最新戦法の事情【4・5月合併号・振り飛車編】を公開しました。詳細は、ここをタップ!

今週の妙手! ベスト3(2021年6月第4週)

妙手 将棋

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、前回の内容は、以下の記事をどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2021年6月第3週)

注意事項

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。また、プレイヤーの名称が長い場合は、適宜省略・変更させて頂きます。ご理解頂けると幸いです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

今週の妙手! ベスト3
(2021.6/20~6/26)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。相掛かりから先手の攻めを後手がいなしに行く試合展開になり、以下の局面を迎えました。(第1図)

妙手 攻め

2021.6.22 ▲Ryfamate_wcsc31_TR2950X-RTX3090 VS △DLSuisho059_RTX3090(便宜上先後逆で表示)棋譜はこちら

ご覧のように、後手はかなり攻め込まれていますね。自玉も端に追いやられており、状況は芳しくないように見えるかもしれません。

ところが、次の一手で戦況はガラリと変わります。これは狙い澄ましたカウンターでしたね。

DLSuisho059_RTX3090が指した手は、△7五香です!

妙手 攻め

香を放って、7筋を手厚くしたのが妙手でした!


 

 

妙手 攻め

これが快心の一撃でした。7七の桂にアタックするのが急所を突いているのです。

ところで、後手はこの手に代えて△2四角と打てば王手竜取りを掛けることが出来ました。しかし、これは▲3五歩△4二角▲8二銀打と進められると、一手負けが濃厚ですね。(A図)

この変化は先手玉に対して脅威を与えていないので、寄せに専念されてしまうことが泣きどころです。

ゆえに、後手は△7五香と敵玉に向かうことを優先したのですね。

妙手 攻め

さて、この手は△7七香成▲同玉△6五桂からの詰めろなので、先手は一回は受けに回る必要があります。ただ、▲6六銀のような持ち駒を使う受けを選ぶと、今度こそ△2四角が痛打ですね。先手は敵玉への寄せを考慮すると、手駒を温存しなければならないのです。

妙手 攻め

なので、本譜は▲8五桂△8四玉▲4四竜と進めて△2四角の筋をかわしました。ただ、自然に△6四歩と受けられてみると、先手が忙しい状況には変わりがありませんね。(第2図)

妙手 将棋

確かに、△2四角の筋は消えました。けれども、今度は△7七角から王手竜取りを掛ける筋があるので、やはり先手は受けに回らざるを得ないのです。

仕方がないので実戦は▲7八歩と指したのですが、△8九飛と打てば詰めろが入るので、完全に攻守が入れ替わっていますね。以降は、後手が気持ちよく攻め立てて勝利を収めました。

 

妙手 攻め

こうして振り返ってみると、△7五香と打った手を境に、後手は受け身の状況から脱却できたことが分かります。この手は先手玉に迫りながら7筋を手厚くしているので、一手の価値がすこぶる高いのですね単純な駒得よりも、攻防手を放つほうが価値が高いということが窺えます。模範にしたい一着でしたね。

 

この妙手から読み取れる心得
  1. 終盤では、敵玉をゼットにする状況をなるべく作らない。
  2. 攻防手は優先度が高いので、指せるチャンスがあれば指す。

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。相掛かりから先手が中住まい、後手が美濃囲いに組む構図になり、以下の局面を迎えました。(第3図)

妙手 水匠

2021.6.21 ▲Suisho210616_TR3990X VS △Kristallweizen_R9-3950X(棋譜はこちら

先手は自分だけ角を持っていること、後手は9筋を詰めていることが主張です。

先手としては、なるべく相手の主張が活きないような展開に持ち込みたいですね。本譜は見事な構想でそれを実現させました。

Suisho210616_TR3990Xが指した手は、▲8八金です!

妙手 水匠

金を動かして、自陣を整えたのが妙手でした!


 

 

妙手 水匠

自ら形を悪くしているようですが、これが柔軟な一着です。と言っても、なぜ金を寄る必要があるのか、あまり意図が見えて来ないですよね。

妙手 水匠

そもそも、始めの局面では▲2二角と打つ方が自然でしょう。こうすれば確実に香が取れるので、何の不満も無いように思えます。

しかし、▲2二角は△7六飛で飛車をぶつけられる手が強敵です。以下、▲同飛△同角▲1一角成△8六歩▲同歩△8九飛が進行の一例ですが、これは先手が大変ですね。(第4図)

妙手 受け

ここまで進んでみると、1一の馬が戦場から取り残されている印象を受けないでしょうか? このように、飛車交換を挑まれて局面の流れを速くされると、先手は2二に打った角がピンボケになってしまうのです。

では、▲8八金には一体、どのような狙いがあるのでしょうか?

妙手 水匠

まず、この手は第4図で示した△8九飛の打ち込みをケアしている意味があります。後手はこの手を消されると、飛車交換を挑む条件が悪いですね。つまり、この金寄りは▲2二角を打つ準備でもあるのです。

妙手 水匠

よって後手は△3一銀と引いたのですが、▲9七歩△同歩成▲同香と端から動いたのが素晴らしい着眼点。これが見事な打開でした。(途中図)

妙手 攻め

ここで△9六歩と打っても、▲7五歩△同飛▲9六香という返し技があるので上手く行きません。詰められていた9筋を押し返すことが出来たので、先手は非常に味が良い展開ですね。

妙手 攻め

また、9筋が戦場になると、後手は玉が近いので何かと当たりが強いことも不安です。ゆえに、本譜は△9七同香成▲同金△6二玉と早逃げしたのですが、▲7五歩△6四飛▲7九香で力を溜めたのがこれまた巧みな着想でした。(第5図)

下段の香に力あり

ここに香を設置しておけば、▲8五桂→▲7四歩からコビンを攻める手が楽しみとなります。また、この香は受けにも働くことでしょう。

先手は自分の主張を維持したまま相手の主張をかき消すことが出来たので、第5図はリードを奪うことに成功しています。この局面を作れた立役者は、もちろん▲8八金であることは言うまでもありません。

 

妙手 水匠

それにしても、囲いの定位置にあった金をわざわざ動かして良さを求めに行くとは驚きの構想です。▲8八金は見た目は奇異ですが、飛車交換を牽制しつつ端の逆襲を狙う攻防兼備の金寄りだったのですね。固定観念に囚われない、発想の柔らかい妙手だったと思います。

 

この妙手から読み取れる心得
  1. 自ら大駒を遊ばせるような手は選ばない。
  2. 自分の主張は残し、相手の主張は潰す展開を目指す。

 




第1位

 

最後に紹介するのは、この将棋です。これも守備駒の使い方に意表を突かれた一着でした。(第6図)

受けの妙手

2021.6.22 ▲dlshogi_15b_pre3_a100x8 VS △Suisho210616_TR3990X(棋譜はこちら

先手は相当に攻め込まれていますが、あわよくば入玉できるので悲観することはありません。攻め潰すか凌ぎ切るか、まさに正念場と言えます。

ひとまず先手は△8四桂→△8七馬を防ぐ必要がありますね。本譜はそれを受けたのですが、その方法は意外なものでした。

dlshogi_15b_pre3_a100x8が指した手は、▲9八銀打です!

今週の妙手

わざと端から銀を繋いだのが妙手でした!


 

 

今週の妙手

…え? ここ? なんで?

ここに銀を打てば8七の地点が強化されるので、△8四桂→△8七馬に備えていることは分かります。が、一般的に将棋の駒は中央にいるほうが働きが良いですね。なので、傍目にはまるで率の良いことをしているようには見えないでしょう。

けれども、これには深い理由があるのです。

受けの妙手

ところで、冒頭の局面では▲7八金とお手入れする方が普通ですね。これなら大駒を弾いていますし、クリップも作れるので一石二鳥のように思えます。

しかし、後手は大人しく馬を逃げてはくれません。▲7八金には△8七馬とぶった切ってくる手が厄介なのです。(途中図)

攻め 妙手

先手は二者択一ですが、▲同玉は△8五歩が痛打になるので支えきれないですね。

そもそも、玉が下段へ落ちる進行は入玉という理想から遠ざかってしまうので先手は選びたくありません。

妙手 攻め

したがって、△8七馬には▲同金と応じるほうが勝りますが、△7八銀▲6三飛成△8七銀不成▲同玉△8五歩と畳み掛けられると、これも後手の攻めが繋がってしまいます。(第7図)

攻め 妙手

このように、

・玉が下段へ追い落とされる
・△8五歩が実現する

この二点が両立してしまうと、先手は望みが無くなってしまうのですね。ゆえに、▲7八金では上手く行きません。

改めて、冒頭の局面に戻ります。

受けの妙手

▲7八金がダメだった要因は、△8七馬→△7八銀という攻め筋を与えていたことでした。となると、▲7八銀打はどうでしょう。これなら△8七馬には▲同銀で隙がありません。

しかしながら、この受け方も問題を抱えているのです。具体的には△6六桂が鋭い一撃ですね。(第8図)

妙手 攻め

これには▲同飛と応じるのが妥当ですが、△同馬▲同玉△6八飛▲5七玉△4八飛成▲同玉△8五歩が豪快な攻め。かなり強引な手順ではありますが、このとき先手は良い対処が無いのです。(第9図)

妙手 攻め

被害を最小限にする受けは▲7七銀引ですが、△7五角▲6六歩△6五桂と襲い掛かられるので、後手の攻めは止まりません。

この局面も、状況としては第7図と同一です。つまり、

・玉が下段へ追い落とされる
・△8五歩が実現する

という二点を両立されているので、負けパターンに入っているのですね。

妙手 攻め

さて、こういった変化を見ると、先手が▲9八銀打という奇妙な受けを選んだ意図が見えてくるのではないでしょうか。勘の鋭い方は、もうお分かりでしょう。

今週の妙手

つまり、ここから銀を打てば△6六桂と打たれる心配はありません。また、△8七馬と切ってくる筋も▲同銀で大丈夫ですね。端から銀を打つことで、守備駒を狙われないようにしたことが先手の自慢なのです。

今週の妙手

ここで厳しい攻めが無ければ、▲8五玉→▲8四歩で上部を開拓する手が間に合います。その二手が入れば、先手玉は寄る形が見えないですね。実戦もそれが実現する形になり、先手は不敗の態勢を手にすることが出来ました。

 

今週の妙手

この▲9八銀打は、本当にイレギュラーな一手です。なにしろ手番は取れていないですし、わざわざ働きの悪そうな場所に持ち駒を投資しているからです。けれども、この場合は、守り駒を目標にされないようにすることが何よりも大事だったのですね。常識に囚われないAIの強さが遺憾なく発揮された受けの妙技でした。

 

この妙手から読み取れる心得
  1. 手番が取れないのであれば、大駒を弾いても意味がない。
  2. 守備駒を投資するときは、それを狙われない場所に打つ。
  3. 自分の描く理想と真逆の方針になる進行は選ばない。

お知らせ

 

唐突ではありますが、今回の更新を持って、「今週の妙手!」を一区切りさせていただきます。

このシリーズは2019年の12月から始めており、およそ一年半ほど続けて参りました。自分自身、記事を作る上であっと驚く妙手にたくさん触れることができ、将棋には色んな手があるものだなという思いに耽ることが多かったですね。特に、この記事の一位はかなり印象に残りました。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2021年3月第3週)

ただ、最近はちょっとマンネリ化しつつあるということと、他の記事を進めることが疎かになってしまっているので、一旦は区切りをつけようかなと。少し寂しさもありますが、より良いブログを作っていけるよう、今後も試行錯誤してきたいと存ずる次第です。

 

それでは、また。ご愛読いただき、ありがとうございました!

2 COMMENTS

まさ

あらきっぺさん 初めまして。
まさと申します。
最近、「現代将棋の7つの理論」という本を購入させて頂き、そこからあらきっぺさんのことを知りました。
とても斬新で内容も濃く面白かったです。

ところで、私の棋力は2段ほどですが、最近、中盤に課題を感じています
いつも序盤、終盤はほぼミスなく完璧に指せるのですが、中盤で不利にしたり、局面を難しくしたりが多く、ソフト解析も中盤で悪手が多いです。1局で2、3回は悪手があります。

序盤は相掛かりと角換わり、横歩取りを徹底的にソフト研究を重ねて、おおよそ身についてきた実感があります。
終盤の勉強も3手、5手の詰将棋を毎日計100問、7手 9手 11手を計100問で毎日200問ほど解いているので終盤力は維持できています。

一方、中盤はというと、初段レベルの「次の一手」問題すら間違えてしまう始末で、あらきっぺさんのブログにある「次の一手」問題も解いてみましたが、正答率が25%と散々な結果でした……。

中盤の「次の一手」問題に基礎のレベルはあるのでしょうか。
また、あらきっぺさんのブログにあるレベルは私には早いでしょうか。
初段レベルの問題を確実に解けるようになるためには、日頃からどのような勉強をすればよいのかも知りたいです。
たくさん質問してしまい、申し訳ありません。
どうかご教示いただけると幸いです。
まさ

返信する
あらきっぺ

はじめまして。この度はブログや拙著をご覧いただき、感謝申し上げます。

さて、ご質問の中盤のミスを減らす方法についてですが、対策の一つに「線の目線で考える」という方法があります。
例えば、角換わりや相掛かりは攻めっ気の強い戦法です。なので、攻守の判断に迷った際には、作戦の趣旨に沿った手を選ぶとミスが減らせる可能性が高まります。
また、終盤では、やはり敵玉をいち早く詰ますことが全てなので、中盤の段階で敵玉に嫌味をつける手などは有効手になりやすいですね。
中盤は序盤と終盤の境であり、それらを「つなぐ部分」でもあります。したがって、序盤や終盤の延長線上として考えると、正しい方針が打ち出せるのではないでしょうか。

次に、次の一手の問題の解き方についてですが、これは簡単なレベルの問題から根気強くこなしていくしかないでしょう。
初段レベルの問題が難しいのであれば、級位者向けの問題集から取り組むのが無難かと思われます。
無理して高いレベルの問題に取り組む必要はありません。あくまで将棋は趣味ですから、気楽に行きましょう。
一通り問題をこなして自信がつきましたら、また私のブログの次の一手問題にチャレンジして頂ければ幸いです。

それでは、まささんの棋力向上を願って、結びとさせて頂きます。

返信する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA