どうも、あらきっぺです。
長い間、放ったらかしてはいましたが、(ズボラなもので・・・)前回は▲4八金・▲2九飛型に組む理由を解説しました。今回からは、▲4八金・▲2九飛型の狙いや攻め筋を具体的に解説したいと思います。
定跡講座 角換わり
まずは、下の図をご覧ください。
青枠で囲った布陣が有力とされている▲4八金・▲2九飛型です。基本図に至る手順は特に決まっておらず、順不同と判断して問題無いでしょう。
(厳密には、そこまで大らかに指しても良いという訳でもないのですが、特に気にする必要はないです。詳細は続編の記事に記します。)
また、先手玉が囲いの外側にいることを不安に感じる方もいらっしゃると思いますが、この戦型は▲7九玉→▲8八玉と囲う手がプラスにならないケースも存在するので、玉の移動は後回しにするのが急所です。
基本図では▲4五歩と仕掛ける手も有力ですが、まずはセオリー通り▲7九玉(青字は主要手順の指し手)と玉を囲う手から見ていきましょう。(第1図)
ここで後手には、
(1)玉の守りを固める△4三金右。
(2)攻め合いを想定する△7三桂。
これら二つの候補手があります。今回は、(1)の△4三金右を解説します。
△4三金右に対して▲4五歩と仕掛けるのは時期尚早です。▲6六歩と突いて、将来の△6五桂を未然に防ぐ方が良いでしょう。以下、△2二玉▲8八玉と互いに入城します。(第2図)
駒組みが飽和しつつありますね。後手は仕掛ける手段が無いので待ちの姿勢を取ります。候補手は、
(1)△4二金引
(2)△7三桂
(3)△3一玉
の3つです。順番に見ていきましょう。
(1)△4二金引には、▲4五歩△同歩▲同桂△4四銀▲4六歩と動いてしまう手が有力です。(A図)
△4二金引と指したため、▲4五同桂のときに△4二銀と引くことができません。△4四銀は止むを得ないですが、▲4六歩と桂を支えて先手が一本取った形です。
▲4五歩△同歩▲同桂△4四銀▲4六歩という5手一組の手順は、これから何度も登場します。この戦型を指しこなす上では必修とも言える手順ですので、ぜひご記憶してください。
また、青枠で囲った形のことを、当ブログでは〖Knight Remain〗(ナイト・リメイン。略してKR)と呼ぶことにします。基本的に▲4八金・▲2九飛型は、Knight Remainを作ることが最初の目的です。
KRを作ることで、
(1)桂を五段目に活用できる。しかも(ほぼ確実に)タダで取られない。
(2)相手の囲いを弱体化する。
(3)2筋の歩交換をする権利を得る。
というメリットがあります。
デメリットとしては、相手に歩を渡す。桂が質駒になってしまう。が挙げられます。しかし、これらの要素はあまり重要ではないので特に気にする必要は無いでしょう。
KRを作った後の攻め筋は、次回以降に記述します。この形になったら攻めは成功していると認識してください。
(1)の△4二金引ではKRを作られて思わしくないことが分かりました。
では、(2)の△7三桂はどうでしょうか。
この手にもシンプルに▲4五歩△同歩▲同桂と仕掛ける手が成立します。(B図)
B図で△4四銀には▲2四歩△同歩▲5一角が厳しいです。よって、△4二銀と引くしかありませんが▲4一角が後続手です。
▲7四角成を許すと桂取りが受けにくいので△6三角は妥当ですが、▲同角成△同銀▲3五歩△4四歩▲3四歩で先手優勢です。(C図)
なお、C図に至る手順中、▲3五歩に△同歩は▲4四歩と打って十字飛車の筋があります。
C図で△4五歩と桂を取るのは、じっと▲同銀が冷静。次の▲4四歩が受けにくいですね。
また、△3四同金は▲4三歩が痛打です。以下、△同金▲3五歩△同金▲4一角で先手の攻めが炸裂しています。(参考図)
このように、△7三桂を跳ねると▲4一角や▲5一角で先手から狙われてしまうので、上手くいきません。後手は△4三金右と△7三桂を両立させるのは、不可能です。
改めて、第2図に戻ります。
残るは(3)の△3一玉ですね。一度、入城した玉を外に出すので不満はありますが、隙の少ない待ち方です。
しかしながら、この手に対しても▲4五歩△同歩▲同桂と仕掛ける手が成立します。
ちなみに、▲4五同桂では▲4五同銀も一案ですが、△同銀▲同桂△4四銀▲4六歩△5四角で難解です。(D図)
次の△7五歩が嫌らしい攻めですね。▲6七銀と受ければ安泰ではありますが、後手陣を攻める手段がなくなってしまうので方針が見えにくい将棋になってしまいます。
したがって、▲4五同桂が勝ります。(第3図)
△4四銀は、▲4六歩と打ってKRを作れるので先手満足です。
ゆえに、後手は△4二銀と引いて、桂のタダ取りを目指す方が突っ張った受けと言えるでしょう。先手は後続手が難しそうですが、▲1五歩△同歩▲1三歩△同香▲4六角と端を絡める攻めが好着想です。(第4図)
ここで△4四歩と打つと、▲6四角△9二飛▲2四歩△同歩▲1四歩△同香▲2四飛があり、後手は桂をタダで取る余裕がありません。後手は一歩でも渡すと▲1四歩→▲2四歩という攻め筋を与えてしまうのが痛いのです。(参考図)
また、歩を渡さないように△6二飛と辛抱しても、▲2四歩△同歩▲同角△2三歩▲1三角成!△同桂▲1四歩で先手の攻めが決まります。(第5図)
一次的には駒損ですが、端の突破が約束されているので先手優勢です。先手陣が手付かずで、攻め合いにならないことも大きいですね。
か細い攻めではありましたが、手順を尽くせば先手の仕掛けが成立していることが分かりました。第1図から△4三金右と上がって守りを固める手は、先手が良くなります。
今回のまとめ
・後手が△4三金右と上がってきたら、▲6六歩から▲8八玉で陣形整備を進める。
・攻めの基本は、Knight Remainを作ること。
・五段目に桂を活用させることを躊躇しない。ただし、歩の餌食になってしまっては本末転倒なので、一度跳ねたら強引でもガンガン攻め続ける意識を持とう。
聡明な方はお気づきかと思いますが、今回の後手の駒組みは、序章で述べた「負けパターン」を回避することができていません。後手はもう少し、攻め味のある駒組みが必要でした。
次回は、第1図から△7三桂と跳ねる将棋を解説しようと思います。
それでは、また。ご愛読ありがとうございました!