どうも、あらきっぺです。
久しぶりに角換わりシリーズの更新です。しばらく書いてない間にずいぶんと定跡が進歩してしまったので、早く最新形の形に追いつけるようにしたいものですね。
なお、前回の内容はこちらをご覧ください。
【定跡講座】角換わりを指しこなそう! ~第1章~ ▲4八金・▲2九飛型の基礎(5)
定跡講座 角換わり
今までの講座では、主にこの局面をテーマに検討を進めていました。(KR 基本図)
この局面は先手だけKnightRemain(以降はKRと表記)の形を作っているので、すでにポイントを稼いでいるのですが、ここからの戦い方をしっかり把握しておかないと具体的な良さを見出せないので、まずはそれを身に着けましょう。
なお、KnightRemain(ナイト・リメイン)についての詳しい説明は、こちらをご覧ください。【定跡講座】角換わりを指しこなそう! ~第1章~ ▲4八金・▲2九飛型の基礎(1)
前回の講座では、△7五歩から反撃されたときの対処法について触れました。これには▲6六角と打って攻めの火種を振り払う手が賢明な対応でしたね。
そこで、今回は△6五銀(青字は主要手順の指し手)で果敢に銀をぶつける手を検討していきましょう。
この手は前回の△7五歩と同様に攻めに重きを置いており、なかなか強気な一着です。△6五銀とぶつける攻め筋は頻出する手法の一つなので、きちんと対応できるようになりましょう。
さて。これに対して後手の注文を避けるのなら▲4七銀と引くのですが、結論から述べるとこれは悪手。なぜなら、△8六歩▲同歩△8五歩という継ぎ歩攻めが厄介だからです。(第64図)
無条件での取り込みは許せないので▲8五同歩は妥当ですが、△同桂▲8八銀△7六銀でどんどん相手の攻め駒が進軍してきますね。以下、▲8六歩と打てば桂は取れますが、△8七歩と打たれると先手陣はかなり傷んでしまいます。(第65図)
これは▲同銀と応じる一手ですが、△同銀成▲同金△4五銀▲同歩△7五桂と畳み掛けられると先手が受け切るのは至難の技ですね。この変化は、
・後手に歩を渡している。
・桂が質駒になっている。
というKRの弊害が顕在化してしまった失敗例と言えます。
改めて、△6五銀とぶつけられたときの局面に戻ります。(第63図)
なぜ、ここで▲4七銀と引く手は悪手なのでしょうか? 秘密は、先手玉のポジションにあります。実を言うと、「▲7九玉型は、受けに回る展開が苦手」という性質があるのです。これは▲6八玉型から▲7九玉と引くことにより、
・「玉は下段に落とせ」という格言に相反している。
・中央が薄くなっている。
・右辺への逃走が一手分、遅れる。
といったデメリットがあるからです。(なお、蛇足ですが第63図で先手玉が▲6八玉型ならば、▲4七銀は有力な一手に変わります。)
では、▲7九玉型の利点とは一体、何なのでしょうか? それは、「玉が深い位置にいるので、攻めて行ったときの反動が弱い」ということ。すなわち、激しい斬り合いの戦いを挑めることですね。
要するに、▲7九玉型はパラメーターを攻撃力に全振りしたフルアタッカータイプという訳なのですね。
それを踏まえると、ここで先手が取るべき選択は「受け」ではなく「攻め」。つまり、▲6五同銀ということになります。後手はもちろん△同桂と応じますが、▲7三角で攻め合う姿勢を貫くのが好判断です。(第66図)
ちなみに、代えて▲6六銀と逃げるのは△4七歩▲3八金△8四角で手番を取られながら攻勢に出られるので、面白くありません。(A図)
繰り返しになるので恐縮ですが、A図のような守勢の展開は▲7九玉型の特色が活きないので避けるべき進行です。
▲6八玉型 → 攻守のバランスが良い万能型
▲7九玉型 → 斬り合いが挑める攻撃特化型
このように覚えておくと、取るべき方針が分かりやすくなるのでお勧め。
さて。後手は△8一飛と逃げるのが自然ですが、▲6四角成で馬を作っておきましょう。以下、△7七桂成▲同桂は必然の進行ですね。(第67図)
一見、駒損している先手が不利なようですが、意外にもこの局面は先手がリードを広げています。理由としては、馬を作って上部が手厚くなったこと。攻め駒を蓄えたこと。次の▲5六桂が厳しいことが挙げられます。とはいえ、これでは説明不足と思うので、もう少し掘り下げてみましょう。
前述したように、後手は次の▲5六桂を喫すると「駒得」という主張が消えてしまうので、足を止めずに攻める必要があります。そういった背景を考慮すると、第67図では△4七銀と放り込む手が一案ですね。
しかし、これには▲2四歩△同歩▲7四馬が痛快な切り返しになるので、逆用することが出来ます。(第68図)
ご覧のように両取りが掛かっているので、後手は5二の金取りを受けることが不可ですね。したがって、△4八銀成▲5二馬△4二金打と応対するのが進行の一例ですが、▲4三桂がシャープな一手で後手玉はあっという間に寄ってしまいます。(第69図)
(1)△同金直(右)は、▲2三銀。
(2)△2二玉は、▲3一銀△同飛▲4二馬。(B図)
いずれも先手の攻めが炸裂しています。
改めて、▲7七同桂の局面に戻ります。(第67図)
先手は駒を蓄えて攻撃力が格段に上がっているので、△4七銀のような守備力を落とす攻めでは流石に危険だったようです。では、△4七歩で省エネする手はどうでしょうか。今度は後手が銀を手放していないので、▲7四馬は指しにくいところですね。
そうなると▲5八金が自然な応手に見えますが、これは△3八銀▲6九飛△3七角で、もたれられたときが面倒です。(第70図)
先手は飛車が隠居した上に△4八歩成も見せられているので、望ましい進行とは言えません。これは、後手に上手くクリンチされていますね。
飛車がいじめられる展開になると攻防ともに支障が生じるので、形勢を損ねる原因になりやすい。
△4七歩と打った局面に戻ります。(途中図)
そもそも、先手が▲5八金型ではなく▲4八金型に構えている理由をもう一度、考えてみてください。これには様々な理由があるのですが、その中の一つに「飛車を狙われないようにする」という意味があります。
ゆえに、ここでは▲3八金とかわすのが正着です。▲7九玉型の場合、この金は玉ではなく飛車を守るための駒であることを認識して欲しいです。
後手は5八の地点に隙が生まれた欠点を突くべく、△5八銀と打つのが有力でしょう。(第71図)
この手は△6九銀打や△6一飛を見せつつ、▲7四馬→▲4七馬という手を消した意味があります。
先手は対応に困っているようですが、先ほどに記した「飛車がいじめられる展開になると攻防ともに支障が生じる」という理屈を実践するのが良いでしょう。つまり、▲7二銀が最適な一着になります。(第72図)
△8四飛は▲7三馬で飛車が詰んでしまいます。ゆえに、後手は横へ移動せざるを得ません。
ただ、△5一飛だと待望の▲5六桂を打つことが出来ます。後手がそれに備えるなら△4一飛ですが、これには▲6五桂で増援を送る手が厳しいですね。(第73図)
後手は玉飛接近の悪形なので、次の▲5三桂左成が凄まじい威力になっています。また、△6九銀打と絡みつかれる手は気になるところですが、▲6八金とかわしておけば問題ありません。飛車を8筋から逸らせたので、先手玉は安全を確保しています。
第73図は飛車の働きに差がついていることや、こちらだけ確実な攻めを有していることから先手が優勢と言える局面ですね。
KR基本図から△6五銀と動かれても、先手はリードを奪えることが分かりました。
△6五銀は攻め駒をどんどん進ませるアグレッシブな手なので、怯むと相手の攻めに拍車を掛けてしまいかねません。過激な展開になることを恐れず、攻め合う姿勢を持ち続けることが大切です。
今回のポイント
・▲7九玉型は受け身になると面白くないので、相手が攻めて来ても攻勢に出よう。
・銀桂交換の駒損でも、馬を中央に作れば充分にリカバリーできることを認識しよう。
・基本的に4八の金は、玉ではなく2九の飛を守るための駒であることを理解しよう。
次回は、KR基本図から△4二角と指す変化を解説します。
それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!