どうも、あらきっぺです。世間はハロウィンの色合いをおびていますが、滋賀県の田舎に暮らしている私にはどうも馴染みが薄いですね。せいぜいカボチャを頂くくらいでしょうか笑
タイトルに記載している通り、居飛車の将棋から最新戦法の事情を分析したいと思います。
前回の内容は、こちらからどうぞ。

・調査対象の将棋は、先月のプロの公式戦から(男性棋戦のみ)。棋譜はネット上や棋譜中継アプリにて公開されているものから収集。全ての公式戦の棋譜を見ているわけではありません。ご了承ください。
・記事の内容は、プロの公式戦の棋譜を参考にしておりますが、それを元にして筆者独自の研究内容も含まれております。記事内容の全てが棋譜の引用という訳ではありません。
・戦法や局面に対する評価や判断は、筆者の独断と偏見が多分に混じっております。当記事の内容を参考にして頂けるのは執筆者としては光栄ですが、妄信し過ぎないことを推奨致します。
最新戦法の事情 居飛車編
(2020.9/1~9/30)
調査対象局は82局。それでは、戦型ごとに見て行きましょう。
角換わり
[△6二金・△8一飛型]に組ませない
14局出現。8月と比較すると、出現率は28%→17.7%と急落しました。これはおそらく、先手番の腰掛け銀ではあまりアドバンテージが取れないからだと推察されます。
しかしながら、筆者は現環境において先手角換わりは有力な作戦だと考えています。なぜなら、この作戦が面白い指し方だと見ているからです。(第1図)
図は、先手が▲3五歩△同歩▲4五桂と仕掛けて行ったところ。ご覧のように、かなり早い段階で桂を飛び跳ねていますね。フライング気味の仕掛けに見えますが、この指し方がこのところ注目を集めている作戦なのです。
この作戦の趣旨は、[△6二金・△8一飛型]を許さないことにあります。これに組まれると相手の守備力が高いので、先手はなかなか良さを求めることが出来ません。なので、その前にやっつけに行くほうが勝算が高いと踏んでいるのですね。
さて、ここで後手は銀の逃げ場が複数ありますが、最も危険なのは△2二銀と引く手です。これは▲7五歩△同歩▲2四歩△同歩▲同飛と進められると、次の▲7四歩△同銀▲6四飛という攻め筋が防ぎにくいので先手良しと言えます。後手は避けるほうが賢明でしょう。
また、△3四銀とかわす手には▲5六角と打って銀をロックオンすれば、攻めが続きます。
という訳で、ここは△4四銀とかわすのが無難ですね。先手は▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛で歩を交換しますが、そこで△2二金と寄るのが大事な一手になります。(第2図)
ここに金を寄るのは抵抗感がありますが、後手はこの手を怠ると一潰しにされてしまうのです。奇妙な配置ですが、これがこの際の受けの形ですね。
なお、△2二金と寄らなければいけない理由については、以下の記事をご覧ください。本稿とは少し配置が異なりますが、意味するところは全く同義です。
参考 最新戦法の事情【居飛車編】(2020年9月号 豪華版
先手は2筋からの攻めにこだわるなら▲3四角ですが、現状では△3二玉と寄られて効果がありません。したがって、ここは▲4八金で自陣を整備しておくのが妥当でしょう。
後手も[△6二金・△8一飛型]を作りたいので△8一飛と引くのが自然ですが、その瞬間に▲6五歩と突っ掛ける手が面白い一着。これが期待の攻め筋ですね。(第3図)
自分の玉頭の歩を突き捨てるので暴挙のようですが、先手は次に△6二金と上がられると手出しが出来ないので、その前に戦いを起こす必要があります。
繰り返しになりますが、とにかく[△6二金・△8一飛型]に組まさないことが、この作戦の骨子なのですね。
後手はこの歩を△同歩や△同桂と取ることは出来ますが、それを指すと先手からの猛攻を喫するので潰されてしまう恐れがあります。詳しい解説は、豪華版の記事をご参照ください。
そういった事情があるので、後手は△6二金と形を整えるほうが勝りますが、先手は▲6四歩△同銀▲4七銀と進めておきましょう。
このあと先手は、▲5六銀と上がる手が非常に価値の高い一着ですね。この手が指せれば攻めに厚みが加わりますし、玉頭のケアも行えるので攻防ともに利いています。(第4図)
第4図の局面は、お互いに遊び駒が無く、駒の損得もほぼ互角なので形勢は僅差です。しかしながら、玉型の安定感においては明らかに先手のほうに分があると言えるでしょう。後手は金銀がバラバラであり、どうもまとめにくい印象を受けます。「実戦的な勝ちやすさ」という点を考慮すると、先手を持ってみたい将棋ですね。
なお、この▲6五歩という突っ掛けを決行した実例としては、第79期C級2組順位戦4回戦 ▲渡辺大夢五段VS△服部慎一郎四段戦(2020.9.17)が挙げられます。(棋譜はこちら)
この将棋は結果こそ後手勝ちでしたが、中盤戦は先手が優位に立っており、仕掛けが十分に成立していることを示す事例だったと思います。
こうして第1図から一連の変化を振り返ってみると、先手の早い仕掛けは指し過ぎになっていませんし、常に玉の安全度でアドバンテージを握っているので、先手ペースの将棋になっているという印象を受けます。
今回解説した[▲3八銀・▲4九金型]から速攻を仕掛ける作戦はかなり魅力的であり、現環境ではこれが先手にとって最有力な作戦だと見ています。こんなにシンプルな仕掛けでアドバンテージが取れるのであれば、話は簡単ですね。
後手は△2二金と寄る対応ではどうも勝ちにくそうなので、何か違う対策が求められていると言えるでしょう。現状は、先手を持って指してみたい将棋ですね。
矢倉
先手に良い風が吹いている
28局出現。その内、10局が急戦矢倉を志向する将棋になっており、高い人気を誇っていることが窺えます。特に、先手番で急戦矢倉を用いるケースが多い(7局)ですね。
先手の急戦矢倉に対して、後手は堂々と金矢倉で対抗するのは一つの方法です。そして、金矢倉に組むのであれば、こういった形で駒組みをするのがお得な指し方ですね。(第5図)
このように、△5三歩型を維持して金矢倉に組むのが新たな工夫です。こうすれば5筋の歩がぶつからないので、後手は争点を少なくすることができ、耐久力を高めることが出来ます。この指し方の優秀性については、以下の記事をご参照ください。
最新戦法の事情 【居飛車編】(2020年7・8月合併号 豪華版)
さて、先手は急戦矢倉を警戒されているので、△5三歩型に対しては別の作戦にシフトチェンジすることになります。具体的には、土居矢倉に構えるのが有力な作戦ですね。現環境では、これがホットな戦型になっています。(第6図)
なお、土居矢倉を志向する作戦自体は2018年頃からポツポツと指されており、特段目新しくはありません。しかし、まず急戦矢倉の姿勢を見せ、相手がそれを警戒してきたら土居矢倉に組むという工程が新しいところなのです。
なぜ、こういったプランを採るのかというと、先手が初っ端から土居矢倉に誘導すると、相土居矢倉で対抗されたときに困る意味があるからです。(参考図)
こういった局面になると、先手は仕掛けが難しく面白くないのです。ここから▲4五歩△同歩▲3五歩と動く手はありますが、結論から述べると上手くいきません。詳細は、以下の記事をご覧ください。

しかしながら、第5図のように早めに△4三金右を上がってくれれば、もう相土居矢倉の可能性はゼロですね。なので、先手は土居矢倉に組みやすくなっているのです。
ここからの構想は多岐に亘りますが、後手としては△8四歩型を活かすべく、[△6四銀・△7三桂型]に組んでみたくなるところです。すると、こういった局面になることが予想されますね。(第7図)
さて、この局面は共に堂々たる布陣を作っており、互角の将棋に見えるかもしれません。ところが、結論から述べると、この局面は既に先手が作戦勝ち。なぜなら、▲4五歩と仕掛ける手が非常に効果的だからです。(途中図)
矢倉戦において、こういった▲4五歩という突っ掛けには△同歩と応じるのがセオリーですね。しかし、▲同桂△4四銀▲2四歩△同歩▲同角から先手に角と歩を交換されると、後手は困ってしまうのです。(第8図)
後手はすぐに自陣が潰れるという訳ではないのですが、
・角を打ち込まれる隙が多い。
・一方的に桂を捌かれている。
・先手陣を攻める手段がない。
この三点の要因から、形勢が思わしくありません。
第8図は駒の損得はありませんが、後手は相当に勝ちにくい将棋に追い込まれてしまっています。
このように、▲4五歩から先攻して2筋で角と歩を交換することが、土居矢倉の理想とする成功パターンなのですね。
ただ、この▲4五歩が取れないとなると、▲4四歩△同金▲4五歩で位を取られてしまいますね。先手は4筋の位が取れれば▲4六角と活用できますし、将来▲4四桂と打つ攻め筋も期待できます。こういった理由から、▲4五歩と突いた局面は、早くも先手が一本取っていると言えるでしょう。
このように、まず急戦矢倉の姿勢を取り、相手がそれに備えてきたら土居矢倉にシフトするという作戦は、第41回日本シリーズJTプロ公式戦 ▲高見泰地七段VS△渡辺明JT杯覇者戦(2020.9.22)で出現しています。(棋譜はこちら)
この将棋は結果こそ後手勝ちでしたが、途中までは先手がリードを奪っており、上手く立ち回っていた印象を感じさせる内容でした。
話が長くなりましたが、要するに後手は△5三歩型で急戦矢倉を警戒した動きを取ると、土居矢倉に組まれたときに対応できないのですね。
話をまとめます。先手番の矢倉は、急戦矢倉と土居矢倉を併用する指し方が優秀です。現状、後手はこれに対して明確な対策を打ち出せておらず、押されている印象を受けます。現環境は、先手に良い風が吹いていますね。
相掛かり
△8二飛型にどう戦うか
12局出現。2手目△8四歩系統の戦型では、最も少ない数字でした。先述したように、現環境の先手は矢倉や角換わりでアドバンテージが取りやすいので、これは頷けるものがあります。
さて、相掛かりは様々な作戦が指されていますが、先手にとって有力な作戦の一つに、▲6八玉・▲3八銀型に構え、▲8七歩と打つ手を保留する作戦があります。具体的には、こういった駒組みですね。(参考図)
この局面になれば先手が作戦勝ち、という訳ではありませんが、どちらかと言うと後手側に苦労が多い印象を持っています。
後手が苦労する要因の一つに、飛車のポジショニングが悪いという点が挙げられます。つまり、どこかで▲6六角が当たってきたり、先手に▲2五飛型に構えられた後に▲8五歩を打たれたりすることが具体的な問題点です。確かに△8四飛型は効率の良い配置ではありますが、同時に相手の的にされやすいというデメリットもあるのです。
そこで、近頃の後手は、飛車を四段目でなく、二段目に引くケースも往々にして見られるようになりました。(第9図)
ここに飛車を配置すれば、この駒がターゲットになれる恐れはないですね。
なお、△8二飛と引く場合は、玉の位置は△4二玉型が最適です。理由は後述します。
このように飛車を奥まで引かれると、先手は△8六歩に対して▲6六角と切り返せません。よって、ここで▲8七歩と打つのは絶対手です。
その後の駒組みは十人十色ではありますが、自然な進行例としては△3四歩▲3七桂△6四歩▲2四歩△同歩▲同飛△6三銀が考えられるでしょう。(第10図)
ここで先手は桂を跳んでいることを活かして、▲2九飛と引くのが自然ですね。以下、△2三歩▲4六歩△5四銀で一局の将棋です。後手はスムーズに飛車を下段まで引かれてはいますが、それを実現されたからと言って作戦負けには至らないので、これは気にする必要はないでしょう。
ちなみに、先手はここで▲3四飛と横歩を取る手が成立すれば嬉しいのですが、それには△2三金▲3五飛△2四金で金を繰り出されると、飛車が安定しないので先手は芳しくありません。
このように金を盛り上げる受けが発動できることが、[△4二玉・△8二飛型]のメリットなのです。
第10図の局面は、穏やかな進行になることが確定しているので、後手はゆっくりと駒組みを進めることが可能です。持久戦調になれば先後の違いが曖昧になってくるので、後手としては不満が無いと言えるでしょう。
先手としては、△8四飛型に構えるパターンよりも、こういった作戦のほうが手強いのかもしれません。
雁木
雁木は先手番で指すもの
10局出現。
出現率は12.2%であり、これは8月と全く同じ数字でした。
しかしながら、先後の比率には大きな違いが出ています。8月では9割が後手番での採用でしたが、9月ではこれが5割にまで落ち込んでいます。
ちなみに、初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩というオープニングの雁木は、3局の出現に止まりました。このパターンは先手からの急戦策に手を焼いているので、現環境ではあまり得策とは言えない印象ですね。
【雁木には、やっぱり左美濃】
この作戦は、攻める一手前に▲66角を上がっておくのがポイント。これにより、角交換に強い形になります。
この後は、▲35歩→▲45歩で攻め掛かりましょう。△同歩には▲同桂△44銀▲33歩△同桂▲24歩という要領で暴れていけば、攻めが続きます。#今日の将棋クエスト pic.twitter.com/Qn2C3Zx9Ef
— あらきっぺ (@burstlinker0828) October 9, 2020
逆に、先手雁木は大いに増加しました。相雁木の将棋も含めると7局も指されており、現環境において雁木という戦法は、「先手番で指すもの」という風潮ができつつあるように感じます。
さて、先手雁木に対して、後手の作戦は、
・急戦
・矢倉
・相雁木
の三択に分かれます。ただ、急戦は一手の差分が大きいので、どうしても条件の悪さが際立ちます。ゆえに、あまりポピュラーではありません。
なので、矢倉か相雁木に人気が集まっているのですが、後手としては相雁木の将棋のほうが膠着状態を作りやすいので、先手雁木には相雁木が最も有力だと考えられています。(第11図)
相雁木の将棋において、こういった局面は頻出しやすいですね。
ここから先手が淡々と駒組みを進めると、以下の局面になることが予想されます。(仮想図)
ただ、この局面になってしまうと打開が難しく、先手番の利が活かしにくい印象を受けます。相手に歩を渡すと△8六歩▲同歩△8五歩という継ぎ歩攻めが生じるので、▲4五歩と仕掛ける手段が取りにくいことが痛いですね。これが打開が難しい最大の理由になります。
そこで、先手はここから桂を跳ねるのではなく、▲3八飛→▲3五歩という要領で3筋から一歩交換する動きのほうが打開しやすいと考えられます。(第12図)
後手も同じように△7二飛と寄ってきた場合は、▲3六銀から角頭を狙えば良いでしょう。これは先手のほうが攻めが速いので、後手は選べません。
ゆえに、△5四銀右▲3七桂△7三桂と銀桂の活用を優先するほうが勝りますが、先手は▲2九飛と寄っておきます。(第13図)
このあと先手は▲5六銀右と上がり、機を見て▲2四歩△同歩▲2五歩の継ぎ歩攻めを狙う要領で戦うのが大まかなプランになります。
第29図はこれからの将棋ではあるのですが、先手は仮想図よりも遥かに動きやすいので、これなら不満は無いといったところですね。
このように、現環境で雁木を用いるのであれば、先手番で採用するのが無難です。先手雁木は相雁木で対抗されたときに打開が出来るかどうかが死活問題ですが、袖飛車に構えて3筋から一歩交換を行えば、千日手になる心配は払拭することが出来ると言えるでしょう。
先手雁木は2手目が△8四歩でも△3四歩でも採用することが出来るので、誘導のしやすさは随一です。現環境においては、悪くない選択と言う印象ですね。
横歩取り
後手が大いに健闘している
10局出現。8月と比較すると、出現率は13.4%→12.2%と少し減少しました。
とはいえ、2手目△3四歩系統の作戦では最も指された作戦であり、後手番居飛車における主力戦法の一つと言えます。横歩取りは、2019年度の後半辺りから絶滅危惧種とも言える状況だったので、見事なV字回復を遂げました。
横歩取りが復権した理由は、青野流に対抗できるようになったことが一番の要因です。現環境では、早めに△4二銀と上がる作戦が評価されていますね。(参考図)
このように、玉を移動する前に△4二銀を上がってしまうのが最近のトレンドです。これに対して先手が▲3六歩→▲3七桂と駒組みを行うと、後手は以下の布陣を作って対抗します。(第14図)
ご覧のように、[△4二銀・△2二歩・△7二銀型]という構えを作り、さっと△8二飛と引くのがポイントです。なお、この局面に至るまでの解説や、この布陣の優秀性については、以下の記事をご参照ください。

さて、ここで先手はのほほんと構えていると、△8八角成▲同銀△3三銀▲3五飛△4四角と動かれて困ります。なので、▲8四歩と打って相手の飛車を押さえるのが自然ですね。(第15図)
これに対して後手は、△8八角成▲同銀△2八角と進めるのが候補の一つ。以下、▲3二飛成△同玉▲2九金と進行することになります。
これはこれで後手にとって有力な変化なのですが、今回は▲8四歩に対して△2三金と上がる変化を掘り下げてみましょう。歩越し金の悪形になってしまいますが、後手はこちらも有力な指し方なのです。(途中図)
ちなみに、この△2三金は、第70期王将戦挑戦者決定リーグ戦 ▲藤井聡太二冠VS△羽生善治九段戦(2020.9.22)で登場した一手でもあります。
この金上がりの意味は、先手の飛車をどかして8四の歩を取りたいという意味です。
すなわち、ここで▲3五飛には△8四飛が指せますね。先手としては、2三に金を上がらせたという主張はありますが、相手の飛車に活用されてしまっているので嬉しい進行とは言い切れません。
なので、ここでは▲3三飛成△同桂▲6六角も考えられます。これは、「8四の歩を取らせない」というプランですね。(第16図)
こうすれば8四の歩が安定するので、後手の飛車の活用を阻むことが出来ます。
ただ、ここからどのように敵陣を攻めれば良いのかということに関しては、課題が残っています。今後の方針が難しいので、先手は先行きが不透明ですね。
もちろん、後手も飛車が押さえ込まれていたり、2三の金が堅いのか悪形なのか判別しない格好なので、不安が無いわけではありません。ただ、こういった「よく分からない戦い」に持ち込むことが出来れば、青野流の優位性を抽象化している意味はあります。それを考慮すると、後手のほうが満足度が高い岐れなのかも知れません。
話をまとめます。青野流に対しては、△4二銀型を優先する作戦が有力ですね。先手は現状、第14図からリードを奪う手順を確立できておらず、なかなか優位を掴むことが出来ていません。現環境の横歩取りは、後手が大いに健闘していると言えるでしょう。
その他の戦型
特に大きな動きは無い
8局出現。対局数が少なく、目新しい作戦が登場したということもありませんでした。この8局の中では一手損角換わりが最も多く指されましたが、それでも4局の出現数に止まっています。
一手損角換わりは決定的な対策が打ち出されたという訳ではありませんが、戦法の性質上、先攻しにくいという弱点があり、その辺りが支持を得られていない理由かもしれません。特にプロ棋界では、2手目に△3四歩を突くのであれば、横歩取りを採用したいという風潮を感じますね。
序盤の知識をもっと高めたい! 常に作戦勝ちの状態で戦いたい! という方は、こちらをご覧ください。
参考 最新戦法の事情【居飛車編】(2020年10月号 豪華版)
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今回のまとめと展望
【先手の取るべき戦略】
現環境は角換わりと矢倉が有力なので、2手目△8四歩は怖くありません。
角換わりは[▲3八銀・▲4九金型]から足早に桂を跳んでいく作戦が優秀です。
矢倉は、急戦矢倉と土居矢倉の二刀流が面白いですね。相手が金矢倉を確定させたら、土居矢倉を目指すのがクレバーな駒組みになります。
解決できていないのは横歩取りで、先手は早い△4二銀に悩まされています。現状、これに対してリードを奪う指し方は確立されていません。
ただ、現環境は先手雁木も悪くない選択です。なので、横歩取りを嫌うなら初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲6六歩というオープニングで雁木を目指すのは一理あると言えるでしょう。
【金の使い方に変化あり】
相居飛車において左側の金を据える場所としては、7八(後手なら3二)が定番の配置ですね。しかしながら、現環境においては、この考え方が揺らぎつつある傾向を感じます。
例えば、今回で解説した角換わりの将棋では、△2二金という受け方が登場します。
既存の感覚であれば、自ら壁金になるので違和感を覚えるところではないでしょうか。しかし、これが必要な受けの一手であることは、先述した通りです。
他には、土居矢倉の▲6七金左や、横歩取りでの△2三金が風変りな金の使い方として挙げられます。特に、横歩取りの△2三金は絶対に後戻りできないので、相当に大胆ですね。
どれも定位置から金を動かす意表の指し方ですが、攻め側はこれらの手を的確に咎めることは出来ていません。つまり、こういった金の使い方が有力であることを示唆していると考えられます。相居飛車の受けの技術は、新たなステージに進んだ印象ですね。
それでは、また。ご愛読ありがとうございました!