最新戦法の事情【居飛車編 春季号】を公開しました。詳細は、ここをタップ!

第13期加古川青流戦アマチュア選抜大会で優勝しました!

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

どうも、あらきっぺです。

先日に Twitter でもご報告いたしましたが、第13期加古川青流戦アマチュア選抜大会において、優勝することが出来ました。

この記事では、その大会の模様を綴っていきたいと思います。

【大会前】

 

この大会は、何と言っても朝が早い笑 対局開始時刻が10時というのは一般的ですが、拙宅から加古川に行くのは距離が遠いものですから。大体、7時くらいに出発しないと間に合わないですかね。

「この時間帯に外出するの、久々だなぁ」と思いながら家のドアを開けると……

雪降り過ぎ

まさに一面、銀世界

ああ、そうだったわ

そう、この週は超強力な寒波が襲来しており、雪、雪、雪 という有様でした。まぁ、見る分には美しい雪化粧なんですけど…笑

 

とりあえず駅に向かったものの、運行状況を知らせるサイトを見る限り遅れが発生しているとのことだったので、「まぁ動いている訳ねーな」と思っていたのですが、何と普通に到着してました。圧倒的感謝……!

ただ、さすがに在来線を使い続けるのは怖かったので、京都駅からは新幹線を使いました。新幹線、いいですね。快適だし、早く着くし、疲れないし、朝食をゆっくり食べる時間も確保できますし。昨年も新幹線使って行くんだったなぁ笑

 

会場入りして、まずは受付。その後、自分が割り振られた場所に行こうとすると、運営の方から「昨年のブログ、見ましたよ~」とお声がけしてくださる方がいらっしゃいました。いやー、こういうの嬉しいですね。こうしたリアルの場での反響って、ネット上よりも遥かに励みになるんですよ。執筆活動を続けていて良かったなと改めて実感しました。

その後は、いつも通り対局開始の30分前にコーヒーを飲み、来るべき時に備えます。午前10時、いざ出陣!

 

【午前の部】

 

加古川青流戦アマチュア選抜大会の持ち時間は、25分切れ負け。ただし、決勝戦のみ30分30秒というルールです。また、予選は無く、いきなりトーナメント戦から始まります。多くのアマ大会では予選が設けられているケースが多いので、初戦の緊張感は相当なものがありますね。

ただ、裏を返せば、そこで良いパフォーマンスを発揮できれば、その後は割と気楽な気持ちで戦えるところもあります。という訳で、ただ勝つだけでなく、内容が伴った将棋で勝ち上がることが重要だなと思い、盤の前に座りました。

その1回戦ですが、早い段階でリードを奪うことができ、以降も着実に優位を広げて快勝。一度も形勢が悪くならない、いわゆる藤井曲線を描くパターンで、まさに理想的な将棋でした。

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

厳密には藤井曲線ではないかも知れないが、細かいことは気にしない笑

ちなみに、こちらの記事で谷合先生も仰っているのですが、藤井曲線が描けると「よしよしよし、これは良い感じだぜ!」という気持ちになれるんですよね。アマ大会では、それを早い段階で体感しておくことが自信に繋がるので大事なんですよ。

 

2回戦のお相手は森下氏。元奨励会三段であり、第9回朝日杯にて、一次予選を突破した実績を持つ強豪です。こういうボスレベルの実力者と早い段階でポンポン当たるのが、この大会の醍醐味ですね。正直、めっちゃ楽しいです笑 相手が強い方が面白いじゃないですか笑

 

将棋の方は、森下氏得意の一手損角換わりに、こちらが急戦を決行する戦型になりました。結果的にはこちらが勝ちやすい岐れになり、幾ばくかのリードを得た状態で終盤戦を迎えます。(第1図)

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

こちらは攻めに専念できる格好ですが、現状は少し攻めが細いですね。4一の馬と持ち駒の金は頼りに出来ますが、成桂はちょっと離れていますし、5六の桂も動きを封じられています。四枚の攻めを実現した状態で寄せに向かいたいので、ここは戦力を蓄える必要があります。

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

という訳で、本譜は▲6六銀とぶつけました。銀交換になれば手駒が増える上に、▲6四桂とジャンプできるようにもなるので、攻め駒が一気に二枚増えます。後手はそれを許したくないので△5六銀▲同歩△3六歩と進めましたが、こちらは意気揚々と▲4二成桂で攻め駒を活用します。(第2図)

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

次は、▲5二銀と噛みつく手が楽しみですね。ここまで来ると、四枚の攻めを実現した状態で寄せに向かうことが出来ています。我ながら上手い組み立てだったなーと悦に浸っていたのですが、実はそこで△3七歩成と攻め合わられたら、負けでした。(第3図)

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

これは、帰宅して検討したときにソフトに指摘された手です。対局中は「▲5二銀と打てば寄るに決まってるだろ」と早合点していたのですが、△4八と▲6三金△同銀▲同銀成△7一玉の局面が、何と妙に寄らないのです。(A図)

これだけ絡みついていれば流石にアウトと思いたいのですが、後手は大駒の守備力が素晴らしく、この変化は一手負け。これは直線コースでレールに乗ってしまうので、こちらは為す術が無いみたいですね。

 

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

ただ、対局中は「しっかり寄せの態勢を作ることが出来ましたわー」と思い込んでいる訳で、しかも、そういう勝ちましたオーラの雰囲気って相手にも伝わるものなんですよね。そんなこんなで、本譜はブラフが通ってしまいました。我ながら、ホントおめでたい奴です笑

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

ちなみに、第1図で▲6六銀とぶつける着想は間違ってはいないのですが、▲2八歩の利かしを入れておく必要があったようでした。△同成香だと△3六歩→△3七歩成の威力が緩和されるので先手の得ですね。

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

また、△2六成香には本譜と同じように進めれば、△3六歩と伸ばされたときに▲3八歩という受けが発生するので、これも先手が得します。だから「この▲2八歩で先手良しだよっ☆」と我が家の水匠は仰っているのですが、25分切れ負けでそんなハイレベルな手は指せる訳ないですね。はい。次、行きましょう笑

 

【午後の部】

 

次の対戦相手は誰かなと確認すると、奈良県の古作氏でした。言うまでもなくアマ強豪の一人です。近年では、アマ竜王戦でのご活躍が記憶に新しいですね。

昼食を食べながら「古作さんかー。何しよっかなー」と作戦を練っていたのですが、何も思いつかないまま昼食を終えてしまったので、細かいことをあれこれ考えるのは諦めました。そんなことより、肉まんが美味しかったんだよなぁ…。冬の肉まん、最高ですね。食事するときは食事に集中するのが一番です笑

 

将棋の方は、古作氏の注文で相居飛車の力戦形に。ただ、注文の出し方があまりにも捻じ曲がっていたので、こちらは労せずアドバンテージを得ることが出来ました。ただ、これは自分の土俵に持ち込むためにビハインドを負う取引を交わしている訳で、人間 VS 人間の勝負という観点で見れば、大差ではないんでしょうね。(第4図)

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

なお、局面としては相当に指しやすさを感じており、対局中は「これ、我が家の dlshogi だと1000点くらい先手良しって主張するんだろう」とは思っていました。実際、それくらいの差は着いているようです。

しかし、大事なことはその優位性を最後まで維持して勝てるかどうか? ということなんですよね。先程の森下戦もそうですが、切れ負けの将棋はじっくり考えることが出来ないので、きちんとリードを保つことは簡単ではありません。相手もそういうことを分かった上で、開き直っている節はあるかとは思います。知らんけど

 

ただ、本局に関してはこのリードを維持することができ、あとはどう着地を決めるかというところまで漕ぎつけました。(第5図)

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

残り時間は、お互い5分前後と言ったところです。

こちらは△6六銀と出られる手が気になりますが、それは▲4四桂と打てば跳ね返すことが出来ます。つまり、相手は全く狙いが無いんですよね。なので、この△5六桂打は下駄を預けている手で、「勝手にしてくださいな」と仰っている訳です。

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

ここは、複数の勝ち方がある局面だと思いました。余裕がある状況なので自由度が高いのですが、切れ負けではそういう状況が逆に面倒なところはあります。正解ルートが一通りだと迷いが生じないですが、「あれもこれも」という状況は有力手が目移りして方針が定まりにくいんですよね。そうなると持ち時間を消費するので、逆転の目が色濃くなってくる訳です。そして、本局はまさにそのパターンに陥ってしまいました。

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

先述したように、相手は全く攻めが無いので、▲3五桂で手を渡しておくのが切れ負け的には最適解だったでしょうか。正直、これは絶対に最善ではないのですが、駒を渡さない攻めを実行すれば、相手は指す手に窮していたと思います。

また、相手は下駄を預けているので、そうした場面であえて手を渡すと時間を使うはずなんですよね。ここは棋理として最善を追求しなくても勝てる情勢なので、タイムマネジメントを最優先すべきところでした。

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

本譜は▲4四桂△同銀上▲同歩△同角▲4五歩とシンプルに攻めたのですが、これは手駒を与える上に△2六角で相手の角も捌かせるので、些か危うい嫌いはありました。何より、相手は必然手の連続なので時間を使う必要が無いのが大きいですね。こちらは勝つためのシナリオを作る必要があるのですが、向こうは手なりで指せばよいのでガンガン時間を削られます。この展開だけは選んではいけなかったですね。将棋としては、特に問題ないんですけど。

結局、持ち時間が切迫して「組み立て」が完成しないまま敵玉に突撃してしまい、本譜はかなり嫌な状況になってしまいました。(第6図)

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

残り時間は、こちらが約1分。古作氏は1分30秒ほどです。

正直、ここは自玉にトン死筋が生じていますし、明快な寄せを逃してしまったと思っていたので後悔の嵐でした。しかし、結論から述べると▲5五銀と打てば詰み。やはり、元が大優勢なので勝ち筋が至る所に転がっているんですね。

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

しかし、本譜は分からなかったので▲6七銀で保険を掛けることに。以降も詰みを4回逃したのですが、気持ちが保険モードなので全く気付けませんでした。評価値的には詰みを逃しても常にこちらが+2000以上良かったので、逆転はしていなかったようですが……。

 

なお、余談ですが、筆者は昨年の2月頃に dlshogi を導入し、直感的に棋風が自分と似ている部分が多いと感じました。なので、この一年ほどは dlshogi とシンクロすることを意識していたのですが、棋風を寄せ過ぎて詰みを察知する能力まで落ちてしまった節があるんですよね。なんか、『りゅうおうのおしごと!』に登場する祭神雷と供御飯万智を足して2で割ったような棋風になっちゃってんだよなぁ……。もうちょっと、詰将棋をやり込まないといけないですね。

 

話を加古川青流戦に戻すと、この対局で時間に苦しんだことから、以降の対局でより気が引き締まったところはありました。4回戦・準決勝は、共に将棋も時間もリードを保ち続けることができ、どちらも快勝。遂に戻ってきましたね。昨年の忘れ物を取りに行くまで、あと一つ。

 

【決勝戦】

 

決勝戦のお相手は畠山氏。第13回朝日杯にて、プロ棋士に勝利した経験がある強豪です。また、元奨励会員であり、自分とは奨励会も研修会も在籍期間が被っている間柄でもありますね。彼と対戦したのは、13年振りくらいかもしれません。懐かしいなぁ。

なお、繰り返しになりますが、決勝戦は持ち時間が30分30秒になります。昨年は「切れ負けじゃないから、じっくり考えられるなー」と思いのんびり指してしまったのですが、そのお陰で終盤、時間差に泣かされることになりました。なので、今回はある程度は切れ負けのノリで指すことに。とりあえず、中盤の中期までは飛ばし気味に進め、その先に必ず迎えるであろう難所に投資するプランにしました。

 

将棋の方は、[矢倉 VS 雁木]という構図に。この場合、矢倉側は攻めのフォーメーションが複数あるのですが、畠山氏はシンプルに棒銀を採用されました。(第7図)

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

この形は、プロ棋界でも意外に指されていない局面だと思います。そういう背景もあり、自分にとって学習度が高くはない局面だったのですが、ラッキーなことに最近、類例を指していたんですよね。

この時ばかりは、将棋ウォーズをやってて良かったなぁと心底思いました笑 こうしてアウトプットしておくと、記憶に定着するものですね。

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

なお、△5五歩▲同歩△4五歩で動いても形勢としては五分なのですが、先手は△5五角と出られたときに▲3七銀を強要されるのが少し悔しいところ。こちらは銀を後退させることが出来るので、今後の攻め合いで少し先攻しやすくなる状況が作れます。それが心強いんですよね。

以降は、中央で押したり引いたりというこの戦型らしい攻防になります。ただ、徐々にこちらの駒が捌けて、結果的には[飛角銀桂]の四枚で敵陣を攻撃する態勢を築けました。雁木側は比較的、桂が使いやすいので、その優位性を活かすことが出来ましたね。(第8図)

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

こちらは残り10分、畠山氏は12分ほどです。ここは上手く事を運べば決定的な差を着けることが出来そうなので、時間を投資する場面だと判断しました。

ご覧の通り、こちらは銀を取ることが出来ますね。しかし、桂を渡すと▲4四桂のカウンターを作ることがネック。加えて、もし次に▲6六銀と逃げられても△5七歩と打つ手が厳しいので、この銀は今すぐ取る必要はないかな、と思いました。

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

では、銀を取らずに何を指すか。良さげなパスがあれば理想的ですね。パッと目に付くのは△7五歩で歩を蓄えつつ、飛車の横利きを通す手です。ただ、そこから▲6六銀△5七歩▲同銀左△同桂成▲同角と進んだ局面が、意外に容易ではないと見ました。(第9図)

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

確かに△7五歩を指したことで、こちらは飛車の効率が上がっています。けれども、現局面は▲7五角と出られる手が生じているので、相手の角の効率も高めている嫌いがあります。デメリットが生じているのであれば、△7五歩は指す理由が乏しいですね。この仕組みを見抜けたのは大きかったです。

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

他には△1五角も魅力的だったのですが、これを指すと▲4四桂を打たれたときに△同角と食い千切って手番を取る手段が消えるので、一長一短だなと思い却下。となると、桂を渡すならこの局面で渡すのが最適なのかな、という設定が見えてきました。

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

改めて△5七桂成▲同角を掘り下げると、そこで△4八銀と放り込めば厳しいことに気が付きました。▲6六角には△6五歩、▲6八角には△5七歩で攻めが続きます。

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

という訳で本譜は▲4四桂で攻め合ってきましたが、△同角▲同歩△5七銀成▲同金△5六歩が痛烈な叩き。この手を指して、大きく勝利に近づいた感触がありました。(第10図)

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

先手は拠点を残すと粘れないので▲同金と応じるのが妥当ですが、△4八歩成▲同飛△3六桂が期待の攻め。飛車が横に逃げれば△4七角が痛烈です。本譜は仕方なく▲4七飛と逃げましたが、△3八角▲5七飛△4八桂成で分かりやすい情勢になりました。(第11図)

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

後手は手番を取りながら種駒を作り、かつ攻めながら相手を「玉飛接近」の悪形に持ち込むことに成功しています。こうなると山場は越えた感じですね。既に30秒将棋に入っていましたが、以降は冷静に着地することが出来ました。

加古川青流戦 アマチュア選抜大会

こうして第8図と第11図を比較すると、寄せの道筋がすこぶるクリアになったことが分かります。要所で時間を残せたこと、及びそれを使って精度の高い「組み立て」を作ることが出来たのは、昨年から成長できた部分ではありました。結果ももちろんですが、それ以上に自分の技術の向上を感じたことが良かったですね。

という訳で、めでたく優勝することが出来ました。公式戦でも、溌溂とした良い将棋を指したいものです。

 

【雑感と謝辞】

 

ところで、改めて昨年の記事を読み返してみると、最後にこうしたことが書かれていました。

そんな訳で、今回の加古川青流戦アマチュア選抜大会は、準優勝という結果になりました。力は出し切れましたし、内容・結果ともに及第点かな、と自己評価しています。来年以降は、もうちょっと高い所へ行きたいですね。

……結構、昨年は満足していたニュアンスですね。まぁ、今年も当然ながらめっちゃ嬉しいんですが、大局観が悪かったり、切れ負けの将棋で時間の使い方が甘い部分は改善していかなければならない要素です。公式戦に向けた準備も必要不可欠ですね。一つ結果を出したからと言って、緩んでいる場合ではないと強く感じています。

 

また、今回は、午後から一局終わるごとに、ちょこちょこご飯を食べていました。この大会は長丁場の上、休憩する時間もあまり取れないので、疲れにくい状況を作っておく工夫は大事かなと思っていました。この辺りは、昨年の経験を活かせた気がします。盤上で高いパフォーマンスを出すために、盤外の不安要素を排除しておくことを実践できたのが一番の成長だったでしょうか。まぁ、もう若手とは言えない年齢ですし、自分の性格上、勢いとか気迫ではなく、とことん論理で勝負しないといけないんだろうとは思っています。

 

最後になりましたが、コロナ禍が続いている中、今年も大会を開催してくださった主催者・関係者各位に深くお礼申し上げます。毎年、素晴らしい運営で、選手が対局に専念できる環境を整えてくださるのは有難い限りです。円滑な大会進行や、入念な感染予防体制に、ただただ感謝ですね。

 

それでは、また。ご愛読ありがとうございました!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA