どうも、あらきっぺです。桜が花開く季節ですね。満開になった桜を見ていると、そういえば、近年自分は桜以外の花をまじまじと見た記憶がないなと思いました。ただ単に、家の近くに花を咲かせる植物が桜しかないというだけかもしれませんが笑
タイトルに記載されている通り、振り飛車の将棋を見ていきましょう。なお、前回の内容はこちらからどうぞ。最新戦法の事情 振り飛車編(2022年10~12月合併号)
・調査対象の将棋は、対象期間のプロの公式戦から(男性棋戦のみ)。
棋譜はネット上や棋譜中継アプリにて公開されているものから収集。
全ての公式戦の棋譜を見ているわけではありません。ご了承ください。
・記事の内容は、プロ公式戦の棋譜を参考にしておりますが、それを元にして筆者独自の研究内容も含まれております。記事内容の全てが棋譜の引用という訳ではありません。
・記事中に記載している出現率は、小数点第二位を四捨五入した数字になります。
・戦法や局面に対する評価や判断は、筆者の独断と偏見が多分に混じっております。当記事の内容を参考にして頂けるのは執筆者としては光栄ですが、妄信し過ぎないことを推奨致します。
目次
最新戦法の事情 振り飛車編
(2022.12/1~2/28)
調査対象局は196局。それでは、戦型ごとに解説していきましょう。
先手中飛車
悩ましい端歩の関係
19局出現。出現率は11%→9.7%と推移しており、やや減少しています。先手中飛車はアグレッシブな作戦の一つですが、ここ最近はあまり支持を得られていない印象を受けますね。
居飛車は、相変わらず後手超速が一番人気の対策。対して、振り飛車は☗6六銀型で対抗するのがポピュラーです。このマッチアップになると、以下の局面は迎えることが多い形の一つでしょう。(第1図)
これは、桂跳ね優先型の局面から☗5四歩☖同歩☗同飛と進んだ局面です。ここで居飛車は☖6五桂と跳ねる手が有力視されており、それで居飛車がリードを奪えることが概ね定跡化されています。詳しい内容は、以下の記事をご覧いただけますと幸いです。
ただ、現環境では、あえて☖9四歩と手待ちする手も一考の余地があると見られています。
ちなみに、この☖9四歩は数年前から指されていた手ではあります。ただ、ここで端に一手使うと、駒組みが遅れるので居飛車は大勢に遅れると見られていました。
しかしながら、現環境においては、ここであえて手待ちすることで、居飛車は勝ちやすい局面に誘導できる仕組みを確立することが出来ています。なので、この手の評価が上がっている訳ですね。
なお、その勝ちやすい局面に誘導する仕組みについては、以下の記事をご参照くださいませ。
ただし、居飛車はこの☖9四歩優先型を使うには、1筋の突き合いを入れておく必要があります。序盤でそれが入らなければ、逆に振り飛車が面白い将棋になりますね。
なので、振り飛車としては、1筋の交換を入れない態度を模索する必要があるかもしれません。けれども、やはり端の位は軽視できない部分なので、可能であれば位は取らせたくないところです。その辺りのジレンマが、先手中飛車の支持が下がっている理由の一つだと推察されるでしょう。
四間飛車
先手と後手で態度を変える
43局出現。先手番では16局、後手番では27局採用されています。今回の期間では二番目に多く指された振り飛車であり、高い人気を誇っていることが窺えます。
居飛車の対策はバラエティーに富んでいますが、何だかんだと言って、最も有力なのは端歩突き穴熊。振り飛車としては、この作戦を打ち破らない限り、未来は無いと言えるでしょう。
まずは、先手四間飛車から見ていきます。
居飛車がシンプルに穴熊を目指すと、上図のような組み方を行うのが一般的。対して、振り飛車は☗3六歩を優先して駒組みを進めます。これが現環境において有力視されている組み方ですね。
なお、一般的に美濃囲いを充実させるときは、☗3六歩ではなく☗4六歩を優先する方が自然です。こちらの方が囲いが堅いのは言うまでもありません。ゆえに、早い☗3六歩に違和感を覚えた方は多いのではないでしょうか。
しかしながら、あえて違和感のある手を選んでいるのは、もちろん理由があるのです。
そのあと振り飛車は、図のように☗4六歩を省いたまま攻撃態勢を作りに行きます。ここからは、☗6六銀→☗7五銀と進めるのが狙いの一つですね。
そのとき、振り飛車は☗4六歩を省略することで、一手早く敵陣を攻めることが可能になります。つまり、速攻に打って出る条件を良くするため、囲いの整備を後回しにするのですね。それが☗3六歩優先の理由なのです。
この組み方は非常に優秀で、振り飛車は端歩突き穴熊が完成する前に戦いを起こすことが期待できます。四間飛車党にとっては、頼りになる作戦だと言えるでしょう。
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続いては、後手四間飛車の将棋に触れたいと思います。これも、先手四間飛車と同様、端歩突き穴熊にどう対抗するのかが最重要テーマと言えます。
後手四間の場合は、先手と比較すると一手遅れているので、速攻する条件が良くありません。そこで、後手四間では端歩突き穴熊に対して、じっくり組み合う将棋に持ち込むケースが多数派ですね。
その代表例として、相穴熊が挙げられます。(第3図)
一口に相穴熊と言ってもいろいろな駒組みがありますが、現環境では☖6三歩型を維持して駒組みを進める手法が支持を得ています。これは、後手番なので自分から動く必要が無く、待機戦術が取れることを活かしている意味があります。
例えば、居飛車が打開を目指すなら☗6五歩と突く手が一案です。ただ、こう指されても歩がぶつからないので、振り飛車は☖7七角成▲同銀☖3三角と進めれば仕掛けを堰き止めることが可能です。
このように、☗6五歩の打開策を無効化できることが、☖6三歩型の強みという訳ですね。
このように、[☗6六歩・☖6三歩型]の相穴熊になると、居飛車はスカッと打開することが難しい将棋になります。振り飛車は自分から先攻しにくい将棋ではありますが、後手番の特性を上手く活かしていることも確かですね。持久戦調の将棋が好きなプレイヤーには、適性が高い作戦だと言えるでしょう。
それでは、話をまとめます。現環境の四間飛車は、先後に関係なく端歩突き穴熊にどう立ち向かうかが最重要テーマです。先手四間の場合は☗6七銀型に組み、☗3六歩を優先する姿勢が面白いですね。これでアグレッシブに先攻していけば、主導権が取りやすいでしょう。
逆に、後手四間は先攻する条件が悪いので、じっくり戦うプランの方が理に適っています。[☖5四銀・☖6三歩型]の穴熊に組み、待機戦術に打って出るのは後手番らしい指し方と言えます。先手なら速攻、後手なら超持久戦という態度が、現環境の四間飛車では有力だと言えるでしょう。
三間飛車
作戦の幅が狭い
46局出現。先手番では20局、後手番では26局採用されました。出現率は23.5%であり、今回の期間では最も多く指された振り飛車です。ただし、前回の期間では30.5%だったので、支持が落ちていることが読み取れますね。
特に顕著なのは、三間ミレニアムです。今回の期間で三間ミレニアムを採用したケースは、何と1局のみ。つまり、ほぼ指されていないのです。ほんの少し前までは主力戦法の座に位置していたので、これは驚きの数字ですね。
なお、三間ミレニアムが芳しくない理由ですが、先手番の場合は急戦策を選ばれたとき、少し受ける条件が悪くなってしまうことが挙げられます。
また、後手番の場合は一手の遅れが響きやすく、攻勢に出る条件が悪いことが挙げられます。
それらの詳しい内容は、以下の記事をご覧くださると幸いです。
そうした背景があるので、現環境の三間は、石田流の組み換えが人気ですね。今回は、この戦型をテーマに掘り下げます。
三間が石田流の組み換えを目指した場合、現環境の居飛車は左美濃で対抗するのが最強と見られています。これは、左美濃は囲いが早く完成するので相手の速攻に強いこと、及び銀冠穴熊に組む含みを持っているので、持久戦にも順応できることが評価されているからです。
これに対して振り飛車は、☗6九金型を維持して石田流の組み換えを目指すのが有力な対策の一つ。上図の局面に誘導できれば、振り飛車も十分に戦える将棋ですね。
なお、この構想の詳しい解説は、以下の記事をご参照くださると幸いです。
ただ、一つ懸念を挙げると、上記の構想は☗6九金型を保たないといけないので、そのために☗2八玉など他の手を優先しないといけない縛りが生じます。つまり、駒組みに融通が利かないのですね。
なので、現環境では[☗3九玉・☗5八金型]という配置で石田流を目指す将棋が支持を得ています。
振り飛車にとって「☗5八金左」という手は、かなりの確率で指さなくてはいけない手です。なので、それを優先する駒組みで支障が無いのであれば、それに越したことはありません。
居飛車は☖3二銀で囲いを完成させるのが自然ですね。対して、振り飛車は☗6八角で石田流の組み換えを目指します。(第4図)
さて、居飛車は易々と石田流に組まれると面白くありません。なので、ここではそれを妨害する手立てを考えることになります。
具体案としては、以下の二つですね。
プランB 6筋の歩を突っ掛ける
プランBの成功例としては、以下のようなケースが挙げられます。
【石田流の組み換えを撃破する仕掛け】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) March 13, 2023
ここで居飛車は、☖65歩☗76飛☖66歩☗同銀☖65歩が成立します。
振り飛車は銀を引くと効率が悪いですね。勢い☗同銀☖99角成☗77角と捌きますが、☖78角→☖87角成で相手の飛を責めれば、有効な攻めが来ないので居飛車良しになります。#今日の将棋ウォーズ pic.twitter.com/J3L5osAEoA
このように、6筋の歩を突っ掛けるシンプルな攻めで石田流を牽制できれば、居飛車は非常に話が早いです。
しかし、結論から述べると、第4図においてプランBは上手くいきません。
というのは、ここで☖6四歩と突いても☗7六飛☖6五歩のときに☗7七桂で受かってしまうからです。
上記ツイートは振り飛車が☗2八玉型だったので、石田流の組み換えがワンテンポ遅れています。しかし、☗3九玉型であれば組み換えが一手早いので、☖6五歩の筋も受かるという仕組みなのですね。
そうした背景があるので、ここではプランAの「射手の構え」を作る方が有力です。すなわち、居飛車は☖5三銀と上がる訳ですね。
この場合、振り飛車は以下のように組んでおくのが有力な構想になります。(第5図)
ここに至る注意点としては、安易に☗7六飛型に構えないこと。その配置を作ると、☖4二角から飛車をターゲットにされるので、振り飛車は苦しい将棋になります。
ただ、石田流に構えることが出来ないと、攻めの形がなかなか作れません。なので、振り飛車は囲いの桂を活用して、攻撃力を底上げしておくのですね。
ここから振り飛車の指し方は、相手の方針によって、指し手を切り替えていくことになります。ただ、いずれにせよ振り飛車は、上手く攻撃態勢を整えることが可能ですね。その具体的な方法については、豪華版の記事をご覧頂けますと幸いです。
このように、[☗3九玉・☗5八金型]の配置で石田流の組み換えを目指すのは、対応力が高く有力な作戦と言えます。
ただし、これは先後の差が激しく出やすい将棋であり、後手番の場合は、なかなか厳しいのが実情です。また、三間ミレニアムも前述したように苦戦を強いられていますね。つまり、現環境の三間飛車は、先手番の石田組み換え型以外は、苦労が多い印象を受けます。そうしたところに、支持率が下がった理由がありそうですね。
角交換振り飛車
美濃囲いに囚われない
32局出現。先手番では13局、後手番では19局の採用でした。四間や三間と比べると些か数は少ないですが、出現率16.3%という数字を見れば、十分に支持を得ている戦法と言えるでしょう。
今回は、後手番の角交換振り飛車において意欲的な作戦を披露した将棋が登場したので、それを解説したいと思います。
角交換振り飛車には様々なオープニングがありますが、後手番ならではの指し方として、このように6手目に☖9五歩で端の位を取ってから角交換振り飛車を採用する指し方があります。
なお、この作戦は先手に☗9六歩と受けられると採用できないのですが、後手は早い段階で9筋の交換が入ると、雁木を指す条件が良くなります。なので、先手も☗9六歩を受けるかどうかは、悩ましいところがありますね。
なお、9筋の交換が入った雁木の詳細につきましては、以下の記事をご参照くださると幸いです。
最新戦法の事情 居飛車編(2022年11~2023年1月合併号)
さて、☖9五歩型の角交換振り飛車にも、様々なパターンがあります。ただ、この形の角交換振り飛車に共通することは、居飛車から端を逆襲されると苦しくなってしまうことです。具体例としては、以下の構想が強敵ですね。
【☖95歩型角交換振り飛車の攻略法】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) January 17, 2023
居飛車は平凡に指すと端の位の分、損なので、工夫が必要です。
まずは[☗47銀・☗37桂・☗38金型]に組みます。そして☗68玉型のまま銀冠を構築。この後は☗29飛と引いて☗96歩から端を逆襲すれば、相手の作戦を咎めることが出来ますね。#今日の将棋ウォーズ pic.twitter.com/jK1YiegGaG
このように地下鉄飛車を開通され、☗9六歩☖同歩☗同香から9筋を攻められてしまうと、振り飛車は位を取った手が全て逆用されることになります。
ゆえに、☖9五歩型の角交換振り飛車は、これを回避する構想を用意しておくことが必須です。具体案として、阪田流向飛車の将棋を応用する構想が挙げられます。(第6図)
阪田流向飛車は、☖3三金型に構えることが特徴です。ただし、向飛車に振ってしまうと地下鉄飛車が防ぎにくいので、振り飛車は☖3五歩→☖3二飛と組みましょう。これが☖9五歩型を活かす指し方ですね。
こうして☗3六歩を突かせないようにすれば、居飛車は地下鉄飛車に組むことが出来ません。2九の桂を使うには3筋の位を奪回する必要がありますが、三間相手に☗4七銀→☗3六歩のような指し方は、争点を与えるので利敵行為ですね。ゆえに、この組み方を行えば、すでに振り飛車は端を奪還される最悪のシナリオを回避できているのです。
なお、当記事ではこの振り飛車の構想を、「阪田流三間飛車」と呼称して解説を進めます。
このあと振り飛車は、以下のように構えるのが面白い指し方となります。(第7図)
振り飛車は金を3三に配置しているので、玉を固めることは難しい布陣です。ゆえに、「堅さ」という方向性を求めて駒組みを進めるのは理に適っていません。それよりも、左金が遊ばないよう、有効な攻撃態勢を作ることを重視した方が良いでしょう。
こうして腰掛け銀に組んでおけば、機を見て☖4二飛→☖4五歩という動き方が出来るようになります。第7図は9筋が逆襲されにくい展開になっていますし、振り飛車の方が攻め筋も分かりやすいので、作戦が成功している印象を受けますね。
☖9五歩型の阪田流三間飛車は、必ず採用できる作戦ではありません。なので盛んに指されている訳では無いのですが、発動できれば大いに有力な作戦であることがお分かり頂けたと思います。この作戦も、角交換振り飛車における注目株だと言えるでしょう。
このように、現環境の角交換振り飛車は意欲的な作戦が発見されており、居飛車側が対応に追われている印象を受けます。振り飛車党にとっては、良い風が吹いている情勢ですね。
その他・相振り飛車
新たなる利点
56局出現。なお、相振り飛車は13局でした。
対抗型に話を絞ると、先手盤では14局、後手番では29局。後手番の方が明らかに多いですね。これは、ポピュラーな振り飛車では後手番の条件が悪いので、違う作戦に可能性を求めていることが要因だと考えています。
また、出現率も前回の期間から13.5%→21.9%と大幅に上昇しています。この数字からも、多くの振り飛車党が後手番の振り飛車では王道路線の作戦(先手中飛車・四間・三間)ではない戦法を支持していることが窺えますね。
今回は、振り飛車が後手番でもアグレッシブに攻めることが出来る戦法を解説したいと思います。それは、向飛車ですね。
一般的に、向飛車を相手にしたとき、居飛車は持久戦を目指すのがオーソドックスな対応です。近年のトレンドである端歩突き穴熊で良ければ話は早いですね。
これに対して振り飛車は、☖6二玉型の状態で7筋の歩を突きます。この組み方が、現環境で注目されつつある構想ですね。
ここから振り飛車は、☖6二玉型を維持してひたすら攻撃態勢の充実を図ります。とにかく、攻めに特化した構えを取るのがこの作戦の肝ですね。(第8図)
このように、藤井システムの要領で桂跳ねを優先し、かつ角道を通しておきます。
なお、この局面は、地味に向飛車のメリットを活かしています。というのは、振り飛車は☖4五歩を早く突くと、絶えず☗2四歩☖同歩☗6五歩の打開を心配しなければいけません。けれども、向飛車だとその筋は無効ですね。なので、振り飛車は安心して角道を通すことが出来るという訳なのです。
こうした局面になると、居飛車は常に☖8五桂→☖6五歩の筋を見せられています。それを防ぐなら☗8六歩になりますが、これを指させることが出来れば、居飛車の囲いが少し弱体化するので、振り飛車は嬉しいですね。
このように向飛車は、☖6二玉型を維持する駒組みが有力です。向飛車は☖3二金型に構えて飛車交換を目指すのがよくある指し方でしたが、それ以外の方法で敵陣を攻める構想を発見できたことが大きいですね。☖4五歩が突きやすい利点を活かす構想は、今後も多く出てきそうな予感があります。
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今回のまとめと展望
【後手番は、ワガママが言いにくい】
基本的に対抗型は、[中飛車系・四間・三間・向飛車・角交換振り飛車]の五つに分かれます。そして、現環境の状況を大まかにまとめると、以下のようになります。
振り飛車は先手番であれば採用できる戦法が多いですが、後手番ではかなり幅が狭まる嫌いがあります。特に、三間飛車は先後の違いの影響を受けやすく、これを後手番で使うのは推奨できません。
また、向飛車も相手が☗2五歩を決めてくれないと指しにくい戦法ですし、☖9五歩型の角交換振り飛車も、9筋の位を取らせてもらえなかったときの策を用意しておく必要があります。それらを考慮すると、確実に採用でき、かつ有力な戦法は四間飛車のみということになってしまいますね。
振り飛車という戦法は、自分の土俵に持ち込みやすい(自力で戦型を選べる)ことがメリットの一つです。ただ、現環境の後手振り飛車においては、そうした利点が主張しにくい情勢になっていると言えるでしょう。
【即効性理論を使いこなせ!】
現環境の振り飛車は、「いかにして効果的な攻撃態勢を作るのか?」ということが重大なテーマです。これは、漫然とした駒組みを行うと、居飛車に端歩突き穴熊という理想形を作られてしまうことが背景としてあります。
効果的な攻撃態勢を作るためには、攻撃力を高めることも然ることながら、「速さ」が大事な要素となります。これは、端歩突き穴熊の完成を許すと相手の態勢が整ってしまい、攻略が難しくなることが理由です。
駒組みで「速さ」を求めるためには、即効性理論を使うことが基本になります。例えば、四間飛車の駒組みは、それが顕著に出ていますね。
振り飛車は美濃囲いに組んでいますが、☗4六歩を省略していることが目を引きます。本当に何気ないところですが、端歩突き穴熊を倒すためには、こうした囲いの整備に費やす手を必要最小限に留める工夫が求められるのです。
なお、こうした指し方は桂頭が不安定に見え、玉が薄くなる感覚を覚える方もいらっしゃるかと思います。
ただ、元より振り飛車は固め合いでは分が悪い(穴熊に組めない・攻めの銀が囲いにくっつきにくい)ところがあります。であるならば、攻撃力を重視した構想を選ぶ方が良いということになりますね。なので、振り飛車は持久戦になると、即効性理論に則った駒組みを行わなければならないのです。
例外としては、後手番で待機に徹する場合です。これは元より待つことが趣旨になっているので、攻めを考える必要はありません。ただ、そうでないのであれば、即効性理論を使いこなす意識が必要だと言えるでしょう。
それでは、また。ご愛読くださり、ありがとうございました!
あらきっペさん
いつも楽しくブログを見ています。
先手中飛車について質問があります。
桂跳ね優先型が有力とありますが86歩の突き捨てを入れてから相手の出方を見て桂馬を跳ねたりする藤井流超速の仕掛けなどはなにか対策が出て苦しいのでしょうか。
ブログをご覧くださり、ありがとうございます。
居飛車が☖8六歩の突き捨てを早めに使うのは、確かに考えられる手段です。[☖8六歩☗同歩]の利かしが入れば、☗9五角と飛び出る筋が消えることが居飛車の利点ですね。
ただし、あまりに早く歩を突き捨てると、☗8六同角と取られて損をしたり、☗8六同歩の後に☗7八金→☗8七金という受け方を与える嫌いはあります。加えて、居飛車は8筋の歩を早期に突き捨てなくても、桂跳ね優先型に組んでおけば特に不都合がないという背景もありますね。
話をまとめると、早く☖8六歩の突き捨ては考えられる手段ではありますが、現環境ではそれ以上に有力なプラン(桂跳ね優先型)があります。よって、わざわざそれを採用するメリットが乏しいと考えられるでしょう。
いつもあらきっぺさんを参考に振り飛車を指しております。
先手中飛車で質問です。
一直線穴熊に組まれると手詰まりになりやすい印象があり、良い打開策があれば教えて頂きたいです。
記事をご覧くださり、ありがとうございます。
[先手中飛車 VS 一直線穴熊]という戦型は千日手になりやすい性質があり、確かに振り飛車としては漫然と駒組みできない側面があります。
打開策の一つして、参考図のように早い段階で端歩を打診しておくのは考えられます。
端歩を詰めることが出来れば通常型よりも得ですし、☖1四歩と受けてきたら☗4六銀型に構えて早めに3筋から動くのが一案です。
そうした変化のとき、端歩の突き合いを入れておけば、端攻めの含みが生じるので、攻め筋が広がるかと思います。
ありがとうございます!
プロがなぜこのタイミングで端歩を突くのかがよく分かりました。
参考にしてみます。