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今週の妙手! ベスト3(2021年4月第3週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、前回の内容は、以下の記事をどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2021年4月第2週)

注意事項

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。また、プレイヤーの名称が長い場合は、適宜省略・変更させて頂きます。ご理解頂けると幸いです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

今週の妙手! ベスト3
(2021.4/11~4/17)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。先手の矢倉に後手が桂を早めに跳ねる急戦策を決行し、このような局面を迎えました。(第1図)

コンピュータ将棋

2021.4.13 ▲ANESIS VS △Suisho4_TR3990X(棋譜はこちら

この局面は、次に何か厳しい攻めが飛んでくるわけではありません。ただ、長引くと△9四飛や△9八とのような「遅くても確実な攻め」が間に合ってしまうので、そういった展開に持ち込まれないことが先手のテーマと言えます。

そうなるとアグレッシブに攻め掛かる姿勢を取るかと思われましたが、本譜は全く違うアプローチで優位を確固たるものにしました。

ANESISが指した手は、▲6五銀です!

今週の妙手

角を取る前に、6筋に銀を設置したのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

重厚に銀を打ちつけたのが明るい着想です。ぱっと見はメリットが見えにくいですが、数手ほど進むと、この銀の効力がまざまざと現れます。

ひとまず後手は△9四飛と逃げますね。そのタイミングで先手は▲4四桂と角を取ります。これには△同飛が妥当ですが、そこで▲6四歩が期待の一着。先手はこの歩が打ちたかったのです。(第2図)

将棋 妙手

4筋の受けを放棄していますが、△4七飛成には▲4八銀で竜を追い返せるので大丈夫。飛車を成られる損失よりも、と金を作る利得のほうが大きいので問題ありません。

将棋 妙手

よって、△6二金と受けるのは致し方ないですが、これで先手は6筋に厚みを作ることが出来ました。それに満足して▲5八玉とお手入れします。

後手は△7三桂で目の上のたん瘤である銀を動かそうとしますが、▲8三角がさらに厚みを強大にする好手ですね。(第3図)

コンピュータ将棋

後手は銀を取りたいのは山々ですが、桂を渡すと▲3六桂のしっぺ返しが飛んできます。けれども、銀が取れないようでは何のために桂を打ったのか分かりません。この局面は後手の攻めが空転しているので、形勢は先手に傾きました。

将棋 妙手

この局面は、6四の歩がキーパーソンになっています。この駒があるお陰で、後手は飛車の可動域が狭まっていますね。また、△6三香のような攻めも狙えません。

さらに踏み込むと、後手は冒頭の局面で△6五歩→△6六香といった要領で田楽刺しを視野に入れていました。これらの攻め筋を全てシャットアウトしていること及び、▲6四歩という手を指せるようにしたことに▲6五銀の価値があるのです。

今週の妙手

こういった銀打ちは見た目は普通ですが、失敗すると中段で取り残されてしまうので、なかなかに指しにくいところでもあります。しかし、本局に関しては盤上を制圧する橋頭保になるので、有効な一打なのですね。地味ながら味わい深い一着だったと思います。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。本局は後手が雁木を採用し、先手が早繰り銀で立ち向かうという構図になりました。そうして迎えたのが以下の局面です。(第4図)

コンピュータ将棋

2021.4.13 ▲FukauraOu_RTX3090-2080S VS △RINGO (棋譜はこちら

先手玉には、△5五金や△7五角▲同歩△7六金という詰めろが掛かっています。対して、後手玉には詰みがありません。ご覧のように右辺が広いですね。

そうなると勝負の帰趨は明らかのようですが、次の一手で後手の思惑は崩れていきました。

FukauraOu_RTX3090-2080Sが指した手は、▲4三桂です!

今週の妙手

桂を打って5四の銀に「動け」と突きつけたのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

一見、思い出王手のような節がありますが、とんでもありません。これが不利な体勢を引っくり返す第一歩だったのです。

コンピュータ将棋

なお、先手は詰めろを解くなら▲7四銀成も見えますね。しかし、これは△5五金▲7五玉△6六角▲8五玉△8九竜▲8六香△7七角成と追い立てられて勝てません。(A図)

このように、「ただ受けるだけ」の手では一手の価値が低く、後手の攻めを凌ぐことが出来ないのです。

 

つまり、先手に求められているのは攻防手であり、その具体的な手段が▲4三桂なのですね。

今週の妙手

これを△同銀だと詰めろが解除されるので、▲8二銀成で飛車を取る手が間に合います。原則として、この局面の後手は5四の銀を動かすことが出来ません。

そうなると△4一玉が妥当ですが、あっさり▲3一桂成と成り捨ててしまいます。これが包囲網に穴を開ける一手ですね。(途中図)

コンピュータ将棋

△4二玉と逃げると、▲5三金であの銀が取れます。また、△5一玉には▲5二香と焦点に槍をぶん投げる手が絶好ですね。(B図)

このように、後手は成桂を盤上に残すと5四の銀を守り切ることが出来ないのです。

コンピュータ将棋

そういう事情があるので、△3一同玉は必然。ただ、▲5三角成とすれば王手銀取りが掛かりますね。これには△4二桂と受けることになりますが、▲3二歩△4一玉▲5四馬△同桂▲6五玉と強引に銀を食いちぎれば、先手は包囲網を突き破ることに成功しました。(第5図)

桂頭の玉、寄せにくし

この応酬で先手は[角桂⇔銀]の交換を甘受しており、戦力は著しく低下しました。その上、後手に手番も渡しています。けれども、上に逃げ出せる格好になったので、玉の寿命は計り知れないほど延びていますね。それが何よりも大きいのです。

桂頭の玉、寄せにくし

加えて、この局面は「桂頭の玉、寄せにくし」という配置であることも好条件と言えます。後手は二枚の桂が邪魔駒になっており、先手玉に対して上手くアタックできません。

桂頭の玉、寄せにくし

敵玉への寄せが見当たらない以上、受けに回るのは致し方ないところ。本譜は△4二飛と飛車を逃がしましたが、自然に▲5三銀と追撃する手が厳しいですね。(第6図)

コンピューター将棋

これは△4五飛で王手を掛けられてしまいますが、▲7四玉と逃げれば差し支えないでしょう。あの飛車が二段目から逸れてくれれば、▲6三玉→▲7二玉と行進できるので、先手玉はもう捕まりません。

攻めとしては、▲4四金から飛車を責めつつ後手玉を押さえて行くのが楽しみです。取るべき方針が分かりやすいので、第6図は先手ペースの終盤戦になりました。

 

桂頭の玉、寄せにくし

こうして振り返ってみると、先手の指し手は徹頭徹尾、「▲6五玉を実現させる」という狙いに基づいていたことが分かります。▲6五玉と上がってしまえば自玉が蘇生するので、そのためには全力でリソースを投資することが大事だったのですね。

今週の妙手

それにしても、冒頭の局面から先手玉が延命できるとは驚きです。最後まで諦めてはいけないということを、改めて痛感させられました。

 




第1位

 

最後に紹介するのは、この将棋です。これはまさに起死回生の妙技でしたね。(第6図)

コンピュータ将棋

2021.4.17 ▲Suisho4_TR3990X VS △FukauraOu_RTX3090-2080S(棋譜はこちら

先手玉は詰めろではありませんが、次に△7四歩や△8七歩成を指されてしまうと、必至に等しい格好になります。とはいえ、これら二つの狙いを同時に防ぐことは出来ません。

そうなると困り果てているようですが、本譜は思いもよらない方法でこの窮地を乗り切ったのでした。

Suisho4_TR3990Xが指した手は、▲7一金です!

今週の妙手

後手玉を力づくで左辺に移動させたのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

なないちきん…? ▲7一金って何? タダじゃん…。

という感じですね。もはやヤケクソの境地のようにも思えますが、これが難局を切り拓く絶妙の捨て駒なのです。

コンピュータ将棋

▲7一金の解説に入る前に、改めて始めの局面の状況を整理しておきましょう。

まず、▲3四竜は△5七銀打▲7六玉△8五金から自玉が詰むので簡単に負けてしまいます。8筋の飛車の利きが直射していると、どうもまずいですね。

ただ、ここで▲8三歩は詰めろではないので、△7四歩で竜を取られてアウト。先手は竜を取られてしまうと勝ち目がありません。

コンピュータ将棋

攻防手の候補としては、▲8三角が挙げられます。王手で飛車の利きを堰き止められることが自慢ですね。ただ、この手は△7二銀▲同角成△同飛のときに指す手が難しいことがネックです。(第8図)

コンピューター将棋

相変わらず竜取りと金取りが残っているので、忙しさは変わりませんね。また、先手は角を渡してしまうと、△5七角▲7六玉△7五金というトン死筋を抱えることが厄介です。そういった制約が無ければ▲8三銀から踏み込んで行けるのですが、この局面では条件が悪く、残念ながら決行できません。

 

コンピュータ将棋

話をまとめると、この局面の先手は

(1)8二の飛を封じ込める。
(2)竜を失ってはいけない。
(3)角を渡してはいけない。

という三つの条件をクリアする必要があるのです。そんな無理難題をどうやって解決するんだよという感じですが、▲7一金を放つことで、何とそれが実現できてしまうのですね。

今週の妙手

これを△5一玉とかわすと、▲2四角△4二金▲7三竜という突進が成立します。これは手番を握りながら竜取りを解除できているので、先手は都合がよいですね。(C図)

なので▲7一金を△同玉と取るのは必然ですが、これで玉を呼び寄せておけば、今度こそ▲8三歩が打てるという仕組みです。(途中図)

コンピュータ将棋

△7四歩は、▲8二歩成△6二玉▲7三角打から詰み。よって、後手は竜を取れません。こうして、先手は上に記した三つの条件を見事にクリアしました。

ちなみに、先手玉は△5七銀打と迫られても▲7六玉で大丈夫。角を渡さなければ自玉のゼットを維持できるので、この瞬間は寄せに専念できます。

コンピュータ将棋

後手は自玉の詰めろを受けることが必須なので、△6二飛と逃げる一手。対する先手は、▲8二銀△6一玉▲7三銀不成△同桂▲同角成と追求の手を緩めずに踏み込んで行きます。ゼットを活かした強襲ですね。(第9図)

コンピュータ将棋

これは△7二歩と受けるくらいですが、この瞬間は竜がフリーになっています。ゆえに、▲6二馬△同金▲8六金で金取りを対処する余裕が生まれました。

後手も巡ってきた手番を活かして△7三銀と目障りな竜に働き掛けます。部分的には厳しい一手ですが、その瞬間に▲3三角と攻防手を放つのが鋭敏。△4一金と受けるのはやむを得ないですが、それから▲3四竜と逃げておくのが正確無比な対応です。(第10図)

コンピュータ将棋

ここで△7四桂の王手金取りは気になりますが、▲7六玉と逃げれば問題ありません。なぜなら、△8六桂には▲5一飛△同金▲同角成で後手玉を即詰みに討ち取れるからです。(D図)

8六の金が取られないのであれば、△7四桂を恐れる必要はないでしょう。

コンピュータ将棋

紆余曲折ありましたが、この局面で注目すべきところは第7図で当たりになっていた7四の竜と8六の金を二つとも死守することに成功したことです。まだまだ先は長いですが、少なくとも先手は第7図のような危機的状況ではなくなっています。それが非常に大きいですね。

コンピュータ将棋

繰り返しになりますが、先手は

(1)8二の飛を封じ込める。
(2)竜を失ってはいけない。
(3)角を渡してはいけない。

という三つの条件をクリアすることが急所でした。▲8三歩を打てば(1)と(3)を満たすことが出来ますが、(2)のハードルに引っ掛かってしまいます。これを乗り越えるために▲7一金という犠牲を払ったという理屈なのですね。

今週の妙手

仕組みを紐解いていけば、この金打ちは確かになるほどの一手であることが分かります。▲8三歩を打ったときに角さえ渡さなければ先手玉は不死身なので、金は遠慮なく放り投げることが出来るのですね。

とは言え、「金はトドメに残せ」という格言があるので、この段階で金を捨てるのは驚嘆です。渡せる駒と渡せない駒を見極める慧眼が素晴らしいですね。

 

それでは、また。ご愛読いただき、ありがとうございました!

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