△3八銀と攻めれば良いでしょう。

本譜は▲3九桂と受けましたが、△4七桂成▲同桂△5八飛成で後手は香が取れました。これが地味に大きな意味を持ちます。(第5図)

 

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さて、先手は▲7五角と出たいのですが、それは△5七歩成で一手負け。▲5二銀△同玉▲5三角成△同玉▲6五桂で王手ラッシュを掛けても、△5二玉で届きません。

こういった変化のとき、後手は5筋の香を消していることが非常に心強いですね。つまり、△5八飛成は攻防手になっている含みもあるのです。

 

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という訳で、本譜は▲2一銀と指しました。これは▲3二銀成△同玉▲2三歩成からの詰めろになっています。

しかし、△5七竜▲3五玉△3一香がそれを凌駕する返し技。これで後手の一手勝ちが明白となりました。(第6図)

 

下段の香に力あり

先手は3二の金を取ると自玉に王手が掛かるので、後手玉に手出しすることが出来ません。

また、先手は△3四歩や△4六銀といった攻め筋を見せられているので、この期に及んで受けが利く格好でもないでしょう。第6図は後手玉に詰めろが掛からないので、もはや先手に勝ち目が無い局面ですね。△3一香というクロスカウンターが見事に炸裂しました。

 

今週の妙手

この△4六銀は見るからに過激な一着ですが、ここで攻めを加速したことで、後手は「▲7五角」という必殺技を出す余裕を与えていないことが分かります。

なお、ここで銀を捨てると攻め駒が三枚になるので切れ筋に陥る懸念がありますが、△3五桂まで進めば5八の香が取り切れるので、攻めが繋がるということなのですね。この辺りは四駒方式を上手く応用していることが分かります。

 

下段の香に力あり

そして、最終的に奪った香を使ってトドメを刺すというシナリオは、一体どこまでお見通しだったのかと畏敬の念を感じずにはいられません。△4六銀は、スピード感のある峻烈な妙手でしたね。

 




第1位

 

最後に紹介するのは、こちらの将棋です。これは人間的には自然に見える手が上手くいかないという事例だったので、見ていて興味深かったですね。(第7図)

 

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2020.12.14 ▲RisingForce VS △ilq6_ilqshock201202_tm2_YO_4415Y戦から抜粋。(棋譜はこちら

ご覧のように、先手は敵玉を「上から押さえる」というお手本通りの寄せの形に持ち込めています。あと少しで勝てそうな状況ですね。

ところが、ここからRisingForceは奇妙な攻め方をします。けれども、それが結果的には最も手堅い勝ち方だったのです。

RisingForceが指した手は、▲4三馬です!

今週の妙手

馬を4三へ移動して、後手に手を渡したのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

4三の地点に金ではなく、馬を寄ったのが風変りな迫り方でした。とても最短とは思えない攻めですが、これが深部まで読みの入った一着なのです。

 

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なお、この局面は▲4三金が第一感だった方が多いかと思います。これで良ければ何の問題もないところですね。ただ、これは△6一玉と早逃げされる手が強敵なのです。(途中図)

 

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一見、▲5二金打で簡単に寄っている雰囲気がありますが、△同飛▲同金△7二玉と進んでみると存外難しいところがあります。そこから▲7一飛と迫っても、△8三玉▲8一飛成△8二金のときにどうすれば良いでしょうか?(第8図)

 

クリップ 将棋

▲9五桂と打っても△9四玉とかわされると、二の矢がありません。これは「桂頭の玉、寄せにくし」という典型的なパターンです。

詰めろを続けるなら▲6三馬△8一金▲同馬になりますが、△8二飛が強靭な抵抗で、これ以上詰めろが続きません。この変化は先手が攻めあぐねていますね。(C図)

 

このように、始めの局面から▲4三金では寄せ切れません。なので、RisingForceは▲4三馬と寄ったのです。

 

今週の妙手

ところで、実を言うとこの手は詰めろではありません。が、後手も△4七桂成と攻めると▲6一金△4一玉▲4二歩でトン死してしまいます。なので、先手玉に詰めろを掛けることが出来ないのですね。

 

今週の妙手

必然的に、後手は受けに回ることになります。まず、6一の地点を埋めるのはどうでしょうか。ただ、△6一銀では▲5三馬と戻られると、後手は打った銀が邪魔をしていて上手く逃げられません。

 

今週の妙手

それを踏まえると、△6一桂のほうが適した受け方と言えます。けれども、その場合は▲4八銀と緩められると、後手は指す手に困っているのです。(D図)

後手は6一に桂を打つと一時的には寿命が伸びるのですが、自玉が劇的に安全になる訳ではありません。△6一桂と▲4八銀とでは、一手の価値がまるで違うのです。

 

今週の妙手

なので、本譜は△5二桂と受けました。こうすれば6一へ逃げやすいですし、D図の変化で生じていた▲4四馬をケアすることも出来ています。

しかし、△5二桂を見て先手は方針を切り替えます。具体的には▲4二金△6一玉▲5二金が厳しい攻め。これに△7一玉では▲8三金でアウトなので△5二同飛はやむを得ませんが、▲同馬△同玉▲2二飛で王手角取りが決まりました。これは痛烈な一撃ですね。(第9図)

 

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後手は△5三玉と節約したいのは山々ですが、▲6五桂があるのでそれは不可。ゆえに△4二香▲2八飛成と進むのは必然ですが、そこで△4七桂成が指せないことが辛いですね。▲2五角で成桂を抜かれてしまうからです。(E図)

しかし、ここで△4七桂成が指せないと、先手玉は全く寄り付きません。第9図は駒の損得と玉の安全度が大差なので、先手勝勢と言えるでしょう。

 

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ちなみに、この王手角取りの筋は、途中図の局面からでも実行することは可能です。

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しかし、この場合先手は桂を取ることが出来ていないので、▲2二飛のときに△5三玉とかわされてしまい、失敗に終わります。玉を5三へ逃げられると、▲2五角の筋が使えませんね。

 

つまり、▲4三馬は相手に△5二桂を強要することで、王手角取りの筋を実現することが真の狙いだったのです!

 

今週の妙手

平凡な▲4三金では仕留めきれないということ。詰めろではない手で敵玉に迫れるということ。そして単純に2八の角を抜くだけでは勝てないということ。これらを全て見切らないと、▲4三馬という手は指せません。傍目には厳しさがありませんが、すこぶる緻密な読みに基づいた一着であることが窺えます。

 

今週の妙手

また、この手は攻め駒が敵玉から離れているような印象も受けるので、これが正しい寄せ方というのも意表を突かれますね。5二に桂を打たせてから3三の金を活用するという組み立てはテクニカルであり、一種の謎解きを見ているかのような手順でした。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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