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今週の妙手! ベスト3(2020年5月第3週)

今週の妙手

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
コンピューター将棋今週の妙手!【コンピュータ将棋編】(2020年5月第2週)

 

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2020.5/10~5/16)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。後手の雁木に先手が矢倉模様で対抗する将棋になり、このような局面になりました。(第1図)

 

妙手

2020.5.14 第33期竜王戦6組昇級者決定戦 ▲土佐浩司八段VS△門倉啓太五戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)

先手が▲4七銀と上がったところ。

この局面は、序盤の終わりから中盤に差しかかろうとしているところなので、のほほんとした局面に映ります。

 

しかし、実を言うと後手には好機が訪れており、次の一手で門倉五段は機先を制することに成功したのでした。

門倉五段が指した手は、△4八角です!

 

妙手

銀を上がった手をすかさず咎めに行ったのが妙手でした!


 

 

妙手

これが先手陣の不備を突いた一着でした。狭い場所に角を打つのでリスキーですが、この局面においては先手の飛車と銀の位置が悪いので、後手は踏み込む条件が良いのです。

 

妙手

さて。ここで▲3八歩のような、ただ桂取りを受けるだけのような手なら、△3九角成で馬を作っておけば後手は満足でしょう。

問題は、▲2八角と打たれた場合です。こう指されると4八の角は行き場なく、後手は勇み足を踏んでしまったように見えるかもしれません。

しかし、それには△3七角成▲同角△2五桂打という返し技があるのです。(第2図)

 

今週の妙手

角が逃げれば△2三歩と打って、先手の飛車を詰ますことが出来ますね。飛車を入手すれば今後の攻めが分かりやすいので、後手の優位は明らかでしょう。

 

今週の妙手

先手が飛車を守るなら▲2三歩と打つことになりますが、△3七桂成▲2二歩成△4七成桂▲3二と△同銀とシンプルに駒を取り合ってしまえば後手の優位は揺るぎません。4七の銀が浮いているので、後手は強気に踏み込むことが可能なのです。(第3図)

 

今週の妙手

後手は金を剥されたものの、成桂を得しているのでこの斬り合いは大いに得をしています。ここで▲2二飛成が気になりますが、△2三歩と蓋をすれば先手の竜が捕獲できるので、むしろこの変化は歓迎と言えます。

 

後手は△4八角の一発で、いとも容易く優位を掴むことが出来ました。敵陣の隙を的確に咎めた機敏な一着でしたね。

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。角交換振り飛車から、後手がのらりくらりと相手の攻めをいなしていき、以下の局面を迎えました。(第4図)

 

今週の妙手

2020.5.14 第70期王将戦一次予選 ▲畠山鎮八段VS△竹内雄悟五戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)

先手が▲5六桂と打ったところです。

この手は後手の角を移動させることで、自玉の脅威を緩和させようという狙いがあります。つまり、△3七角成と逃げれば▲3五桂で攻めに転じやすくなるという訳ですね。

 

後手はその進行を選んで面倒を見るのも一案ですが、本譜はもっとスマートな勝ち方を選びました。

竹内五段が指した手は、△8六銀です!

 

今週の妙手

角取りを放置して、要の金を攻めたのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

これが好判断でした。後手は角を取らせている間に、敵玉を寄せ切ってしまおうという算段なのです。

さて。先手はこの銀打ちに▲同金△同角と応じると、5六に打った桂が空振りに終わるので選べない進行でしょう。ゆえに、▲6四桂と角を取るのは当然ですが、そこで△9九角が狙い澄ました一撃でした。(第5図)

 

今週の妙手

8六の銀は先手玉の上部脱出を阻む駒なので、これを盤上に残しながら攻めることが急所です。

ここから▲同玉△8七銀成と進めば、一手一手の寄り筋ですね。これは「玉は下段に落とせ」という格言通りの展開です。

 

今週の妙手

本譜は▲7八玉と寄って抵抗しましたが、△8九銀の追い打ちが痛烈。▲6九玉はやむを得ないですが、△8七銀成で後手の寄せが決まりました。(第6図)

 

今週の妙手

後手は4五に香がいることが心強く、先手玉に脱走される心配がありません。あとは△4八香成や△8八角成などで攻め駒を接近させれば良いでしょう。

先手は受けが利かないので攻めに向かうより道はないのですが、後手玉はあまりにも広いので詰めろを掛ける術がありません。ゆえに、実戦はここで終局となりました。

 

今週の妙手

将棋には、「駒は取られる寸前が最も働いている」という言葉があります。この場合においては、6四の角がそれにあたりますね。この△8六銀は、その性質を上手く利用した踏み込みだったと言えるでしょう。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。これは見た目にインパクトのある妙手でしたね。(第7図)

 

今週の妙手

2020.5.13 第46期棋王戦予選 ▲及川拓馬六段VS△千葉幸生七段戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)

先手が▲6八角と引いて、角取りを受けたところ。

この局面は、飛の働きに大きな差が着いており、その分だけ後手が優位に立っている状況ですね。ただ、裏を返せば9六の飛が働きだすと、そのアドバンテージは吹き飛んでしまいます。

 

それを考慮すると、後手の指した手が見えてくるのではないでしょうか。

千葉七段が指した手は、△8六銀です!

 

今週の妙手

銀を放り込んで、先手の飛車を封殺したのが妙手でした!


 

 

今週の妙手 千葉

見るからに力づくですが、これで相手の飛車を封じ込めたのが賢明な判断でした。

これを▲同歩なら、もちろん△9五歩です。銀を捨てても飛車が取れているので、エビで鯛を釣ったようなものですね。

 

今週の妙手

先手は飛車を救助する術を持たないので、本譜は▲3四金で攻め合いに活路を求めますが、後手は構わず△9五歩で初志貫徹の姿勢を見せます。(途中図)

 

妙手 千葉

先手は▲4三金と嫌らしく迫りますが、角を逃げずに△9六歩▲4四金△8七銀成とアクセルを踏んだのが強い勝ち方です。

飛車を取るために打った銀が、さらに寄せに一役買うとは味が良いことこの上ないですね。(第8図)

 

今週の妙手

これを▲同金は△8六歩と突き出せば、後手の攻めが加速します。

かと言って、先手はこの成銀が取れないようではどうしようもありません。このまま放置していると、△8六歩や△9七歩成、他には△4九飛という手もあり、先手陣は火の車です。以降は幾ばくもなく、後手が勝利を収めました。

 

妙手

こうして振り返ってみると、△8六銀を放ってからは、あっという間に後手が勝ち筋に入ったことが分かります。

冒頭にも述べたように、後手はとにかく、▲7六飛や▲2六飛のように、9六の飛を蘇生させる手を阻止することが急所でした。ゆえに、△8六銀が最適な一手になるという訳ですね。強引なようでも、非常に理知的な判断に基づいた妙手でした。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

 

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