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今週の妙手! ベスト3(2020年4月第4週)

妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
西山朋佳今週の妙手! ベスト3(2020年4月第3週)

 

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2020.4/19~4/25)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。序盤から互いに意地を張り合う大乱闘が起こり、このような局面になりました。(第1図)

 

妙手

2020.4.24 第70期王将戦一次予選 ▲山崎隆之八段VS△出口若武四戦から抜粋。

後手が飛車を打ったところ。

この手は△5七飛成▲3八玉△4七角成という詰めろと同時に、8九の金取りにもなっています。部分的には、すこぶる厳しい一着ですね。

 

しかしながら、実戦で後手はそれらの狙いをどちらも実現することが出来ませんでした。先手はどんな手品を使ったのでしょうか?

山崎八段が指した手は、▲8三歩です!

 

妙手

「焦点の歩」を放ったのが妙手でした!


 

 

妙手

ぱっと見では、ふわふわしていて迫力に欠けるように感じるかもしれません。ですが、これが最も効率の良い勝ち方でした。

後手はこのままでは角が働きません。なので、△8三同角と応じたいところですが、それには▲3一飛でトン死します。8三のスペースが詰まったことが致命傷になってしまうのですね。(A図)

 

よって、後手はこの歩を取ることができません。

妙手

しかし、現状でも▲3一飛→▲7一銀からの詰み筋が発生しているので、後手は何らかの受けが必要です。要するに、▲8三歩は詰めろ逃れの詰めろになっているのですね。

 

後手は合駒を用意すれば詰めろを解除できるので、△8九飛成は考えられるところです。けれども、先手は構わず▲3一飛△4一金▲同飛成△同玉▲6二金で踏み込んでしまえば問題ありません。(第2図)

 

妙手

後手玉には必死が掛かっており、先手玉は不詰め。ゆえに、先手勝勢は明らかですね。

 

改めて、▲8三歩の局面に戻ってみましょう。

妙手

後手は△8三同角も△8九飛成も指せないことが分かりました。期待していた攻め筋が二つとも封じられているようでは、もはやお手上げと言えるでしょう。実戦も、いくばくもなく山崎八段が勝ち切っています。

 

ポンと軽く歩を置いただけで後手の大駒の動きを封じてしまったのは、何だかトリックを見ているかのようですね。「焦点の歩」という手筋の汎用性の高さを感じさせる一着でした。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。角交換振り飛車の将棋から先手が上手くリードを広げ、以下の局面を迎えました。(第3図)

 

妙手

2020.4.24 第46期棋王戦予選 ▲及川拓馬六段VS△藤井猛九段戦から抜粋。

この局面は駒の損得に関してはイーブンですが、玉の安全度には小さくない差が着いています。先手の銀冠が、また手付かずであることが大きいですね。

 

そうは言っても、後手の美濃囲いも金銀が三枚くっついているので、もうひと頑張り出来そうにも見えます。けれども、次の一手により美濃囲いは音を立てて崩れていくのです。

及川六段が指した手は、▲7三桂成です!

 

妙手 及川

桂を成り捨てて、後手陣を乱したのが妙手でした!


 

 

妙手 及川

いきなり桂をダイブしたのが切れ味鋭い寄せでした。8五の桂は端を狙う駒に見えましたが、コビンをこじ開ける方向性で使うほうが遥かにスマートなのです。

 

後手は取り方が三通りありますが、△同銀は▲6一飛成で金が取れます。

また、△同桂には▲9三香成△同歩▲7四桂という攻めがあり、これも一手一手の寄りでしょう。やはり、美濃囲いは7四に桂を打たれると脆いですね。(B図)

 

そうなると、残された応手は一つしかありません。

及川六段の妙手

後手は△7三同玉が最強の応手ですが、▲9三香成△同歩▲5三桂が厳しい追撃。敵玉を7三に引っ張り出したことで、6一の金を動けなくしたことが先手の自慢です。(第4図)

 

及川六段の妙手

後手は抵抗するなら△6二金打ですが、▲6一桂成△同金▲5二銀で五十歩百歩でしょう。なお、▲6一桂成に△同銀と取っても▲5二銀が成立します。つまるところ、後手はもう延命できない状況なのですね。

 

及川六段の妙手

そうなると、残された道は攻め合いしかありません。斬り合うなら△5七歩成▲6一桂成△5八と▲7一成桂△4九竜と進むことになりますが、▲7二成桂△同玉▲6三銀で後手玉は即詰みです。(第5図)

 

上部が広いようですが、4六の歩の7七の桂が押さえの駒として機能しているので、後手玉は追い詰めコースに入っています。

 

及川六段の妙手

したがって、これらの話を整理すると、後手は▲5三桂と打たれた時点で攻め合いも受けに回る手も活路が見えないということになります。ゆえに、藤井九段はここで潔く駒を投じました。

 

▲7三桂成を決行してからは、あっという間に後手陣が崩壊してしまいました。コビンを攻める7四に桂を打つ形を目指す6一の金を狙う。及川六段の指し手は、どれも美濃囲いの弱点を突くことに基づいていたことが分かります。そういったセオリーに則っていれば、▲7三桂成のように駒を捨てても問題ないという好例でしたね。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。これも敵陣を巧みに崩す妙手順でした。(第6図)

 

千田七段の妙手

2020.4.19放映 第70回NHK杯1回戦第3局 ▲千田翔太七段VS△阿部隆八段戦から抜粋。(棋譜はこちら)

後手が△6三銀と引いて銀取りをかわしたところ。先手は銀桂交換の駒損で、かつ3七の桂も助からない状況ですね。

受けが無いときは攻めに転じることが将棋の鉄則ですが、先手の攻めは手厚いとは言い難く、切れ筋とは隣り合わせ。つまり、第6図は見た目以上に先手が追い込まれている局面なのです。

 

ひとたび指し手を誤れば完封負けにもなりかねない場面でしたが、千田七段は見事な返し技を用意していました。

千田七段が指した手は、▲5四歩です!

 

千田七段の妙手

5筋の歩を切って、攻め筋の幅を広げに行ったのが妙手でした!


 

 

千田七段の妙手

これが状況を好転させた妙手でした。ただ、すぐには効果が見えてこないですね。ひとまず、本譜の進行を追いましょう。

後手は玉頭にと金を作らせる訳にはいかないので△同銀は自然な対応ですが、そこで▲5二歩と叩くのが狙い澄ました一撃でした。(途中図)

 

この歩を取ると▲4四桂の両取りが待っていますね。ゆえに本譜は△6二玉とかわしたのですが、▲4八飛が用意の切り返しです。(第7図)

 

千田七段の妙手

4一の地点がお留守になっているので、後手は△3七角成を指すことが出来ません。この飛車回りを実現するために、先手は[▲5四歩→▲5二歩]という手順を踏んだのです。これで先手は飛車を捌く目処が立ったことが大きいですね。

 

千田七段の妙手

角を動かせない以上、△4五歩と紐を付けるのは妥当ですが、先手は▲4六飛△同歩と進めます。桂取りを解除しながら攻め駒を増やすことに成功したので、懸案が一気にクリアされました。

 

こうなると先手は水を得た魚です。千田七段は▲7五歩と突っ掛けて、さらに後手陣を攻め立てました。これも的確な攻撃でしたね。(第8図)

 

千田七段の妙手

これは7三の銀を移動させることが目的です。すなわち、△同歩なら▲7四歩△同銀▲8二角と打つ手を狙っているのですね。この場所に角が打てれば挟撃態勢が作れるので、万々歳と言ったところでしょう。

 

千田七段の妙手

後手は△7二金と上がればその攻め筋は回避できますが、▲4四桂△4三金▲7四歩△同銀▲5一角で畳み掛けられると寄り筋に入ってしまいます。(C図)

元々、▲5二歩は▲4八飛と回るための布石でしたが、その後も攻めの拠点としてしっかり機能していることが分かります。この手を境に、先手の攻めが止まらなくなった印象ですね。

 

千田七段の妙手

また、[▲5二歩⇔△6二玉]の交換が入ったことで、後手は陣形が分断され、4筋から右側にある駒が受けに機能しなくなった印象も受けるのではないでしょうか? ▲5四歩から▲5二歩は、先手にとってさまざまな恩恵をもたらす絶妙の手順でしたね。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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