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今週の妙手! ベスト3(2020年2月第1週)

妙手 ベスト

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、先週の内容は、こちらからどうぞ。
今週の妙手今週の妙手! ベスト3(2020年1月第4週)

 

注意事項

 

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

 

今週の妙手! ベスト3
(2020.1/26~2/1)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。横歩取りから互いにヒネリ飛車のように飛車を左辺に転戦して、このような局面になりました。(第1図)

 

妙手 ベスト

2020.1.29 第78期順位戦A級8回戦 ▲広瀬章人八段VS△佐藤天彦九段戦から抜粋。

後手が△3五飛と飛車取りをかわしたところです。

この局面は先手だけ竜を作っており、かつ角銀の働きでも上回っているので先手が優勢ではあります。ただ、後手も△3七歩成や△1九角成といった複数の狙いを持っているので、楽しみは残っていますね。

 

ところが、次の一手で広瀬八段は後手をマットに沈めてしまうのです。これは強烈な一撃でした。

広瀬八段が指した手は、▲6五桂です!

 

妙手 ベスト

桂を打って、玉頭に狙いを定めたのが妙手でした!

 


妙手 ベスト

一見、ぼやっとしているようですが、これが後手の臓腑を抉る一着でした。

基本的に、相手に有力な狙いがある場合は、

(A)それを防ぐための手を指す
(B)それ以上の攻めを繰り出す

というどちらかの選択を行うことになります。この場合は、後手に△3七歩成と△1九角成という二つの狙いが同時に防げないので、(B)の方針を選んだという理屈なのですね。

 

妙手 ベスト

とはいえ、よくよく見ると、この手を指したことで後手には△4五飛と銀を取る手が発生しています。ですが、それには▲5三桂成で飛車を素抜くことが出来ますね。つまり、あの銀には実質的に紐が付いているのです。(A図)

 

なので、後手も(A)の受けか(B)の攻め合いのどちらかを選ぶことになります。

妙手 ベスト

ただ、受けると言っても▲7三歩成を防ぐのは、そう簡単ではないですね。なので、△3七歩成と攻めるのが一案ですが、それにも▲5三桂成とダイブする手が成立するのです。(第2図)

 

妙手 ベスト

△5三同玉には▲5四銀という突撃があります。また、△4一玉には▲3四桂で寄せの網を絞っていけば問題ないでしょう。先手玉は△3八とで金を取られても、まだまだ余裕のある格好ですから。

 

妙手 ベスト

話をまとめると、後手は▲6五桂と打たれた時点で、既に適切な応手が無い状況に追い込まれているのです。それゆえ、佐藤九段はここで潔く駒を投じました。

 

▲6五桂は単調な攻め方に見えますが、横歩取り系統の将棋では、シンプルに玉頭を狙う手が最短の攻めになるケースが多々あります。この▲6五桂も、その例に漏れない一着でしたね。

 

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、こちらの将棋です。先手が急戦矢倉を採用し、巧みに攻めを繋げて以下の局面を迎えました。(第3図)

 

妙手 ベスト

2020.1.29 第78期順位戦A級8回戦 ▲羽生善治九段VS△木村一基王位戦から抜粋。

先手は大駒を全て失っていますが、多くの小駒が敵玉に迫っているので寄せがありそうな局面です。まさに仕留め頃といった状況ですね。

 

羽生九段は、このチャンスをしっかりとモノにします。これは綺麗な着地でした。

羽生九段が指した手は、▲5二歩です!

 

妙手 ベスト

じっと飛車の横利きを遮ったのが妙手でした!

 


5筋に歩を使うと、▲5九歩という底歩が消えるので勇気がいるところですが、これが最短の勝ちを目指すスマートな一着でした。

ちなみに、この手に代えて▲3三銀成も指してみたくもなりますが、それは△同銀▲同と△4一玉で逃走されるので捕まりません。先手は5一の地点に後手玉を逃がさないことが急所なのです。

 

後手は△4三銀でと金を取ることは出来ますが、▲3三銀成が詰めろ銀取りなので、結局振りほどけません。5二の歩が良い障害物となっていることが分かりますね。(B図)

 

本譜は△2九飛で合駒請求に訴えましたが、▲4九歩が「大駒は近づけて受けよ」という格言通りの一手。これで先手の勝ちが決まりました。(第4図)

 

△同飛成には▲5九金と弾けます。持ち駒の金を温存できるので、後手玉への詰めろを継続していることが先手の自慢ですね。

かと言って、後手は△4九飛成が指せないとなると、有効な攻めがありません。後手は攻防ともに見込みが無いので、ここで終局となりました。

 

敵玉を寄せるときは、つい金銀を攻める手に意識が向いてしまうものですが、大駒の利きを遮断して守備力を削ぐことも、それに匹敵するくらい大事なことです。▲5二歩のような手は応用力が高いので、参考にしたい手ですね。

 




第1位

 

最後に紹介するのはこちらの将棋です。これも基本的な手筋の一つですが、使うタイミングに技術の高さを感じたので、一位に推しました。(第5図)

 

2020.1.27 第5期叡王戦本戦 ▲佐々木大地五段VS△豊島将之竜王・名人戦から抜粋。(便宜上先後逆で表示)(棋譜はこちら)

先手が▲3六桂と打ち、金を攻めたところです。

この局面は先手のほうが玉型がしっかりしているように映りますし、金取りの処置も考えないといけないので、後手難局を思わせます。△2三金と引いても、▲2四歩△1三金▲1五歩が面倒ですね。

 

ところが、次の一手により、後手はそういった問題を全てクリアしてしまったのです。

豊島竜王・名人が指した手は、△8六歩です!

 

金取りを放置して垂れ歩を設置したのが妙手でした!

 


これが難局を打破する妙手でした。金取りを無視するので意表を突かれますが、あえて受けないのが最適な対応なのです。

なお、後手は受けに回るなら△3五金と上がってしまう手もあったのですが、▲同銀△同歩▲2三金でスッキリしないところがあります。これは感覚的には2六の銀が2三までワープしたような理屈なので、後手は歓迎すべき展開ではありません。(C図)

 

なので、後手は受けを諦めて、さっさと攻め合ってしまうほうがクレバーのです。第3位の項で解説した、(B)のロジックと同様ですね。

 

先手は▲3六桂と打った以上、▲2四桂を指さないと辻褄が合いませんが、△8五飛が後手期待の反撃。この手の威力が高いので、金を取らせる指し方が成り立っているのです。(途中図)

 

先手は△8七歩成をまともに食らうと話になりません。ですが、▲7七金寄では△6六桂が痛打なので、あまり解決にはなっていないですね。(D図)

本譜は▲9五金△8二飛▲8四歩と、力業で飛車の利きを遮断しましたが、やはり△6六桂が急所の攻め。ここに楔が入ったことで、先手は多大なダメージを負いました。(第6図)

 

先手にとって7八の金は、囲いの要なので渡すわけにはいきません。同時に、先手は駒得が唯一無二の主張なので、▲6六同金とも指しにくい状況です。しかしながら、▲7七金上では角が粗大ゴミのような駒になってしまいますね。要するに、先手は不本意な手を指すしかなくなっているのです。

 

結局、本譜は▲6六同金△同歩▲同角という進行を選んだのですが、後手は△6五歩から一方的に殴り続けて先手を圧倒してしまいました。先手は金を取ったものの、そこから先の攻めが無かったことが痛恨でしたね。

 

こうして振り返ってみると、後手は強制的に攻め合いの変化に誘導することで、2六の銀を遊ばせてしまったことが分かります。その結果、先手は激流に耐え切れなくなり、あっという間に飲み込まれてしまいました。

△8六歩からの一連の手順は、「攻撃は最大の防御」という金言を体現した組み立てでしたね。手筋の威力の高さを、改めて思い知らされた次第です。

 

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

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