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今週の妙手! ベスト3(2021年5月第5週)

妙手 AI

どうも、あらきっぺです。

当記事は、直近一週間の間に指された将棋の中から、思わず唸らされる妙手を紹介するコーナーです。それでは、さっそく見ていきましょう。

なお、前回の内容は、以下の記事をどうぞ。
妙手 AI今週の妙手! ベスト3(2021年5月第4週)

注意事項

・直近一週間に行われた対局の中からセレクトしています。ただし、全ての対局の棋譜に目を通している訳ではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場するプレイヤーの肩書は、全て対局当時のものです。また、プレイヤーの名称が長い場合は、適宜省略・変更させて頂きます。ご理解頂けると幸いです。

 

・妙手の基準及び選考の基準は、あくまで筆者の独断と偏見に過ぎません。また、ここで取り上げなかった手を評価していないという訳でもありません。それらを踏まえた上で、記事をお楽しみくださいませ。

今週の妙手! ベスト3
(2021.5/23~5/29)

 

第3位

 

初めに紹介するのは、こちらの将棋です。本局は序盤から大駒が乱舞する華々しい展開になり、以下の局面を迎えました。(第1図)

妙手 AI

2021.5.29 ▲xgs VS △QueenAI2105210251_i9-7920x(棋譜はこちら

先手は敵陣に竜を侵入していますが、現状は動きを封じられていますね。何とかして後手のバリケードを突破する必要があります。

そうなると▲8五香のような手が見えますが、そんな凡庸な手は選びませんでした。

xgsが指した手は、▲6三香です!

妙手 AI

香を犠牲にしてクリップを壊したのが妙手でした!


 

 

妙手 AI

これがスピード感あふれる一撃です。先手は6二の銀を動かしてしまうのがスマートな攻め方なのですね。

妙手 AI

ちなみに、▲8五香は△8四歩▲同香△9四角という切り返しがあるので容易ではありません。

そもそも、▲8五香は▲8一香成→▲7一成香と進んでもまだ竜が使いにくい状態が残るので、実は攻め足が遅いというデメリットがあります。外堀を真正面から削って行くのではスピードが足りないのですね。

ゆえに、先手は▲6三香という攻め方を選んだのです。

妙手 AI

さて、これは△同銀と取るくらいですが、そこで▲3五角が期待の一着です。これは表向きには金取りですが、真の狙いは別のところにあります。(途中図)

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ところで、先手はこの手に代えて▲7三歩成という攻めもありました。△同桂には▲7一竜で金が取れますね。こちらも魅力的な手ではあるのですが、▲7三歩成には△4六歩と開き直られたときに、些か面倒な嫌いがあります。(A図)

この変化も先手は悪くありませんが、一瞬、後手に反撃のターンを与えていることがネックです。要するに、▲7三歩成は甘いのですね。

妙手 AI

しかし、この角打ちを入れておくと話が変わります。仮に後手が△5三香と受けると、今度こそ▲7三歩成が強烈ですね。次の▲6三とが▲5三角成からの詰めろになるので、先手はA図よりも攻めの威力が高いのです。無論、後手に香を無駄使いさせたメリットも見逃せません。

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そういった事情があるので、本譜はやむを得ず△9四角▲8五金△7六桂と攻めに転じました。けれども、やはり▲7一角成でボロッと金を取れたことは大きいですね。こうなると、先手がはっきり抜け出した格好になりました。(第2図)

今週の妙手

先手は次に▲8一竜と指せば、▲3四桂からの詰めろを掛けることが出来ます。後手はそれに勝る攻めを繰り出す必要がありますが、その具体案が難しいですね。

今週の妙手

先手玉に詰めろを掛けるなら△8八飛ですが、これには▲4八玉の早逃げが絶好です。(1)△6八飛成なら▲5八金打で弾けます。(2)△6八桂成は詰めろにならないので、▲8一竜で先手の一手勝ちでしょう。

やはり金を入手すると、攻防ともに手段が増えるので戦いを有利に運べることが分かります。▲6三香→▲3五角のコンビネーションが見事に炸裂しましたね。

 

妙手 AI

この▲6三香という攻め方は過激ではありますが、後手のクリップを手っ取り早く壊せるので非常に効率が良いのですね。ゆえに、先手はスマートにあの外堀を崩すことができ、その結果、懸案であった竜を起動させることが出来たのです。

冒頭の局面では、視覚的に▲8五香と打ってみたくなるところだったので、こういう手を見ると視野が広いなと感じさせられますね。なるほどの一着でした。

 

この妙手から読み取れる心得
  1. クリップは強固な構えなので、早急に崩す。
  2. 外堀を壊すときは、それを支えている金気を剥す。

 

第2位

 

次にご覧いただきたいのは、この将棋です。相掛かりから8・9筋で戦いが勃発し、以下の局面を迎えました。(第3図)

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2021.5.23 ▲BURNING_BRIDGES VS △Kristallweizen-Core2Duo-P7450(棋譜はこちら

後手が飛車を成り込んできたところ。先手はどこかに合駒を打つのが自然ですね。

いろいろな選択肢がありますが、次の一手はなかなかに予想できないものでした。

BURNING_BRIDGESが指した手は、▲7九歩です!

妙手 AI

タダの場所に歩を打ち、「こっちへおいで」と誘ったのが妙手でした!


 

 

妙手 AI

数ある選択肢の中でも、この手が第一感だった御方は殆どいらっしゃらないでしょう。ぱっと見は謎対応ですが、これが最も効率の良い受け方なのです。

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なお、ここで平凡な応手は▲8九香ですが、それは△9七歩でと金攻めを見せられると困ります。△9八歩成が香に当たってしまうので、ダメージが大きいのですね。

と金攻めに備えるなら▲6九香でしょう。しかし、これには△2七香がうるさい一手になります。(第4図)

攻めの妙手

▲同飛は△8八竜で金を取られますが、飛車が逃げても△2九香成から駒を取られてしまいます。先手は受けてもキリがないので、これも思わしくはないでしょう。

そうなると八方塞がりのようですが、▲7九歩と犠打を放てば先手は形勢を好転することができるのです。

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さて、これに対して並の対応は△同竜ですが、それから▲6九香と合駒します。相変わらず△2七香の筋は防げていないのですが、この変化は▲7八飛という返し技があることが先手の自慢ですね。(第5図)

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飛車交換になればどちらが得をするのかは火を見るよりも明らかです。ただ、△9九竜だと手番が先手に回るので、▲6六桂と反撃に転じることが出来ますね。銀を逃げると▲6五桂と跳ねる手が絶品です。

妙手 AI

この変化は2七に打った香が空を切っているので、先手にとっては理想的な展開です。このように、後手は▲7九歩を取ると自分の狙い筋が封じられてしまうのですね。

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なお、先手は歩切れになっているので、それに目をつけて△2四香と打つ手もあります。これは▲7九歩の弊害を突いてはいるのですが、ここでも▲7八飛と回っておくのが味の良い一手。飛車が隠居したようでも、7筋にバリケードを作れたことが大きいですね。(第6図)

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この変化は第4図と類似しているのですが、先手は香を温存しているので▲6九香と打つ変化よりも得をしています。

すなわち、ここで△2九香成には▲4五桂△4二玉▲6五桂と攻め掛かれば良いでしょう。(B図)

この変化は▲5六香と打つ含みがあるので、後手は中央を支え切れないですね。

 

妙手 AI

こうして見ると、何だか無意味に思える▲7九歩が、実は一番相手の攻めを牽制していることが読み取れます。▲7八飛のぶつけを作ることで、後手の竜を堰き止めたことが大きいのですね。

妙手 AI

そして、この歩は放置されたとしても、7筋のバリケードとして再利用できることも嬉しいポイントです。「大駒は近づけて受けよ」と外堀を作ることを掛け合わせており、非常にテクニカルな妙手でした。

ちなみに、このように「先に底歩を打って、後から支える」というテクニックは、こちらの記事でも取り上げた手法です。順番が入れ替わると新鮮に見えるものですね。こちらもご参照頂けますと幸いです。

 

この妙手から読み取れる心得
  1. 手番を取りたいときは、「大駒は近づけて受けよ」の出番。
  2. 外堀を作るときは、先に壁を作って後から支える方法もある。

 




第1位

 

最後に紹介するのは、この将棋です。これはまさに、「快刀乱麻を断つ」という表現がピッタリの妙手でした。(第7図)

妙手 AI

2021.5.27 ▲Ryfamate_wcsc31_TR2950X-RTX3090 VS △dlshogitest_pvm_226mix_v100x8(棋譜はこちら

駒の配置が入り組んで煩雑ですが、状況としては「先手が寄せ切るか、後手が逃げ切るか」という戦いになっています。

後手玉の急所が見えにくい局面ですが、Ryfamateは素晴らしい寄せを用意していました。

Ryfamate_wcsc31_TR2950X-RTX3090が指した手は、▲3六角です!

妙手 AI

「取ってみろ!」と言わんばかりに、銀頭に角を打ったのが妙手でした!


 

 

妙手 AI

んん!? ここに角? ごちゃついていて分からん…

という印象を受けたのではないでしょうか。確かに、駒の配置が異常なので複雑怪奇といった有様ですが、この手を境に戦局はクリアになっていくのです。

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まず、この手は▲2七金の詰めろですね。ゆえに△同銀が自然な対応ですが、そのタイミングで▲2四角成とするのが先手の狙いです。ここに馬を配置するのが急所なのですね。(第8図)

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これは、▲1五馬△同歩▲2六金までの詰めろです。後手は△2六桂と打って凌げれば話は旨いのですが、▲1五馬△同歩▲3六歩と進められると必至が掛かってしまいますね。(C図)

このように、先手は馬が2四へ配置できると、▲1五馬で金を食いちぎる手が生じます。これがすこぶる威力の高い一手になるので、後手玉を寄せ切ることが出来るのですね。

寄せのコツ

第8図の局面になってしまうと、後手は受けが利きません。後手が入玉するには1八の金を除去することが必須ですが、この局面になるとその余裕が回ってこないのです。

 

改めて、▲3六角の局面に戻りましょう。

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そういった背景があるので、本譜は△2八成桂と指しました。これは早急に1八の金を取るという意図ですが、これにも▲2四角成と踏み込むのが鋭敏。やはり、1五の金を取れる形に持ち込むことが肝要なのです。(第9図)

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相変わらず後手は1八の金が取れませんね。また、△2四同銀▲同竜と進めても状況は変わりません。その局面は2五と2七の地点で数的優位を作れているので、先手の寄せが決まっているのです。以降は、ほどなく先手が勝利を収めました。

 

妙手 AI

こうして振り返って見えると、先手は▲2四角成が切り札であり、これを指すことが後手玉の死命を制することに繋がることが分かります。2四の歩を削ってしまえば、竜の利きが通る上に1五の金も狙えるので一気に寄せが進むのですね。

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ただ、そうなると、なぜ先手はわざわざ▲3六角を打ったのでしょうか。▲2四角成がジョーカーなのであれば、始めからその札を切るほうが自然に思えます。

しかし、ここで▲2四角成を指すと、△同銀▲同竜△4七角▲7九玉△2六桂で寄せが見えなくなってしまうのです。(第10図)

受けの妙手

この変化は2五の地点で数的優位を作れていないので、後手玉の逃走を許しています。2四に馬がいない状態で△4七角を打たれてしまうと、先手は寄せが失敗してしまうのですね。

妙手 AI

しかし、ここに角を打っておけば、

(1)△同銀なら2四に馬が残るので攻めに厚みが生まれる。(第8図)

 

(2)放置されたら△4七角が消えるので、馬が消えても大丈夫。(第9図)

というベネフィットを得ることが出来るので、寄せが炸裂するという仕組みなのですね。

妙手 AI

このような混沌とした局面になると、人間なら手が見えなくなってしまうものです。いわゆる「筋に入らない」という状態ですね。

けれども、AIには「筋」という概念が無いので、複雑な状況になっても的確に急所を射貫いてしまいます。こういった鋭利なところは、将棋ソフトの持つ一番の魅力だと筆者は感じますね。▲3六角は、AIらしいシャープな妙手でした。

 

この妙手から読み取れる心得
  1. 敵玉に最も近い場所にある金を取るのが寄せの基本。
  2. 大駒の利きを通す手は、攻めの威力が高い。
  3. 王手で攻防手を打たれる展開は、なるべく避ける。

 

それでは、また。ご愛読いただき、ありがとうございました!

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