どうも、あらきっぺです。皆様にとって、今年はどんな一年だったでしょうか。私は将棋と執筆に明け暮れた一年でした。要するに、いつもと一緒ですね笑
タイトルに記載している通り、相居飛車の将棋から最新戦法の事情を分析したいと思います。
前回の内容は、こちらからどうぞ。
最新戦法の事情・居飛車編(2020年11月号)
・調査対象の将棋は、先月のプロの公式戦から(男性棋戦のみ)。棋譜はネット上や棋譜中継アプリにて公開されているものから収集。全ての公式戦の棋譜を見ているわけではありません。ご了承ください。
・記事の内容は、プロの公式戦の棋譜を参考にしておりますが、それを元にして筆者独自の研究内容も含まれております。記事内容の全てが棋譜の引用という訳ではありません。
・戦法や局面に対する評価や判断は、筆者の独断と偏見が多分に混じっております。当記事の内容を参考にして頂けるのは執筆者としては光栄ですが、妄信し過ぎないことを推奨致します。
最新戦法の事情 居飛車編
(2020.11/1~11/30)
調査対象局は92局。それでは、戦型ごとに見て行きましょう。
角換わり
お互いに力が出せるフィールド
24局出現。出現率は22.1%→26.1%と増加しました。これは後述しますが、相掛かりの採用数が減少していることと相関があるように思われます。
角換わりにおいて、基本的に先手は以下の三つの作戦のどれかを選ぶことになります。
(1)腰掛け銀
(2)早繰り銀
(3)桂ポン
この中で最も王道なのは(1)の腰掛け銀ですが、現環境では綺麗に打開することが容易ではなく、なかなかリードが奪えません。なので、昨今の主流は専ら(3)の桂ポン作戦です。事実、11月の角換わりでは、これを志向する将棋が一番多かったですね。(9局)
なお、桂ポン作戦とは、こういった要領で速攻する作戦のことです。(参考図)
現環境において、先手はこの局面に誘導できれば満足です。ぱっと見は軽いようですが、存分に攻めが続くので腰掛け銀のように打開に困ることはありません。
ただし、この作戦は後手に△9三歩型で駒組みを進められたときに、仕掛けが上手くいくかどうか際どいという背景があります。詳しい内容は、以下の記事をどうぞ。参考になれば幸いです。
つまり、現環境は腰掛け銀も桂ポンも後手の対策がなされており、先手は大変なところがあるのです。では、(2)の早繰り銀はどういった環境なのでしょうか。今回は、これをテーマに掘り下げて行きましょう。(第1図)
一口に早繰り銀といっても様々な指し方がありますが、先手早繰り銀は図のように▲7八玉型に構えるのが最も攻撃力がある指し方になります。この構えは5筋の歩が突きやすいので争点を増やせる利点があり、それが高い攻撃性を誇る要因となっています。
後手としては、銀矢倉を作って受けるのが最も無難な指し方です。具体的には、△4一玉▲3五歩△4三銀という手順ですね。これには▲3四歩△同銀右▲3六歩が常用の攻め筋ですが、そこで△4二金左が臨機応変な対応になります。(第2図)
代えて△3一玉と寄るほうが自然ではありますが、後手はその組み方だと中央が薄いことがネックです。△4二金左はその弱点をケアする意味があり、この戦型において優秀な受けの布陣と言えます。
先手はもちろん▲3五銀とぶつけるでしょう。以下、△同銀▲同歩△3二玉▲5五歩までは自然な進行です。そこから駒組みを進めると、このような局面になることが予想されますね。(第3図)
この局面は、▲7八玉型の早繰り銀において頻出しやすい局面です。お互いに、ここからの指し方がとても大事ですね。
まず前提として、先手はこの局面から仕掛けを考えるのは得策ではありません。なぜなら、4九の金が離れているので、囲いの堅さには差が着いているからです。わざわざ不利な条件の下で、自ら戦いを起こす理由はないでしょう。
したがって、先手はあの金を囲いに合体させるのが自然ではあります。ただ、▲5八金上と指すと△3八歩という揺さぶりが気になります。これが先手にとって悩みのタネですね。(第4図)
と金作りを受けるだけなら▲3六飛で事足りますが、それには△2七角と打たれるので面白くありません。また、持ち駒を使って受けるのも戦力が落ちるので、気が進まないところです。
ゆえに、先手はこれを無視して攻め掛かるほうが良いでしょう。その具体的な手順については、豪華版のほうで解説しております。興味がありましたら、ご覧くださいませ。
先手はこの局面から手段を尽くせば、確実に攻めを繋げることが出来ます。ただし、それで形勢を良くできるのかと問われれば、そうとは言い切れません。というのも、後手も反撃できる態勢が整っているので、攻め合いを挑まれたときに競り勝てる保証が無いからです。
▲7八玉型の早繰り銀は有力な作戦ですが、後手にきちんと対応されると、有利に導くことは簡単ではないことが分かります。ただ、不利になる訳ではありませんし、金銀三枚で玉を囲って攻めるパターンに持ち込みやすいことは心強いメリットでしょう。そういった展開を好むプレイヤーには、適性が高い指し方という印象を受けます。
話をまとめると、先手は早繰り銀を採用しても、はっきりとした良さを見出せるわけではありません。あくまで、互角の範疇に収まります。現環境は、どの作戦を選んでも形勢の均衡が取れており、角換わりという戦型はお互いに力が出せるフィールドと言えます。そういった背景も対局数が増加している一因だと言えるでしょう。
矢倉
銀上がりを保留する
24局出現。角換わりと同等の対局数であり、多くの居飛車党から支持を得ている戦法であることが窺えます。
現環境の矢倉は、先後を問わず急戦調の作戦を志向するのが主流です。特に先手番の急戦矢倉は優秀で、後手は対応に苦慮しているところがあります。詳しい解説は、以下の記事をご参照くださいませ。
そういった背景があるので、後手は金矢倉を作る将棋よりも、急戦を採用した方が戦いやすい意味があります。令和の矢倉においては、こういった駒組みが人気を集めていますね。(第5図)
この形は、現代矢倉において頻出するオープニングです。ここからの指し方はお互いに選択肢が多く、力戦模様の展開になりやすいことがこの戦型の特徴と言えます。
なお、非常に細かいところですが、後手が△6三銀よりも△7四歩を優先していることに注目してください。この戦型で△6三銀と上がる手は至って自然ですが、現時点では、まだこれを保留しておくほうが作戦の幅が広い意味があります。
さて、ここから先手の指し方は多種多様ですが、後手にとって一番怖いのは▲2四歩△同歩▲同飛から横歩取りを狙われる指し方ですね。
その局面を迎えたとき、従来では△6三銀と上がる手が良く指されていました。けれども、最近では△8五歩▲3四飛△4四角と進めるほうが、より有力ではないかと見られている節があります。(第6図)
先手は▲2四飛で飛車を戻すのが自然ですね。対して後手は、△2二銀と受けておきます。以下、▲2八飛△3三桂▲4八銀△7三桂が妥当な進行例ですが、このとき後手は△6三銀を省略していることが大きな意味を持つのです。(第7図)
基本的に、後手はここから△6五桂と跳ねる手を軸にして敵陣を攻める腹積もりです。もし、そのとき△6三銀を上がっていると、▲7三角と打たれる傷が残るので、後手は攻めに専念できないですね。
△6三銀型の構えで▲7三角をケアするとなると、△6二金が必要になります。ただ、それを指すと玉の脇腹が開くので、飛車をぶった切る攻めが出来なくなりますね。つまり、早い段階で△6三銀を上がってしまうと、急戦に打って出る条件がどんどん悪くなってしまうのです。
しかし、これが△6二銀型だと、そういった心配をする必要がありません。その上、一手分早く攻撃態勢が整うので、こちらの方が明らかに速攻に適しているのですね。第7図は、次の△6五桂や△2六歩が楽しみなので、後手は満足のいく組み上がりという印象です。
このように、[△6二銀・△7三桂型]という配置は、先手の横歩取りに対して相性の良い組み合わせと言えます。横歩取りが怖くないのであれば、先手の有力な選択肢を一つ潰せたので大きな進歩と言えるでしょう。
話をまとめると、後手が第5図のオープニングから急戦を狙うときは、[△6二銀・△7三桂型]を優先的に作ることが急所になります。先手は横歩を取るプランではリスキーなので、違う作戦を選ぶほうが無難という印象ですね。
相掛かり
△1四歩の打診が優秀
15局出現。角換わりや矢倉と比較すると、やや少ない数字ですね。これは後手の対策が整っており、先手は良さを求めにくいことが一番の理由だと考えています。
先手番の相掛かりは、▲8七歩と打つ手を保留した駒組みを行うのが有力な手法です。具体的には、こういった形ですね。(参考図)
これはこれで一局の将棋なのですが、後手はこの局面になってしまうと、受け身になるのでどうも面白くないと見られている節があります。
そこで、後手は参考図の局面に誘導されないよう、もっと早い段階から工夫を凝らすようになっています。今回は、その手法を紹介しましょう。(第8図)
この局面を目指すことが、後手の新たな工夫です。なお、ここに至るまでのポイントとしては、
(1)[△1四歩⇔▲1六歩]の交換を入れておく。
(2)1筋の交換が入ってから、△5二玉を上がる。
この二点になります。
さて、先手はひとまず▲3七桂と活用しますが、後手は△7六飛で横歩を取ります。先手は歩損のまま局面が収まると不本意なので▲2四歩△同歩▲同飛と動きますが、さらに△3六飛と歩をかっさらうのが意欲的な指し方ですね。(第9図)
一枚のみならず、二枚歩を取ってしまうとは非常に欲張りな手順です。歩をパクパク取っていると立ち遅れを招く懸念がありますが、結論から述べると、後手の指し方は成立しています。
先手は二歩損しているので、何らかの代償を見出す必要がありますね。パッと目に付く手は▲8二歩ですが、△9三桂のあとに具体的な攻めがある訳ではないので、効果は不透明です。
なお、部分的には、そこから▲8一歩成△同銀▲2三歩△1三角▲8四飛△8二歩▲2五桂で後手の角を取りに行く攻め筋があります。この手順は、頻出度の高い攻め筋の一つですね。
【相掛かりの必修の攻め筋】
相掛かりは様々な形がありますが、この局面になれば先手は局面を優勢に導けます。
まず、▲82歩→▲81歩成で形を乱し、そのあと▲23歩で角を攻めましょう。
これで△13角を強要させ、▲84飛→▲25桂と進めれば、角が取れるので先手優勢ですね。#今日の将棋クエスト pic.twitter.com/b6dR9QpwLd
— あらきっぺ (@burstlinker0828) July 26, 2020
しかしながら、この局面でその攻め筋を決行しても、後手に3六の歩を取られているので、▲2五桂と跳ねたときに△3五角と逃げられてしまいますね。先手は「序盤に指した▲1六歩が緩手ですよ」と突きつけられているのです。
こういった背景があるので、後手は歩を二枚取るという強欲な指し方が成立しているのですね。
なお、先手は序盤で▲1六歩を省略すれば、この変化は回避できます。ただ、これを省くと違う問題が生じるので、また新たな課題を抱えることになるのです。詳しい解説は、豪華版をご覧くださいませ。
雁木
右四間飛車は怖くない
10局出現。対局数は少なめですが、11月の下旬に入ってから後手雁木の採用数が上昇しています。これは受けの技術が進歩しており、以前とは違う駒組みを編み出したことが要因だと見ています。
後手雁木は先手からの急戦が怖く、対応を誤るとすぐに作戦負けに陥ってしまうリスクを抱えています。例えば、右四間飛車は強敵の一つですね。(参考図)
こういった局面になったとき、従来は△6二銀→△5三銀という要領で4筋を固めて対処するのが常識的な対応でした。
けれども、ここ最近はそれとは異なる組み方で右四間飛車に対抗する動きが出ています。具体的には、以下のような布陣ですね。(第10図)
ご覧のように、居玉を維持したまま駒組みを進めるのが後手の新工夫です。違和感を覚えた方も多いかと思いますが、これが右四間飛車に対する秀逸な受けの布陣なのです。
後手は▲4五歩と突かれる手が気になりますが、△同桂▲同桂と応じ、その状態で放置しておけば一潰しにされることはありません。その形になると先手は攻め駒がつんのめっており、効果的な攻めを繰り出すことが出来ないのです。
また、これは違う配置の場合においても同様のことが言えます。(第11図)
この将棋は△3三角型であることが先程との違いですが、やはり雁木は居玉のまま駒組みを進めていますね。また、これも早い段階で右桂を活用していることが目を引きます。後手はこうすることで攻め味が生まれるので、カウンターを撃ちやすいメリットがあるのです。
さて、先手は▲3七桂と跳ねるのが自然でしょう。これで駒組みはセット完了です。後手は4筋からの仕掛けを見せられていますが、「そんなの知らないよ」と言わんばかりに△6四銀と上がるのが大胆な対応。これが従来には見られなかった手法です。(第12図)
自ら4筋の防御を弱くしているようですが、これは▲4五歩△同歩▲同桂という攻め筋を緩和している意味があります。桂の通り道に銀を配置しないほうが、むしろ受けやすいのですね。
このように、雁木は右四間飛車を相手にした際には、
・居玉を維持する
・△5三銀型に頼らない
・右桂の活用を優先
という三つのセオリーに則ることが急所です。これが今までにない考え方であり、先手の急戦策に対して抵抗力のある布陣なのです。▲4五歩と突かれたときに、堂々と取り返せる態勢を整えておくことが重要ですね。
右四間飛車は破壊力満点のフォーメーションなので、雁木は一生懸命に囲いを固めても対処できません。なので、囲いに手数を費やすよりも、反撃しやすい形を作っておくほうが戦いやすいのです。「居玉の維持」と「右桂の活用を優先」には、そういった意味があります。
後手雁木は急戦に苦心しやすい戦法ですが、このように「反撃しやすい形を作る工夫」を行えば、十分に戦える印象を受けます。以前よりも駒組みの技術が上がっているので、雁木には魅力を感じますね。
横歩取り
使い分けが大事
10局出現。このうちの6局が青野流の将棋でした。言うまでもないことですが、横歩取り△3三角戦法は青野流との戦いですね。
後手は相変わらず△4二銀を優先する組み方が支持を集めており、現環境においては、これが最も青野流に対抗できる指し方だと考えられています。(参考図)
これに対して、▲3六歩→▲3七桂で青野流の基本となる布陣に組むのも普通ですが、この形は後手陣の守備力が高く、先手は攻略に手こずっている傾向があります。詳細は、以下の記事をご覧ください。
なので、11月の対局で先手は、この局面を迎えると全ての事例で▲3六飛→▲2六飛と穏やかに指すプランを選択していました。
これはスピーディーに先攻して良さを求める青野流の趣旨とは異なる指し方ですが、2筋に歩を打たせることで△4二銀と上がった手を間接的に咎めようという狙いがあります。
横歩取りにおいて、持ち歩の数はとても重要であり、これが少ないと敵陣を攻める際に不都合が生じます。要するに、早い△4二銀は受けに比重が偏った一手なので、それなら「私も受けに回りますよ」と、先手は主張しているのですね。
さて、先手がここから▲3六飛→▲2六飛という指し方をすると、こういった局面になることが予想されます。(第13図)
この場合、後手は基本的にはヒネリ飛車に組むことを念頭に置いて駒組みを進めます。この△9四歩は、飛車が8筋から移動したときに▲8二角と打たれる手をケアした意味がありますね。△9三香と逃げる余地を作っておけば、ダメージをかなり緩和できます。
こういった局面に誘導されたとき、黎明期の先手は端の位を取らせるケースが多数派でした。ただ、後手は端の位が取れれば△6二玉→△7一玉と囲ったとき、すこぶる広い格好になります。この土地の広さは終盤戦の貯金になり得るでしょう。
ゆえに、最近では▲9六歩と受けるのが主流になっています。第13図の類例として、第33期竜王戦七番勝負第4局 ▲豊島将之竜王VS△羽生善治九段(2020.11.26~11.27)がありますが、その将棋でも豊島竜王は▲9六歩と受けていますね。(棋譜はこちら)
後手としては、初志貫徹にヒネリ飛車を採用しても一局です……が、やはり端の位が取れていないと、些か損をしている印象は否めません。出来ればこの[△9四歩⇔▲9六歩]というやり取りを、より明確に活かしたいところでしょう。
そんな虫のいい指し方を、後手は11月下旬に編み出します。具体的には、△7四歩と突くのが有力な一手ですね。これは9筋の突き合いを入れたからこそ指せる一手です。それが無ければ▲3三角成→▲9五角で王手飛車を掛けられ、飛び上がることになりますね。
先手は▲3六歩と突くのが自然ですが、そこで△7五歩といきなり仕掛けるのが面白い着想になります。(第14図)
これを▲同歩を取ると、△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△7六飛で7筋に飛車を潜るのが有力な揺さぶりになります。ここに飛車を回り込まれるのは、先手にとって嫌な状況ですね。
したがって、△7五歩には▲3五歩と突くほうが無難ですが、△7六歩▲同飛△2四飛▲2六歩△8四飛と進めておけば、これも後手は悪くない進行です。(第15図)
相変わらず後手は一歩損ですが、先手に2六へ歩を使わせたことや、持ち歩の数を増やしたことが嬉しいポイントです。こういった展開になれば、△2三歩と打って持ち歩が減った弊害が顕在化しません。それがとても大きいのです。
もちろん、この局面は[玉型・駒の損得・効率]の全てがほぼイーブンなので、形勢としては互角としか言いようがありません。とはいえ、拮抗した局面に持ち込めるのであれば、△7四歩→△7五歩と動いた甲斐があったものです。第15図は、後手の作戦がまずまず成功している印象ですね。
ちなみに、この作戦の実例としては、第14回朝日杯将棋オープン戦二次予選 ▲広瀬章人八段VS△飯島栄治七段(2020.11.29)が挙げられます。(棋譜はこちら)
話をまとめると、△4二銀に対して▲3六飛→▲2六飛というプランには、上図のように△9四歩で先手の応手を尋ねるのがポイントになります。これで相手の対応を見て、今後の方針を使い分けるのがクレバーな戦い方ですね。
現環境の横歩取りは、青野流をあまり苦にしていない傾向を感じます。先手は明確にリードを奪える情勢ではなくなっており、以前よりも青野流の信頼度が落ちているように感じますね。
その他の戦型
他の戦型に流れている
9局出現。この中では一手損角換わりが最も多く指されましたが、それでも4局に留まっています。
現環境は後手雁木や横歩取りの株が上がっているので、2手目△3四歩系統の作戦はそちらに流れている傾向があります。
また、2手目△8四歩系統の作戦も、あまり苦労していません。定跡形の将棋で十分に戦えるので、策を弄する必要は無いといったところですね。
序盤の知識をもっと高めたい! 常に作戦勝ちの状態で戦いたい! という方は、こちらをご覧ください。
参考 最新戦法の事情【居飛車編】(2020年12月号 豪華版)
最新の戦術には興味があるけど、どう指して良いのか分からない。どうしてプロがこういった指し方をするのかを知りたい。そういったお気持ちがある方には、うってつけのコンテンツとなっております。
有料(300円)ではありますが、その分、内容は深堀しております。よろしければご覧ください!
今回のまとめと展望
【現環境は先手に苦労が多い】
全般的な傾向として、現環境は後手のほうが気楽な印象を受けます。角換わりは何をやられても互角に対抗できますし、相掛かりも嫌ではありません。矢倉は金矢倉を作りに行くと冴えないですが、急戦志向の姿勢で戦えば作戦負けは回避できるでしょう。
また、雁木や横歩取りでも十分に戦えるので、2手目△3四歩系統も悪くありません。現環境の後手はかなり選択肢が広く、より取り見取りといったところですね。
【攻守のバランスを保て!】
今の相居飛車の特徴として、「きちんとバランスを取る」ということが極めて重要だと感じます。これは、堅さに頼らずバランス重視の陣形を作るという意味ではなく、「攻守のバランスが崩れないようにする」という意味です。
具体例を示すと、この雁木の指し方は、まさにそれを象徴していると言えるでしょう。
相手がこれだけ攻めの準備を整えているにも関わらず、居玉のまま攻撃態勢を作るとはセオリーを無視しているように感じられるかもしれません。けれども、これが有力な迎撃策であることは先述した通りです。
なぜ、こういった指し方が成り立っているのかと言うと、「攻守のバランスを保っている」ことが一番の理由だと考えています。
例えば、右四間飛車に対して既存の対応だと、以下のような形を作るケースが殆どでした。
これはこれで一局かと思いますが、ご覧のように、雁木側は受けに比重が偏った布陣をしています。これでは先攻できませんし、反撃する際にも出足が遅いというデメリットがあります。つまり、一方的に攻められる展開になるので勝ちにくいという訳ですね。
ところが、このように攻守のバランスを保つ工夫を行えば、仮に先攻を許しても直ちにカウンターを撃てるので、対抗できるという理屈なのです。
また、この局面は「居玉の維持」「右桂の活用」「早繰り銀」という即効性理論を存分に活用していますね。こういった受けに比重の掛かった戦法こそ、即効性理論を適用する重要性が高いと筆者は考えています。
それでは、また。ご愛読ありがとうございました。良いお年を!