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今週の妙手! ベスト3(2021年2月第3週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、前回の内容は、以下の記事をどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2021年2月第2週)

注意事項

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。また、プレイヤーの名称が長い場合は、適宜省略・変更させて頂きます。ご理解頂けると幸いです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

今週の妙手! ベスト3
(2021.2/14~2/20)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。角換わりから先手が▲4五桂と跳ねる急戦策を採用し、このような局面を迎えました。(第1図)

コンピュータ将棋

2021.2.18 ▲NEEDLED-35.8kai1050_R7-4800H VS △Qhapaq_WCSC28_Mizar_4790k戦から抜粋。棋譜はこちら

後手が△2四角と打って、2筋を守ったところです。

この角打ちは見た目は苦し気ですが、次に△4六角と出る手を見せているので、反撃の含みがありますね。また、先手は6六の角が狭いので、不用意な手を指すと△6五歩で角が窒息する恐れがあります。それらを考慮すると、この角打ちはなかなか手強い一着だと言えるでしょう。

コンピュータ将棋

先手の対応が注目されましたが、本譜は意外な一手を放ちました。

NEEDLED-35.8kai1050_R7-4800Hが指した手は、▲3五歩です!

今週の妙手

じわっと歩を伸ばしたのが攻めを続ける妙手でした!


 

 

今週の妙手

ぱっと見は、相手の角道を止めるので普通の一着ですね。しかし、これはよくよく見ると、かなり大胆なことをしています。というのも、飛車の横利きを止めてしまったので、△6五歩で角が詰んでいるではありませんか。

しかし、これは先手の計画の内なのです。△6五歩には▲3四桂が用意の切り返しですね。(途中図)

妙手 攻め

これは△同歩なら、▲2二角成△同金▲2四飛で駒得する狙いです。こう進めば角が生還するので大成功でしょう。

問題は△3一玉とかわされたとき。これには▲2二桂成△同玉▲3四銀と食らいつきます。後手は当然△6六歩と角を取りますが、▲2三銀成△同玉▲6六銀で局面を収めておきます。(第2図)

妙手 将棋

この応酬で、先手は[金⇔角桂]の交換になりました。これだけ見ると、言うまでもなく損ですね。しかし、相手は2筋の配置が不安定なので、その損失を補って余りあると判断しているのです。論より証拠。実戦の進行を、もう少し進めてみましょう。

妙手 将棋

先手は次に▲2九飛と引いて、▲2五金△1三角▲1四金という攻めが楽しみです。後手はこれをまともに喫する訳にはいきませんが、2筋をしっかりと補強する方法は簡単ではありません。△3二玉と引く手が指せないので、2四の角がいつまで経っても安定しないのです。

妙手 将棋

本譜は△1三桂▲2九飛△2五銀と力づくで角にヘルメットを被せました。しかし、そこで▲2二歩が軽妙。これが目敏い垂れ歩でしたね。(第3図)

垂れ歩 手筋

と金を作られると、後手陣は崩壊を待つばかりです。ゆえに△2二同玉はやむを得ませんが、▲1五歩△同歩▲1四歩と進めれば、先手は桂を取り返せますね。

そして、桂を取れれば2五の銀も狙える格好なので、芋づる式に駒損が回復していきます。以降は、先手が攻め倒しました。

 

妙手 将棋

一見、第2図は駒損の先手が失敗したように映ります。けれどもとにかく後手は2四の角がお荷物なので、長期的な目線で見ると歪みが生じて支えきれないのですね。これを見越していたらこそ、先手は▲3五歩を突いたのです。

今週の妙手

△4六角さえ許さなければ、あの角は活躍しないので先手は徐々に形勢が好転していきます。▲3五歩は、▲3四桂という攻め筋を作りつつ相手の角を封じているので、とても価値が高いのですね。

とはいえ、自ら6六の角を取らせるシナリオは発想が飛躍しています。▲3五歩は、駒の効率を重視する読みの入った妙手でした。

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。角換わりからお互いに早繰り銀を選ぶ展開になり、こういった局面になりました。(第4図)

妙手 ブログ

2021.2.19 ▲10be_n007_1080Ti VS △QueenInLove-kai0188_R7-4800H戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)(棋譜はこちら

後手は2筋からの攻めを狙われており、のほほんと構えていると、▲2四歩から攻め倒されてしまいそうです。ゆえに、何らかの対処が必要ですね。

ただ、単純に数を足す受けでは、どうもしっくりと来ません。出来れば持ち駒は攻めに使いたいところです。どういった方法で、それを実現したのでしょうか?

QueenInLove-kai0188_R7-4800Hが指した手は、△3七歩です!

今週の妙手

そっと歩を垂らしたのが柔らかい妙手でした!


 

 

今週の妙手

次にと金を作れる訳でもないので、ここに垂れ歩を設置する理由は全く見えませんね。しかし、これが先手の攻めに歯止めを掛ける妙技なのです。

今週の妙手

と金は作れないものの、一応これは△3八銀と放り込む手を見せ球にしています。なので、先手は▲7八金のように自陣を立て直す手はやりにくいという背景はありますね。

なので、実戦は▲2四歩△同歩▲同銀と攻めました。後手はあまりにも無抵抗で大丈夫かな? と思わせましたが、△3八歩成と成り捨てます。ここから一転して、流れが変わりますよ。(第5図)

妙手 将棋

これを▲同飛は△2七角が生じますね。そこから▲2八飛と寄っても△2六歩で通せんぼされるので、攻めが頓挫してしまいます。先手は2筋を攻めているので、飛車をこの場所から逸らすと支障があるのです。

妙手 将棋

よって、▲3八同金が妥当な対応になりますが、△2七歩▲同飛△3四角がファンタスティックな返し技。これで後手は2筋の攻めをいなしているのです。(第6図)

角には角で対抗せよ

▲3三銀不成と突っ込むと、△6七角成▲同玉△4五角の王手飛車が待っています。こうなると先手はアウトですね。(A図)

この変化から読み取れるように、先手は6七の角が盤上から消えると、反動が強く攻めに専念できません。この駒は先手にとって攻防の要なので、あっさりと消す訳にはいかないのです。

角には角で対抗せよ

ゆえに本譜は▲3四同角△同銀▲6七角と指しました。しかし、△5六歩▲同角△4九角が鋭い反撃です。こうなると、後手のクロスカウンターが決まった格好ですね。(第6図)

妙手 将棋

金取りを受けるなら▲3九歩が一案ですが、△7六角成があるので後手の攻めは止まりません。後手は[△3四角▲同角△同銀]という手順を踏むことで、2四の銀を華麗にスルーしています。なので、強気に攻め合うことが出来る情勢になっているのですね。

妙手 将棋

そして、この△4九角という手は、もちろん4九に隙を作ったからこそ指せた一手です。ここに隙を作り出すためには、先手の金に退いてもらう必要がありますね。そのための△3七歩だったのです。

 

今週の妙手

こうして逆算していくと、△3七歩と垂れ歩を放った意味が紐解けます。それにしても、この段階で4九に角を打ってカウンターを決めるということを視野に入れていたとは、恐れ入りますね。

角には角で対抗せよ

また、先手の銀が2四へ進んできた瞬間に△3四角で跳ね返すという技もビューティフル。後手は6七の角にアタックすれば、攻守の態勢を引っくり返すことが出来るのですね。

△3七歩は、それらの手を引き立てる絶妙のスパイスでした。将棋は、こういうひと手間が大事なんですね。

 




第1位

 

最後に紹介するのは、この将棋です。これは寄せの模範とも言える内容で、とても参考になりました。(第7図)

妙手 将棋

2021.2.19 ▲suiseihuman VS △QueenInLove-kai0188_R7-4800H戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)(棋譜はこちら

後手は金気を豊富に持っており、8筋の突破も見込めている状況です。快調に攻め立てている様子が窺えますね。

とはいえ、こういった場面から攻め損なうと、たちまち紛れてしまいます。本譜はお手本のような手順で収束を決めました。これは惚れ惚れとする寄せでしたね。

QueenInLove-kai0188_R7-4800Hが指した手は、△8九銀です!

今週の妙手

「玉は下段に落とせ」という格言に則るのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

これは2九の飛が利いていることを見落としている訳ではありません。この場所から銀を打つのが、最速・最短の寄せなのです。

妙手 将棋

ちなみに、俗に指すなら△8七銀▲6八玉△7八金▲5八玉△7七金という進行が挙げられます。駒得しながらの攻めなので、これでも悪くないように感じられるかもしれません。(第8図)

王手は追う手

ですが、これは8七に打った銀の働きが悪いので、後手は攻めが鈍化していることがネックです。また、このように玉を右辺に追い立てると、先手玉を捕まえるのは一苦労ですね。こういう展開は[▲4八金・▲2九飛型]の守備力が光るので、後手は本意とは言えません。

ゆえに、ここは△8九銀が本筋なのです。

今週の妙手

これに玉を逃げると、△8七飛成が指せますね。今度は銀が飛車の進路を邪魔していないので、後手はスムーズに竜を作れます。これは都合が良いでしょう。

したがって、先手は▲同飛△同飛成▲同玉と進めるよりありません。が、こうなると後手は先手玉を8筋へ引っ張りつつ、「玉は下段に落とせ」というパターンに持ち込むことが出来ました。もちろん、△8七金で敵玉を上から押さえつけます。(第9図)

玉は下段に落とせ

△7八銀の詰めろと銀取りを同時に受けるには、▲7八銀が妥当です。しかし、そこで△6八銀が快心の一撃。△7九飛と△7七銀成を見せているので、非常に厳しいですね。

このように、不用意に手掛かりを清算しないことが寄せのコツと言えます。(途中図)

玉は包むように寄せよ

(1)▲6八同銀は、△8八飛から詰み。
(2)▲8七銀は、△7九飛▲9八玉△7七銀成で一手一手。

先手は金と銀、どちらの駒を取っても自玉が寄ってしまいます。

玉は包むように寄せよ

本譜は▲8八角と守備駒を増やして抵抗しましたが、△6九飛がダメ押しの一手。やはり、安直に手掛かりを清算しないことがポイントですね。(第10図)

妙手 将棋

▲同銀は△同銀不成で必至が掛かります。7八の地点で数的優位を作れるので、先手は受けが利きません。

本譜は▲7九桂と応じましたが、△同飛成▲同角△7七銀成で後手の着地がピタリと決まりました。(第11図)

妙手 将棋

ここから▲8七銀△同成銀▲7八金と頑張っても、△7七桂で一手一手です。対する後手玉は安泰なので、勝負の帰趨は明らかですね。実戦は、ここで終局となりました。

 

今週の妙手

こうして振り返ってみると、△8九銀と打ってからは、後手の攻めが全く緩むことなく続いていることが分かります。その要因としては、

・5筋へ逃がさない
・玉を下段に落とす

この二点が大きかったですね。範囲を絞って戦う局地性理論のお手本とも言える手順でした。

 

今週の妙手

△8九銀のような手は、一歩間違えると駒損に終わるので、リスクがあることは確かです。しかし、この場合は敵玉を危険地帯へ引きずり出せることや、相手が持ち駒に金を持っていないので、寄せる条件が揃っていました。

そういった状況であれば、ガンガン踏み込んで行くほうが紛れを呼ばないので、むしろ安全な勝ち方なのですね。第8図とは雲泥の違いがあります。とても参考になる寄せの妙手でした。

 

それでは、また。ご愛読いただき、ありがとうございました!

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