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今週の妙手! ベスト3(2020年1月第4週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2020年1月第3週)

 

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2020.1/19~1/25)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。相振り飛車から前例のない力戦形になり、このような局面になりました。(第1図)

 

2020.1.21 第33期竜王戦6組ランキング戦 ▲古森悠太四段VS△西田拓也四段戦から抜粋。

7二の地点で飛角交換が行われたところです。

後手は玉が露出していますが、ここさえ凌げば大きな駒得が活きてきます。それを踏まえると、先手は早期決着をつけるような手段が必要と言えるでしょう。

 

そうは言っても先手は手駒が潤沢にあるわけではなく、不安を覚えるのではないでしょうか。ところが、古森四段はこの持ち札で後手玉を寄せ切ってしまったのです。

古森四段が指した手は、▲8三飛です!

 

飛車を捨てて、後手玉を狭めたのが妙手でした!

 


これが快心の一撃でした。まさに創ったような妙手で、後手は痺れています。

これを△同金と取ると、▲9六金△8四玉▲9五銀までの3手詰み。後手は8三の地点が命綱で、このスペースが埋まると窒息してしまうのです。

 

また、この手は▲8六銀△同飛成▲同飛成△同玉▲8八飛という手順で詰めろにもなっているので、後手は攻め合いに転ずることも許されません。

 

そういった事情があるので△8四歩と辛抱しましたが、▲9六歩で玉の態度を尋ねます。これに(1)△9四玉なら▲8一飛成で一手一手の寄り筋ですね。(A図)

実戦は(2)△8五玉と寄りましたが、▲9五銀で必死が掛かりました。(第2図)

 

8四と8六を同時に狙ったのが賢い攻め方です。後手は複数の詰めろを同時に防ぐことが出来ません。△8三金と飛車を取っても▲8六歩から平易な詰みです。実戦は、ここで終局となりました。

 

▲8三飛のような退路を封鎖する手は、詰将棋では頻出しますが実戦で現れるのは珍しいですね。こういった痛快な捨て駒をできることが終盤戦の醍醐味であり、将棋の魅力を如実に表した一着とも言えます。これは美しい妙手でした。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、こちらの将棋です。角換わり腰掛け銀から、先手の猛攻を後手が凌ぐという構図になり、以下の局面を迎えました。(第3図)

 

2020.1.23 第78期順位戦B級1組11回戦 ▲谷川浩司九段VS△千田翔太七段戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)

後手は囲いが完全に崩壊していますが、8一の飛の守備力が高いので、まだ一手の余裕がある状況です。ここで手番を活かして敵玉へと迫りたいですね。

 

そのための第一歩として、千田七段は駒台の飛車に手を伸ばします。しかし、その駒が放たれた場所は、思いもよらないところでした。

千田七段が指した手は、△4五飛です!

 

4八の金に狙いを定めたのが妙手でした!

 


飛車を打つのなら、てっきり△5九飛や△3九飛と予想した方が多かったのではないでしょうか。ただ、それらは▲6九歩のときにハッキリしない嫌いがあります。

そういったモヤモヤを断ち切るのが、この△4五飛なのです。

 

ご覧のように、狙いはシンプルな金取りですが、意外にも先手はしっくりと来る受けが無いのです。歩の合駒は打てませんし、▲5八金や▲3八金では△4九飛成が王手金取りになってしまいます。

 

そうなると、▲9五歩で斬り合いに活路を求めるのは妥当ですが、△7三角成▲同金△4八飛成が用意の切り返し。これで後手は相手よりも一足早く、詰めろを掛けることに成功しました。(第4図)

 

これは△6七桂▲8八玉△7九角からの詰めろですね。そして、後手は8四への逃走ルートを確保しており、▲9四歩の取り込みを無効化しています。それにより、先手は一手分の遅れが生じることになりました。

 

非勢の先手は▲7五角△9二玉の利かしを入れてから▲6八歩と粘りに出ましたが、△9六桂がトドメ。これで後手の一手勝ちが明らかとなりました。(第5図)

 

▲同香には△9九銀で、挟み撃ちに出来ますね。先手玉は8八へ移動できないと延命できない格好です。適当な受けもなく、千田七段の鮮やかな寄せが決まりました。

 

こうして振り返ってみると、後手は4八の金が取れたことで、敵玉をスムーズに仕留めることが出来ています。「将を射んとする者はまず馬を射よ」という故事成語が訓えるように、直接、敵玉にアタックしても、そう簡単にはいかないものです。

 

今週の妙手

この場合は4八の金が後手の寄せを妨げる守衛だったので、まずはそれを倒すことが最適な攻めだったという仕組みなのですね。千田七段の視野の広さを改めて感じさせた妙手でした。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。これは派手な類の手ではないのですが、とてもテクニカルなので一位に推した次第です。(第5図)

 

今週の妙手

2020.1.20 第13回朝日杯将棋オープン戦本戦 ▲永瀬拓矢二冠VS△糸谷哲郎八段戦から抜粋。

後手が△3六角と打ったところ。

この手は2五の桂を守りつつ、△2七銀から飛車を封じ込める狙いを秘めています。それを実現されると、先手は面倒な状況を招いてしまいますね。

 

中盤の難所を迎えていますが、次の一手により、永瀬二冠は相手を突き放すことに成功します。タイトルホルダーは目の付け所が違うものですね。

永瀬二冠が指した手は、▲1六角です!

 

今週の妙手

後手の角に対抗するべく、角を使って受けたのが妙手でした!

 


今週の妙手

何だか狭苦しいところへ角を使ったようですが、これが相手の希望を打ち砕く妙手でした。

そもそも、△2七銀を防ぐだけなら▲2六飛と浮けば事足りています。では、なぜ角を投資する必要性があるのでしょう?

もし、第6図から▲2六飛とした場合、△5八角成▲同金△3五金▲2八飛△3四金▲3二銀成△同金という進行が予想されます。(B図)

 

今週の妙手

先手は角銀交換の駒得なので有利ではありますが、3四の拠点を取り払われてしまったことが気懸かりなのです。加えて、後手は△4九銀から、と金を作る狙いを残しているので、駒損でも頑張り甲斐がある局面ですね。要するに、先手は良さはあるものの、スッキリとはしないのです。

 

今週の妙手

他に△2七銀を防ぐなら、▲3二銀成△同金▲2六金という方法もあります。けれども、これは△5四角と引かれると芳しくありません。▲2五金には△2七銀があるので、問題の解決にはなり得ないのです。(C図)

 

このように、「3六の角を責める」というアクションプランでは上手くいきません。そこで捻り出された手が▲1六角なのです。

 

今週の妙手

これも△2七銀を受けていますが、それと付随して△4九銀や△3八歩成という攻め筋もケアしていることが、前述の受けとは一線を画す部分ですね。

 

後手は2五の桂を取られると話にならないので、本譜は△2四銀と抵抗します。しかし、▲2一歩成△同飛▲3二銀成△同金▲2六金と進められると、防波堤は決壊しました。(第7図)

 

今週の妙手

今度は△5四角と引かれても、▲2五金のときに相手の銀とぶつかるので、先手の金は空を切らされる心配がありません。2四に銀を打たせたことで、▲2六金が発動できるようになっているのです。C図の変化とは雲泥の差がありますね。

 

同時に、こちらの変化を選ぶことで、先手は3四に拠点を残しながら駒得という戦果を上げたということにも注目して頂きたいです。

 

今週の妙手

この局面もB図の変化も先手が駒得することには違いがありませんが、3四の歩が盤上に存在するだけ、こちらの変化の方が価値が高いのです。

ここに攻めの足場があれば、将来的に▲3三銀と放り込むような手が残るので、今後の攻めに苦労する不安が軽減されています。実戦も、その攻め筋を実現させた先手が勝利を収めました。

 

前述したように、後手は第6図の局面で△2七銀を狙っていました。ただ、それと同時に△4九銀や△3八歩成という攻めも見据えていたのです。ゆえに、それらを全て封じる▲1六角が最強の一手というロジックなのです。相手の狙いを看破する永瀬二冠の慧眼には、ただただ感服ですね。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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