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今週の妙手! ベスト3(2020年3月第2週)

妙手 桂

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
妙手今週の妙手! ベスト3(2020年3月第1週)

 

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2020.3/8~3/14)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。相雁木から先手が駒損ながら攻勢に出るという展開になり、このような局面になりました。(第1図)

 

妙手 桂

2020.3.11 第78期順位戦B級1組11回戦 ▲澤田真吾六段VS△村山慈明七戦から抜粋。

先手は成桂を二枚作っていますが、現状では角銀交換の駒損なのでもう少し具体的な戦果が欲しいところです。

ゆえに、何かしら攻める手に目を向けたくなるところですが、澤田六段はとても冷静な手を選びました。指されてみると、これはなるほどの一手でしたね。

澤田六段が指した手は、▲8六歩です!

 

妙手 桂

歩を突いて自玉の安全度を確保したのが妙手でした!


 

 

妙手 桂

この場面で手を戻すのは気が利かないようですが、これが盤面の状況を正確に把握した一着でした。先手は自玉の安定を図るのが先決なのです。

ちなみに、自玉を安定させるなら▲8八玉や▲6八玉のほうが並に見えるかもしれません。けれども、それらの手では△7七歩▲同金△8五桂という攻め筋が残ってしまうので、嫌味をかき消すことは叶わないのです。

 

妙手 桂

玉を三段目で留めるのは不自然なようですが、青枠で囲った部分はelmo囲いと全く同じ配置ですね。それゆえ、先手はこの配置を維持する方がむしろ安全を確保できるという意味もあります。

 

さて。後手は△4七歩成▲同金△6五歩で金銀の連繋を引き剥そうと試みますが、▲6五同銀△4四飛▲4五歩△同飛▲5六銀打が接着剤のような役割を果たす一手で、先手陣はびくともしません。(途中図)

 

妙手 桂

後手は駒得していることが唯一の主張なので、ここでは△4四飛と引くよりないでしょう。しかし、▲3四歩△同飛▲5二成桂寄で金にアタックする手が厳しいので、先手は優位に立つことが出来ました。(第2図)

 

先手は駒得を回復する目処が立っていますし、▲4五銀→▲3四歩という要領で後手の大駒を攻める楽しみがあることも心強いですね。これだけ自陣が堅ければ、存分に攻めに専念できる態勢です。以降は、堅陣を活かした先手が危なげなく押し切りました。

 

改めて、第1図に戻ってみましょう。

妙手 桂

この局面で先手が勝つためには、あの二枚の成桂を金と交換することが必須条件です。しかし、後手にたくさん桂を渡すと、△8五桂を何発でもおかわりされるので、利敵行為になりかねません。

そして、この局面で後手にとって桂という駒は、△8五桂以外ではあまり有力な使い道が見当たらない駒でもありました。

 

妙手 桂

つまり、先手は△8五桂さえ阻止してしまえば相手の持ち駒の桂のレートを下げることが出来る状況だったのです。ゆえに、▲8六歩と突く手が最適な一手になるという仕組みだったのですね。攻勢に出る前に、自陣を手入れして無敵を作るという好例だったと思います。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、こちらの将棋です。後手の金矢倉に先手が急戦矢倉を決行して、以下の局面を迎えました。(第3図)

 

妙手 桂

2020.3.12 第78期順位戦B級1組13回戦 ▲永瀬拓矢二冠VS△深浦康市九段戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)

後手が△8八歩と打ち、それを▲同金と応じたところ。

ここで普通に指すなら△8八同桂成▲同飛と進めるのでしょうが、そのとき後手は威力のあるパンチを撃つことが出来ないので、はっきりしない局面になってしまいます。

そうは言っても、後手は金を取る以外の選択肢など無いように思えます。ところが、深浦九段は目敏い一着を用意していました。

深浦九段が指した手は、△2五桂です!

 

妙手 桂

桂を捨てて「飛車を動け」と突きつけたのが妙手でした!


 

 

妙手 桂

8筋とは真逆の方向から手を作りに行っているので、意表を突かれますね。思わぬ一手でしたが、これが優位を決定づける桂跳ねでした。

この桂を▲同飛と取ると、△8八桂成▲同角△8六飛が痛烈です。先手は2八の飛が縦方向に移動すると、守備力がガタ落ちするので崩壊してしまいます。(A図)

したがって、先手は悔しくともこの桂を取ることが出来ません。

 

しかも、この手は次に△3七桂成という手も見せています。先手は飛車の横利きを維持しながら△3七桂成に対処しなければいけないので、非常に受けが難しいですね。

本譜は▲7八飛△8八桂成▲同角△8六飛▲9八銀という根性の受けを捻り出しましたが、△7五角が絶好の活用なので後手の優位は明らかです。(第4図)

 

妙手 桂

相手の飛車の利きをブロックしながら自玉を広くしたので、味が良いですね。

第4図は銀取りや△3七桂成が残っていることや、先手の7~9筋の駒の働きが良くないので後手が有利と言えるでしょう。2五の桂の存在により、先手は飛車が変な場所へ移動させられたことも痛いところです。

 

妙手 桂

こういった矢倉系統の将棋では、▲2八飛型が最強のポジションです。なので、その配置を動かす手は価値が高いケースがままあります。そのセオリーを踏まえると△2五桂は発見できる手なのかもしれませんが、囲いの桂を囮に使うのはなかなか気付かない発想ですね。これは鋭敏な妙手でした。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。これも意外な駒の使い方で難局を切り拓いた妙手でした。(第6図)

 

妙手 桂

2020.3.13 第61期王位戦挑戦者決定リーグ白組 ▲稲葉陽八段VS△菅井竜也八段戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)

先手が▲4六同歩で歩を取ったところです。

後手玉は穴熊に囲っていますが、玉周りがスカスカしているのでそこまで堅くはありません。また、飛車取りや▲7四馬を見せられているので凡庸な手では形勢を損ねてしまいます。6一の飛が負担になっていることもネックと言えるでしょう。

 

終盤の難所を迎えていましたが、次の一手により後手は大きく流れを引き寄せます。将棋とはこう指すものなのですね。

菅井八段が指した手は、△5一桂です!

 

妙手 桂

下段に桂を打って、先手を催促したのが妙手でした!


 

 

妙手 桂

ぱっと見では貴重な攻め駒をよく分からない場所に使っているようですが、これが盤上この一手とも言える妙手なのです。

ちなみに、第5図では△6二飛と飛車をかわす手のほうが普通の手ではあります。けれども、▲同馬△同金寄▲2一飛成と進められると、後手は容易ではありません。(第6図)

 

妙手 桂

▲8三桂と打たれる攻め筋があるので、後手は駒を渡す攻めが実行できる状況ではないですね。しかし、ここで受けに回らざるを得ないようでは、先手に手番を握られ続けてしまいます。

この変化は[▲6二馬△同金寄]という応酬により、穴熊を弱体化させられてしまう点が泣きどころなのです。

 

そういった問題点をクリアするのが、この△5一桂になります。

妙手 桂

ここで▲6一馬には△4三桂と角を取ってしまえば良いでしょう。先手は4三の角が消えると、途端に自玉が危うくなるのでこの変化を選ぶことは出来ません。(B図)

 

という訳で、本譜は▲9八角成と撤退しましたが、これで後手は飛車取りのダメージを緩和することが出来ました。一手の余裕が作れたので、菅井八段は△7三銀引と指します。囲いを強化しながら飛車の利きを通す絶好の一着ですね。(途中図)

 

妙手 桂

こうなってみると、後手は6一の飛が負担では無くなっていますし、▲7四馬をケアすることも出来ていることが分かります。

そして、最大の自慢は青枠で囲った部分が強力なガードマンになっていることです。すなわち、先手から▲2一飛成と成り込まれても、これらの駒が良い防波堤になっているので後手は痛痒を感じません。第6図の変化とは雲泥の差がありますね。

 

妙手 桂

先手は6七の地点が脆いので▲6一馬△同金と進めるのは妥当ですが、その局面は次の△9六角が強烈です。本譜は▲5四馬と上がってそれに対処しましたが、△4九角が痛打になり、後手がはっきり頭一つ抜け出した格好になりました。(第7図)

 

妙手 桂

飛車取りと△6七歩成を見せており、実質的な両取りと言えますね。先述したように、先手は▲2一飛成の威力を緩和されているので攻め合いに打って出ることが不可能です。以降は手数こそ掛かりましたが、菅井八段が玉の堅さにモノを言わせて押し切りました。

 

改めて、△5一桂の局面に戻ってみましょう。

後手は6一の飛の処遇をどうするかが課題ではあったのですが、それと同時に将来の▲2一飛成をどう対処するのかという問題も抱えていました。△5一桂を打つことで、それらの懸案を一遍に解決していることが分かります。▲6一馬を牽制しながら下段に壁を作ったことが大きいのですね。

そして、後手は△5一桂を放ってからは常に手番を握り続けていることも見逃せません。あまり見慣れない桂の使い方でしたが、常識に囚われない柔軟な妙手でしたね。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

2 Comments

note1129

いつも楽しく拝見しております。

1点お願いがあります。
「今週の妙手!ベスト3」のコーナーなのですが、サムネと言うのでしょうか?最初の画像を見てしまうと妙手の答えが分かってしまう(?)ので、何か分からないようにして頂けると嬉しいです。
ワガママ言ってすいません。よろしくお願いします。

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あらきっぺ

ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

そうですね。確かにそういう側面があることは確かですね。
何か良いアイデアが思いつけば、そういった工夫も検討いたします。

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