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第27回コンピューター将棋選手権をマニアックな視点で振り返る ~一次予選~【ネタ勢編】

どうも、あらきっぺです。

前回までの記事では棋力が高いソフトを紹介しましたが、今回は「ネタ勢」と呼ばれる将棋ソフトを見ていきたいと思います。

「ネタ勢」とは、強さよりも面白さを追求したソフトのことです。したがって、強い人から見ればツッコミどころ満載の将棋ではあるのですが、将棋の指し手で笑いを取るってなかなかできないことですよね笑

圧倒的な強さが話題になりがちなコンピューター将棋ですが、今回の記事では全く違う一面を楽しんでください。

なお、基本的に棋譜の内容とアピール文章からネタ勢かどうかを判断しており、これは私の独断です。故に、開発者が心血を注いで制作された将棋ソフトを「ネタ」として扱い、嘲笑の的にしていると思われるかもしれません。しかし、私と致しましては、「面白い」から取り上げているのであり、決して揶揄しているわけではないことを、予めご理解して頂けると幸いです。

 

 

① 【頼む。入れ替わってくれ。】

 

 

まずは第1図をご覧ください。

一次予選2回戦の▲scherzoVS△芝浦将棋Jr.から。棋譜はこちらからどうぞ。

5手目の局面なので、まだまだこれからの将棋です。ここで先手のscherzo(スケルツォ)は▲7五歩(青字は本譜の指し手)と指しました。石田流を目指すためには、必要不可欠な一手ですね!

そして、scherzoは予定通り、石田流に組み上げました。それが第2図の局面です。

桂を活用しやすいのが石田流の特徴ですね! さあ、これからガンガン攻めていこ……って、

7六の駒が玉になっとるやないですか!

飛車と玉の位置が入れ替わってたら申し分のない駒組みなのですが….(^_^;)

さすがに玉がここまで露出しているのは危なく、後に△6四銀から△7四歩と玉頭を直撃されると支えきることができませんでした。現実は厳しい(><)

しかしながら、こういった奇抜なアイデアが新戦法を生み出す根源でもあるので、是非ともscherzoにはこのチャレンジ精神を今後も継続させてほしいと思います。


 

② 【私たち、協力してみました!】

 

第3図をご覧ください。

一次予選4回戦の▲臥竜VS△SilverBulletから。棋譜はこちらからどうぞ。

相居飛車で互いに美濃囲いを作ってします。後手の4二の銀は、6二にいた銀を△5一銀→△4二銀と動かしてこうなりました。少ない手数で堅い陣形を作れるので、参考にしたい駒組みですね。

とはいえ、後手は大駒が働いていません。という訳で、SilverBulletは△3四歩と突いて、まずは角道を開けました。以下▲7七角△7四歩と突きます。これで、次に△7二飛→△7五歩という狙いができました。(第4図)

 

着々と攻めの準備を進めるSilverBulletですが、第4図の局面をよーく見ると、何だかとても良さそうな手がありますね。目から火の出るなんちゃらかんちゃらとかいうやつです。

3手進んだ局面がこちらになります。(第5図)

 

そうですね。▲2二角成△同玉▲5五角で綺麗な王手飛車取りが実現しました。ここまで完璧な王手飛車はなかなかお目にかかれないのではないでしょうか。

仕事でもプライベートでも、他人と協力して何かを成功させるってとても喜ばしいことですよね! まぁ、ちょっと今回は協力する相手を間違えたのかもしれませんが….( ̄▽ ̄;)

SilverBulletには是非とも次回の大会で相手に王手飛車を掛けて、今回のうっ憤を晴らしてほしいものだと思います。


 

③ 【どうしてそうなった】

 

第6図をご覧ください。

一次予選2回戦の▲きふわらべVS△SilverBulletから。棋譜はこちらからどうぞ。

突然ですが、先手の次の一手を予想してみてください。ヒントを二つ出しておきます。

 

ヒント

 

ヒント1: 合法手ではない。(つまり反則手)
ヒント2: 後手玉に王手をかけた。

 

たぶん、正解にはたどり着けないと思うので、5秒考えたらもう下へスクロールしてください笑

先手のきふわらべの次の一手は……………▲1四桂!(第7図)

 

なんでやねん!!

世の中に動けない場所へ駒を動かした人はそれなりに存在するんでしょうけど、さすがに▲9七桂→▲1四桂のテレポートは前代未聞でしょう笑

ちなみに、「きふわらべ」はどのようなコンセプトで開発されたソフトかというと、どうぶつしょうぎをベースにして作られたソフトです。

なぜどうぶつしょうぎをベースにしたかというと、開発者の高橋智史氏曰く、

本将棋は駒が多く、盤面も広いので製作の難易度が高い。しかし、どうぶつしょうぎは小さいのでそれらの問題点を解決できるだろう。事実、すごく簡単に作ることができた。あとは本将棋に合わせて盤面を伸ばしていけばOK!…….と思って気楽に考えていたら、だいぶ違った。

とのことです。あたりまえでしょ笑

 

どうぶつしょうぎが基準になっているので、飛や角は一マスずつにしか動けませんし、駒を成るときも一段目に到達しないと成れないように設定されているようです。二歩に関してはどうなっているんでしょうか笑

で、なぜこんな反則を指してしまったのかは、私には分からないのですが、どうぶつしょうぎには存在しない桂の動きは上手くプログラムに組み込めなかったのでしょうか…..?願わくば、ぜひ開発者の方に原因をお聞きしたいものです。

 

追記

 

上記の疑問について、将棋ソフト「CGP」の開発者であるwain様からコメントを頂いたので、引用したいと思います。

きふわらべの▲1四桂についてですが、きふわらべは9筋の左隣のマスが1筋の1つ上の段のマスになっているみたいです。

これはマスの番号を振るときにプログラム内部では9一からスタートしてまず右に番号を増やしながら進み、1筋まで行くと次の段の9筋からまた番号を付けていっているためです。

(仮に1番地からスタートしたとすると9一は1番地、1一は9番地、9二は10番地、1九は81番地になります。左隣のマスは番号が1小さいマスということになります)

これはきふわらべが特別ではなく、同じ構造をとっている将棋ソフトもあるはずです。そしてこういう構造をとる場合、9筋から左に動く手は合法手を作るときにはじくのですが、きふわらべは桂に関してだけこの処理がもれていたようです。

つまり9七から前に2マス進んで9五、そこから左に1マス進んで1四となるため9七の桂が1四に移動できると勘違いしたようです。

 

きふわらべには、来年も斬新なアイデアで選手権に参加してくださることを切に願っております。

さてさて。簡単にネタ勢を紹介しましたが、いかがだったでしょうか。強さ以外の面でも楽しめるコンピューター将棋の魅力を感じ取ってもらえたら、筆者としてとても嬉しいです。

 

それでは、また。ご愛読ありがとうございました!

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