どうも、あらきっぺです。落ち葉が舞い散る風情ですが、まだまだ紅葉は綺麗ですね。おかげさまで散歩が楽しいです。
タイトルに記載されている通り、振り飛車の将棋を見ていきましょう。なお、前回の内容はこちらからどうぞ。最新戦法の事情 振り飛車編(2020年10月号)
・調査対象の将棋は、先月のプロの公式戦から(男性棋戦のみ)。棋譜はネット上や棋譜中継アプリにて公開されているものから収集。全ての公式戦の棋譜を見ているわけではありません。ご了承ください。
・記事の内容は、プロの公式戦の棋譜を参考にしておりますが、それを元にして筆者独自の研究内容も含まれております。記事内容の全てが棋譜の引用という訳ではありません。
・戦法や局面に対する評価や判断は、筆者の独断と偏見が多分に混じっております。当記事の内容を参考にして頂けるのは執筆者としては光栄ですが、妄信し過ぎないことを推奨致します。
最新戦法の事情 振り飛車編
(2020.10/1~10/31)
調査対象局は66局。それでは、戦型ごとに掘り下げて行きましょう。
先手中飛車
初手▲5六歩の是非
13局出現。9月と比較すると、出現率は7.9%→19.7%と高騰しており、大いに興隆している印象です。
現環境の特徴としては、初手に▲5六歩と指すケースが多くなっていること(9局)が挙げられますね。初手▲5六歩は先手中飛車宣言であり、この手が多く選ばれているということは、他の戦法よりもこの作戦に絶大な支持があることの裏返しだと受け取れます。
なぜ、ここまで先手中飛車の株が上昇したのかと言うと、強敵である後手超速に対抗できるようになったことが要因の一つとして挙げられるでしょう。(参考図)
図のように、▲3九玉型で駒組みを進めるのが面白いアイデアですね。これの発見により、先手中飛車の市民権が回復したという経緯があります。
なお、この指し方のメリットにつきましては、以下の記事をご参照ください。最新戦法の事情 振り飛車編(2020年7・8月合併号)
後手超速が怖くないのであれば、先手中飛車は頼もしい武器です。ただ、初手に▲7六歩では△3四歩のときに先手中飛車が採用できません。確実に先手中飛車の将棋に持ち込むには、初手に▲5六歩を指す必要があります。こういった背景があることから、初手▲5六歩の採用数が多くなっているのではないかと推察されます。
しかしながら、居飛車も黙ってはいませんでした。初手▲5六歩を逆手に取る作戦を披露した将棋が表れたのです。(第1図)
図に見られるように、△8三歩型のまま駒組みを進めるのが居飛車の工夫ですね。初手▲5六歩の場合、後手は△8四歩を後回しに出来るので、その利点を最大限に活かすことがこの作戦の趣旨になります。
プロの実例としては、第68期王座戦五番勝負第5局 ▲久保利明九段VS△永瀬拓矢王座戦が挙げられます。(棋譜はこちら)
居飛車の方針としては、基本的には△7四歩→△7三銀と繰り出し、二枚の銀で5五の歩を取りに行くことを念頭に置きます。そういった展開になったとき、△8四歩→△8五歩という二手を省略できているので、通常の後手超速よりも銀の出足が早いですね。
それを考慮すると、振り飛車は早めに玉型を整えて急戦に備えたいところでしょう。ただ、ここで▲3八玉と指すと、先手は参考図の局面に誘導できなくなってしまいますね。ゆえに、デフォルトの後手超速に戻されると、損な組み上がりになってしまいます。
振り飛車が△7四歩を阻止するのであれば、ここで▲7五歩と突く手が候補になりますが、これには△5四歩という反発が成立します。以下、▲同歩△8八角成▲同銀△4五角と進んだ局面は、居飛車ペースの将棋だと言えるでしょう。(第2図)
やはり、馬を作れることが確定したのは大きいですね。居飛車は5四に拠点が残っていることが懸念材料ではありますが、一歩を持てば△5三歩と合わせてこの歩を消去することが出来るので、大きな被害を被ることはないでしょう。
いろいろと変化を述べましたが、どういった岐れになっても、居飛車は△8四歩を保留していることがプラスに作用していますね。この指し方は、初手▲5六歩を咎める作戦として有力なのではないかと筆者は考えています。
話を総括すると、現環境において先手中飛車は確かに有力です。けれども、それは初手から▲7六歩△8四歩▲5六歩というオープニングを辿った場合であり、初手▲5六歩では、少し事情が異なります。
振り飛車としては、後手超速に対して参考図以外の対策を編み出すことが、初手▲5六歩を安心して突けるようになる条件だと言えるでしょう。
四間飛車
正体を見せない!
15局出現。後手番での採用が多く目立ちます(12局)。四間飛車という戦法は基本的にはカウンター狙いなので、後手番で採用する方が適性が高い印象はありますね。また、先手番の場合は他の振り飛車を選びたいという意味もあるでしょう。
現環境の後手四間飛車は、以下の局面が重要なテーマ図の一つとなっています。
一昔前の感覚では、この▲3六歩は急戦志向の一着だと捉えられていたでしょう。しかし、現代では「相手の囲いを決めさせる手」と捉えるほうが妥当だと言えます。
これに対し、振り飛車が最も手堅く指すなら△8二玉になります。ただ、この手を指すと囲いの形が美濃に限定されるので、ミレニアムや金無双に組むことが出来ません。つまり、居飛車は安心して端歩突き穴熊を目指せる状況になるのです。
基本的に、四間飛車は[美濃系統の囲い VS 端歩突き穴熊]という構図になると、作戦負けになってしまいます。詳しい説明は、こちらの記事をご覧ください。最新戦法の事情(2019年9月~10月・振り飛車編)
それゆえ、昨今では△8二玉ではない手を指すほうが有力と見られています。候補の一つに、△6二金上が挙げられますね。(第3図)
これは、耀龍四間飛車を意識した組み方です。昨今では持久戦の際、金無双に組む手法が注目を集めており、こういった指し方も市民権を得られるようになりました。筆者もちょくちょく指しているのですが、なかなか面白い作戦だと感じています。
【耀龍四間飛車の戦い方】
居飛車が7筋の歩を交換したところ。手堅く指すなら△74歩ですが、この一歩は攻めに使いたいので打たずに頑張ります。そして△46歩と仕掛けましょう。
▲同歩なら△86歩▲同歩△65歩と攻めます。▲同角には△45銀→△36銀とすれば攻めが続きますね。#今日の将棋クエスト pic.twitter.com/HomgTUuktA
— あらきっぺ (@burstlinker0828) October 17, 2020
一つ気になることは、この段階で金無双を表明すると急戦を決行されたときにどう対処するかという問題が生じることです。原則として、急戦に対しては美濃囲いが最適な囲いなので、振り飛車は相性の悪い戦いを強いられてしまう恐れがあります。
つまり、ここで▲4六銀と上がられたときにどう対抗するかがこの形の課題ですね。案としては、以下の記事で解説した指し方が、対策の一つになります。ご参考になれば幸いです。
最新戦法の事情【振り飛車編】(2020年7・8月合併号 豪華版)
しかしながら、やはり急戦に対して金無双で対抗するのは不安が大きいという方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、テーマ図の局面から違う駒組みを掘り下げてみたいと思います。具体的には、△5四歩と突いてみましょう。(第4図)
なお、この手は第70期王将戦挑戦者決定リーグ戦 ▲藤井聡太二冠VS△永瀬拓矢王座戦で登場した一手でもあります。プロの公式戦においては新手とのことでした。
相手がまだ囲いの形を決めていないので、居飛車も態度を決めたくはありません。よって、和戦どちらの方針も選べる▲7七角が一案ですが、振り飛車は△6四歩でさらに正体を見せずに駒組みを進めます。(途中図)
居飛車はこれ以上は態度が保留しにくいので、そろそろ方針を決めないといけない局面です。現状、相手の玉型は見るからに中途半端なので、▲4六銀で拳を振り上げるのはどうでしょう。
これに対して振り飛車は、△8二玉▲3五歩△7二銀と応接するのが絶対です。(第5図)
仕掛けられてから囲いを完成しているので対応がワンテンポ遅れているようにも見えますが、これで振り飛車は「急戦には美濃囲い」という状況を作ることが出来ました。やはり、こういう将棋になると金無双とは安心感が段違いですね。
第5図は形勢としては互角だと思いますが、居飛車は「▲7七角」という手がプラスに作用しにくいので、そこまで手応えのある作戦ではないという感があります。振り飛車はこの局面に誘導できれば、△5四歩→△6四歩で態度を保留した甲斐があったと言えるでしょう。
このように、△5四歩から△6四歩という駒組みは、美濃囲いの含みを残しているので急戦に強いことが分かります。
問題は、ここから▲8八玉△7四歩▲9八香で端歩突き穴熊を目指されたときなのですが、これにつきましては豪華版のほうで解説いたしております。ご興味がある方は、以下のリンクからどうぞご覧ください。
三間飛車
対局数は多いが…
17局出現。多くのプレイヤーから頼りにされている戦法であることが窺える数字です。
しかしながら、筆者は現環境の三間飛車は、なかなかに苦労が多い戦法だと感じています。なぜなら、居飛車穴熊に対して良い対策が打ち出せていないからです。
居飛車が穴熊を志向すると、こういったオープニングになることが予想されますね。(第6図)
さて、三間飛車は攻めの銀をどのように使うかが考え所の一つです。この銀を中央へ活用するなら、△5四歩→△5三銀と組む指し方が一案ですね。
しかし、これは居飛車に▲5七歩型のまま駒組みされると、銀の運用が難しいという問題があります。(仮想図)
例えば、こういった要領で駒組みを進められると、△6五銀と上がっても▲2六飛で効果薄なので、今後のプランが不透明ですね。居飛車は銀冠穴熊に組んだり、▲5九銀→▲6八銀で四枚穴熊を作る方針で行けば作戦勝ちが期待できるでしょう。
なお、こういった組み上がりの実例としては、第79期順位戦C級2組5回戦 ▲黒田尭之四段VS△阿部光瑠六段戦(2020.10.8)が類似例として挙げられます。(棋譜はこちら)
居飛車が早めに5筋の歩を突いている場合は話が別ですが、▲5七歩型の場合は6四に銀を配置しても作戦負けを招きやすいのです。
そういった背景があるので、基本的に三間飛車は△4三銀→△5四銀というルートで銀を活用する方が勝ります。これに対して居飛車が▲5七歩型で組む姿勢を貫くと、こういった作戦が有力になります。(第7図)
通称、トマホークと呼ばれる作戦ですね。このあとは、桂を跳んで端をガンガン攻めていくのが振り飛車の狙いになります。思う存分、攻勢に出れる将棋なので、こうなれば穴熊に組まれても不満はありません。
この将棋も居飛車は△6五銀に対して▲2六飛で受けているのですが、ご覧のように△6二玉型のまま攻めの形を作られると、居飛車は穴熊が完成する前に戦いが起こってしまいかねないので、「堅さ」を武器に戦うことが出来ません。それでは何のために9九まで玉を移動したのか、という話になりますね。
なので、居飛車は△4三銀型の場合は▲5六歩→▲5七銀を優先的に指し、△5四銀と上がられたときに▲6六銀を用意するようになりました。(第8図)
この▲6六銀型穴熊はかなり強力であり、三間側は対応に苦慮している風潮があります。詳しい解説は、以下の記事をご参照ください。
最新戦法の事情【振り飛車編】(2020年5・6月合併号 豪華版)
それを踏まえると三間としては、ここから△4三銀▲5六歩△5四銀という組み方は考えられます。(第9図)
こうすれば居飛車の応手を▲6六歩に限定できるので、振り飛車は▲6六銀型の穴熊を回避することが出来ますね。
しかし、あまりに早く5四に銀を上がると、振り飛車はまた新たな問題点が浮上するのです。
具体的に述べると、現環境で居飛車は三間飛車に対し、こういった駒組みも有力な手法の一つだと考えられています。(参考図)
このように、早い段階で▲6六歩と止める作戦も、三間飛車にとっては強敵ですね。詳しい解説は、前回の記事をご覧いただけますと幸いです。
三間側はこの作戦を選ばれたとき、△5四銀と上がる手を極力保留している傾向があります。これは様々な理由があるのですが、ざっくりと言えば△5四銀を早めに指すと色々な弊害があり駒組みに不都合が生じてしまうのです。
それゆえ、最近の公式戦の将棋では、△4三銀型のまま戦うケースが主流ですね。以下の将棋は、どちらもそれを実践しています。
第79期順位戦A級4回戦 ▲菅井竜也八段VS△広瀬章人八段戦(2020.10.9)(棋譜はこちら)
第79期順位戦C級1組6回戦 ▲高野秀行六段VS△高崎一生七段戦(2020.10.20)(棋譜はこちら)
話をまとめると、振り飛車はここで△5四銀を上がれば▲6六銀型穴熊を阻止することは出来るのですが、他の作戦に切り替えられたときに、作戦負けになるリスクが高まってしまうのです。しかし、これ以外の方法では▲6六銀型穴熊を阻止できません。あちらを立てればこちらが立たずといった有様なのですね。
現環境の三間飛車は穴熊を含みにした指し方に手を焼いています。石田流への組み替えは、もう手の内が見透かされている感があり、良さを求められません。対策がかなり深い段階まで整っているので、何かしら代案を捻り出さなければいけない印象を受けますね。
角交換振り飛車
急戦と穴熊の両立
11局出現。先手番での採用数が5局あり、9月と比較するとじわりと増えています。
先手番の角交換振り飛車は待機策が取れないので、積極的に動いていくことが必須です。そういう意味では後手番よりも取れる戦術の幅が狭いのですが、先手番だから出来るという作戦もあります。それが、以下の駒組みですね。
この局面は、初手から▲7六歩△8四歩▲7七角△3四歩▲8八飛…というオープニングを経て、辿り着いた局面です。先手番の場合、▲7七角→▲8八飛という手順が指しやすいので、こういった局面に誘導しやすい利点があります。
なお、この局面はまだ角を交換していないので、厳密には「角交換振り飛車」ではないのですが、基本的に先手は角交換振り飛車を志向している意味があるので、ご容赦いただけますと幸いです。
さて、ここまでは自然な序盤戦ですが、居飛車はここからが方針の考え所ですね。すなわち、
(1)どの囲いを選ぶのか
(2)△8五歩を突くか否か
(3)右銀の配置をどうするか
(4)5・6筋の歩をどうするか
といったことを考慮しなければいけないからです。
もちろん、どういったプランを選んでも一局なのですが、それらを含みにして△1四歩と突くのがプロ好みの一着ではあります。まずは形を決めずに様子を見て、相手の態度を見てから作戦を決定しようという意味ですね。
これに対して振り飛車は▲1六歩と受けるのが自然なのですが、今回は▲5八金左△1五歩▲1八香で端の位を取らせる指し方を掘り下げます。現環境において、筆者はこれが有力な手法だと見ています。(途中図)
居飛車としては、そろそろ形を決めなければいけませんね。
ただ、この局面で△6四歩を突くと、▲6六歩と角道を止められたときに損になりやすい懸念があります。角道を止める振り飛車に対して、居飛車は△6四歩(先手番なら▲4六歩)を積極的には指しません。角交換を狙うような急戦策なら話は別ですが、この戦型はそういったことを狙う将棋ではないことは明白です。
という訳で、無難な指し方としては△8五歩▲1九玉△5四歩▲2八銀△5三銀という手順が考えられます。これに対して、先手は▲2二角成△同玉▲7七銀と進めましょう。(第11図)
居飛車が△5三銀型を作ってきた場合は、逆棒銀の筋を採用するのが面白い駒組みになります。
居飛車は△3二銀で囲いを引き締めるのが一案ですが、振り飛車は▲8六歩△同歩▲同銀と動いていきます。金が離れているので不安を覚えるかもしれませんが、なかなかどうして、これが逆棒銀に適した構えなのです。(第12図)
確かに4九の金は浮いているのですが、ここに金がいるお陰で5八の金が安定しているというメリットがあります。
仮に▲3九金△4四歩のような交換が入っていると、振り飛車は△8七歩▲同飛△6九角▲8八飛△5八角成という強襲を浴びて非勢に陥るところでした。しかし、この局面ではその心配は皆無ですね。
この局面は、シンプルに銀を進軍していく手が受けにくいので、振り飛車の工夫が奏功した印象を受けます。もし、△6三銀型であれば、△7四銀と上がる手で受かるので差し支えないところですが…。
このように、
・角の手損をいとわない
・穴熊の完成を急がない
この二点をミックスしたことが、従来には見られなかった工夫だと感じています。
なお、この作戦の実例としては、第92期ヒューリック杯棋聖戦二次予選 ▲藤井猛九段VS△近藤誠也七段戦(2020.10.13)が類例として挙げられます。
上記の将棋は振り飛車が8筋でポイントを稼ぐことに成功し、上手く立ち回ることに成功した一局だったと思います。
一般的に、端の位は取らせてしまうと持久戦になった際に支障が生じるので、あまり思わしくはありません。昨今では居飛車の端歩突き穴熊がトレンドになっているように、やはり端の位は取らせたくはないものなのです。
しかしながら、素早く先攻してアドバンテージを取れるのであれば、「端の位を取らせる」という指し方は一理あると言えるでしょう。
この作戦は駒組みがすこぶる大事で、平凡に穴熊を完成させる手を優先すると、攻めの形が作れなくなってしまうおそれがあります。なので、「穴熊の完成を急がない」という姿勢が大きな意味を持つのですね。
なお、それならば美濃囲いを作るほうがより適しているのでは? という疑問を抱かれた方もいらっしゃるでしょう。ただ、局面が落ち着いたときに、「穴熊に組める」というプランを残していることが、この作戦の最大のメリットです。進展性を残した上で急戦の姿勢を見せているのが面白いところですね。
難易度は高い指し方ではありますが、角交換振り飛車や穴熊を好むプレイヤーには、心強い武器になり得るのではないでしょうか。
その他・相振り飛車
ゴキゲン中飛車が増加
10局出現。なお、相振り飛車は3局。10月ではあまり局数が伸びなかったですね。
ただ、ゴキゲン中飛車が6局も指されており、これは興味深い数字です。先手中飛車が増加したことに呼応した感はあります。
対する居飛車は超速が主流の対策ですが、なぜか損だと認知されている指し方を選んでいるケースが散見され、どうも不可解な将棋が多かったですね。
逆に、居飛車が優秀とされている定跡を採用した将棋は、振り飛車側が手も足も出ないまま押し切られており、これも釈然としない印象を受けます。
この辺り、正直なところ戦型選択の意図が見えないのですが、ゴキゲン中飛車が増えたという事実は確かなことなので、来月以降の動向には注目しています。
序盤の知識をもっと高めたい! 常に作戦勝ちの状態で戦いたい! という方は、こちらをご覧ください。
参考 最新戦法の事情【振り飛車編】(2020年11月号 豪華版)
最新の戦術には興味があるけど、どう指して良いのか分からない。どうしてプロがこういった指し方をするのかを知りたい。そういったお気持ちがある方には、うってつけのコンテンツとなっております。
有料(300円)ではありますが、その分、内容は深堀しております。よろしければご覧ください!
今回のまとめと展望
【キーワードは柔軟性】
現環境の対抗形では、とにかく「柔軟性」に重きを置く指し方が高い評価を得ている傾向があります。ここで言う柔軟性とは、選べる戦術の幅が広く、方針の切り替えがフレキシブルに行えることを意味します。
例えば、この▲3六歩は、急戦と持久戦の両方を視野に入れた作戦です。また、本文ではこの手に対し、△6二金上や△5四歩が有力と記しました。これらの手は居飛車の▲3六歩と同じく、急戦にも持久戦にも対応できるという意味がありましたね。
また、△8三歩型の後手超速も柔軟性が高い作戦です。これは持久戦にシフトすることは難しいのですが、相手の出方によって8筋の歩を伸ばすプランと、△8三歩型のまま戦うという二つのプランを選べることが特色ですね。
このように、一つの戦法の中でも、駒組みの初期段階では複数の選択肢を持たせることが現環境のトレンドと言えます。裏を返せば、石田流のような攻め一辺倒の作戦は評価されません。こういったところに注目すると、作戦負けを回避しやすくなるのではないでしょうか。
【穴熊の株が上がっている?】
拙著の「現代将棋を読み解く7つの理論」に記載したように、現代将棋は穴熊の評価が下がっている傾向があったのですが、対抗形においては、穴熊が再評価されている傾向を感じます。
例えば、この作戦はそれを如実に表しているものだと言えるでしょう。
振り飛車が美濃ではなく、穴熊を選んでいるところに注目して頂きたいです。対抗形は相居飛車よりも駒組みが長くなりやすい性質があるので、穴熊という「最強の構え」が作りやすいことは確かです。そこに目をつけている感はありますね。
また、これはただ穴熊に組むだけでなく素早く先攻することも視野に入れているので、堅陣の構築と即効性理論を両立するという非常に意欲的な作戦とも言えるでしょう。こういった戦術の変遷は、今後も精察していきたいですね。
それでは、また。ご愛読ありがとうございました!