元奨励会三段が将棋をテーマにあれこれ書いています。

第27回コンピューター将棋選手権をマニアックな視点で振り返る ~一次予選~【中盤編】

どうも、あらきっぺです。

前回は、序盤の「構想力」について解説しました。今回は中盤の巧みな指しまわしを紹介しようと思います。

なお、今回、紹介した対局の棋譜は、こちらのサイトからご覧いただけます。

 

2.連繋力


将棋の解説で「連繋力」(れんけいりょく)という単語は聞いたことがないですよね(^_^;) まぁ、あらきっぺ用語としてこの際、覚えて頂けると何よりです笑

優勢な局面に導くためには、何らかの狙いや理想を描いて指す必要があります。そのためには、これから指し紡いでいく手を今までの指し手や駒組みの意図と上手く連繋させなければいけません。

コンピューター将棋の棋譜を見ていると、手の意味を連繋させる技術(連繋力)がとても高いように感じられました。

なお、「連係」ではなく「連繋」という字を使ったのは、‘‘繋がる‘‘という意味を強調させたかったからです。

それでは、具体例を見ていきましょう。

 

① 【理想の実現】



まずは第1図をご覧ください。

一次予選6回戦の▲elmoVSHoneyWaffleから。(便宜上先後逆)

HoneyWaffleが3二にいた飛車を△2二飛と寄って、▲3五歩△同銀▲2三飛成の筋を受けたところです。

先手には先ほどまで「飛車を成る」という狙いがありましたが、この手によって防がれてしまいました。さて、どうすればそれを実現できるでしょうか?

▲2三飛成とするためには△2二飛と△3四銀を動かす必要がありますね。しかし、第1図から▲3五歩△同銀▲3一角では流石に投資が大き過ぎます。いくら飛車が成れても角損では話になりません。(A図)

 

理想を言えば、駒損することなく▲2三飛成が実現すれば万々歳ですよね。

でも、そんなのどうやって…….と思う方も多いと思います。しかし、elmoは「連繋力」を駆使して理想の実現へ向かいます。

第1図からelmoは▲6五歩△同金▲5六銀(青字は本譜の指し手)と指し、まずは銀を捌きます。(第2図)

 


第2図から△同金▲同歩は必然の進行ですね。その局面は、次に▲5五金で角を詰ます手が残っています。HoneyWaffleはそれを嫌って△4六角と出ましたが、4筋の歩が消えたことを利用して、▲3一角△5二飛▲4三歩が好手順です。(第3図)

 

▲4三歩に△同銀は▲4二金や▲2三飛成があるので取ることはできません。

有効な受けが無い後手は△1九角成と香を取りましたが、▲4二歩成△6二飛▲4四金が厳しい攻めです。(第4図)

 

▲5三金を許すと飛車を取られてしまうため、△6四馬と受けるくらいですが、▲3四金△同歩▲2三飛成と進み、当初の目的であった飛車を成ることの実現に成功しました。(第5図)

 

第5図の局面は飛車の働きに大きな差があり、先手優勢です。香損ながら、と金と竜の存在が大きいですね。

 

第1図から先手が飛車を成るには、△2二飛と△3四銀を動かす必要がありました。

第1図から第5図までのelmoの指し手をもう一度振り返ってみてください。ほぼ全ての手がそれを実行するための意味になっていることが分かります。特に、第2図から第4図の手順がそうですね。

このように、前に指した手の意味を繋げることで、理想を実現することができました。

対局中に「何を指していいのか分からない…」と感じた時には、直前に指した手の意味を考えて、それを次の一手に連繋させると良いかもしれません。ぜひ、一度試してみてください。

 

 

➁ 【問題点の解決】



第6図をご覧ください。

一次予選7回戦の▲大合神クジラちゃんVS△HoneyWaffleから。(便宜上先後逆)

後手が△5四飛と5六から飛車を引いたところです。

第6図で先手は馬を作っていますが、形勢が良いという訳ではありません。なぜなら、先手は以下の3つの問題点を抱えているからです。

(1)桂頭にキズを抱えている。
(2)飛車が隠居している。
(3)玉の囲いが不安定。

これらをどう解決するかです。基本的に、懸念材料を放置しておくと事態を悪化させる原因になってしまいます。何だか仕事や日常生活と似ていますね笑

 

何はともあれ、先手は△7六歩と△1九角成の狙いを受けないといけません。よって、第5図から▲6五馬は絶対手です。以下△3三銀▲3七銀△5五飛▲6六馬と進みます。(第7図)

 

第6図から第7図に至る手順の中で、先手は飛車を取る機会が常にありましたが、この馬は先手の最大の主張なので飛車と交換してしまうのは損な取引です。

ひとまず先手は馬の力で桂頭をしっかり守ることができました。

 

第7図から△4四銀▲7八玉△7二銀▲5八飛と進みます。(第8図)

 

▲3七銀と上がったことにより、1八の飛車の横利きが多くなりました。それを活かした手が▲5八飛です。

飛車の働きに差がありましたが、この一手でその関係が五分になりました。

第8図から、△同飛成▲同金右△3二金▲4六銀△4二玉▲6五桂と進んだ局面を、結果図とします。

 


先手は船囲いを作り上げ、玉型を安定させることができました。加えて、狙われていた7七の桂を攻め駒に変化することもできましたね。

結果図の局面は、次に▲3七桂→▲4五桂が楽しみです。形勢は難しいと思いますが、分かりやすい攻め筋が残っている先手に不満はありません。

 

最初に記したとおり、先手には①桂頭のキズ。飛車の働き。玉の囲い。という三つの問題点がありました。

大合神クジラちゃんの指し手を振り返ってみると、それらの問題点を改善するための手を指していることが分かります。

このように、「問題点の解決を行う」という意思のある手を繋げることで、形勢を損ねることなく局面を進めることができました。ぜひ、参考にしてみてください。

 

➂ 【他力を利用】



まずは第9図をご覧ください。



一次予選1回戦の▲elmoVS△大合神クジラちゃんから。

第9図はelmoが▲7九香と打ったところです。この香を打たないと、逆に△7九飛と打たれて危ないところでした。

この香は相手によって打たされた駒であり、ただ空間を埋めただけの駒なので働きは乏しいです。しかし、ここからelmoは見事な手順でこの香を上手く活用させます。7九の香に注目しながら、以下の進行をご覧ください。

第9図から△2六飛▲3九金△5六歩▲同歩△同飛▲2一竜と進みました。(第10図)

 

後手は△2六飛と打つことで▲3九金を強要させました。それによって中央が薄くなったので、△5六歩からそこを狙います。しかし、先手は構わず▲2一竜と遊び駒を活用します。前項でも解説しましたが、遊び駒という問題点の解決は急務です。

大合神クジラちゃんは△5七桂成から攻めを継続させますが、そこで▲4六角が用意の切り返しでした。(第11図)


ここで△6七成桂と指すと、▲同銀△同金に▲7四桂が待っています。これは痛烈ですね。(B図)

 


△7一玉は▲8二角で詰みですし、△9二玉は▲3二竜で金を取ることができます。

後手は成桂を先手玉の方へ寄せて行きたいのですが、不用意に桂を渡せないので困っています。大合神クジラちゃんは第11図から△7八金▲同玉△7六飛▲8八玉△4六飛▲同歩△6八成桂と手順を尽くして成桂を先手玉に近づけましたが、▲7四歩が絶好の利かしです。(第12図)

 

7筋の香を活かした味の良い一手ですね。いつの間にか、7九の香が攻防の主軸と言える駒に変貌していることが分かります。

コビンは美濃囲いの急所なので後手は△7四同歩と応じるしかありませんが、7筋をこじ開けたことにより、後手玉は大いに弱体化しました。相手を攻めに専念できない状態にして、▲5七銀が仕上げの一手。以下、△7九成桂▲同玉と進んで、分かりやすい局面になりました。(結果図)

 

あれだけ、たくさんあった攻め駒がウソのように消えてしまいました。結果図の局面は、駒得が大きく先手優勢です。将来の▲6六桂が楽しみですね。

 

第9図の局面は、先手の▲7九香は受け一方で打たされた駒でした。この駒を自力で活用するのは、ほぼ不可能です。しかし、相手の攻め(他力)を利用することで、香の利きを堰き止めていた駒が捌けて▲7九香を反撃に使うことができました。第11図の▲4六角はそのための一手であり、その▲4六角を成立させるために▲2一竜と寄ったのです。こうして振り返ってみると、指し手の意味が綺麗に繋がっていることが分かります。素晴らしい連繋力でしたね。

 

今回のテーマである「連繋力」は、少し難しかったかもしれません。ですが、指し手の意味を繋げることは、とても重要な技術の一つです。皆様も「連繋力」を意識すると、実戦や観戦をより一層、楽しめるようになるかと思います。

 

次回は終盤について解説します。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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