どうも、あらきっぺです。
相変わらずのまったりペースではありますが、失踪している訳ではないのでご安心ください笑
なお、前回の内容はこちらからどうぞ。【定跡講座】角換わりを指しこなそう! ~第1章~ ▲4八金・▲2九飛型の基礎(2)
定跡講座 角換わり
前回は△4二金右を調べましたね。これには2筋の歩を交換してから、▲5一角を打ってbreakdownを使ったり、▲8八玉と陣形を整備したりすることで先手が良くなりました。
今回はKR基本図から△4三銀(青字は主要手順の指し手)と引く変化を見ていきましょう。(第27図)
まずは、△4三銀の狙いや意味について解説します。
後手はKnight Remainを作られたことで、陣形が弱体化しています。そこで、銀を引くことにより自陣を強化し、その欠点をリカバリーしようとしています。△4二金右と比較すると、
・▲5一角と打たれる傷が無く、breakdownに耐性がある。
・△4四銀に紐が付く。
・3四の地点に利きが増えるので、▲3五歩△同歩▲3三歩△同桂▲3四歩という攻め筋をケアしている。
といったメリットが挙げられます。
ただし、銀が下がってしまうので、攻めに関しては威力が落ちてしまうことがデメリットです。
さて。ここから何を指すかですが、何はともあれ、▲6六歩は突いておきたいですね。
6筋の歩を突くと△6五歩から争点を与えるので、本来ならば慎重に考えるところです。
しかし、この場合は後手の銀が引いているので、△6五歩▲同歩△同桂と攻められる心配はありません。相手が△6五歩を突けない環境ならば、▲6六歩は非常に価値の高い一手になります。
以下、△2二玉▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛と進みます。後手は囲いを強化。先手は一歩交換を行い、互いに決戦への準備をしています。妥当な手順と言えるでしょう。(第28図)
後手はこれ以上、陣形を発展させる余地が無いので、仕掛ける手段を考えたいところ。ですが、先手の銀が邪魔をしているので△6五歩▲同歩△同桂とはできませんね。したがって、△5四歩と突いて、5六の銀を追い払いに行きます。
対する先手は▲8八玉で待機する手もありますが、実は後手陣には隙が生じているので積極的に咎めに行くべきでしょう。▲7五歩が機敏な一手です。(第29図)
後手は桂頭を受けなければいけませんが、△6三金や△8四飛では駒が上ずるので角を打ち込まれる場所を作ってしまいます。よって、△6三角と辛抱せざるを得ません。
働きの悪い角を打たせて満足ですが、先手も囲いの近くから動いているので、具体的な戦果を上げないと、ひずみが残ってしまいます。どこに手を求めるのか難しそうですが、▲3五歩が攻めを続ける常用の手筋です。
KnightRemain+▲3五歩のコンボは有効な手段なので、この攻めが発動できないかどうか、常に考えておきましょう。(第30図)
この突き捨てを(1)△同歩と取ると、▲2四歩→▲7一角→▲4四角成から十字飛車の筋があります。
また、(2)△同銀には▲5三角と放り込む手が厳しいですね。▲3五歩の突き捨てに△同銀と応じられた場合は、3三や5三の利きが減っているので、そこを狙うのが筋です。(A図)
第30図では△7五歩と歩を払うくらいですが、▲3四歩が大きな取り込み。次は▲3三歩成△同桂▲3四歩△同銀▲7一角が狙いです。それを食らってはひとたまりも無いので、後手は△8一飛と引いて耐え忍びます。(第31図)
次に△3四銀と指せれば、後手も楽しみがでてきますが、▲1五歩がそれを許さない端攻めです。以下、△同歩▲1三歩△同香▲4七角で先手の攻めが決まりました。(第32図)
次の▲1四歩が分かっていても受けることが不可能ですね。ほぼ無条件で香得の戦果を上げているので、先手良しと言えるでしょう。
もう一度、第28図に戻ってみます。
後手は△6五桂と跳ねる手を実現するために、△5四歩から先手の銀を追い払うことが必須ですが、▲7五歩が見えているので、第28図から△5四歩では悠長なようです。
そこで、後手はもう少し工夫が必要です。今度は△6五歩▲同歩△5四歩の変化を掘り下げてみましょう。(第33図)
6筋の歩を突き捨てて、桂の進路を作ったことが後手の改良案です。次は△5五歩▲6七銀△6五桂があるので、ここで▲7五歩を突いても先ほどのような戦果は期待できません。
桂頭攻めが発動できないので指す手が難しそうですが、相手の早い突き捨てを逆用するために、▲6四歩と歩を伸ばす手が好判断です。(第34図)
後手は歩損しているので、足を止めずに攻め続けなければいけません。ただ、△5五歩▲6七銀△6五桂では▲6六銀左で攻めが頓挫してしまいます。
よって、攻め筋を広げるために△8六歩と突き捨てます。
これに対する応接は、どんな場面でも悩ましいので実戦的に嫌らしい。
▲同歩 → 継ぎ歩攻めや△8七歩の甘受。
▲同銀 → 中央が薄くなる。
局面ごとに適切な応対は変わるので、上記のデメリットが顕在化しないように、その都度、手を読む必要がある。ちなみに、継ぎ歩攻めに対処できるのであれば、▲同歩で問題ない場合が多い。
この局面では▲8六同歩が正解です。▲8六同銀を選ぶと、△5五歩▲6七銀△4七歩▲3八金△5六歩がうるさい攻めで、先手が自信を持てない形勢です。(第35図)
▲同歩は△5七角。▲同銀は△6六角があり、先手は角の打ち込みが避けられません。これは先手難局です。
前述したように、△8六歩に対する最善手はケースバイケースなので、常にこう指せば良いという正解は存在しないのですが、自分の経験則としては、▲4八金・▲2九飛型の将棋の場合は▲同歩で取る方が良いことが多い印象です。迷ったら歩で取った方が良いでしょう。
▲8六同歩に対して、後手は△8五歩と継ぎ歩で攻めを継続させます。(第36図)
丹念に受ける方針なら、▲8五同歩△7五歩▲同歩△8五桂▲8六銀という手順も考えられますが、自陣がどんどん乱れていくので選びにくい印象です。
ここは、先ほど突いた▲6四歩を活かして、反撃する順を選ぶ方が勝るでしょう。▲7一角が鋭い一手です。
▲7一角に対して、(1)△7二飛は▲4四角成△同銀▲6一銀の割り打ちが痛烈です。金を取って、と金を作る手が残っているので、リターンが大きいですね。
(2)△8四飛は▲6三歩成△同金▲6四歩△同金▲6二角成が受けにくく、これも先手良し。(B図)
したがって、(3)△8一飛が最善の逃げ場ですが、▲4四角成△同銀▲6三歩成が厳しい攻めとなります。(第37図)
いきなり角をぶった切る攻めを繰り出すのは雑なようですが、前回の記事でも述べた通り、▲4八金・▲2九飛型は角の打ち込みに強い陣形なので、十分成立しています。
第37図から△4二金右には▲7三と△8六歩▲8二歩で飛車を押さえることができます。後手は金取りを手抜いて△8六歩と取り込むのが最も強い一手ですが、それには8筋を受けずに▲5二とが大胆な一手。以下、△8七歩成▲8六歩(途中図)△7八と▲同玉と進みます。(第38図)
△8七歩成を実現させるのは非常識ではありますが、▲8六歩が受けの好手で先手陣はまだまだ耐久力があります。
先手は次に▲4二金が狙いです。この手は▲3二金△同玉▲4三銀という攻め筋があるので、かなり速い攻めになっています。それを防いで△3一金打と打っても、▲2四歩△同歩▲2五歩△同歩▲2四歩が苛烈ですね。(C図)
先手玉は薄いので不安を感じるかもしれませんが、攻めの手掛かりが無いことと、4筋方面へ逃げ出す含みがあるのでなかなか寄りがない形です。
このように、玉の逃げ道が多いことも▲4八金・▲2九飛型の特徴ですね。これらの理由により、第38図は先手優勢と言えるでしょう。
KR基本図から△4三銀と引く手も、先手を優勢に導けることが分かりました。
△4三銀型は囲いが堅いので、いきなり本丸を攻めても上手くいきません。相手の金銀の配置が守備に偏っているので、手薄な攻撃陣を責める手段が有効となります。今までとは違う視点が必要になるので、他の形としっかり区別できるようになりましょう。
今回のまとめ
・△4三銀型には▲6六歩と突き、後手の桂を簡単に活用できないようにすることが急所。
・2筋の歩を交換して歩を手持ちにしたら、▲7五歩から桂頭攻めを狙う。
・後手が早めに△6五歩と突き捨ててきたら、▲6四歩と歩を伸ばして逆用する。
・後手は攻めるために△5四歩の一手が必要となるが、その手を指すと▲7一角と打つ筋が発生するので陣形が少し弱体化する。先手はその隙を上手く突くことが、攻略のコツだ。
次回は、KR基本図から△6五歩と突く手を検討したいと思います。
それでは、また。ご愛読ありがとうございました!