最新戦法の事情【居飛車編 8・9・10月合併号】を公開しました。詳細は、ここをタップ!

最新戦法の事情・居飛車編(2022年6・7月合併号)

あらきっぺ 居飛車

どうも、あらきっぺです。先日、落雷の影響でハイエンドPCがお釈迦になりました。雷サージという現象があるんですね…。皆様もお気をつけください。

 

タイトルに記載している通り、相居飛車の将棋から最新戦法の事情を分析したいと思います。

前回の内容は、こちらからどうぞ。

最新戦法の事情・居飛車編(2022年4・5月合併号)

 

注意事項

 

・調査対象の将棋は、先月のプロの公式戦から(男性棋戦のみ)。棋譜はネット上や棋譜中継アプリにて公開されているものから収集。全ての公式戦の棋譜を見ているわけではありません。ご了承ください。

 

・記事の内容は、プロの公式戦の棋譜を参考にしておりますが、それを元にして筆者独自の研究内容も含まれております。記事内容の全てが棋譜の引用という訳ではありません。

 

・記事中に記載している出現率は、小数点第二位を四捨五入した数字になります。

 

・戦法や局面に対する評価や判断は、筆者の独断と偏見が多分に混じっております。当記事の内容を参考にして頂けるのは執筆者としては光栄ですが、妄信し過ぎないことを推奨致します。

※お詫び

今回、記事制作中にパソコンが壊れてしまい、普段とは異なる環境で記事制作を行っております。それに伴い、図面がいつもとは違う形になっております。ご理解頂けますと幸いです。

最新戦法の事情 居飛車編
(2022.5/1~6/30)

 

調査対象局は142局。それでは、戦型ごとに見て行きましょう。

 

角換わり

腰掛け銀は△9三歩型に注目


33局出現。出現率は23.2%。少ない訳ではありませんが、前回の期間からは約6%ほど減少しています。今回は相掛かりが増加していたので、その影響を受けたのかもしれません。

現環境の角換わりは、何か一つの形が集中的に指されているのではなく、様々な作戦が幅広く指されています。中でも、今回は△9三歩型の腰掛け銀の将棋が活発だったので、それをテーマに解説を進めたいと思います。

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△9三歩型は、端の位を取らせる代わりに△5四銀や△4四歩を優先できることが利点です。こうすれば陣形整備が相手よりも早く進むので、先攻を狙いやすくなることが、この作戦の特色になります。

これに対して、先手が▲4八金型で対抗すると、この図になることが予想されます。プロ棋界でも多くの前例がある局面ですね。

腰掛け銀 93歩型

さて、ここで先手には複数の方針があります。以前は、▲5六銀△3一玉▲3八金と進めるのが有力視されていた時期がありました。

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自ら金を玉と反対方向へ動かしているので、傍目には奇異な手に感じますね。ただ、これは△2二玉を待ってから▲4五歩で仕掛けたいという意図があります。先手は仕掛けるのであれば、敵玉を入城させた方が都合がよいのです。

腰掛け銀 93歩型

ただ、この指し方は中央が手薄になるので、△6五桂で仕掛けられる手を誘発していることが課題ではあります。これはこれで難解なのですが、現環境では後手が十分に戦えます。詳しい理由につきましては、以下の記事をご参照くださいませ。

最新戦法の事情・居飛車編(2021年11・12月合併号)

 

腰掛け銀 93歩型

そういった背景があるので、現環境の先手は違う指し方を模索しています。策の一つに、ここから▲7九玉△3一玉▲8八玉でさっさと矢倉の中に玉を入城させる指し方がありますね。

腰掛け銀 93歩型

先手はご覧の通り、9筋に位を取っています。つまり、普段よりも囲いの広さが違いますね。なので、この指し方は▲9五歩型の恩恵を最も直接的に活かしに行く構想だと言えるでしょう。

ここで後手は△2二玉で待機する手もありますが、玉を上がると▲5六銀→▲4五歩の仕掛けを誘発するので一長一短と言えます。ゆえに、ここは△6五桂と跳ねる方がアグレッシブで面白いですね。

腰掛け銀 93歩型

先手は銀を下に移動すると、△7五歩から襲い掛かられて危険です。よって、ここは▲6六銀が必然ですね。以下、△8六歩▲同歩△同飛▲8七金△8一飛▲8六歩が進行の一例になります。

腰掛け銀 93歩型

ここから後手は△2二玉と上がり、その後は△8五歩▲同歩△同飛▲8六歩△8一飛という要領でパスをします。後手はもう駒組みが飽和しており、かつ敵陣を攻める糸口が見当たらないので、待機策を採るのが最適解なのです。

腰掛け銀 93歩型

なので、この局面は先手がいかにして打開するかが焦点となります。ただ、▲5六銀と上がっても△4一飛でガードされてしまいますし、他の方法もなかなか仕掛けに踏み切れません。現環境では、いい手段が見つかっていないのが実情ですね。

 

腰掛け銀 93歩型

それでは、話をまとめます。角換わりには色々な形がありますが、現環境の後手は△9三歩型の腰掛け銀が有力視されています。後手番ながら攻勢に出やすいですし、場合によっては千日手辞さずの姿勢を取れることも強みですね。

先手は▲4八金型で戦えば悪くなることはありませんが、リードを奪うことも簡単ではありません。現環境は、先手の方が苦労している印象ですね。

 

矢倉

中原囲いで対抗する


19局出現。このうち、相矢倉になった将棋は僅か1局のみで、あとは片方が急戦に出たり、後手が雁木を選ぶラインアップとなっています。もはや「相矢倉」という戦型は、現代将棋において化石のような存在になっていますね。

現環境の矢倉は、相変わらず令和急戦矢倉が流行しています。この戦法に先手がどう立ち向かうのかは、令和に入ってからの一大テーマですね。

令和急戦矢倉

先手には様々な対抗策があるのですが、今回の期間では▲7九角→▲5六歩を優先し、▲4六角型を作る指し方で面白い構想を披露した将棋が現れました。それを掘り下げてみたいと思います。

▲4六角型に構える指し方は、主流ではないものの以前からチラホラ指されている手法です。歩交換しながら角を好位置に据えるので、かなり欲張った構想ですね。

ただ、この駒組みは

(1)角が目標にされやすい
(2)中央から動かれやすい

という二つの懸念事項があり、それをケアできるかどうかが序盤の勝負所と言えます。

矢倉 急戦 対策

後手としては、上記の問題点を突くべく、中央から攻める準備を進めたいですね。なので、△5二飛と回るのは妥当と言えます。

対して、先手は▲5九金で中原囲いを作ります。これが面白い着想ですね。

令和急戦矢倉 対策

先手は角の移動に手数を費やしているので、矢倉を作ろうとしても、もはや間に合いません。なので、早い戦いに適した囲いを作る必要があるのです。その具体案が中原囲いという訳ですね。

令和急戦矢倉 対策

後手は敵陣を攻める準備を進めるべく、△6二金▲3七桂△5三銀と指すのが自然です。対して、先手は▲3五歩△同歩▲2六飛と応戦しましょう。前もって3筋の歩を突き捨てておくのが大事なところですね。

矢倉 急戦 対策

この段階で歩を突き捨てるのはフライングのようですが、先手は3四の地点にキズを作ったことを評価しています。

こうしておけば、将来▲3四桂と打つ攻め筋が生じますね。それはつまり、△6五桂と跳んでくる攻め筋を間接的に牽制していることを意味するのです。

矢倉 急戦 対策

この局面は互角の範疇ではありますが、後手は常に3四の傷を庇いながら戦う必要があるので、実戦的には先手の方が勝ちやすい将棋ではないかと考えます。囲いの堅さで上回っていることも、先手のセールスポイントだと言えるでしょう。

 

矢倉 急戦 対策

このように、令和急戦矢倉には▲4六角型を優先して対抗するのが一策です。そして、中原囲いに構えるのが臨機応変な指し方になります。

なお、この構想は4八の銀が前に出にくいので、この銀を使わない方法で攻撃力を増強する工夫が鍵になりますそのことに留意すれば、先手は大いに戦えることでしょう。

 

相掛かり

持久戦志向の指し方の支持が高い


45局出現。出現率は30%を超えており、今回の期間で最も多く指された戦型となりました。

現環境の相掛かりは、▲9六歩優先型に後手がどう対処するかが一大テーマです。現環境では対策が分散しているのですが、このところ△3四歩を優先する駒組みの支持が高まっている傾向を感じますね。今回の期間では、13局指されていました。

相掛かり 後手 定跡

先手は次に△3三角を指されると、歩交換が出来なくなってしまいます。したがって、ここで▲2四歩△同歩▲同飛と行くのは必然です。

後手も横歩取りを受けるため、△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8四飛と進めます。すると、以下の図になることが予想されますね。

相掛かり 後手 定跡

この局面は、▲9六歩優先型に対して△3四歩を突いたときに現れる最もオーソドックスな形です。先手としては、早い△4二玉を咎めることが出来れば、理想的だと言えるでしょう。

案としては、▲3六歩→▲3七銀から早繰り銀に構える指し方が挙げられます。後手玉が2・3筋に近いので、銀を繰り出し、右辺からの攻めを狙おうという訳です。

その場合、以下の局面になることが予想されます。

相掛かり 後手 定跡

基本的に、この形の後手は、角換わり腰掛け銀の要領で[△6二金・△6三銀・△8一飛型]に組むことを念頭に置いています。また、角を交換して△2二銀を上がっておけば、早繰り銀の攻めの備えになりますね。

なお、ここに至るまでの詳しい解説につきましては、以下の記事をご覧くださると幸いです。

【▲9六歩優先型 VS △3四歩の基礎知識】

詳細は、こちら!

相掛かり 後手 定跡

さて、上図は互いに駒組みが整ってきましたが、後手は2二の壁銀が気になる存在です。これを立て直すなら△3三銀と上がることになるのですが、そうすると▲3五歩と突かれたときに当たりが強くなる弊害もあります。

ゆえに、この局面の後手はジレンマを抱えているのですが、それを解決する構想が登場したのです。

相掛かり 後手 定跡

手始めに△4四歩と突きます。先手は▲7七銀で自陣を整備するのが妥当ですが、△8一飛▲6六歩△4三金と組むのが斬新な構想ですね。

相掛かり 後手 定跡


相掛かりにおいて、ここに金を配置するのは稀有ですが、これが先述したジレンマを解決する駒組みです。これで玉型を整えるのが臨機応変な指し方になります。

相掛かり 後手 定跡

このあと後手は、△3二玉→△5四歩→△5二金という要領で土居矢倉に組み替えるのが一案です。そこまで進めば、後手陣は大いに安定した構えになりますね。

他には△5四銀と上がり、△6五歩から攻める姿勢を見せるのも魅力的な指し方と言えます。

相掛かり 後手 定跡

この△4三金は奇妙な指し方に見えるのですが、壁銀のまま自陣を発展させる効力があるので、非常に有力な駒組みと言えます。先手は▲3五歩△同歩▲同銀と動いても△3六歩で反撃されてしまうので、上手く攻めることが出来ません。しかし、そうなると何のために早繰り銀に構えたのか、という話になってきます。この局面は互角の範疇だと思いますが、早繰り銀が使いにくいので先手は不満が残る進行かもしれません。

 

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早繰り銀が怖くないのであれば、△3四歩から△4二玉を優先する駒組みは、大いに有力と言えます。支持が上がっているのも頷けるものがありますね。

加えて、この指し方は持久戦になりやすく、先後の差が抽象化されやすいことも特徴です。先手が悪くなることはないですが、明確なリードを奪うことは容易ではないと言えるでしょう。

 

雁木

飛車先を伸ばす手を保留する


18局出現。前回の期間では出現率は7.1%でしたが、今回は12.7%とずいぶん上がっています。

雁木は後手番で多用される作戦であり、特に2手目△3四歩経由で組む指し方が人気です。ただ、これは▲7八玉型の急戦策に苦慮しているところがありました。

雁木 攻略 急戦

この仕掛けを食らってしまうと、雁木は立ちどころに形勢が悪くなってしまいます。詳細は、以下の記事をご覧頂けますと幸いです。

最新戦法の事情・居飛車編(2021年11・12月合併号)

最新戦法の事情・居飛車編(2022年2・3月合併号 豪華版)

 

雁木 攻略 急戦

という訳で、現環境の後手雁木は、この局面を回避しつつ、先手の急戦策に対応できる駒組みを模索しています。

 

雁木

筆者が注目しているのは、図のように△8五歩と伸ばす手を保留して駒組みを進める指し方です。これは歩を伸ばす手を他の手に分配することで、急戦を迎え撃つ条件をよくしている狙いがあります。

なお、具体的にどうやって急戦策に対抗するのかについては、以下の記事をご参照くださいませ。

【急戦策を受ける雁木の新たな工夫】

詳細は、こちら!

雁木 早繰り銀 受け方

また、この組み方は△8五歩と伸ばせば通常型に戻るので、応用力が高いことも自慢です。つまり、ここで▲7八銀や▲3八飛と指していたら、例の形にはならないので△8五歩が突きやすくなりますね。

雁木は▲7八玉型の急戦策に手を焼いていましたが、この組み方で対抗できるなら、話が変わってきます。現環境は、雁木側に良い風が吹いている印象ですね。

 

その他の戦型

特に大きな動きはない


27局出現。内訳は、以下の通りです。

横歩取り    12局
一手損角換わり 6局
ウソ矢倉    2局
力戦系     7局

こうして列挙してみると、雁木以外を除いた2手目△3四歩系統の戦法は、横歩取りの指示が高いことが窺えます。横歩取りは評価値が悪く出やすい戦型なので現代では敬遠され気味ではありますが、後手番で主導権を取りに行くなら、確かにこれが一番ではあります。そういった要素が、支持を得ている要因かもしれません。

作戦面に関しては、特に目新しいものは見られなかった印象でした。


お知らせ

序盤の知識をもっと高めたい! 常に作戦勝ちを狙って戦いたい! という方は、以下の記事をご覧ください。

 

最新の戦術には興味があるけど、どう指して良いのか分からない。どうしてプロがこういった指し方をするのかを知りたい。そういったお気持ちがある方には、うってつけのコンテンツとなっております。

 

有料(300円)ではありますが、内容量としてはこの記事の約3倍です。よろしければご覧ください!

 

今回のまとめと展望

 

【矢倉がダークホース?】

 

現環境は、角換わりと相掛かりの採用数が多いですが、これらは後手の工夫が目立っており、先手はなかなかリードを奪えなくなっています。

逆に、矢倉は面白いように感じますね。令和急戦矢倉は強敵ですが、きちんと策を練れば、先手も十分に戦えます。現環境では角換わりと相掛かりの陰に隠れている感はありますが、今後増加していることは大いに考えられます。特に、相掛かりが息詰まると、その傾向は加速するでしょう。

 

【堅さを求める時代に戻りつつある?】

 

現環境では、堅さを重視する作戦が評価されている印象を受けます。これは先後に関係なく、そして幅広い戦型でその傾向が見られますね。

矢倉 急戦対策 最新

例えば、令和急戦矢倉対策の中原囲いは、それを象徴している作戦です。この戦型において、先手が金銀四枚の囲いで戦うことは、従来では見られない指し方でした。

居飛車 最新

他には、角換わり腰掛け銀の△9三歩型や、後手雁木もその色合いが濃い作戦です。近年では「広さ」「先攻は正義」といった価値観が重視され、「堅さ」の評価が下がっていたところがあったのですが、これらの作戦が有力であることは先述した通りですね。

相掛かり 後手 対策

また、相掛かりの後手の△3四歩優先型も、基本的には持久戦を目指し、玉をしっかり囲うことを念頭に置いています。これも「先攻は正義」という価値観とは一線を画すものと言えるでしょう。

現代将棋は即効性理論の影響により、先攻することを重視する作戦が多いことは確かです。しかし、昨今では駒組みの手順が洗練されており、簡単には速攻が刺さらなくなってきた感があります。素早い攻めが上手くいかないとなると、必然的に玉を固める指し方の評価が上がりますね。今後は、じっくりした将棋が増えるように感じています。

 

それでは、また。ご愛読くださり、ありがとうございました!

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