元奨励会三段が将棋をテーマにあれこれ書いています。

第67回NHK杯1回戦解説記 菅井竜也七段VS三枚堂達也四段 ~前編~

もう金曜日なので忘れられているかもしれませんが( ̄▽ ̄;) 今週は菅井竜也七段と三枚堂達也四段の対戦でした。

菅井七段は元来は振り飛車党でしたが、ある時期から居飛車の採用数が多くなり、戦型選択が非常に幅広くなりました。最近はまた振り飛車を軸に戦っているようです。
現在、羽生王位に挑戦中であり、幸先よく先勝しましたね。初タイトルが期待されます。

三枚堂四段は居飛車党で、先手なら角換わり、後手なら横歩取り、対抗型のときは居飛車穴熊を多用していますね。堅い玉型を好み、シャープな攻めをどんどん繰り出してくる印象があります。

 

本局の棋譜は、こちらのサイトからご覧いただけます。
参考 本局の棋譜NHK杯将棋トーナメント

第67回NHK杯1回戦第14局
2017年7月2日放映

 

先手 菅井  竜也 七段
後手 三枚堂 達也 四段

 

初手から▲5六歩△8四歩▲7六歩△6二銀(青字は本譜の指し手)と進み、第1図の局面になりました。

 

先手中飛車ですが、菅井七段は▲5六歩型のまま駒組みを進めています。本来ならば▲5五歩を突きたいのですが、それを指すとA図のような進行が予想されます。

 

ゴキゲン中飛車対超速とほぼそっくりな将棋ですが、△3三歩型で敢えて角道を止めているのが後手の主張です。先手はどこかで▲5四歩と突いていくことになるのですが、角交換にならないので普段よりも捌くことが難しくなっています。また、▲5四歩△同歩▲同飛の後に、▲3四飛の筋が無いのも条件が悪い要素です。

よって、菅井七段は▲5五歩を突かずに駒組みを進め、第2図のようになりました。

 

▲6六歩から▲6七銀と手堅く角頭を守ることにより、A図のような将棋を回避します。ただ、自分から角道を止めてしまったので、5筋の位は取れなくなりました。

結果的に後手は相手を普通の中飛車に組ませることに成功しています。このようなゆっくりした将棋になると、先後の差が抽象化されるので、後手が不満の無い将棋と言えるでしょう。

△5三銀と上がったことで、7筋がやや手薄になっています。菅井七段はそこに目を付けて、▲7八飛と三間飛車に振り直しました。対して、三枚堂四段は△7三桂▲5八金左△6四銀と応じます。この△6四銀・△7三桂型が手厚い構えで、▲7五歩や▲6五歩からの捌きを封じています。この形を作られてしまうと、振り飛車は左辺から打開することが極めて難しくなります。

 

仕掛ける手段がないため、互いに淡々と囲いを発展させます。先手は髙美濃。後手は銀冠に組みました。(第3図)

 

お互い、堂々たる布陣ですね。ただ、これ以上駒組みを進めると先手の旗色が悪くなります。なぜなら、自分の方が先に駒組みが飽和してしまうからです。

後手はここから△1二香~△2二玉~△1一玉~△2二金~△3二金右と指したい手がまだまだあります。対して先手は▲2七銀~▲3八金と銀冠に進展した後に有効な指し手がありません。つまり、これ以上、駒組みを進めると自分だけ手詰まりになってしまい、無意味な手(=パス)を指すことになってしまう未来が見えているのです。

したがって、先手は少し工夫が必要です。本譜は▲5八銀と引きました。角頭の守りを放棄しますが、後手は銀冠穴熊に組みたいのでまだ動きたくはありません。ゆえに、△1二香▲5七銀△2二玉と進みます。菅井七段は玉が間接的に角道に入ったのを見て、▲2五歩と仕掛けました。(第4図)

 

△同歩と応じると▲同桂△2四角▲6五歩が王手銀取りで先手優勢です。よって、三枚堂四段は手抜きで△1一玉と潜りますが、▲2四歩△同銀▲2五歩△1三銀となり、後手陣を歪な形を強要することができました。(第5図)

 

一見、先手が上手くやったように見えますが、良いことばかりではありません。先手には二つの懸念材料があります。それは、(1)玉頭に空間が生じたこと。(2)相手に歩を持たれたことです。

第5図で先手はぼやぼやしていると、△2二銀~△2三銀と形を整えられてしまいます。菅井七段は▲4六銀と上がって△2二銀に▲3五歩を用意しましたが、6筋の守りが薄くなったので△8六歩▲同歩△7五歩と仕掛けられました。▲同歩には△7六歩があります。(2)の懸念点が顕在化した格好となり、先手としては少し嫌な展開です。(第6図)

 

後手の攻めを受け止めることはできませんが、菅井七段は振り飛車らしい軽い手で応対しました。

まずは▲9八香と香を取られにくくします。後手は当然、△7六歩▲5九角△6六角と進軍しますが、7筋の歩を取らせたので▲7四歩が打てるようになりました。以下、△6五桂▲7三歩成△7七歩成▲同桂△8六飛と互いに駒を捌きます。(第7図)

 

第7図では▲6五桂か▲6三との二択です。ただ、▲6五桂は△8七飛成▲6八飛△6五銀と応じられると、と金が目標物を失い色褪せた駒になってしまう印
象です。

よって菅井七段は▲6三とを選びました。以下、△8七飛成▲4八飛△7七桂成▲6四とと進みます。(第8図)

 

ここで形勢判断をして、前編を終わりにしたいと思います。

玉型は、先手の方が金銀の数が一枚多いものの、後手玉の方が一路深い場所にいることと、先手玉の玉頭の空間が祟りそうなので後手に分があると見たいです。

駒の損得は銀と桂の交換で先手がやや良し。

駒の効率は大駒の働きが見るからに大差ですね。これは圧倒的に後手が勝っています。

総括すると、先手の二枚の大駒の働きが乏しいので後手が優勢だと考えられます。

菅井七段は苦しい状況を打破することができるでしょうか?

では、続きは後編で。ご愛読ありがとうございました!

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