最新戦法の事情【11・12月合併号・振り飛車編】を公開しました。詳細は、ここをタップ!

最新戦法の事情・居飛車編(2021年11・12月合併号)

最新戦法 あらきっぺ

どうも、あらきっぺです。以前の記事にて今年は雪が降らないなぁと記していたのですが、この一週間でドカドカ降るようになりました笑 初詣は雪道を歩くことになりそうです。

 

タイトルに記載している通り、相居飛車の将棋から最新戦法の事情を分析したいと思います。

前回の内容は、こちらからどうぞ。

あらきっぺ 居飛車最新戦法の事情・居飛車編(2021年10月号)

 

注意事項

 

・調査対象の将棋は、先月のプロの公式戦から(男性棋戦のみ)。棋譜はネット上や棋譜中継アプリにて公開されているものから収集。全ての公式戦の棋譜を見ているわけではありません。ご了承ください。

 

・記事の内容は、プロの公式戦の棋譜を参考にしておりますが、それを元にして筆者独自の研究内容も含まれております。記事内容の全てが棋譜の引用という訳ではありません。

 

・記事中に記載している出現率は、小数点第二位を四捨五入した数字になります。

 

・戦法や局面に対する評価や判断は、筆者の独断と偏見が多分に混じっております。当記事の内容を参考にして頂けるのは執筆者としては光栄ですが、妄信し過ぎないことを推奨致します。

 

最新戦法の事情 居飛車編
(2021.10/1~11/30)

 

調査対象局は182局。それでは、戦型ごとに見て行きましょう。

 

角換わり

先手は苦労している?


39局出現。先手は腰掛け銀や桂ポンを志向するケースが多く、早繰り銀は少数派。この傾向は、半年ほどずっと変わらないですね。

現環境の角換わり腰掛け銀は、先手がスライド形に誘導したいという思惑に沿って駒組みを展開します。なお、スライド形とは以下の局面のことを意味します。

角換わり 最新

これはこれで一局の将棋ではありますが、先手は打開に苦しむことなく仕掛けが実行でき、かつ確実に互角以上の局面を作れるので不満がありません。詳しい解説は、以下の記事をご覧くださいませ。

【スライド形が先手満足の理由】
最新戦法の事情 (2021年9月・居飛車編)

よって、現環境の後手はそれを避ける駒組みを選びます。一案として、△9三歩型の将棋が挙げられますね。(第1図)

角換わり △93歩型

後手は9筋の位を取られていますが、その代償に陣形整備が早く整うことが主張です。そうすることで先攻を狙うことがこの作戦の目的になります。

角換わり △93歩型

さて、ここで先手は▲5六銀△3一玉▲3八金と進めるのが最有力と見られています。なぜ、これが良いのかという理由については、以下の記事をご参照くださると幸いです。

【先手が▲3八金と寄る理由】

詳細は、こちら!

 

角換わり 93歩型

ここで後手には複数の選択肢がありますが、最もアグレッシブなのは△6五桂ですね。仕掛けに踏み切るこの手は、「先攻を目指す」というこの作戦の趣旨に沿っています。

△6五桂には、▲6六銀△8六歩▲同歩△同飛▲9七角△8一飛▲6四角△6三金▲8二歩と進むのが定跡化された手順。ここで後手がどこへ飛車を逃がすかですね。(第2図)

角換わり △93歩型

従来は、△7一飛と逃げるのが自然と考えられていました。後手は将来、7筋の歩を突き捨てる可能性が高く、そのとき飛車の応援がある方が攻めに迫力が出ます。ゆえに△7一飛が自然と見られていた訳ですね。

角換わり △93歩型

しかし、現環境では△4一飛と回る手も注目されています。(第3図)

なお、この進行の実例としては、第80期順位戦B級1組7回戦 ▲郷田真隆九段VS△藤井聡太三冠戦(2021.10.19)が挙げられます。(棋譜はこちら

角換わり △93歩型

△4一飛は自ら玉飛接近になるのでリスキーな意味もあるのですが、▲4五歩と突く手を牽制していることが利点です。相手の攻め筋を封じることで、自分が攻めに専念できる状況へ持ち込むことがこの手の狙いですね。

角換わり △93歩型

ひとまず▲8六角△6四歩までは必然ですが、そこで先手は何を指すのかが悩ましい。▲4五歩が指せないので直ちに後手陣を攻めることは望めませんし、8六の角の活用も目処が立ってない状況です。先手としては、少し不満の残る進行でしょうか。

角換わり 93歩型

それを踏まえると、先手はここで最有力と見られていた▲3八金すら面白くないという話になってきます。現環境では△9三歩型を明確に咎めるプランが確立されておらず、先手は少し苦労している印象を受けますね。

 



矢倉

▲4六角と出る余地を残す


33局出現。出現率は18.1%。トップメタではありませんが、コンスタントに指されている戦型ですね。

相変わらず後手は、[△6三銀・△7三桂型]を優先的に作る指し方に人気が集まっています。(11局出現)この作戦は柔軟性が高く、相手の態度によって急戦と持久戦を使い分けられることがメリットですね。(基本図)

△6三銀・△7三桂急戦

特に、最近では早めに△3三銀を上がり、かつ6筋の位を取ってしまう指し方が有力視されています。今回は、その形の将棋をテーマにしたいと思います。(第4図)

△6三銀・△7三桂急戦

なお、この指し方がホットになっているのは、当然ながら理由があります。その詳細につきましては、以下の記事をご覧頂けますと幸いです。

【△6五歩位取り型が有力視される理由】

詳細は、こちら!

 

△6三銀・△7三桂急戦

さて、ここから先手はどう戦うかですが、持久戦を選ぶのは得策ではありません。なぜなら、先手は位を取られているので囲いの進展性が乏しくなっているからです。ゆえに、先手の取るべき指針は「急戦」ということになります。

△6三銀・△7三桂急戦

そうなると、▲3五歩△同歩▲4六銀から銀を繰り出すのが候補…ではあるのですが、その仕掛け方だと△3一角▲3五銀△6四角と迎撃されたときが面倒ではあります。これは角の睨みが強烈で、攻めが思うように進まないですね。

△6三銀・△7三桂急戦

よって、現環境ではここから▲3五歩△同歩▲2六銀と棒銀で攻める方が良いと見られています。(第5図)

なお、この局面の実例としては、第63期王位戦予選 ▲高見泰地七段VS△片上大輔七段戦(2021.10.2)が挙げられます。

△6三銀・△7三桂急戦

今度は△3一角と引かれても、▲4六角△6二金▲3五銀と進めておけばノープロブレム。銀を2六へ出ることで▲4六角の余地を作り、△6四角の牽制を封じていることが分かります。これが棒銀を選んだ理由ですね。

△6三銀・△7三桂急戦

銀がスムーズに前進できるなら、先手は仕掛けた甲斐があったものです。簡単ではありませんが、この局面は先手満足と言えるでしょう。

 

こういった背景があるので、後手はおいそれと△6五歩を指すとマイナスになりかねないことが分かりました。そこで、△6五歩のタイミングを遅らせる工夫も出ています。後手としては、そちらの方が有力ですね。

続きは豪華版で解説しておりますので、ご興味のある方はご覧くださると幸いです。

【△6五歩位取り型を保留する工夫】

続きは、こちら!

 

相掛かり

▲9六歩優先型が主戦場


56局出現。出現率は30%を越えており、今回の期間では最も指された戦型でした。

また、このうちの40局が▲9六歩を優先的に突く作戦を選んでいますね。現環境では、これが最もホットな戦型です。(基本図)

相掛かり 96歩

この▲9六歩は、相手の態度を見て今後の方針を決める意図があります。平たく言えば「後出しジャンケン」ですね。非常に柔軟性の高い作戦であり、後手にとってかなりの強敵と言えます。

相掛かり 96歩

ここで後手はどう指すかですが、ポピュラーなのは、

(1)△1四歩
(2)△9四歩
(3)△5二玉

この三つです。

このうち、(1)△1四歩(2)△9四歩につきましては、以下の記事をご覧くださいませ。

【▲9六歩優先型 VS △1四歩や△9四歩の解説】

詳細は、こちら!

 

今回は、(3)△5二玉の変化を掘り下げたいと思います。(第6図)

相掛かり 96歩

相掛かりにおいて、中住まいに構えるのは定番の指し方です。ただし、△5二玉を早く決める弊害としては、腰掛け銀の将棋が選びにくくなることが挙げられますね。

例えば、相腰掛け銀の将棋になった場合、△4二玉型(先手なら▲6八玉型)に構える方が一般的でしょう。それは、角換わりの将棋からも読み取れることだと思います。

相掛かり 96歩

それを踏まえると、先手は腰掛け銀に組むのが△5二玉を逆用していると考えられます。ゆえに、ここは▲4六歩→▲4七銀を優先するのが良いですね。すると、以下の局面になることが予想されます。(第7図)

相掛かり 96歩

ここからの互いの方針について述べます。

まず、後手は[△6三銀・△6二金・△8一飛型]を目指すのが一つの理想ですね。その配置を作れれば左辺が綺麗に整いますし、△5二玉型との相性も悪くありません。

相掛かり 96歩

先手としては、それを作られる前に動くか、それ以上の好形を作りに行くかの二者択一です。前者のプランなら▲5六銀→▲4五銀。後者のプランなら雁木を目指すのが一案でしょうか。

相掛かり 96歩

この局面は一局の範疇ではありますが、先手の方が主導権を取りやすそうな状況ではあります。やはり、▲5六銀→▲4五銀という分かりやすい攻め筋を自分だけ有していることは嬉しいですね。第7図は、互角ながらも先手を持ってみたい印象です。

 

相掛かり 96歩

話をまとめると、現環境の相掛かりは▲9六歩優先型が主戦場。これに対して△5二玉と上がってきた場合は、腰掛け銀を志向するのが有力な姿勢になります。

相掛かり 96歩

この形は先手の方が選択肢が広いので構想力が問われますが、その分、楽しさも多い感はありますね。現環境は、先手が満足に戦える印象ですね。

 

雁木

強敵出現! 先手は急戦策が有力


25局出現。後手番で指されるケースが圧倒的に多いですね。2手目△3四歩系の将棋では、一番人気の作戦です。

ちなみに、出現率に関しては前回の期間から19.0%→13.7%と推移しており、大いに減少しています。雁木の採用数が落ち込んだ理由としては、急戦策で手強い指し方が登場したことが要因として挙げられます。今回は、それをテーマに解説を進めましょう。

雁木 対策 早繰り銀

雁木に対する急戦策は、大きく分けると早繰り銀系と腰掛け銀系の二つに分かれます。そして、現環境で強敵と認知されているのはこの早繰り銀系の作戦です。

雁木 対策 早繰り銀

ところで、この局面は従来から指されている形であり、特段目新しいものではありません。しかし、ここから▲3五歩△同歩▲2六銀△3四銀▲5六歩という動き方が斬新な手法。これが先手の新機軸ですね。(第8図)

なお、この局面の実例としては、第80期順位戦B級1組6回戦 ▲稲葉陽八段VS△屋敷伸之九段戦(2021.11.11)が挙げられます。(棋譜はこちら

雁木 対策 早繰り銀

この▲5六歩は、次に▲6八角→▲3五銀が狙いになります。3五の歩を飛ではなく、角で回収しに行くのが新しいアイデアですね。飛車を2筋に固定しておくほうが、先手は敵陣を攻めやすいメリットがあるのです。

雁木 対策 早繰り銀

また、先手は▲6八角と引いた後に▲7七銀から壁銀を立て直す含みが生まれることも見逃せないセールスポイントですね。この戦型の先手は、△7五歩▲同歩△7六歩のような攻め筋が気になるものですが、7七に銀を上がれれば、その不安を大いに解消することが出来ます。

つまりこの構想は、攻めの継続を図りつつ、囲いの進展性も作っている指し方なのですね。

雁木 対策 早繰り銀

雁木側としては、2・3筋方面の攻めに備えることと、攻めの形を作ることを両立しなければいけないので、考える要素がかなり増えています。この急戦への対策は必須であり、現環境の雁木は対応に問われているように感じますね。

 

その他の戦型

オレも横歩を取りたいんだ


29局出現。昨今のプロ棋界では2手目に△8四歩を選ぶプレイヤーが多数なので、2手目△3四歩系統の将棋は少ないですね。

かつて一世を風靡した横歩取りも、今回の期間では8局の出現に止まっています。これは青野流に対して旗色が悪いと見られていることが最たる要因です。

けれども、だからと言って完全に廃れた訳ではありません。むしろ、ここ最近は後手のチャレンジングな姿勢が目立ちます。今回は、青野流に対する新機軸を紹介しましょう。(第9図)

青野流 対策

青野流に対する作戦は数多くありますが、昨今では△4二銀を優先する指し方に支持が集まっています。これは、▲3七桂→▲4五桂という攻め筋への耐性が強いことに魅力を感じるからでしょう。

青野流 対策

そして、ご覧のように後手は陣形整備を後回しにして横歩を取っています。この△7六飛という手が今までには見られなかった指し方ですね。なお、この局面の実例としては、以下の対局が挙げられます。

・第15回朝日杯将棋オープン戦一次予選 ▲増田康宏六段VS△阿久津主税八段戦。(2021.10.5)

 

・第80期順位戦B級2組6回戦 ▲畠山鎮八段VS△大石直嗣七段戦。(2021.10.27)(棋譜はこちら

青野流 対策

何はともあれ、先手は次の△8八角成を備えなければいけません。最も無難な手は▲7七角でしょう。横歩取りでは常用の受け方ですね。

これに対して、後手は△7五飛と引いておきます。先手は▲3七桂が自然ですが、そこで△4四歩が期待の一手。これが飛車を引いた手を活かした着想になります。(第10図)

青野流 対策

次に後手は△4三銀が狙いです。以下、▲3五飛△同飛▲同歩△3六歩で先手の桂を攻めることが青写真ですね。それが実現すれば後手は万々歳と言えるでしょう。

この局面は、青野流のトレードマークである「右桂の活用」を逆手に取っている感があります。後手の工夫が功を奏した印象を受けますね。

青野流 対策

このように、△4二銀型から△7六飛と横歩を取るプランは、なかなか手強いことが分かります。後手は

・相手の飛車をターゲットにする
・▲3七桂を指しにくい展開にする

この二点を心掛けることが鍵ですね。

青野流 対策

この作戦は実戦例が少なく、まだまだ未開拓の領域です。青野流に対する迎撃策として確立されるかどうか、今後に注目です。

 


お知らせ

序盤の知識をもっと高めたい! 常に作戦勝ちを狙って戦いたい! という方は、以下の記事をご覧ください。

 

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今回のまとめと展望

 

【時代は相掛かり】

先手は2手目△8四歩に対しては、相掛かりが最強です。他の戦型(角変わり・矢倉・雁木)よりもアドバンテージが取りやすく、先手の利を活かしやすい印象を受けますね。最も多く指されている戦型であることが頷けます。

また、筆者は今後の相居飛車では横歩取りに注目しています。これは、相掛かりで先手有利が確立されると、必然的に後手は2手目△3四歩に流れることになり、そのとき最も主導権を握りやすい作戦が横歩取りだからです。

現環境では青野流に押され気味であることと、まだ相掛かりで具体的に先手良しの定跡が完成していないので当分、先の話という感はありますが、その時が来たときに後手がどういった戦型選択を採るのかは、強い関心がありますね。

 

急戦と持久戦の両方を使いこなす

現代将棋の特徴の一つは速攻です。ゆえに、急戦志向の作戦が好まれる傾向があります。ただし、現環境では「急戦を志向しつつ、持久戦の含みも作る」という駒組みが支持を得ている風潮を感じますね。

△6三銀・△7三桂急戦

例えば、矢倉に対して△6五歩と位を取る指し方は、まさにそれを体現していると言えます。

この作戦は、元々は△6五桂と跳ねる攻め筋を軸にした急戦策です。けれども、先手に[▲6七歩・▲6八角型]という配置を作られると、桂を跳ぶ攻めがヒットしにくくなります。急戦の条件が悪くなれば、さっと持久戦モードに切り替えるところがクレバーですね。

また、雁木に対する急戦策も、その一端が垣間見えます。

雁木 対策 早繰り銀

これも基本的には銀を捌いて良さを求める作戦ですが、仕掛けた後に▲5六歩を指していることから、直線一気に敵陣を潰しに行くプランではないことが読み取れます。

雁木 対策 早繰り銀

もちろん先手は攻め潰すことも視野に入れていますが、▲6八角→▲7七銀の含みを作ることで、組み合い勝ちのプランも見せていますこうしてリードを奪う方法を増やす方が、相手は対応に困るだろうと主張している訳ですね。こういった柔軟性の高い戦術は、令和将棋の特徴とも言えます。

 

毎度毎度、速攻を決めて勝てれば気持ちが良いものですが、攻め潰して勝ちに行くプランは最も警戒されるので、簡単にはいきません。ところが、一転して駒組み合戦に持ち込むプランも用意しておくと、相手はかなり対処が難しくなりますね。これからは、そういった戦術をいかに考えるかがキーになっていくのかも知れません。

 

それでは、また。ご愛読いただき、ありがとうございました。よいお年を!

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