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【定跡講座】角換わりを指しこなそう! ~第1章~ ▲4八金・▲2九飛型の基礎(4)

角換わり

どうも、あらきっぺです。先日は藤井聡太新六段の快挙に呆然としました。客観的に見れば、15歳ならアマチュア六段でも十分強いのですが……笑

 

久々の角換わり講座です。いい加減、更新せねばと思っていたところに、読者の方から続編の要望があり、それが後押しになりました。励みになりますね。

記事の内容としては以前に主流だった形を掘り下げているので、今では実戦で出現しにくい面はあるのですが、▲4八金型が▲5八金型よりも勝る理由を理解しておくことは、この戦法を指す上でとても大事なことだと思うので、しばらくはこの内容を続けるつもりです。まずは基礎をしっかり固めましょう。

なお、前回の記事はこちらからどうぞ。角換わり【定跡講座】角換わりを指しこなそう! ~第1章~ ▲4八金・▲2九飛型の基礎(3)


定跡講座 角換わり

 

それでは、本題に入ります。KnightRemain(以降はKRと表示)の形を作った基本図の局面から、どのように攻めるかがテーマでしたね。

 

今までは、ここから△4二金右や△4三銀と玉を固めて待機する手を検討しました。ただ、どちらの手も金銀が偏った隙を突かれて、後手は芳しくない展開に陥っていました。

そこで今回は発想を変えて、△6五歩(青字は主要手順の指し手)と位を取る手を見ていきましょう。ぼんやりとしていて狙いが見えにくい手ですが、油断ならない一手です。(第39図)

 

KR 基本図からの攻防(3)
VS △6五歩

 

まずは、△6五歩がどのような意味なのかを知りましょう。

表面的には▲6六歩と突く手を消して、先手の進展性を奪ったり、▲6六角と打つ攻め筋を消した意味がありますが、真の狙いはそれではありません。

とりあえず、先手は▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛と2筋を交換したくなりますが、この局面に関して言えば、緩手になります。なぜなら、△6四角と打つ手が非常に価値の高い一手だからです。(第40図)

 

ここに角を打つことが後手の狙いでした。この青枠で囲った部分のことを、当ブログでは【羽鶴の陣】(うかくのじん)と呼ぶことにします。

羽鶴の陣について

この形を作ることによって、以下の利点がある。

 

(1)相手の攻撃陣を牽制。
(2)中央の強化。
(3)▲7五歩からの桂頭攻めを防止。

 

羽鶴の陣は防御力が高く、受けの好形と言える。ちなみに、▲2六歩型(△8四歩型)で羽鶴の陣を作れば、桂を跳ねる攻め筋を確保できるので、なお良い。

 

角換わり

第40図から、次に△4六角と歩を取られるとKRを破壊されてしまうので、先手は4六の歩に紐を付けなければいけません。

しかし、▲4七金では3八に隙が生じてしまいますし、▲4七銀は駒が下がってしまうので不本意です。どちらも△4二金右で待機されると、先手が打開するのは容易ではありません。第40図は、後手の構想通りの展開で、先手不満です。

 

話が長くなりましたが、△6五歩の意味は、△6四角を打つ手を用意して、羽鶴の陣を作ることなのです。

 

第39図に戻ります。

羽鶴の陣は優れた受けの形なので、これを作られると攻め筋を見出すのが難しいことが分かりました。よって、先手は羽鶴の陣を作られる前に、仕掛けを狙うのが正しい方針となります。

それを踏まえると、第39図では直ちに動かなければいけないことが分かります。KRと相性の良い攻め筋はどのような手段でしたか? そう、▲3五歩が急所の突き捨てでしたね。

 

仕掛けを狙う場合は、まず[KnightRemain+▲3五歩]のコンボが発動できないかどうかを考えましょう。(第41図)

 

ここで(1)△3五同銀は、▲7一角△7二飛▲5三角成で先手優勢。

(2)△3五同歩には、▲2四歩△同歩▲同飛△4三銀▲2三歩で力を溜めます。次の▲2二角が受けにくく、先手良しですね。(A図)

 

3五の歩は取れないので、後手は当初の予定通り△6四角と打って、羽鶴の陣を作ります。これに対して、▲4七銀などで4六の歩を受けると、△3五銀で先手の攻めは頓挫してしまいます。5三の地点が強化されているので、▲7一角が成立しません。(B図)

 

△6四角の局面に戻ります。

角換わり

大前提として、△6四角を打たれたときに、大人しく4六の歩取りを受けてしまうと、後手の言い分が通ります。したがって、先手は足を止めずに攻め続けることが要求されています。△6四角には堂々と▲3四歩と取り込みましょう。(第42図)

 

後手は当然、△4六角と歩を刈り取ります。先手は4五の桂が浮いてしまい、忙しくなったように見えますが、▲4七歩△6四角▲4六角が桂を支える好手順です。(途中図)

 

角換わり

以下、△4六同角▲同歩までは必然ですが、先手はKRを再生することができました。その局面は、第39図と似ていますが、先手の歩が3四まで伸びているので、攻めが前進していることが分かります。(第43図)

 

後手は△6四角を打ちたいところですが、それには▲1五歩が鋭い一着。やはり、4六の歩取りを受けないのがポイントです。

▲1五歩には△同歩が自然ですが、▲3三歩成△同桂▲1五香△同香▲3四歩で先手の攻めがヒットします。(第44図)

 

第44図では△4五桂と指すくらいですが、▲同歩のときに後手は対応に困っています。(1)△3五銀は▲1三角が王手銀取りですし、(2)△4五同銀右は▲同銀△同銀▲4四桂が両取りなので先手優勢です。(C図)

この変化は、後手が抱えている3四の傷を的確に突いていることが分かりますね。

第43図に戻ります。

 

ここで△6四角と打つ手は危険であることが分かりました。理由は、後手は3四の地点が手薄だからです。したがって、その弱点をケアするために△4三銀と引く方が本筋です。

今度は▲1五歩から前述した攻め筋を発動しても、▲3四歩が打てないので成立しません。まだ後手陣を攻め倒すには火力不足なので、▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛で一歩交換して力を溜めましょう。(第45図)

 

ここでも後手は△6四角を打つことができません。なぜなら、▲3三角と放り込む強襲があるからです。以下、△同桂▲同歩成△同銀▲同桂成△同金▲5五銀打で攻めが続きます。(D図)

ゆえに、後手は△3四銀と歩を払って3筋の脅威を緩和する手が必須ですが、▲7五歩が盤面を広く見た巧みな攻めです。

後手陣は、銀が囲いにくっついてバランスが偏ったので、攻撃陣を攻める手が有効な手段になります。△6五歩型が仇となって非常に受けにくい格好ですね。(第46図)

 

後手は桂頭を受けなければいけませんが、△8四飛は▲6一角がありますし、△6三角では流石に効率が悪すぎて打ち切れないでしょう。

したがって、△6三金はやむを得ない対応ですが、▲7四歩△同金▲3三歩と畳み掛けていきます。

▲7五歩を突いてしまうと自陣も少なからず傷んでしまうので、この歩を突いた後は過激にばりばり攻めて行くのがコツです。(第47図)

 

玉頭に楔を残すわけにはいかないので、後手は△3三同桂と応じますが、そこで桂を取らずに▲7一角が攻めをつなげる好手。5二の金が中央から離れていった隙を突いています。

▲7一角に対して、(1)△5二飛は▲3三桂成△同銀▲4五銀で銀をぶつけるのが分かりやすいでしょう。後手は5二の飛が目標になっていて、収拾困難です。(E図)

 

角換わり

したがって、▲7一角には(2)△7二飛の方が頑張れますが、▲5五銀が目の覚めるようなタダ捨てで、先手の攻めが炸裂します。(第48図)

 

後手は△5五同銀と取れなければおかしいのですが、▲5三角成で馬を作られると、後に▲5四馬や▲6三馬といった両取りが残っているので、受けに窮していますね。

しかし、△7一飛と角を取るのも▲4四銀で、3三の地点への殺到が受けにくく後手は支えきれません。第48図は先手の攻めが決まっています。

 

KR 基本図から後手は△6五歩と突いても先手が優勢になることが分かりました。

△6五歩は羽鶴の陣を作ることが目的で、それを実現されると先手は打開が難しくなります。ゆえに、後手に△6四角を打つ余裕を与えないように、素早く攻めることが攻略のカギとなります。

 

 

今回のまとめ

 

・先手は羽鶴の陣を作られると厄介。△6五歩を突かれたら、仕掛けることを考えよう。

 

KnightRemain+▲3五歩のコンボが有力な攻め筋。△3五同銀と取れない状況ならば、積極的に▲3五歩を突いていこう。

 

△6四角と打たれたときは、4六の歩は受けない。とにかく、敵陣への攻めを考える。

 

・後手は△6五歩を突いているので、攻めの桂は意外と不自由な駒だ。▲7五歩で桂頭を狙う展開になれば、先手の攻めは途切れない。

次回はKR 基本図から後手が反撃する手段を検討したいと思います。

それでは、また。ご愛読ありがとうございました!

 



2 COMMENTS

るんるん

待ってました!相変わらず分かりやす過ぎます!並のプロより言語化に長けていますね。
負担にならない頻度で構いませんので、続き待ってます。

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あらきっぺ

ありがとうございます!
少しでも参考になれば幸いです。今後も続けていくので、楽しみにしていてください。

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