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今週の妙手! ベスト3(2020年4月第1週)

妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
妙手 藤井今週の妙手! ベスト3(2020年3月第4週)

 

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2020.3/29~4/4)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。後手の右玉に先手が穴熊に組んで対抗する構図になり、このような局面になりました。(第1図)

 

妙手

2020.3.31 第33期竜王戦1組出場者決定戦 ▲佐藤康光九段VS△佐藤天彦九段戦から抜粋。

後手は4三の銀が当たりになっていますが、この駒を動かすと▲5二銀の一手詰めなので、もはや受けが利かない状況ですね。ゆえに、攻め合いに希望を託して△9三香と指しています。

 

先手はこの金取りに対してどう対処すれば良いでしょうか? 本譜は意外な対応でしたが、これが最良の受けでしたね。

佐藤(康)九段が指した手は、▲9七桂です!

 

妙手

桂を移動させて通気口を確保したのが妙手でした!


 

 

妙手

金取りを放置していますが、これが局面を明快にする受けの妙手です。

なお、先手としては単刀直入に▲4三歩成で勝ちなら話は早いですね。けれども、それには△8六桂と打たれると奈落の底へ突き落とされてしまいます。(A図)

このトン死筋を回避するために、▲9七桂と跳ねる手がクレバーな応手になるのです。

 

妙手

後手は有効な受けが無いので本譜は△9六香▲4三歩成△8六桂と斬り合いましたが、▲8九玉と引いておけば詰みはありません。多少、王手は続きますが、6・7筋が抜けているので捕まらないですね。(途中図)

 

妙手

仕方がないので本譜は△5三銀と金を補充しましたが、▲5二銀△6二玉▲6三桂成△7一玉▲7二銀△8二玉▲8三銀成△同玉▲7三成桂△同玉▲7五飛と畳み掛けて、佐藤(康)九段はいきなり後手玉を仕留めてしまいました。(第2図)

 

妙手

長手数進めてしまい恐縮ですが、ここまで進んでみると9七に跳ねた桂が詰み筋に結び付いていることが分かります。つまり、△7四歩には▲6三飛△8四玉▲8五飛がありますね。

本譜は△7四銀と合駒しましたが、▲6三銀成と成り捨てたのがトドメ。(1)△同玉は▲5三歩成。(2)△8四玉には▲7四飛△同玉▲7三飛。高い駒を打つと、それを取る筋で詰んでしまうのです。

 

妙手

▲9七桂という対応はイレギュラーな指し方なのですが、この局面では8九への逃げ道を作っておくことが急所だったので、金を取らせても良いという訳なのです。その上、この駒が敵玉への寄せにまで働くとは何とも都合の良い話ですね。この桂跳ねは、テクニカルな受けの妙手でした。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、こちらの将棋です。相穴熊から振り飛車が先攻する将棋になり、以下の局面を迎えました。(第3図)

 

妙手

2020.4.1 第33期竜王戦6組ランキング戦 ▲西山朋佳女流三冠VS△長谷部浩平四段戦から抜粋。

後手が△8五飛と浮いて、飛車取りをかわしたところです。

先手は大駒の働きでは勝っていますが、玉の堅さにおいては少し後手に劣っている印象です。したがって、受け身に回ると形勢を損ねる可能性が高い局面と言えます。

 

そうなると、先手は果敢に攻める手を考えたいですね。その最適な手段は、一体どんな手になるでしょうか?

西山女流三冠が指した手は、▲4四馬です!

 

馬を引いて、飛車を一段目に成れるようにしたのが妙手でした!


 

 

馬を引く手が柔軟な着想でした。自ら馬を角と交換するので率が悪いように見えますが、これが彼我の状況を的確に捉えた一着だったのです。

しかしながら、先手はなぜ馬を引く必要があるのでしょうか。わざわざ馬を引かなくとも▲7二飛成と指せば竜が作れるので、不可解に見えるところかもしれません。

ただ、それには△5五飛と回られたときが厄介なのです。(第4図)

 

▲5七歩と受けると△4五飛で困りますね。これは歩切れに泣かされています。

なので▲4八金打と受けることになりそうですが、△4七銀と絡まれると面倒な状況が続いてしまいます。この変化は竜と馬が一瞬、停滞しているので、先手は大駒の効率があまり良くありません。

 

こういった背景があるので、先手は▲4四馬と引いたのです。

 

さて。これに対して△同角▲同歩△5五飛と指すのは、▲4三金と放り込む手がうるさいですね。これは4筋の歩が伸びて拠点になっていることや、7一に飛車が成れることが大きく、先手の条件が良い変化と言えます。(B図)

 

したがって、本譜は単に△5五飛と指したのですが、▲同馬△同歩▲7一飛成△9二角▲4一飛と進んだ局面は、先手が頭一つ抜け出した格好となりました。(第5図)

 

何気ないところですが、これも抜け目の無い手です。後手は△3一銀右と受けるのが形ですが、▲4四歩と伸ばされると攻めが加速してしまいます。また、△3一金と弾きに行くと▲3二金でヤブヘビですね。

 

本譜は△3一銀打と受けましたが、これなら相手の攻撃力が落ちているので▲4八金打と受けることが出来ました。後手は手駒が無いので4六の拠点を活かす術がありません。

先手は▲8二竜→▲9一竜という確実な攻めがあるので、長期戦は大歓迎です。そういった理由により、第5図は振り飛車が優勢ですね。

 

この▲4四馬は、ぱっと見では意図が分かりにくい手ではあるのですが、

・△5五飛の牽制
・飛車を7一へ成る
・4五の歩を攻め駒に変える

こういった狙いを秘めている一石三鳥の馬引きだったのです。これだけのベネフィットがあれば、馬と角を交換をしても補ってなお余りあると言えるでしょう。▲4四馬は、大駒の働きを最優先に考える振り飛車らしい妙手でしたね。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。このシャープな寄せは見事としか言いようがないと感じたので、一位に推しました。(第6図)

 

妙手 羽生

2020.4.3 第33期竜王戦1組ランキング戦 ▲羽生善治九段VS△稲葉陽八段戦から抜粋。

後手が△5三同金と指し、と金を払ったところです。

先手は2筋に拠点を設置することに成功していますが、直ちに▲2三銀と放り込んでも△3一玉と引かれて二の矢がありません。つまり、単純な攻めでは上手くいかないのです。

 

そうなると、先手はもう少し下準備が必要ですね。羽生九段は、▲2三銀と打ち込む手の威力を最大限にまで高める工夫を凝らしました。

羽生九段が指した手は、▲7五角です!

 

妙手 羽生

角を動かして、間接的に3一に利かせたのが妙手でした!


 

 

右辺が主戦場となっているので、こちら側に角を移動するのは予想しづらい一着だったのではないでしょうか。

これは次に▲6三歩成△同金▲2三銀が狙いです。角の力で後手玉の逃走を阻止することが、この手の狙いですね。

 

妙手 羽生

ただ、これには△7四歩と催促される手があるので、先手の角は安定していないように映るところでしょう。ですが、▲6三歩成△7五歩▲5三と△7六歩▲2三歩成アクセル全開で踏み込んでしまえば、先手は一気に勝利を引き寄せることが出来るのです。(第7図)

 

妙手 羽生

これは△同金の一手ですが、▲同飛成△同玉▲2四歩△同玉▲2五歩△2三玉▲2四金と迫っていけば、後手玉は即詰みです。歩の数までピッタリと足りていますね。(C図)

 

要するに、後手は▲6三歩成→▲5三との二手が回ると受けに窮するので、△7四歩→△7五歩で角を取っている余裕がないのです。

 

妙手 羽生

ゆえに、本譜は△7四馬と引いて粘っこく指しましたが、そこで▲4三歩が素晴らしい垂れ歩でした。(第8図)

 

△同金右には▲6三歩成がありますね。よって、この歩は盤上に残ることになります。先手は拠点の数が増えたので、▲2三銀と打つ条件がさらに良くなりました。

また、この場所に駒を置くことにより、△7五馬▲同銀△4三角という狙いをかき消していることも見逃せません。

 

妙手 羽生

稲葉八段は△3四銀と引いて守りを固めますが、羽生九段は満を持して▲2三銀と放り込みます。以下、△同金▲同歩成△同銀▲2四歩で再び拠点を打ち直しました。(途中図)

 

妙手 羽生後手は△3四銀と逃げるよりないですが、▲6三歩成△7五馬▲5三と△同馬▲2三金△3一玉▲8五飛が必殺の一撃。「玉を下段に落として頭金を狙う」というセオリー通りの寄せが決まりましたね。(第9図)

 

妙手 羽生

後手は8二の飛が縦に動くと▲3二金打で一巻の終わり。つまり、△同飛や△8四歩のような手が指せないことを意味します。しかし、飛車が横へ逃げるようでは▲8一飛成で崩壊していますね。以降は幾ばくもなく、羽生九段が勝利を収めました。

 

改めて、冒頭の局面に戻ってみましょう。

妙手 羽生

この局面で先手は▲2三銀と打ち込む手が権利であり、それをいつ決行するのかが考え所と言えます。そして、こういったケースでは往々にして、火力をマックスにまで高めてからそれを発射するような指し方が有効になります。なので、▲7五角や▲4三歩が最適な攻めになるという仕組みなのです。

 

妙手 羽生

そして、このような「力を最大限まで溜める」という技法は、前回の記事で解説した第3位の妙手とも通ずるものがありますね。これも羽生九段の妙手なので、併せてご覧いただけると理解がより深まるのではないでしょうか。

妙手 藤井今週の妙手! ベスト3(2020年3月第4週)

 

こういった沈着冷静な寄せは、まさに王者の風格を感じさせますね。なかなか真似できないものですが、少しでも会得できるようにしたいものです。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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