最新戦法の事情【9月号・振り飛車編】を公開しました。詳細は、ここをタップ!

最新戦法の事情 振り飛車編(2020年7・8月合併号)

最新戦法の事情 8月

どうも、あらきっぺです。連日、夏らしい日が続きますね。31度くらいだと涼しいと感じるのは私だけでしょうか笑

 

タイトルに記載されている通り、振り飛車の将棋を見ていきましょう。なお、前回の内容はこちらからどうぞ。 将棋 最新戦法最新戦法の事情 振り飛車編(2020年5・6月合併号)

 

注意事項

 

・調査対象は先月のプロの公式戦(男性棋戦のみ)。棋譜は携帯中継や名人戦棋譜速報など、公に公開されているものから収集。全ての公式戦の棋譜を見ているわけではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場する棋士の肩書は、全て対局当時のものです。

 

・戦法や局面に対する評価や判断は、あらきっぺの独断と偏見が多分に混じっております。当記事の内容を参考にして頂けるのは執筆者としては光栄ですが、あまり妄信し過ぎないことを推奨致します。

 

最新戦法の事情 振り飛車編
(2020.6/1~7/31)

 

調査対象局は124局。それでは、戦型ごとに掘り下げて行きましょう。

 

先手中飛車

救世主登場か?


15局出現。出現率は約12%。少数派ではありますが、4・5月よりも出現率が上昇しており、支持者がぽつぽつと集まっています。

先手中飛車が復活傾向にある要因としては、後手超速への対抗策を見出したことにあります。その工夫をさっそく解説していきましょう。(第1図)

 

先手中飛車

2020.6.8 第79期順位戦A級1回戦 ▲菅井竜也八段VS△羽生善治九段戦から抜粋。(棋譜はこちら)

この▲3八銀が振り飛車の新たなアイデアです。中飛車は▲3八玉と寄る囲い方が多いので、ちょっと珍しい指し方に感じられますね。

とりあえず、居飛車は通常通り銀を6四に繰り出します。対して、振り飛車も▲6六銀型で対抗して相手の攻めを受け止めに行きます。(第2図)

 

先手中飛車

さて。このような銀対抗の形になると、居飛車は△7五歩と突けないので直ぐに仕掛けることが出来ません。よって、攻め駒を増員する必要があります。

なので本譜は△4四銀と上がりましたが、▲4七銀△7三桂▲5六銀が先手の描いていた構想でした。(第3図)

 

先手中飛車

囲いの銀を繰り出すので抵抗感があるかもしれませんが、この形を作ってしまえば、もう仕掛けはありません。△6五桂と跳ねる手を封じられると、居飛車は手出しすることが出来ないのです。

 

先手中飛車

この局面を見ると、先手が▲2八玉を保留している工夫が光っていることが分かります。つまり、この一手を省略することで、浮いた一手を銀の進出に分配することが出来たという仕組みなのですね。

 

先手中飛車

なお、このように銀を二枚並べて居飛車の仕掛けを封じる作戦は、以前から浸透していた組み方ではあります。ただ、従来はそれを実現するために、仮想図のような組み方をしていました。

 

先手中飛車

ただ、この組み方だと、居飛車に持久戦へシフトチェンジされたときに囲いの進展性が乏しいというデメリットがあります。ゆえに、振り飛車は芳しくないと見られていたところがありました。詳しい解説は、以下の記事をご参照ください。

参考 最新戦法の事情【豪華版】(2020年1月号 振り飛車編)

 

最新 振り飛車

しかしながら、この組み方であれば振り飛車は美濃囲いなので、持久戦になっても大歓迎です。こういったところに、▲3九玉型の利点があるのですね。

 

この組み方が発見されたことで、現環境の先手中飛車は、以前よりも戦いやすくなった印象があります。中飛車党にとっては、悪くない風向きと言えるでしょう。

 



 

四間飛車

美濃囲いからの脱却


34局出現。先手で15局。後手で19局。

非常にたくさん指されており、多くの振り飛車党から頼りにされている戦法であることが窺えますね。

具体的な解説に入る前に、まずは現環境のおさらいをしておきます。居飛車としては、端歩突き穴熊を採用して優位を求められれば、話は簡単です。具体的には、第4図のような将棋ですね。

 

四間飛車

2020.7.29 第79期順位戦B級2組3回戦 ▲藤井聡太棋聖VS△鈴木大介九段戦から抜粋。(棋譜はこちら)

先手が▲2四歩△同歩▲6五歩と仕掛けたところ。結論から述べると、この局面は既に居飛車が指しやすくなっています。

 

四間飛車

振り飛車はこの仕掛けを食らうと、7三の桂が移動して玉のコビンが開くケースが多々あります。そして、その制約がかなりの痛手になってしまい、形勢を損ねる原因となってしまうのです。

 

なお、この居飛車の仕掛けは応用力が高く、多少の配置の違いに関わらず決行することが出来ます。

 

要するに、振り飛車は美濃系統の囲いを選ぶと、絶えず玉のコビンが開きやすいという問題を抱えてしまうのですね。そこで、ミレニアムに組むという工夫が出てきた訳です。(参考図)

 

四間飛車

こういった囲いであれば、今度は▲2四歩△同歩▲6五歩と仕掛けられても玉のコビンが開きません。ゆえに、これなら振り飛車は互角以上に戦うことが出来ますね。詳しい解説は、こちらの記事をご覧ください。

 

ちなみに、この四間ミレニアムは筆者も何度か指しておりますが、なかなか使い勝手が良く、穴熊相手にも引けを取らない印象を持っています。

 

さて。ここからが本題です。つまり、居飛車は端歩突き穴熊を採用するとき、美濃なら相性が良いのですが、ミレニアムは厄介、という環境になっていることが分かります。

端歩突き穴熊の相性表

という訳で、居飛車としては、どうにかしてミレニアムを組ませないようにしたいことが分かります。その具体案が、この作戦ですね。(第5図)

 

四間飛車

2020.7.12放映 第70回NHK杯1回戦第9局 ▲大橋貴洸六段VS△片上大輔七段戦から抜粋。(棋譜はこちら)

このように、まだ持久戦の含みがある状態で▲3六歩を突くのが居飛車の工夫です。急戦をチラつかせることで、相手の駒組みの選択肢を潰すことが居飛車の狙いなのです。

 

四間飛車

ここで△8二玉と寄れば穏便ですが、それを指すとミレニアムの含みが消えるので、居飛車は▲7七角から端歩突き穴熊を目指しやすくなりますね。

基本的に、持久戦の際に▲3六歩は不急の一手です。なので、振り飛車としては、それを咎めるような指し方が出来れば理想ですが、その実現は困難を極めます。例えば、三間に振り直して3筋からの捌きを狙うのは一案ですが、居飛車は怖くありません。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

参考 最新戦法の事情【豪華版】(2020年5・6月合併号 振り飛車編)

 

四間飛車

そういった背景があるので、後手は安易には△8二玉と寄りたくありません。ゆえに、本譜は△6二金直と指しました。これは、ミレニアム及び耀龍四間飛車の含みを残した一着です。対する居飛車は、▲4六銀と銀を繰り出します。(途中図)

 

四間飛車

振り飛車は急戦を受けて立つなら、△5四歩▲3五歩△3二飛が一案です。ただ、美濃囲いではないので、捌き合いには不安が残りますね。

そこで、本譜は△4五歩と突きました。これには▲3三角成△同桂▲5七銀と応じるのが妥当ですが、後手は△2二飛で2筋を守っておきます。(第6図)

 

四間飛車

振り飛車としては、このように4六の銀を撤退させるほうが堅実と言えますね。

こうなると居飛車も仕掛けの手段はないので、再び駒組みに移行することになります。第6図は一局の将棋ですね。

なお、豪華版では、ここからの具体的な駒組みや、仕掛けの方法についても記しております。

 

話をまとめると、現環境の四間飛車は、「端歩突き穴熊」と「四間ミレニアム」を想定した駒組みを行うことが大事です。ゆえに、居飛車は第5図のように早めに▲3六歩を突くようになり、振り飛車も安易には△8二玉と寄らない駒組みを行うようになっているのです。現時点では、ここで△6二金直は有力な選択肢の一つだと考えています。

 

四間飛車

また、今回は割愛いたしましたが、居飛車は端歩突き穴熊を軸にした作戦では容易ではないこと、及び振り飛車が美濃囲いではない布陣を多用するようになったことから、ミレニアムに組んだり急戦を採用する動きも顕著です。

現環境は、振り飛車の囲いが多様化したことで、お互いに様々な作戦を選ぶようになりました。既存の常識が変わりつつあるので、今は過渡期を迎えている印象ですね。

 

 

三間飛車

高美濃は怖くない


33局出現。先手番で17局、後手番で16局指されました。四間飛車に次ぐ出現数であり、現環境においては主力戦法の座に君臨していることが分かります。

 

対する居飛車は、持久戦が主流ですね。前回の記事では穴熊の将棋を解説したので、今回は左美濃系の将棋を解説したいと思います。

一口に左美濃と言っても様々なパターンがあるのですが、このところ人気を集めているのは、このような組み方です。(第7図)

 

最新 三間飛車

2020.7.9 第51期新人王戦トーナメント ▲西山朋佳女流三冠VS△齋藤優希三段段戦から抜粋。

図のように、穴熊の含みを見せながら左美濃を作りに行くのがトレンドの一つとなっている作戦です。これは、

(1)相手が淡々と囲いを発展させれば穴熊に組む。
(2)石田流の組み替えを目指せば左美濃に組んで迎撃する。

という二段構えの作戦であり、柔軟性の高さがセールスポイントですね。

 

最新 三間飛車

振り飛車としては、(1)の展開ではあまり主張が見えないので、(2)の展開を目指すことがほとんどです。そうなると、下図のような局面になりやすいですね。(第8図)

 

最新 三間飛車

さて。振り飛車が石田流の組み替えを見せてきたので、居飛車は当初の予定通り、それの迎撃に向かいます。本譜は△4二角▲7四歩△同歩▲同飛△7三歩▲7九飛△6四銀と進めました。(第9図)

 

振り飛車

次は△7五銀から8筋の突破を目指します。シンプルですが、これで良ければ話は居飛車は楽チンです。

ただ、この局面では▲6五歩と反発される手が気懸かりです。△同銀には▲7五歩で銀バサミですし、△7五銀も▲7六歩で銀を追いかけられます。居飛車もそう簡単には良く出来ない印象ですね。

 

振り飛車

この戦型は第9図のような局面が頻出するのですが、居飛車は繰り出した銀が目標になりやすい性質があり、その辺りに難しさがあります。振り飛車としては、石田流には組めなかったものの、動くことは出来るのでまずまずと言ったところではないでしょうか。

 

高美濃は石田流を阻止されるので手強い作戦ではありますが、三間飛車も十分に対抗できる印象です。前回の記事にも記したように、最大の敵はやはり穴熊ですね。

 

 

角交換振り飛車

全体的に苦労が多い


20局出現。後手番での採用が圧倒的に多く、(15局)先手番では支持を得ていません。他の戦法のほうが先手番の利が活きやすいと見られている傾向を感じますね。

 

角交換振り飛車には様々な形がありますが、現環境で人気を集めているのは、6手目に△9五歩と突いて端の位を取り、そこからダイレクト向飛車に構える作戦です。(第10図)

 

振り飛車

2020.6.16 第79期順位戦C級1組1回戦 ▲千葉幸生七段VS△都成竜馬六段戦から抜粋。(棋譜はこちら)

この組み方が近頃の流行りです。後手の狙いは持久戦に持ち込んで、長い駒組みの将棋にすることです。そうなれば端の位の分だけ、旗色が良いだろうと主張しているのですね。

振り飛車

なお、ダイレクト向飛車は飛車を振った瞬間にリスクを抱えているのですが、後手は△4四歩を突いているので、この場合は▲6五角と打たれても差し支えありません。

居飛車は直ちにこの△2二飛を咎める術は無いので、本譜はゆっくりと駒組みを進めるプランを選びました。(第11図)

 

最新 振り飛車

これはあくまで進行の一例に過ぎませんが、特に何事もなく駒組みを進めれば、想定される局面と言えるでしょう。

ここからの駒組みはプレイヤーの好みが分かれるところでしょうが、振り飛車はこういった持久戦模様になれば端の位を取った甲斐があるので、作戦の趣旨は通っている印象ですね。

 

しかしながら、この作戦は必ずしも採用できないという欠点があります。(参考図)

最新戦法の事情

至極、当然の話ですが、5手目に▲9六歩と突かれると、この作戦は出来ないですね。

無論、後手はこの端歩の駆け引きが得になるように他の作戦を選ぶことになるのですが、現環境の居飛車は端歩突き穴熊やミレニアムなど、▲9六歩を突いても堅陣に組むことが出来るので、この段階で端歩を突いても、咎められる可能性はかなり低いと言えます。

 

最新戦法の事情

従来の感覚ならこの端歩の交換は振り飛車が得になるという風潮でしたが、現環境ではイーブンと考えるプレイヤーが多く、居飛車党は早い▲9六歩を過敏に感じる必要が無くなってきているのです。

 

振り飛車

ただ、先述したように、現環境ではこの作戦が多く指されていることも確かな事実です。こういった不確実性の高い作戦に頼らざるを得ない状況に、角交換振り飛車の苦悩が垣間見えますね。

 

 

その他・相振り飛車

相振りは向飛車が面白い


22局出現。そのうち相振り飛車は9局でした。

現環境は、対抗形で三間飛車と四間飛車が流行しているので、先手が▲6六歩と角道を止めるケースが多いですね。それゆえ、[▲向飛車VS△三間飛車]という構図の相振り飛車が出現しやすい環境となっています。

 

この構図は、従来の感覚では三間飛車のほうが主導権を握りやすく、後手が作戦勝ちになりやすいと見ているプレイヤーが多かった印象を受けます。けれども、現代では向飛車の指し方が進歩しており、先手も大いに戦える将棋に変わりつつあるのです。

それでは、具体的な解説に入りましょう。(第12図)

 

相振り飛車

2020.7.16 第79期順位戦C級2組2回戦 ▲石川優太四段VS△中村亮介六段戦から抜粋。(棋譜はこちら)

図が示すように、先手は▲6五歩を早めに突いていますね。玉型の整備がそっちのけですが、向飛車はこの手を優先するのが急所なのです。

 

相振り飛車

なお、この▲6五歩は、△4五銀と上がられる手を防ぐことが目的です。先手はこの手を許してしまうと、三間側に主導権を握られてしまうので面白くない序盤戦になってしまうのです。詳しい理由は、こちらの記事をご覧ください。

 

相振り飛車

ただ、この歩を早く突くと、先手は一つ気になる攻め筋があります。それは、△5二金左▲4八玉に△6四歩と突っ掛けてくる手です。(途中図)

 

相振り飛車

この攻めが嫌らしいので、今まで先手は▲6五歩と突く手を敬遠していた経緯があるのですが、ここから本譜は斬新な対応を見せて、この△6四歩を逆手に取ります。

相振り飛車

まずは▲5六銀と上がり、4四の銀の動きを牽制します。後手は当然、△6五歩と指しますが、▲9五歩△同歩▲8四歩△同歩▲同飛△8三歩▲6四飛が面白い対応策でした。(第13図)

 

相振り飛車

端歩を捨ててから、飛車を6筋に回り込むのが軽快な切り返しです。

このあとは、9筋を争点にすることが先手の方針になります。端を戦場にしてしまえば、後手は飛角銀が遊び駒になりかねないですし、囲いの金も受けに機能しないので、先手にとっては良いこと尽くめですね。

 

相振り飛車

第13図の先手は囲いが中途半端ですが、何と言っても一方的に相手の囲いを攻めていることは大きな魅力です。この局面は、先手ペースの将棋と言えるでしょう。

 

△6四歩の筋が大丈夫なのであれば、先手は▲6五歩を突かない理由はありません。こういった背景があるので、先手は早めに▲6五歩を突くようになっているのです。

 

相振り飛車

相振り飛車において、角道を止める向飛車は受け身になりやすく消極的な嫌いがあったのですが、現環境では、その懸念が払拭されています。三間側に攻めの理想形を作られなければ、向飛車は十分に対抗することが出来るでしょう。

 


お知らせ

序盤の知識をもっと高めたい! 常に作戦勝ちの状態で戦いたい! という方は、こちらをご覧ください。

参考 最新戦法の事情【豪華版】(2020年7・8月合併号 振り飛車編)

 

最新の戦術には興味があるけど、どう指して良いのか分からない。どうしてプロがこういった指し方をするのかを知りたい。そういったお気持ちがある方には、うってつけのコンテンツとなっております。

有料(300円)ではありますが、その分、内容は深堀しております。よろしければご覧ください!

 

今回のまとめと展望

 

【振り飛車に良い風が吹いている】

全体的に振り飛車側の工夫が目立っており、良い風が吹いている傾向を感じます。特に、先手中飛車は株が上がった印象ですね。後手超速への対策を用意できたことが大きいです。美濃囲いを作るとき、▲3八銀→▲3九玉という順番で組むのがコロンブスの卵でした。

 

先手中飛車

現環境の振り飛車は、

・先手番 → 先手中飛車、四間飛車
・後手番 → 四間飛車、向飛車

こういったチョイスが良さげだと考えられます。

なお、向飛車が有力な理由についてですが、詳細は豪華版の記事にて解説しております。よろしければ、こちらからどうぞ。

 

【居飛車の取るべき戦略】

振り飛車は先後を問わず四間飛車が有力なので、それの対策は必須です。

居飛車が先手の場合は第5図の局面を目指すのが一案ですが、振り飛車に△7二玉型で頑張られると、話は簡単ではありません。

 

四間飛車

これでアドバンテージが取れないと見れば、ミレニアムやelmo囲い急戦などを模索することになるでしょう。

また、後手番の際には2手目△3四歩のほうが(振り飛車相手には)戦いやすいと考えられます。現環境は先手中飛車が復活気味であり、かつ石田流は右四間飛車で吹き飛ばせば良いからです。詳しくは、こちらを参照くださいませ。

 

それでは、また。ご愛読ありがとうございました!

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